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神様のおねがい  作者: もやしいため
第四章:【緊急依頼】魔物討伐
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【緊急依頼】魔物討伐8

今回はフィリカ視点でお送りいたします。

年齢と知りたがりのお陰でかなり博識なフィリカ。

そんな彼女が解説いたします。

「くははっはは!」


フィリカは楽しくて仕方なかった。

今回の緊急依頼にまつわる一連の騒動。

信じられない。

本当に信じられなかった。

この言葉で全てが表せる。


 ノルンが連れてきた子供が、これほどまでに面白いとは。

 まさか、まさかここまでとは!


最初に驚いたのは空間魔法の使い方だ。

確かに空間魔法は物理的な防御力が高い。

私が知る中でも一番の硬度を持つ優秀な魔法だ。

そして亜空間を開けるということで、大変便利でもある。

何せそれだけで在庫がもてるのだから、私達生産者や商人には垂涎の魔法である。


だが、空間魔法は便利なだけである。

いや…違う。

便利なだけだったというのが正しいだろう。

リオ君の発想…いや、使い方によって、空間魔法の価値が一変した。


まず店の庭で行った総紅蓮鉄鋼製の投剣を飛ばすという行為。

器用な者であればアレは必ず出来る。

『空間魔法を持つ者』という制限は付くが、タネが分かれば出来なくはない。

だが今まで存在しなかった。


何故か。

理由は簡単、魔法は魔法であるということだ。

故に魔法を物理的に利用することは無かったのだ。

だから誰も考えないし、使えなかった。

これはまさに世紀の大発見なのだ。

余りにも簡単なタネなのに誰にでも分かる威力。

発想というものでまさに世界を変えてしまった。


それだけではない。

リオ君が私に語った依頼内容と、そこから推測した内容。

そして今回の結果である。

まさに正解としか言いようが無い。

リオ君はまさに依頼主の視点でモノを考えて、参加していた。

これではあのジン如きでは太刀打ちできないのも無理は無い。


行軍の最中も同じくだ。

リオ君はしきりに周りを気にしていた。

おのぼりさんかとも思ったが、そうではない(少しはその気もあるが)。

単に気配を読んでいたのと、周囲…討伐者達の動向を見ていたのだ。

ジンを含め…いや、私ですらも見ていたに違いない。


リオ君はこういった依頼(集団戦闘)をしたことが無い。

つまり知らないということだ。

そしてリオ君は自分の知らないことは他人に教えてもらう。

リオ君では異変が分からないが、こういう緊急依頼や複数人での行動をしている者達を窺って知ることは出来る。

周りを観察することで、異変を察知するという方法を取ったのだ。

『自分が出来ないのなら、他人にさせれば良い』ということなのだろう。

何とも割り切りのいいことだ。


そして周りを見ていた結果が、ウッドウルフの早期発見だ。

ジンがやっていなかった斥候派遣を即座に行わせた手腕も買いたい。

当然の話だが、「オークなら森を移動するはず」だからな。


それにしても。

確かにジンは使える指揮官ではない。

それでも全くの無能というわけでもない。

今回の件も斥候と罠士の運営さえしっかりしていれば恐らく綺麗に終わっただろう。

多くの時間と、多少の犠牲と、大量の経験値、報酬と共に。

まぁ、その部分がとても問題で、今回の事態になってしまったのだが。

恐らくリオ君がいなければ撤退どころか完全に全滅だろう。


見学者である私は、本当にこの件に対して関わるつもりは無かった。

助言に関しても、行動に関しても。

だがジンのダメな部分を全て読みきり、私に質問してきたのだ。

私も感じていたことなので、思わず答えてしまった。

いや、『答えた』というのは正しい言葉ではないだろう。

正しくは『話し合った』だろうか。

私は私で今回の件に対して思うことはあったし、リオ君もそうだろう。

お互いの意見を言い合う事で引き出された結果とも言える。

打てば響くと言わんばかりにジンが気にすべき問題と、その対処法についての答えを、お互いに。


アレだけ色々と頭が回るくせに、まだ討伐者歴が1年未満どころか10日程度だという。

信じられるものではないが、何より凄いと感心したのは年齢だ。

たった13年の生でアレだけ頭が回るとは、私が知らない間に世の中が進みすぎではないのか?

いや、これはリオ君だけが進んでいると考えるべきか。


そしてそこからウッドウルフ達との戦闘だ。

森へ向かうまで共に走ったが、リオ君は全く疲れる素振りが無い。

本気で走っている風だったことを思えば、常軌を逸している。

私の方が足は早いのだが、あの速度でずっと移動することはなかなかに難しい。

というよりは彼はそれに加えて戦闘まで行っているのだから、本当におかしい。

無尽蔵の体力などありえないはずなのだが、それを実現する。

魔法などの補助を受けてる感じも無かったので本当に謎だ。


戦闘が始まるとさらに混乱させられる(面白い)光景を見せられる。

攻撃は馬鹿みたいな大振りで一撃必殺狙い。

アレではちょっと腕の立つ討伐者なら確実に避けられる。

ついでにタイミングの取り方も変で、さらに独特で素人臭い。

なのに攻撃の繋ぎが異常に上手い。

というより、空間魔法の亜空間をあんな風に使う者など初めて見た。


確かに空間魔法は多くの物を持ち運べるし、出し入れも自由だ。

【繋ぎの指輪】という空間使い(ディメンショナー)御用達ともいえる装備を持っているのも強みではある。

というかあの装備も手甲と同じく恐らく製作者不明なので謎が深まる。

そもそもコストがゼロという特性は存在しないはずだから、装備としては一級を飛び越えている感がある。

例えば壊滅(デストロイ)にしても、『効率の良い破壊力増幅効果』であるだけ。

元手(攻撃力)が無ければ、ただの置物なのだ。

だからあの指輪は規格外と言って良い。

まぁ、持ち主にその自覚は無いのだが。

それでもあんなことはやらないし、出来ない。

何より戦闘中にあれほど多彩に武器を持ち替えるなんてありえないのだ。


あの戦闘を見て改めて面白いと思う。

そしてだからノルンなのかとも。

あんな使い方をするなら、武器はどれだけあっても良い。

むしろ持てるだけあった方が気にせず使い捨てられる。


だが疑問にも思った。

殲滅するだけなら紅蓮鉄鋼の投剣をタイミングよく放てば良いのだ。

奇襲とは言え、1撃で10体を行動不能に出来るほどの威力である。

撃ち尽くせば残り50体など紙より脆いはずである。

けれどそんなこともせずに対処していた。

手持ちの武器を使うことは当たり前なのに、疑問は尽きない。


それにしても奇襲後の乱戦で20体近くを黙らせたのには驚かされた。

あの戦力でFランクとは詐欺も良いところである。

他にもいつの間に矢を放てるようになったのか。

時間などほとんど無かったのに…。

いや、店で初めて練習していた時を思えば、何故あれほど高精度で命中させられるのか。

あぁ…なるほど、着弾までの飛距離が他の弓兵に比べて異常に短いのだ。

何せリオ君は接近戦をしているのだから。


それにしても亜空間に仕舞うというのは投剣と同じ方法を取ったのだろうか?

だがそれだと勢いが絶対的に足りない。

投剣と矢とでは重量が違いすぎるからだ。

それに距離を要する(亜空間の開閉回数が多い)分、時間が掛かり数もそれほど仕込めないはず…。

とすると勢いごと亜空間に入れたと考えるべきか。

なるほど、弓で放った矢を即座に保管した訳だ。

これも空間使いなら誰でも出来るが、誰もやらない手法といえる。

別れてからたったあれだけの時間で、考案するとは末恐ろしい。

ほとんどタイムラグ無しの発案後に実践し、採用した結果だろう。

一体どれほど在庫を持っているのだろうか。

考えるだけで面白い。


その後の判断も素晴らしかった。

動きを止められてしまうと、すぐに不利と判断したのだろう。

包囲網が完成する前に森を突破。

その際の威嚇の斧も計算だとすれば、余りに計算高くて最早笑えない。

そして思わず言葉がこぼれた。


「リオ君、そっちはダメだ。

 連れて行くと向こうが決壊する」と。


これこそ本当に言うつもりは無かったのだが仕方ない。

本隊がオークに襲われると聞いてからの頭の冴えはさらに凄まじいものがあった。


いや、凄まじいという言葉では足りないだろう。

私達の効果的な安全と、遠く離れた本隊の補強を同時に行うという離れ業をしてしまった。

確かにその際に私の助言やスキルを使いはしたが、本当に助力と呼べるほどのことはしてないと思っている。

何せ指示は全てリオ君が行ったのだ。

無謀にも感じるオークへの前進と、斥候と罠士の新たな使い方には目を剥くしかない。


特に斥候の運用には目を見張る。

今後、斥候職が不遇を感じることは無いくらいの新境地だ。

高い戦況把握能力の利用で、

1:回復薬の使用(回復職の代わり)

2:ピンポイント防御(盾職の代わり)

3:敵の配置換えによるリスク回避(指揮官の代役)

4:一撃離脱の戦闘法確立による攻撃力極大化(常時【一撃の重み(ワンチャンス)】発動)


つまり瞬間的に足りない部分を支援する職として生まれ変わったのだ。

しかも最後の【一撃の重み】はさらに新しいと言わざるを得ない。

これは奇襲用の技で、不意打ち成功時にボーナスが付くというスキルだ。

だから初撃にだけスキルの恩恵があったし、リオ君にもそう説明した。

が、リオ君は暗に伝えた『不意打ち成功時』に主眼を置いたらしい。

隠密のオンオフで敵の意識から外れ、常時不意打ちを実現させた。

「斥候職は非力(攻撃力が無い)」という常識を覆した瞬間だ。

だからこそ一撃目に限り、盾職の代わりとしても機能するのだ。

しかもそれを本職ではなく、聞きかじりレベルでしかないリオ君が発案したのだ。

それを走りながら、私達の行動を考えつつの発案だったのだ。

これでは軍師と言っても差し支えないレベル…いや、新しい使い方を考えるとそれすらも超えるだろう。

何と言うか「無茶苦茶だ」としか言いようが無い。


粗方の指示が終わったかと思えば、いきなり罠に突っ込むなどと言い出す。

私にも罠の位置は分からない。

つまり私をあてにされても困るのだ。

まぁ、私だけなら発動した罠を無効化するだけの能力はあるが、リオ君にそれができるとも思えない。

何せついさっき罠について教えたばかりなのだから。

それなのに罠地帯を進むという。

思わず背後の盾にされたのだと早合点してしまうほどだった。

まぁ、何にせよ見学すると決めていたのだ。

リオ君の後ろを付いていくしかないと心を決めた。


するとどうだろうか。

いきなり罠の位置を指摘しだす。

とにかく指摘された場所を踏み抜く事無く駆けると、後ろで罠が起動している。

ちゃんと罠があったのだ。

きちんと見極めて、しっかり避けて、罠地帯を突っ切るのだとこの時初めて理解した。

やぶれかぶれで罠を突っ切ると思っていたので驚く以外の感情が出来なかった。

しかも敵が罠に掛からないように牽制っぽく矢を放っていたのも計算だったようで末恐ろしい。

罠が発見されれば群が立ち止まるかもしれないという可能性を直前に話していたから間違いない。

しかも罠に掛かって動けなくなった敵は瞬時に矢を射って沈黙させることも忘れていない。

これではまともに【連携】を使うことも出来ない。

何処まで有能な子供なのだと感心する。


そうして罠地帯を突っ切ったと思ったら、オークの後衛へ一直線だ。

倒せるところから倒すのは戦場の常識だが、倒せると判断したのが平原を挟んだ後衛というのがリオ君らしい。

遮蔽物が無いのだから、本来ならすぐに見付かってただの的のはずだ。

それを隠密でぎりぎりまで近接した後、今度は逆に姿を現せて混乱させるなど芸が細かい。

端の弓兵を矢で、その次は紅蓮鉄鋼の投剣で、最後に大量の矢で瞬時に押し切る手腕に脱帽である。

行っている攻撃や方法は全て単純な上に、誰にでも出来る。

しかも全て物理攻撃なくせに、現象や結果が高威力の範囲魔法と大差ない。

近接してから数分でものの見事に後衛が壊滅だ。

使い方だけでこれほど結果が残せるという実例だ。


それで終わり(休憩)かと思えばすぐに反転。

前線のオークに突っ込み奇襲を行った。

何とも奇襲好きである。

基本的に背後から、もしくは横合いからの一撃離脱で、攻撃が失敗しても拘らない徹底振りだ。

しかも攻撃時に回復薬を味方上空に亜空間から出し、さらに別の亜空間を薬の至近距離に開き、矢で器を割って浴びせて回復させる。

あんな手法で回復させるなど見たことも聞いたことも無い。

そもそも前衛の頭上にある(回復薬)を射るというのがリオ君以外には高難易度過ぎて出来ないのだろうが。

リオ君の発想力には投剣の件から行動を起こす度に脱帽しっ放しである。


これで今度こそ終わりだと思い、リオ君に「お疲れ様」を言おうとした瞬間に違和感を感じた。

最後の最後にハイオークが現れたのだ。

今度こそ私の出番だと確信した。

私は診断を持っていないが、研ぎ澄まされた鑑定があるし、奥の手も。

それで覗いた結果が先程の確信だ。

見学者ではあるものの、それを理由に絶対に勝てない相手を押し付けるほど私は子供ではないつもりだ。

ただ、私の騎士様(ナイト)に断りを入れてからでなければ示しが付かない。

何せ「守ってくれ」と言ったのは私なのだから。


そのつもりでリオ君に一言入れるとすげなく断られた。

ありえるだろうか?

確かな情報を持ち(スキル構成聞いたから確実)、低くない負けの可能性を知って、断る事など。

少なくとも私には出来ないし、出来る者もそれほど知らない。

それほどというのも、言い出す者は大概馬鹿の死にたがりなのだ。

まさかリオ君もその類かと思ったが、そうではなかったらしく一安心した。


しっかりと私から情報を引き出して、ハイオークに挑んだ。

私はその光景に見惚れてしまった。

格の違いを見せ付けられて防戦一方だったのを、たった1度の奇策(防御)で、ハイオークから主導権を取ったかと思うと怒涛の攻撃だ。

連続攻撃とはこういうことを言うのだろう。


防御を考えず攻撃で押し切る胆力と、防御を廃した思考による超速の攻撃。

様々な角度からノータイムでいきなり飛来する矢。

武器を瞬時に換装する能力。

弱いとされる無手での攻撃性能。

そして全ての武器をキチンと扱う手腕。

それぞれの攻撃を単体で見るなら『攻撃速度は速いが拙い素人』。

それらの一撃が間断なく飛来することで、一転して必殺を秘めた読めない攻撃群に進化する。


相手に防御の一択を強いる攻撃網。

ウッドウルフの時に感じた、繋ぎの時間が異様に短いからこそ出来る戦闘術だ。

一人だけで数人分の攻撃をしているようなものだ。

しかもその全力行動を15分もの時間を続けていた。

リオ君の集中力や体力は底なしだろうかと疑問に思う。


ハイオークも堪え切れずに体勢を崩した瞬間。

止めとばかりに攻撃が殺到した。

『私でも生き残れた』とは思わない。

紅蓮鉄鋼の投剣の威力はそれだけ致死に相当する。

アレを初見で、しかも4本。

他にも5つの攻撃・妨害をほぼ同時に行われては死んでいる方が自然だと思わされる。

それにしたってリオ君の攻撃性能の高さが異常すぎる。

あんな攻撃避けようが無い。

だからハイオークは運が良かったのだろう。


全力を尽くしたリオ君は宙に浮いたままハイオークに殴られた。

ハイオークの重い拳が、体重の軽いリオ君を吹き飛ばした辺りで私の思考が再開される。

私ですらも、ハイオークが生き残っていたことに思考停止してしまっていた。

穴が開いた左腕だったから良かったものの、斬馬刀なら真っ二つだ。

今度こそ、リオ君に代わりハイオークを倒そう。

良いとこ取りするようで申し訳ないが、あの状態では起き上がることも…と思ったがすぐに立ち上がろうとしていた。

あの子は最後まで戦うらしい。


足元もおぼつかないくせにしっかりと立っている。

しかも、まだ倒す気でいる。

信じられなかった。

ハイオークが最後の攻撃を仕掛けた時、思わず助けるべきだったと思った。

私は、リオ君が死んだと思っただのだ。

それくらいリオ君の状態は悪かったはずだ。


しかし結果は違う。

振れるはずも無いのに亜空間から斧を取り出し、高速で振り回した。

信じられない光景にまたも度肝を抜かれるが、それだけではなかった。

ハイオークが瞬時に察して辛うじて斬馬刀で受けた瞬間に投剣を斧に放ったのだ。

総紅蓮鉄鋼製の投剣の壮絶な破壊力は、斧の特性の壊滅(デストロイ)によって余す事無くハイオークに届けられた。


結果はリオ君の勝ち。

ハイオークは胴が無くなり、原型すら留めていない。

これらの衝撃映像を、たったの数時間で見せ付けられたのだ。

面白くないはずが無い。

だから私は、本当に機嫌が良い。


見学者?

そんなことは忘れた。

私の騎士(ナイト)を早く治療せねばならない。

そこら辺にいるゴミ共(オーク)など瞬殺して、一刻も早く帰途に着かねばならない。


「くははは!!

 ジン、気が変わった。

 私が全て(なら)してやる。

 これが終わったら、私とリオ君は先に帰らせてもらうからな!」


そう言い放って動き出す。

手を貸せとも言ったのだ。

ジンの返答など、聞く気も無い。


オークの魔法防御力はそれほど高くは無い。

魔法に熟練してなくとも手傷を負わせられるし、程度が酷ければ殺せる。

そして私は熟練しているのだから、オーク如きはものの数ではない。


「精霊よ我が(わたしの)声を聞け」


私は精霊に声を掛ける。

呼びかけに応じた精霊は私の願いを聞き届けてくれる。


「彼の者を穿て。

 数は14…火で、水で、風で、土で。

 (わたし)が拒絶する彼の者を、金色(こんじき)の矢にて穿て」


そうして発現する精霊魔法。

私の少し上空に現れた矢は金色で、矢の数はオークと同数の14本。

音も無く発射され、金色の軌跡を残して飛来する実体無き魔法の矢にオークは迎撃行動すら取れずに直撃を受ける。

オークはそれぞれの急所にコルク栓程度の穴を開け、崩れ落ちる。

全ての討伐者が余りの呆気なさに呆然として私を見る。

気にするでも無く、


「これで緊急依頼は終了だ」


区切りを入れた。

誰にも有無を言わせない。

これからあの馬鹿(ジン)にはやってもらわねばならないことが山ほどある。

全ての要求を呑ませた後、速やかにアルスに引き返そう。

すぐさまジンに近付き話を始める。


「ジン、少し話をしよう」

「…心変わりとはどうしたんだ?」


疲れきったジンが呻くように聞いてきた。

恨み節でも言うのかと思ったがそうでもないらしい。

少しは成長したのだろうか。


「あぁ、私の護衛(ナイト)が倒れてしまってね。

 すぐに帰りたいんだが、構わないよな? な?」


「な?」の辺りに力を込めてみたのが功を奏したらしい。

ジンは少し後ずさりながら答える。


「構わん。

 後のことは任せておけ」

「そうか、ありがとう」


なるほど、頼もしい言葉ではないか。

ならば後のことを全て要求してやろう。


「ではまず…」


散々要求し倒した上に早々に退散してやった。

あいつが無能指揮官のレッテルを貼られないことを心から祈ろう。

恐らく無理だが。


そういえば余りの面白さに時間を忘れていたが、この戦闘を数時間も続けている。

その間リオ君は走りっぱなしである。

いや、正確には戦いっぱなしか。

いくら異常な体力、異常な精神力を持っていても耐えられるものではない。

せっかく得た休憩の時間だ。

心も身体も疲弊しきっているだろうから、暫くは起きないだろう。

下手すると数日くらいは後を引くかもしれない。


「あけみやだったか…リオ君の宿は。

 もう暗くなってきているから早く帰ろうか」


リオ君を抱きかかえて呟く。

何とも軽い。

これであのハイオークと切り結んだというのだから凄い子だ。

それにしてもこみ上げる笑顔を抑えることが出来ず、とても恥ずかしい気分だ。

こんなに心躍る時間をすごしたのはいつ以来だろうか。

そんなことを思ってアルスに戻る。

あぁ、私も今夜はあけみやに泊まらせてもらうとしよう。

お読み下さりありがとうございます。

理熾視点、ハイオーク視点、フィリカ視点と緊急討伐依頼を書いてきました。

同じような内容を3回も書いてしまったのですが、立場の違いはやはり見方の違いといえるかと思います。

事実は同じでも、受け取り方が違って面白くはあるのですが、何回も読むのは微妙かもしれないな、と反省気味です。

たまーにこういうのをはさむかと思いますが、今後もよろしくお願いします。

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