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神様のおねがい  作者: もやしいため
第四章:【緊急依頼】魔物討伐
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【緊急依頼】魔物討伐5

ウッドウルフ戦は終了しました。

次はオーク戦です。

ようやく、ここまで来ました…長かったです。

罠地域を駆け抜け、戦場へと向かう。

ここ2時間ほどはずっと走りっぱなしだ。

しかも割りと全力疾走で。

そのせいかジリジリと上下していたHPは今や半分以下。

MPはスキルのLvが高いからか、8割ほどで推移していた。

体術とか武神が上手く作用しているらしく、それほど疲れは感じないがこのままでは危険だ。

疲れがなくてもHPがゼロになれば死ぬのだから。


「フィリカさん、回復薬要りますか?」

「私は無傷だから不要だな。

 魔法薬なら欲しいが、支給されていないだろう?」


そう言って首を竦める。

群を抜いた鍛冶師の癖に生粋の魔法職という無茶なチート振りを発揮するフィリカだが無尽蔵ではない。

見物だけとはいえ、理熾に付いて戦場を駆けずり回っているのだから疲れないはずが無いのだ。

戦闘しつつ延々と走り回る理熾の体力にはフィリカも驚きなのだが。


「一応ありますよ。

 来る時に露店でたまたま見つけたやつが。

 1000カラドってぼったくりだと思いませんか?」

「…程度によるが良心的だぞ?」


「え!?」


どうやら理熾が思っていたよりも魔法薬というのは高額らしい。

日常的には必要の無いもの。

必要になる者が少なく、製法は秘匿管理されているので希少性が高い。

しかし魔力という万能の燃料を補給出来ることから、非日常には欠かせない。

これでは値段が下がるはずも無い。


「そ、そうなのか…あ、フィリカさんいる?」

「そんな高額なものをポンと人に渡すなよ。

 私は戦う予定も無いのだから、リオ君が持っておくといい」


そういってフィリカは併走する。

理熾は「装備の値引きしといてそんなこと言う?」とか思ったが口に出さない。

これは厚意としてありがたくいただいたのだから。

そんな話をしながらも走る。

理熾は亜空間から回復薬を2本取り出して1本を飲む。


「まっずぅぅぅ!?」

「アハハハ!」


理熾の反応にフィリカは物凄く楽しそうだ。

使い方は間違っていない。

何せ買った時に聞いたのだから。

「飲むか、患部に掛けるかだ」と。

だがこれほど不味い飲み物だとは思わなかった。

良薬口に苦しという感じなのだろうか。

やはり「使い方だけ聞くべきではない」と理熾はスフィアの常識が改めて必要だと感じる。


「リオ君は面白いなぁ。

 回復薬を素直に飲む者など久しぶりに見たぞ」

「うぅ…水が欲しい」


泣き言を言いながらも回復薬のお陰でHPが回復していく。

むしろ体力だろうか。

取り出した1本と半分(飲み残し)を適当に身体に掛ける。

この防具が汚れない事に感謝しながら。


「思い切りがいいな。

 いくら製作者が大丈夫だと言っても、新品だから大切にしそうなものだが」


製作者(フィリカ)が楽しそうに伝える。

恐らく、正しく使われているのが嬉しいのだろう。


「フィリカさん信じてますしね。

 何よりこれ、飲めたもんじゃない…ニオイとかは大丈夫だよね?」

「あぁ、最適化は『最初の状態』を維持するからな」


何ともありがたい話である。

理熾が死ぬまではお世話になりそうなレベルだ。

そうしている間にも戦場が見えてくる。

参戦まで残り300m程だろうか。


 …あれ?

 何かおかしい。

 今更300m先が見えてきた?

 この平原で、遮る物が無い場所で、何で300mくらい先が見えなかったんだ?


急に疑問に思う。

そういえば一番初めにここに来た時。

直径20kmの平原のほぼ中心に放り出された。

つまり10km先にはアルスがあるはずなのだ。

けれど、見えないから苦労した。

色んなものがあっての10kmでは無く、遮る物がない10kmである。

見えないはずが無い。


「フィリカさん、この平原って見通しが悪いの?」

「ん?

 あぁ、そういえば対策が無いと遠近が狂う。

 そもそも見晴らしが良いくせに遠くを見通せない。

 この平原って、最初からあったらしいから、特殊な場所なんじゃないか?」


思った通りらしい。

ついでに「平原で比較対象が無いから、拍車が掛かってるらしいぞ」とまで言う。

この平原が平和なんて嘘だった。

なんというか神様の悪辣さにクラクラする。


 なんという異世界人殺しッ!!

 無能力、無技能、無知識で放り出されて生き残れるかバカ!!


だがそれでも生き残ってる辺り理熾のしぶとさが窺える。

といった感じで神様の無茶振りを改めて感じ入っている内に300mを駆け抜ける。

戦場は本当にギリギリだった。


背後が罠地域の為、退けない。

けれど退かねばオークの進撃に押し込まれて呑まれる。

出来る限り前に出て迎え撃って、出来る限りゆっくり後退する事で下がれる距離を稼いでいたのだ。

だが戦線が下がれば下がるほどに手詰まりに近付いていく。

罠地域(デッドライン)が近付くほど、焦りと緊張感は増していく。

しかも戦い続けるということで疲労や負傷までも負って。


多くの負傷者と、何人かの死者を出しつつも何とか戦線を維持している。

3倍以上のオークと対峙してこの被害は奇跡的だった。

だが善戦はしていたが、やはり危うい天秤の上でふらふらしているのだった。

そんな戦況を把握しながら、理熾はオークとの戦闘に参加する。


 僕の回復手段は回復薬のみ。

 心情的には回復優先したいけど、単機とはいえせっかくの奇襲の機会を潰すべきじゃない。

 前衛には悪いけども…助けるためにも敵後衛を潰すッ!


戦況を把握するなり、敵の後衛に突っ込む。

平原なので隠密の効きは悪いが、無いよりマシだ。

気付かれるよりも早く後衛の一人に取り付ければ、オーク全体の動きは鈍る。

いや、逆だ。

人側の前衛がオークの後衛を気にする必要が無くなる分、目の前の敵に集中できる。

どちらの陣営にせよ後衛の補助火力が鍵になっているのだから。


そう思って敵後衛へ一直線に走りこむ。

追加で解析して情報を盗む。


---+---+---+---+---+---+---+---+---

種族:オークアーチャー

Lv :18


スキル

パッシブ

弓術Lv3

短剣術

命中補正


アクティブ

弓技Lv2

遠視


---+---+---+---+---+---+---+---+---


ステータスを頭に叩き込みながら駆ける。

スキルからすると近接すれば勝てる。

一番手前のオークアーチャーまで50m程の距離でオークアーチャー達に気付かれた。

後数秒で届くというのに運が無い。

見付かってしまえば隠密の意味は無い。

いや、注目を集めるために隠密効果を切る。


 まさか横合いから前衛を抜けてくるとは思わないだろう。

 これで後衛は僕に釘付けだ。

 それだけで前衛がかなり楽になるッ!


前衛が楽になる分、理熾のリスクが一気に跳ね上がる。

急に現れたように見える理熾にオークアーチャー達は驚きを隠せないが、すぐに向きを変えて理熾に狙いを定める。

が、一手遅い。

理熾が行うのは狙いを定めて亜空間を開くだけ。

弓を引き絞る動作は既に終えているのだ。

達人レベルならともかく、オーク程度の練度では絶対に追いつけない。


一番手前に居たオークアーチャーは予備動作無しで急に出現した矢に射抜かれて沈黙する。

その光景を見て、他のオークアーチャー達に動揺が走る。

手ぶらで走りこんでくる敵が何も無いところから矢を撃ったと。

まだ魔法なら分かる。

「だが、何故、どこから、矢が出てきた?」そういう疑問が後衛全体に走る。


その動揺は理熾にとってありがたい一瞬である。

近接戦闘が出来ない後衛に近接してしまえば後は楽なのだから。

身内を撃ちかねない状況下では矢も放てない。

後衛が陣取る場所での乱戦は壊滅を意味する。


そうしている間にも距離が近付く。

既に弓の距離では無くなった。

オークアーチャー達は心を決めたのか、護身用と思われる短剣に手を伸ばす。

近付かれれば負けとはいえ、黙って殺される訳にはいかないから当然だ。


 オークアーチャーは残り11。

 近接すれば多分物の数じゃないッ!


ようやくここまで到達した。

一直線に配置された後衛の一番端。

オークアーチャー達が射線上になるように位置を調節して放つ。

狙いは胴。

放つものは決まっている。

紅蓮鉄鋼製の投剣だ。


「ヒュッ!」と小さく風を切る音と共に発射された投剣は射線上のオーク達を巻き込むように突き進む。

目の前の6体を「バツン!」という連続する音と共に貫通して、遠くの地面に「ドサリ」と落ちる。

命中した箇所は違うが、オーク達は皆こぶし大の穴を身体に穿たれて崩れ落ちる。

最早生きていても身動きが出来るような怪我ではない。

発射後も理熾は立ち止まらずに突き進む。

通りすがりに倒れた敵からしっかり弓と矢を奪って亜空間に放り込む。

これで動けても武器が無い。


 残り5!


心の中で叫ぶ。

次は待機中の矢を亜空間を展開して放っていく。

5体のオークアーチャーに対して惜しげもなく50本の矢を費やして沈黙させる。

50本で倒しきれなかった生き残り1体は魔力を込めた本気の蹴りで吹き飛ばす。

背後を見やり、オークアーチャー達に動きが無いのを確認して前線に戻る。


 後衛は潰した。

 後は残り50体のオークを落とせば僕達の勝ちだ!


そう思って走りながら念のため亜空間から回復薬を1本取り出し頭から被る。

HPと体力が回復する。

近付く前線を眺めながら、危険度の高そうな討伐者に手を貸す。

オーク達は誰もが背後からの攻撃を予期していなかったようで無防備だ。

理熾が掛けなおした隠密スキルの影響もあるだろうが。


討伐者に最後の一撃を放とうとしていたオークを背後から剣の一閃。

振りかぶった状態のまま、後ろに傾ぎ倒れる。

倒れてくるオークからこっそり剣を奪って、回復薬を味方前衛の頭上に吐き出す。

吐き出された回復薬を即座に矢で射抜いて中身をぶちまけ、味方が回復薬と入れ物を頭から被ったのを確認して次へと向かう。

これであの討伐者はあと少しは生き延びられる。


理熾は走り込む直前に隠密を切り、走っている最中は隠密を起動する。

オークに近接して攻撃するときには隠密が解けてしまう。

周りから見ると急に現れたり消えたりして場所の判別が付かない。

だが、それで良い。

理熾は常に奇襲の一撃を入れ、全ての場面で横殴りして戦況を変えているのだから。

理熾が勝手に盾役扱いしている前衛の者達は何が何だか分からない内にオークの数が減っているという寸法だ。


 やっぱり、オークアーチャーと違って矢じゃ厳しい。

 結局全部切り伏せるつもりで行かないとダメだ、なッ!


そんな事を考えながらも亜空間を経由させて剣、槍を繰り出す。

奇襲に成功すれば一撃必殺。

失敗しても要所に矢を突き立てて、通り過ぎる。

必ず一撃離脱を守る。

オークにしてみれば理熾はさながら通り魔のようだっただろう。

そうして戦場を駆けずり回ってオークの数を減らして行き、ギリギリの戦況がようやく優勢へと傾く。


この一連の戦闘に置ける理熾の立ち位置は最初から最後まで攻撃(オフェンス)で、その他の面子は盾役(ディフェンス)だ。

ウッドウルフを迎撃、殲滅したし、特攻・奇襲でオークの陣営を引っ掻き回している。

後もう少しで勝てる…。

そう思った矢先にフィリカの声が聞きたくない言葉を告げる。


「リオ君、まだ、来るぞ」


残念ながら理熾の休憩はまだ先らしい。

お読み下さりありがとうございます。

オーク戦に理熾が参戦するだけで状況が変わりました。

これは単純に今は拮抗しているのだから、応援が現れれば傾く、というわけではありません。

的確に潰せる場所から順番に潰し、キッチリと戦力を削いだ結果、理熾のお陰で戦況が変わったと見えているだけです。

というか、基本的に横殴りなので、実は理熾の強さは微妙なのです(。。

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