楽しい装備の作り方
本日も装備の構想です。
楽しんで頂ければ幸いです。
何だか感慨にふけってしまったが、まだお願い事が残っている。
「あーフィリカさん。
他にもお願いがあるんだけど良いかな?」
「構わんぞ。
次は一体どんな面白いことを考えている?」
年甲斐も無く笑顔でワクワクしているフィリカはとても美人である。
美人の笑顔というだけで背景が明るく見えるのだから詐欺だ。
理熾はそんな事を思いながら話す。
「今回のことで思ったことがあります」
「何だろうか?」
「投剣の威力が高すぎます」
「う…うむ…。
確かにそういう風に使うようには作って無いからな…」
フィリカも思うところがあったのだろう。
あれでは威嚇など不可能だ。
『発射=死亡』が成り立つレベルの脅威なのだ。
しかも剣のように目に見えるような脅しが存在しない。
投剣の威力を見ないと脅威の発想が出来ず、脅威に思わないから交渉カードにならない。
何より使うと貫通力が高か過ぎて壁の向こうまで気にしなければならない。
威力が高すぎて使えないとは、何ともジレンマである。
「というわけで。
結界を仕込みましょう」
「結界?」
「うん、防御結界。
貫通するってことは、面積に対する威力が高すぎるってことですよね」
釘とハンマーを想像すると簡単だろう。
ハンマーの攻撃力を釘が受け取り、一点集中するために、板に突き刺さるのである。
逆に言えば一点集中さえしなければ突き刺さらないということだ。
ハンマーで板を殴っても凹むだけなのだから。
「だからその面積を一時的に広げることで、投剣の威力を範囲に伝える。
ハイオーク相手の斧の一撃は、実は壊滅狙いじゃなくて本命はこっちです。
貫通しちゃうと場所によって威力が変わるから、『なら全部殴っちゃえ』って思った結果があれです」
「腕に穴が開いてても殴られたしね」と理熾は言う。
フィリカとしても理論や理屈はとても分かる。
が、それをあの追い詰められた状況下で考え付くかは疑問だ。
というより失敗からの立ち直り速度が尋常じゃない。
戦いに関して素人かと思えば、思考の冴えが普通じゃない。
普段の発想からもそうだが、求められる状況下では更に冴え渡るというのは頼もしい限りだ。
「これが出来れば多分制圧力が尋常じゃなく上がると思うんですよ。
そもそも投剣の威力高すぎるから、凄い勢いで壁が飛んでくるようなものだし。
でも使える幅を減らすのは勿体無いので、魔力を通すと結界が発動するという形が望ましいって感じ」
「それに加速時に大きいと邪魔だしね」とも付け加える。
理熾の発射方式では『落下速度=発射速度』となる。
だから落下速度が上がれば上がるほど速度と威力が増す代わりに、逆もありえる。
展開型の結界じゃなくて、単純に大きさなどで対処しようとすると空気抵抗が跳ね上がる。
つまり速度が落ちるので意味が無い。
遅く威力が無くなるのならそのまま投剣の形の方が使いやすい。
「何というか…色々と考え付くものだな…。
そうなると結界の魔力は内蔵式にした方が良いのか」
作り手としての探究心をくすぐられているのだろうか。
こういう作成に対するヒントや発想を与えるとすぐに方法を考え始める。
ほとんどの人は常識を見直す時間が必要だったりするのだが、フィリカはそうではない。
この辺りが非常識を持つ理熾との相性に繋がる。
感嘆というべきか、フィリカの表情は驚きを表現しながらも随分楽しそうだ。
「いや、僕の魔力使って結界のオンオフできれば良いなぁとか思ってるんだけど」
内蔵式…理熾にちゃんとした意味は分からないが、恐らく電池みたいなものなのだろうと当りを付ける。
だが投剣に関しては、必ず理熾が使うし、理熾しか使えない。
だから理熾だけが制御権を持てばいいのだ。
出来るならそれが望ましいとフィリカに伝えるとすぐに答えが来る。
「ふむ…なら、魔石を用意するから、少し血を貰えるか?」
「血?」
「血魔石という血の提供者専用の魔石を作る。
親和性が上がるから、魔力を通せば刻んだ術式を簡単に起動できる」
「そんな便利な方法が!
ちなみにその術式ってどれくらい入れられるの?」
「数か?
それとも複雑さか?」
「…その辺いじれるの?
ということは装備みたいな特性と同じで、容量で変わるって事?」
「察しが良いな。
基本的に腕の良いヤツほど高度な術式を簡単に描く。
だから書き込める量が増えて強力にもなるが、下手なヤツがすると無駄な容量を使ってしょぼくなる」
「魔石の良し悪しだけじゃないんだね」
「そうなる。
というか魔石自体が結構高価なモノだからなぁ。
そうか、なら依頼されていた専用武器をこれにするか」
と、フィリカが手をポンと叩く。
逸品モノレベル。
しかも特殊加工物。
投剣仕様ということは複数作成。
せっかく新概念を入れるのだ。
これぞというほどの性能とギミックを費やしてはどうかとフィリカが提案する。
「ふふふ…それなら色々詰め込もう!
僕の空間魔法を基点になるようにも仕込んで欲しい。
空間転移を覚えた後なら手元に引き戻せるから、弾数が無限にッ!!」
「なるほど、それは良い考えだ!
血魔石にすれば術式自体は刻まなくて良いからな!
どうせ魔力を通すなら荷重硝も仕込むとかどうだ?」
「そうすると魔力を込めれば込めるほど威力が上がる!?
凄い、凄いよ!!
なら形状は丸い棒で先が尖ってる方が良いかな。
杭みたいな感じで。
結界張らなきゃ完全な貫通用、結界使えば空間鈍器とか!」
「くくく…了解だ。
任せておけ、必ず最適な形にしてやる」
フィリカが胸を張って答える。
どれだけのギミックが詰め込めるかはやってみないと分からないが、この僕の最強武器構想は楽しすぎる。
中二心をくすぐられすぎる。
しかもフィリカのお陰で実現しそうなのだからさらに拍車が掛かる。
だが忘れてはいけないのは実現できるかどうかでもある。
「って、そうだ。
ちなみに結界って範囲とか、形とかって変化させられるの?」
「程度はあるが出来る。
というか、サイズを調節出来なきゃ防御も難しいだろう?
それに形も基本形というものはあるが、固定されているものは無いな」
「なるほどね」
よくよく考えれば不定形の力場を作れるのだ。
そう思えば結界には無限の可能性が広がる。
何せ即席物でいいのなら、わざわざ物を作らなくて良いのだから。
例えば、掘っ立て小屋程度でいいなら広めに結界を張って、その上に土とか草とかを被せて視線を隠せば家の完成だ。
魔力を使うが、野宿するより余程快適に過ごせるだろう。
出来るかできないかはともかくとして、テントを持ち運ぶより余程楽だ。
理熾には亜空間があるからテントを持ち歩くほうが快適だが。
発明ってきっとこういうどうでも良いことから生まれるんだろうなぁ。
と理熾は思う。
楽しさの先だったり、不便の解決だったり。
色々な思惑はあるけれど、きっと出発は思いつきなんだろうなと。
「って、そうじゃない。
それだけじゃない。
フィリカさん、今回の報酬なんだけど何か取り置くものとかあるかな?」
「うん?
あぁ…これから解体するんだな。
そうだなぁ…。
あのハイオークならもしかすると魔核があるかもしれないから確認しておくといい。
というより、ハイオークは全部持って来てくれ。
どうせ投剣以外も考えているんだろうから、それで作ろう。
材料が無料だから、かなり無茶な使い方をしても良いだろう?」
にやりと悪代官風に笑ってみせる。
似合いすぎだから止めて欲しいと思う。
それに理熾としても、別に渋るつもりは無い。
今回の報酬は十二分に懐を潤したし、今後もオークレベルで言えば安泰だ。
1万カラドくらいなら1日で稼げる可能性すらある。
「良いですよ。
他のオークとかアーチャーとか、ウッドウルフとかは?」
「使い捨てなら欲しい、って位か。
ノルンの練習用に2体ずつくらい貰えれば嬉しいな。
弓を使えるんだったな…なら、アーチャーから弓とか作るか?」
「魔物から作れるんですか?」
「材料の一つというのが正しいか。
まぁ、全てをまかなっても良いんだけどな。
にしても支給品の弓で良く戦ったな。
それも全て超接近戦での使用という本来とは違う使い方をしたからだろうがな」
「うん?」
と理熾は疑問符を浮かべる。
フィリカは「分かってなかったのか」とぼやきながら説明を始める。
「弓というのは遠距離武器だろう?
だから着弾時に威力が無ければ意味が無い。
支給品の弓はランクで言えば最低だから、飛距離・射程は勿論、何より威力が低い。
だから本来の使い方なら、オーク等を殺すに至らないんだよ」
「当たり所が良ければ別だがな」とも付け加える。
理熾からすると初めて使った弓なので、比較が出来ない。
だから聞き耳を立てる。
「距離が伸びるほど攻撃力が落ちるのは分かるだろう?
初速が一番速いんだから当然だ。
リオ君は逆に接近戦使用したので、最大威力で敵に当る。
しかも距離が短い分、相手に避ける余裕は無くて狙ったところへの命中率が格段に上がる。
弱い弓なのにオークにダメージ…いや、ひいては討伐できていたのはその為だったが、気付いてなかったのか?」
「う…うん。
そこまで考えてなかったかなぁ」
「弓を使うの初めてだし」と付け加える。
フィリカにしてみれば『初めての癖に』という枕詞が付く。
何故そんな戦術を組んだのか、組めたのか甚だ疑問だ。
「じゃ、じゃぁ。
とりあえずハイオークとアーチャーは全部持って帰ってくるよ!」
と何となく分の悪くなった理熾が言ってこの話は終了する。
ちなみに持って帰ってくる材料は全てフィリカの店に寄付するつもりだ。
恩返しと、未来への投資と、自分用の装備の為に。
お読み下さりありがとうございます。
いかがでしょうか『ぼくのさいきょうそうび』の感想は。
こういう設定を考えるのは楽しいですよね!




