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神様のおねがい  作者: もやしいため
第五章:休息の時間
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初めての空間魔法2

理熾の練習風景は変です。

頭の中でイメージを行って、出来ると思ったことを実行します。

ついでに言えば結果が分からないことも実行したりしますが。

「フィリカさん、空間魔法ってどんなのが出来るんだっけ」

「いや、私に聞くなよ。

 クラスも魔法も使えないぞ」


そもそも最初に魔法を教えて貰った時も断られた。

職人の性か、出来ないことに対しては余り関わりたくないらしい。

「やるなら徹底して」がスタンスな気がする。

その辺りは理熾とは正反対だ。


「むぅ…概要だけでも」

「それなら前に話しただろう。

 空間魔法の技術は、亜空間、障壁、空間転移の3つだ。

 基本的に便利魔法で戦闘用じゃない…。

 今は違うな、目の前のお子様が戦闘時に使ってるからな」


「ハハハ…」


フィリカの指摘に乾いた笑いで返答する。

やはり何度聞いても同じ。

調べても同じなのだから、本当にこれしかない。


センガが初めに「攻撃力もある」と紹介してくれていたのだが、実は違ったのだ。

空間魔法にちゃんとした攻撃力は無い。

確かに空間を削って攻撃は出来る。

けれどそれはあくまでも『抵抗が無い場合』、もしくは『抵抗を突破した場合』である。

空気のように削りやすいものもあるが、実際はそんなものは稀だ。

樹木や岩石、流水などはれっきとした物体(・・)が存在する。

そして物体には魔力が宿る。

その魔力がそのまま抵抗力である。

空気も魔力を帯びているが、希薄なのでそれほど気にする程ではない。


空間魔法は物質そのものを『切り取る』、『削り取る』なので、それらの抵抗力を100%突破しなくてはならない。

これが生物になると難易度は更に跳ね上がる。

魔力量の差はあるが、全ての生物には流動する魔力(・・・・・・)が宿る。

この『流れる』というのが曲者で、流れるだけで抵抗力を跳ね上げるのだ。

それに加えて通常の物体が持つ抵抗力も加算される。


ちなみにゴブリンの死体を削ることが出来たのは、死骸となって物体扱いになったから。

更に言うと魔力だけでなく経験値も抵抗力に含まれる。

対象を切り取りたけば『相手の全てを塗り替えられるだけの力』が必要になるのだ。

大雑把に表現するなら『対象を魔力で塗り潰す』のが空間魔法である。

これでは生物に対して空間魔法で攻撃する事は出来ないのと同意義だ。

というより、拳で殴った方がよっぽど効率が良い。

これが空間魔法は便利なだけ、と言われる所以である。


「んじゃぁ…とりあえず障壁は使えたから次は転移かな。

 何か使えるの3種類しかないのに転移だけ格段に難しそうなんだけど…」

「転移は空間魔法の極意だからな。

 簡単に使われても困るだろう。

 地道な練習しかないんじゃないか?」


それだけ言うとフィリカはすぐに工房に引っ込んでいった。

多分これ以上面白いことは無いと思ったのだろう。

というわけで、転移の練習を始める。


とはいえ。

そもそも魔法すらちゃんと使えたのは今日である。

転移を行うにしてもどうすれば良いのかがさっぱり分からない。

一応概要だけは知っている。


 空間と空間を繋ぐ為の道を魔法で作る。

 道が出来たら、それぞれの空間を開いて(・・・)道と繋げる。

 以上。

 って、分かるか!!


とまぁ、そんな感じでしか分からない。

きちんとした魔法書など詳しく書いてるようでただの概要なところが多いのだ。

イメージ力がそのまま魔法になるというのは分かるが、ここまで抽象的だと意味が広すぎて受け取りづらい。


 うーん…まぁ、『ど○でもドア』ってことだよね。

 座標の考え方がさっきの障壁で分かったから2つの場所をとりあえず設定しよう。


そうして身近な空間に狙いを定める。

自分を基点に1m先。

目線の高さが1つめ、胸の高さが2つめ。

目印になるように障壁と同じように鉄線(フレーム)のイメージでそれぞれの空間を囲う。


 さて…ここからだけども。

 どうするんだろ?

 魔力で、魔法で『道を作る』とか言われてもなぁ…。

 とりあえず設定した空間の間に魔力の糸でも繋ごうか。

 糸電話みたいに。

 声くらい届くかも?


次の基点はイメージした鉄線で囲った中央。

そのそれぞれの中央から魔力を発し、最短距離で繋がるようにする。

空中に魔力を流すのは物凄く疲れるからだ。


 多分空気自体が絶縁体みたいな感じなんだろうなぁ。

 というか、魔力を拡散する?

 あぁ…これが『世界の修正力』ってやつかなぁ。


そう思いながらジリジリと魔力の密度を上げる。

暑くもないのに汗が浮き、放出する魔力に比例して脱力感が襲う。

ようやく魔力の糸が絡み合い繋がる。

合っているかは分からないが、とりあえず進める。


 よし、繋がった。

 『道を作る』って言うぐらいだから、通れる(・・・)ようにしないといけないのかな?

 てことはせめて通れる程度の広さが必要…。

 魔力でそんな太さ作れないんだけど…。


そんな事を考えている間にも水に垂らしたインクのように、理熾の魔力は世界に溶け出て形を崩す。

現象化していない魔力はただの力として拡散していく。

それを魔力のまま無理に形を作るため、異常な集中力と膨大な魔力が必要になる。

維持するだけでも大変なのだ。

それを理熾は維持し続ける。


 道…道かぁ…?

 何か引っ掛かる…。

 徒歩なら山でも崖でも一応大丈夫。

 道がある必要は無いよね。

 自転車でもマウンテンバイクとかあるし、道なき道は一応走れる。

 けど車なら?

 電車なら…?

 専用道路(・・・・)が必要になるよね。

 同じ車でも高速道路もあるし、電車なら新幹線とか。

 わざわざ違う道を作る必要がある。

 だから魔力を使って通す道も『専用道路』として開通させなきゃいけないのかな?


そうしてバラバラだった思考が繋がる。

もっと単純に考えて良いのだ。

新幹線も高速道路も突き詰めれば普通の道路だし、線路だ。

単に『乗せている車体が違う』だけだ。

道さえ作ればとりあえず進める。

そして進めてから考えれば良い。


 何か、この魔力の糸の維持って海岸で穴を掘ってるみたいだ。

 波が来ると崩される。

 崩されたのを掘り返す…掘り返す?

 あぁ!


その閃きは確実に練習の時間を減らした。

魔力の糸を中空にする。

空気に接する面が増えて維持するのは大変だが、今は良い。

中空にしたストロー状の糸を思い切り広げる。

イメージ上の鉄線で囲った枠一杯にまで広げて、表面を固定化させる。

これでトンネルの完成だ。

糸で繋いで穴を開け、規模を広げて完成させる。

そうして空間が揺らぎ、擬似的な道が開通する。


「出来た!!」


と叫んだ瞬間、極度の集中力を要したトンネルは霧散した。

喜びと共に集中力が切れて制御が出来なくなったのだ。

暴走しなくて良かったと胸をなでおろしながら、膝を折って倒れこむ。


 あぁ…魔力ほとんど使い切っちゃったみたいだ。

 立ち上がるのもつらい…。


自分の生命力(HP)精神力(MP)を確認して思う。

というよりMPは空っぽ。

HPも半分くらいになっていた。

体術とかが足りない魔力分を生命力を燃やして補填したらしい。

そりゃ汗は出るし、虚脱感も感じる上に集中力をごっそり持っていかれるはずである。


 またこれか…あぁ、しんどい。

 とりあえず暫く寝よう。

 うん、寝よう。


出来たことによる安心感と、空っぽのMP、補填するために削られたHPの相乗効果ですぐさま眠りに落ちる。

気絶というかもしれない。

夕方、ノルンが様子を見に来るまで庭で(強制的な)昼寝を楽しんだのだった。

お読み下さりありがとうございます。

最近を思うとかなり短い話になってしまいました。

空間魔法の道はとても遠いようです。

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