表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様のおねがい  作者: もやしいため
第四章:【緊急依頼】魔物討伐
52/537

討伐者理熾

今回もまた準備の回です。

準備ばかりしてますが、しっかり戦いますよ?

まだ先の話ですが。

投剣の件で色々あったが、指輪を返して貰った上に投剣を追加で10本貰った。

理熾としては何というか、申し訳なさ過ぎる。

色々と図ってもらった便宜に対して手持ちの資金が足りるとはとても思えないので、ありがたいのだが。


ちなみにあの後、弓の練習をしてみるとあっさり使えた。

今度は的目掛けて放っていたが、それなりの命中率だった。

ついでにフィリカ製の剣、槍、斧を振り回して体感しておくことも忘れない。

使うことに対する抵抗や違和感は無いが、攻撃範囲などの得物によって違う差は体感しておかないといけない。

それにしても、武神使え過ぎである。


「あ、フィリカさん。

 僕宿に一度寄ってくるよ。

 色々荷物置いていきたいし」

「そうか、なら出発まで自由行動でいこうか」


「うん、それじゃまた後で」


そうして別れ、あけみやへと急ぐ。

残り時間はそれ程ない。

行うことは二つ。


1:亜空間に入ってる紙束など、不要なものを置いていくこと。

2:セリナに【オークの肉(50kg)】を進呈すること。


オークの肉を売る際に少し取っておいた分だ。

オークの解体からバタバタしていて渡しそびれていたが、最悪死んでしまえば渡すことも出来ない。

時間は無いが、荷物にもなるしということで急ではあるものの、今渡すことにしたのだ。

当然だが死ぬつもりは無い。


「セリナさん、これ使って下さい!」


あけみやの受付をしているセリナに挨拶もそこそこにそう言って肉の塊を「ごとり」と取り出す。

あっけに取られるセリナを背に、理熾はすぐに部屋に移動する。

そうして荷物を吐き出していく。

といっても出すものは多くない。

ゴブリンが持ってた棍棒とか短剣は既に捨ててあるし、オークは解体した。

ゴブリンの死体に関しては行き道でちょろっと捨てるつもりだ。

最後にまだ持っていた紙束を吐き出せばこれで完了だ。


これで亜空間の中身は支給品の弓、フィリカ製の剣、槍、斧。

投剣は10本が発射準備完了で残り5本(突き刺さった投剣はノルンが土手の反対側から掘り返した)は待機中。

さらに矢を3000本(矢筒に50本刻みで入っている)と、個人の所持量を大幅に超える。

これで足りなくなったら、他の弓兵などすぐに撃ち尽くしてしまう。

と亜空間の中身…引いては矢の残弾を数えていく。


 ん…?

 投剣は発射状態を保管できる。

 ということは、矢も出来るのでは…?


閃きとはこういうことだろうか。

よく考えてみれば、投射系の武器というのは理熾の亜空間と相性が良すぎる。

残弾にさえ気をつければ、本当に戦争すら起こせそうな気がしてくる。

すぐにでも実験と共に発射状態の保管を始めるべく、部屋を飛び出す。


下へ降りると受付に棒立ち状態のセリナが目に入る。

セリナは肉の塊を眺めながら、「これどうしたの?」と聞いてくる。


「オークの肉ですよ。

 美味しいらしいので、宿の夕飯にでも使って下さい。

 いつもお世話になってるんで、おすそ分けってやつです」

「いや…どうやって手に入れたの?」


「え? 倒したんですが」


当然だろ、と言う風に理熾は答える。

それにセリナは目を丸くしながら聞く。

答えは分かっているはずなのだが。


「誰が?」

「僕が」


静寂が受付を包む。

セリナは気付いた。

そういえば『朝と格好が違う』と。

村人Aだった装備が今では真新しい服に変わっている。

しかも靴に至っては金属でゴテゴテしていて、蹴られたらかなり痛そうだ。


「服、どうしたの?」

「えっと、買いましたけど…?」


それはそうだろう。

理熾が盗賊家業をするとも思えない。

そうすると貰い物か、買い物かのどちらかでしかない。

セリナは単に驚いているだけなのだ。


「え、えぇ…?」

「えっと…僕、討伐者の研修受けたって言いませんでしたっけ?」


何かが食い違っている、と理熾も察する。

間違っている箇所を探すより、最初から話した早いと考えて話し出す。


「うん、言ってた」

「ですよね。

 僕ってもう討伐者ですよ?」


「まぁ、カード作れば誰でも名乗れますけど」と自嘲気味に言う理熾をぼうっと眺める。

セリナは頭を「ガツン」と殴られたような衝撃を受けた。

『こんな子が討伐者なんて』と思っていたのに、知らない間にオークまで倒しているとは。

引率者はさぞかし優秀なのだろうとセリナは考える。


「そ、そうなの。

 凄いわね…でも他にも渡さないといけないところもあるんじゃないの?」

「んー?

 ギルバートさんとか?

 アレから全く会えないんですよねぇ」


「いや、パーティ方とか。

 それともこのお肉は分けた後の物なのかな?」

「あ! あぁ、そっか!」


理熾は合点がいった。

セリナが気にしているところが何なのかさっぱり分からなかったのだが、一人(ソロ)だと思われていないらしい。

「それもそうだよね」と思う反面「やっぱりかぁ」と残念にも思ってしまう。


「セリナさん。

 驚くかもしれないけど、僕って単独(ソロ)なんだ。

 ツテも無いし、知り合いも居ないから当然なんだけどさ」


セリナの顔色が青ざめる。

ということはこのオークは『理熾が一人で倒した』ことになる。

「何て危ないこと!」と思うと同時に、今まで気付かなかった自分に愕然とする。

だが気付かないのも仕方が無い。

何故なら理熾の装備は今朝まで村人Aだったのだから。

ならばこの目の前のオークはどのタイミングで狩ったのだろう?


答えは出ている。

村人装備で倒しているのだ。

しかも一人で。


セリナは思い出す。

森を歩いたと言った理熾の姿を。

それからまだ1週間程度しか経っていないはずなのに、と。

「まだまだ子供」なんて思っていたのが恥ずかしい。

十分に出来る事をやっているではないか。


「セリナさん?

 実は今日って緊急依頼が出てるから、僕も参加します。

 帰りがいつになるか分かんないんだけども…行ってきます」


そう言って颯爽と玄関を出て行く。

必ず帰ると格好を付けて言ってしまった事に気恥ずかしさを覚えながら。


しかし理熾からすれば時間が無いのだ。

準備は出来れば出来るほど良いのだから。

その背中を眺めながら、セリナが言う。


「受付にオークの肉置かれても困るわよ!

 重いんだからせめて厨房まで持っていって!」

「………そうですね、すぐ移動させます」


割と感動の出発だったはずなのに雰囲気ぶち壊しである。

だがセリナ的には「もう少し話がしたい」と言うのが本音だ。

オーク退治の経緯を知りたいが今話すことでも無い。

けれど弟だと思っていたような子がいきなり成長してしまっているのを見て戸惑っているのだ。


「さてと、ここでいいですか?」


そう言ってオークの肉を置く。

今度こそ出発である。


「もしかして緊急依頼ってオーク討伐?」

「です。

 よく知ってますね」


「これでも情報は入ってくる宿だからね。

 といってもお客さんが話してるだけなんだけど」

「なるほど。

 それは耳にも入りますよね。

 鐘をカンカン鳴らしてましたし」


「気をつけてね。

 緊急依頼ってかなり危険だから」

「うん、ちゃんと帰ってくるのでご飯お願いします」


といつも通り笑って出発する。

いつもと違うのは理熾が討伐者として生きていることをセリナが知ったことと、服が変わったことくらい。

昨日までと何ら変わらない態度で出て行く様子を眩しく感じる。


「男の子の成長って早いなぁ。

 というかあの子は元々ああなのかなぁ」


理熾はきっと変わっていない。

単に能力とか、スキルとか、装備が良くなっただけ。

最初から一貫して「討伐者になる」と言っていたし、逆に「なれなきゃ別の道へ」なんてのもあっさり言っていた。

理熾の心を覗くことは凄く難しいけれど、何故か芯の強さを感じる。

その結果、気付かない内にオークまで倒してしまっていた。

セリナはただただ「すごいなぁ」と感心するだけだった。



「時間が無いッ!!

 思ったより出発に時間を食っちゃった!」


とはいえ、悪いのはどう考えてもいきなり受付にオークの肉を放り出した理熾なので仕方が無い。

とにかくすぐさま矢を撃てそうな場所を頭で探す。

ここ数日店の探索をしているので多少地理に明るくなったのだが、思い当たる場所がゼロだ。

仕方が無いので適当に回復薬とかを買いながら一直線に平原に向う。

オーク1体が1500カラドに化けるのだから多少の出費は諦める。


カードを見せて外に出て、誰にも見られないように森に向ってすぐさま矢を放つ。

放たれた矢は飛び出した瞬間に亜空間に消えていく。

最初の一度だけちゃんと発射されるかをしっかり実験をして確認する。

成功したのを機にひたすら矢を放っては亜空間に取り込んで発射準備をしていく。

300本放った辺りで人が増えてきた。

そろそろ時間らしい。


 ぷはー!

 やりきった、僕はやりきったよ!!


と誰も見ていないところで出来る限りの準備を終えた。

理熾的には最早準備だけで既に帰りたい。

それくらいに急がされたし、動いた。

ここから出発だと思うと気が重いが、フィリカの期待に応えないわけにもいかない。

フィリカには世話になりっぱなしなのだから。


「それにしても静かだなぁ。

 森が目の前なのに気配すらないよ」


「これが『嵐の前の静けさ』ってやつなのかな?」と思いながら、集合場所に向う。

点呼を取り始めるのを見て急ぐのだが、「何か遠足みたいだ」と思ってしまった。

お読み下さりありがとうございます。

何故上の人は準備の大切さを理解しないのでしょうか。

今まで下で動いていて、恐らく愚痴っていたくせに、上がった途端にすぐにやれと言い出します。

まぁ、何処の世界でも同じかもしれませんがw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ