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神様のおねがい  作者: もやしいため
第三章:始まりの街
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気が付けば目的地

8/9訂正

光明は見えた…とはいえ、見えただけ。

この日の高さからして、約1時間以内に薬草を5つ手に入れねばならない。

最早野うさぎとかに構っている場合ではない。

狩猟能力よりも前に生存能力を試されているのだから。


 血眼ってこういうことを言うのかな?


と思い、探すもそこは流石の幸運値5。

全く見つからない。

というより素人が見つけられるモノではないのかもしれない。

『薬草』と呼ばれる草の絵と、見分ける特徴だけしか知らないのだ。

本当に欲しい情報である、群生地や生える場所の特徴などは一切存在しない。

この辺りにも神の悪辣さ加減が見える。

実は世界(スフィア)を救いに来たのではなく、単に神の暇潰し要員だったのではないかという疑問まで浮かんでくる。


夜が近付き、「くそう!」と理熾は思わず悪態を付く。

火を起こす道具も技術も無い理熾は、日の光がなくなってしまえばもう終わりだ。

暗闇を見通すだけの目も無いし、何より真っ暗闇の知らない場所を探索しながら行動する能力も度胸も無い。

何よりこのまま、薬草が見つからなければ朝には獣の餌になる可能性が高い。

頑張って話題を逸らしていたが、そもそも見つけたところで街に辿り着けるかが微妙だ。

絶望感が心を埋め始める。


 だって周りに建物とか何も見えない。

 あぁ…自分で考えてさらに凹んできた。

 取り合えず、決めた優先順位を解決していこう!

 早く薬草を!!!


程なくして薬草を発見出来たのはありがたかった。

運を使い切ったとさえ思ったくらいだ。

ピコンと音がして、報酬を受け取る。

目の前の空間に光が集まったかと思うと地図が現れた。

「これで取り合えずアルス(多分街)までいける!」とテンションが上がる。

すぐさま地図を開いて現在地を確認…。


「って、目印が全く無いじゃないか!!!」


思わず叫んで地図を叩き付ける。

地図には非は無いが、理熾の精神状況では仕方ない。

心を落ち着け、地図を拾って改めて必死に見直す。

描かれているのは『アルス』と書かれた街を中心とした周囲の地図だ。

目印や縮尺も無く、ただ方角のみが記されている。

何処かにヒントは無いのか…目と頭をフル稼働して価値の無い地図の使い道を模索する。


 目印は無い。

 縮尺も無い。

 当然周りを見回してみても全く分かんない!

 この平原、僕に対して鬼畜過ぎる!!


 これはヤバイ…まじヤバイ。

 そもそも迷ってるから地図が必要なのに、地図にすらちゃんとした目印ないとか!

 何かもう無茶苦茶だよ!?


日も翳って時間切れは刻々と迫って行く中、焦っても仕方ない。

心を落ち着かせて『使える部分』を必死に探す。

そこでハッと気付く…。


 そうか、手はまだある!!

 やれることをやりきるだけだ!


程なくしてピコンと軽い音がして、報酬が支払われる。


「なるほど…なら向きはこう…?

 なら多分あっちに行けば何とかなる…かな…?」


不安はある。

間違っていれば最悪正反対に向う可能性もあるのだから。

だが辺りは既に薄暗闇になってしまっている。

完全な夜に閉ざされるのは時間の問題だ。

しかし平原なのが今回は幸いした。

凹凸がほとんどなく、背の高い草も無いし、そもそも迂回するようなモノも無い。

ただ暗闇でもまっすぐ進むことは可能だった。

月明かりのお陰で完全に真っ暗では無かったのありがたい。


歩くのは時間が掛かりすぎ、走るのは体力を使いすぎる。

故に出来る限り音を殺して小走りで進むという結論になった。

距離の感覚は既に無く、呼吸も荒い。

移動し続けるというのは体力5にはつらいのかもしれない。

それに何より景色が一切変わらないので、どれくらい進んだのかも理熾には分からない。


それでなくても明かりの少ない夜の移動は精神をすり減らしてる。

意識も軽く朦朧としているため、正直に言えばふと隣に何か居ても気付かないだろう。

そんなところでも更に精神を削られていく。


荒い呼吸のまま、永遠とも思える時間を頑張って小走りで進む。

月明かりだけが頼りの中、ようやく『何か』が見えてくる。

凄く大きな黒い平面に見える。


 城壁…?

 なら、後もう少しでアルスに届く…ッ!!


そう思って自分の士気を上げる。

月明かりしかない中ようやく街の外壁だと思われるところに到着した。

倒れこむように黒い壁に触れ、安堵のためか膝から力が抜けて理熾は崩れ落ちてしまった。

まさに緊張の糸が切れた瞬間だった。


 あ…だめだ、もう動けない。


体力の限界を振り切って動き続けて現在に至る。

そもそもここまで到着すること自体が体力的に不可能なのだから当然といえば当然だ。

そうして理熾は意識を手放した。



ピコン!


 何の音…?


意識の底で疑問が浮かぶ。

まだ寝ていたい、と理熾は思う。

いや、起き上がるだけの体力がほとんどない。


 気にしない…。


がしかし、身体が揺さぶられる。

「何だよ一体…」と思ったのが運の尽きか。

意識は急速に覚醒へと向う。


「432q13]31e,:!?」

「…ぇ?」


「[@./]fdsa.@e[wa/fwafewa.vs?」

「ぁー…おはよう?」


寝惚けた頭で答える。

が、相手が何を言っているか分からない。

そもそも


 …相手?

 相手って何だ!?


一気に目が覚める。

身体を跳ね上げて目を開け状況を確認する。

光で視界を焼かれ、目を細める。


 明るいッ!?

 朝?!

 何かおじさんがこちらを気にしている?

 いや…あれは警戒してるのかな…?

 鎧とか槍とか装備してるっぽいけど…あれ、もしかして僕が不審者(・・・・・)


それも仕方の無いことだ。

見慣れない服…今更ながら、学生服だったことを思い出す。

『玄関扉を開けたら異世界でした☆』なのだから当然だ。

着替える時間も場所も着替えすらも無い。

そしてそのまま着の身着のまま軽いテンパり状態で野うさぎハンターに仕立てられ。

結果野うさぎどころか動物すら見つけられず、夜に追われて終わりの見えないマラソンをして今に至るわけだ。


 そっか、今思えば野うさぎハンターしていた時が一番余裕があったんだなぁ。

 それにしても…おじさんが何か言ってきてるけど全く理解できない。


異世界の住人なのだから外人以上に言葉が通じるはずが無いのは当たり前なのだが、全く釈然としない。

スフィア人というのを初めて発見した(というか理熾が発見された)のは良いのだが、意思疎通が出来ないのでは意味が無い。

言語というか発音すら違うから会話の糸口も見付けられない。

身振り手振り(ボディランゲージ)が通用するかも分からない。


 まさかあの馬鹿神、翻訳機能オフにしてるのか…?

 どんだけ難易度上げれば気が済むんだ…。

 話しも出来ずに何を為せって言うんだ!!


理熾はもう「あいつマジか…」と項垂れるしかない。

ぐるぐると頭が茹だっている中、相手(おじさん)もいい加減理熾が言葉が分からない事を理解したらしい。

わたわたするだけだったのが、少し冷静になってくる。


 そりゃ反応はするし、返事もするけどお互い分かり合えてないんだからね!

 言葉が通じないって気付くよね!


ふと視界の端に《!》が見える。

どうやら新たな【神託】が発生したらしい。

この苦境を何とか出来る方法があるかも知れないと思い、すぐさま開いて行く。


---+---+---+---+---+---

【神託】

第一村人発見!?

達成内容:街へ入れて貰う


守衛が君を見つけた

だが今の君は身分証を持たない不審者だ

何とか取り入って街の中へと入れてもらおう!


報酬:幸運1

---+---+---+---+---+---


 順番おっかしぃぃぃ!!!

 言葉も文字も分からないのに意思疎通して中に入れって!?

 無理に決まってんじゃん!

 一々腹立たしいッ!!


リアルタイムで心の一番デリケートな場所をクリティカルに抉ってくる神の手腕がキモチワルイ。

狙っているんじゃないのか、というくらいに理熾の精神を逆撫でしてくるのだ。

しかし今は構っている場合じゃないため、《Yes》で受諾して即座に次の【神託】を開封する。


---+---+---+---+---+---

【神託】

街の近くは安全?

達成内容:【ミニゴブリン】の討伐


街の中は安全だが、外は別

その証拠に街の近くでも魔物と呼ばれる敵対者が出没する

これを難なく倒せればまさしく君も冒険者だ!


報酬:駆け出し冒険者の粗悪な指輪

---+---+---+---+---+---


 今じゃない!!

 これは今じゃない!!

 今はそれどころじゃないよ!!

 空気読めよクソ【神託】ぅぅ!!

 今なら怒りだけであの馬鹿神焼き尽くせる!


などと心の中でだけ怒りを消化していく。

状況は待ってくれず、この場で何とかする者は理熾しかいない。

この場で頼れるものは自分だけなのだ。

こんな場違いな【神託】開いて時間を潰している場合じゃない。


 少なくとも敵対者で無い事だけ伝えないと…そうか!!


閃いた内容が正しいかどうかは分からない。

けれど行動に移す。


 何もしなければ悪化しかしなさそうだし!


すぐさま薬草を取り出して渡す。

相手は戸惑っているが、最早ジェスチャーだけで乗り切るしかない。

だって会話が通じないのだから仕方ない。

とにかく敵対の意思だけは無いことを示さないと最悪守衛に殺される。


 いつから僕はこんなに必死に生きるようになったのかッ!?


と自問自答しながら、何とか薬草を手渡して手を差し出して『あげる』という動作をする。

ついでにお腹を撫でて空腹アピールも忘れない。

何か食べさせてくれれば御の字だ。

とにかく相手は少し警戒心を解いたみたいで切り抜けられそうだ。


 ってか、まだ【神託】が残ってるのか。

 あぁ…あの神ホントなんなのさ…。


理熾は嘆きつつも次の【神託】を開くのだった。

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