オーク討伐会議
ついに会議が始まります。
果たして理熾の役目とは!
ちなみにフィリカはギルド員だった。
けれど生産カウンターに籍を置いておらず、驚くことに討伐カウンターでの登録だった。
凄腕の生産者としての顔しか知らない理熾からすると驚きである。
少なくとも戦えるとも思っていたし、何より強いとも。
故に、フィリカは大手を振って会議に参加する。
「フィリカさん、何か見られてない?」
「確かに。
私もギルドに関わるのがかなり久々だから状況が余り判らんが」
周りの視線は理熾ではなく、フィリカに釘付けである。
当然だ。
これだけの美人が、討伐者として会議に参加しているのだから。
しかもオーク退治に。
「そういえば女の人少ない…というか、フィリカさんしか居ないね」
「そりゃそうだろう。
オークやゴブリンは女からは嫌われているからな」
「え?」
「ん? 知らないのか?
人型の魔物は人と同じだ。
私達からすれば彼らは魔物だが、彼らからしても同じなんだよ」
狩猟と言う意味で言っているのだろうか。
確かにオークの装備を思い浮かべれば武装していた。
そうなると少なくとも生産できるだけの能力を持つと言うことだ。
それに加えて、彼らは彼らの間で意思の疎通が出来ることを意味する。
「とはいえ、そこまで高度な文明も無いがな。
少なくとも私達からすれば彼らは侵略者であり、危険物だ。
加えて肉などの供給面も含めると狩猟用の動物とも言えるな」
「オークも文明を持ってるってことだね」
「今回の話には全く関係無いがな。
最初に戻るが、人と同じなんだ。
つまり魔力溜りから自然発生するタイプではなく、生殖活動を必要とする。
基本的に種族内での雌雄で交わるのだが、遊びで他種族とも交じる。
この意味が分かるか?」
「うん、あんまり分かりたくないけど」
とても嫌な話を聞いてしまった。
理熾もそこまでウブではない。
少なくとも行為については分かるし、興味もある。
が、それはそれ。
あんなでかい豚に…と思うと嫌悪感しか生まれない。
「だから女の危険度は男の比じゃない。
殺される可能性は少し下がるが、それだけだ。
むしろ狙われる可能性が上がる。
手心を加えられる訳でも無いし、分かりやすく言えば玩具にされる。
その結果で死ねれば良いが、幸か不幸か生き残って子を産む場合もあるからな」
「…フィリカさん、何で付いて来たのさ」
説明を聞いて理熾は苦々しく呟く。
そんなことなら質問すらせずに伝えるだけ伝えて一人で出てきたのに。
「その言い方は酷いな。
君が誘ったのだろうに」
心外だという風にフィリカは言う。
美人と言う目立つ外見に、まず参加しない女という性。
これで注目を集めない方がどうかしている。
「今からでも帰らない?」
「ま、参加登録はしていないから良いんだが、君が守ってくれれば問題ないだろう?」
理熾はどんどん追い詰められる。
最悪でも自分が死ぬだけだと思っていたのが思わぬ重荷を背負わされる。
自分で呼び込んだことではあるが、クリア条件が厳しくなったと嘆くしかない。
こんなことならオークの欄ちゃんと読んどくんだった…。
にしても元々女性の少ない討伐者家業とはいえ、参加者ゼロって。
オークの不人気さに驚きである。
まぁ、自分から女としての死地に向かうと言うのもおかしな話ではあるが。
そうして暫くすると今朝掲示板の前で大声を張り上げていた男が部屋に入り、壇上に上がる。
ようやく会議が始まる。
ただし会議と言うよりは方針の通達のようだ。
書類を持っているところを思うと作戦などは決まっているらしい。
「勇敢なる諸君に敬意を表する。
時間も無い中、24名もの者が集まってくれたことに礼を言う」
と部屋を見渡す。
途中で視線が釘付けになる。
物凄い違和感を感じたらしい。
「な! フィリカだと!?
何故お前がここにいる!?」
「私の勝手だろう。
それより話を進めろよ、ジン。
今回は特に時間が無いのだろう?」
どうやらフィリカと壇上に立つジンと呼ばれた人は顔見知りらしい。
改めて観察する。
背は高く、体格も良い。
全身鎧に身を包み、どう見ても重戦士にしか見えない。
流石に得物は持っていないようだが、あの風貌なら長物系じゃないかなとあたりを付ける。
そんなガチガチの鎧な男は、かなりの美形だがそれなりに老けていて灰色の髪だった。
理熾の感想は渋めのおじさんだった。
そんなおっさんが狼狽する様を特等席で見れるが…理熾は何にも嬉しくは無かった。
「…今回の討伐に参加するのか?」
「この部屋に居るんだから察しろよ。
相変わらず鈍感だな」
「相変わらず口の減らないヤツだッ!」
フィリカの鬼のようなあしらいにもめげないとは年の功だろうか。
それにしてもフィリカはホントに鬼だった。
これで『参加する』と言わずに、参加者ポジションに収まった。
ちなみにフィリカは見学だ。
部屋の人数を数えればジンを除いて25人なのだから間違いない。
あぁ…ジンさん…見た目と中身のギャップが…。
と理熾は悲しい事実に気付いてしまう。
落ち着いた雰囲気で、執事とかしてそうなのにと嘆く。
「すまない、仕切りなおさせてくれ。
今回この討伐指揮を担当するジン・クロムハーツだ。
過去に共に戦った者もいるかと思うが、よろしく頼む」
そう言って頭を下げる。
場慣れしているというか、とても様になっている。
これで中身が伴えばなぁと、フィリカとの掛け合いだけで理熾は思う。
やっぱり大変失礼だった。
「今回の経緯だが、オークの集団を確認したのが本日の早朝。
それからすぐに偵察隊が出動して、情報集めを行った結果、ギルドに依頼が回ってきた。
しかも緊急という二文字が付いてだ。
知っているだろうが、この二文字が付くだけで報酬が跳ね上がる。
その分強制力があるが、今回に限り通常の応募制で対応した。
理由は余りにも緊急すぎるからだ。
我らも馬鹿ではない。
準備が出来ていない者を取り立てても、死人が増えるだけだ。
金払いが良いから、という理由だけで命を捨てるわけには行かないからな。
だから改めて言おう。
諸君らの勇気に感謝する」
なかなかの演説だ。
しかもギルドは悪くないということを暗に広めている。
情報が遅かったのが原因ではあるが、依頼を出したのはギルドではないのだ。
つまり困っているのは単に依頼主だと印象付けている。
でも、この街無くなって困るのって住人なんだよね。
住人ってのは僕らも含まれる。
なんというか、弁が立つね。
醒めた目で見る。
隣のフィリカも似たようなものだ。
「では本題に移る。
対象はアルス平原の正反対側。
距離にして20km程度先になるが、平原は障害物も遮蔽物も無い。
ひたすら一直線に進めるため、行軍が開始されれば無いに等しい距離だ」
聞いていて驚いた。
初日の理熾がマラソンした距離はたった10kmしかなかったのだ。
うっわぁ…超恥ずかしい!
10kmって走ったこと無いけど歩いても3時間じゃんか!
変に急いだから逆に遅くなったってことだよね…。
と凹む。
思っていたより頑張った距離は短かったのだ。
改めて心の余裕というは大事だと気付かされる。
生き残れたから良いものの、それこそ獣の餌だった可能性も高い。
うん、がんばろう。
今は心で思うのが精一杯だった。
「相手側の動向がイマイチ分からんが、基本戦術は待ち伏せだ」
その言葉にハッと前を見る。
ジンの言葉を聞き逃しては命が危ない。
余裕を持たねばと先ほど誓ったばかりなのだから。
「諸君等の戦力に不安があるのではない。
単なる完勝を目指すために、待ち伏せる。
ありがたいことに相手はオーク…足は遅い。
平原の中ほど辺りに壁と罠を用意する。
まずは足止めと混乱が目的だ。
そこでまず弓兵と魔法士の出番だ。
オークの皮は厚いが、矢が通らないというわけでもない。
この場面では敵の戦力を減らすことを目的とする。
倒すまで行かなくても構わない。
つまり出来る限り広範囲に手傷を負わせてくれ。
その場で足止めに戦う者が居ない以上、壁や罠はすぐに突破される。
手傷を負ってはいても、相手はオークだ。
突撃力は十分に脅威だ。
そこで最後に接近戦で数を減らすことを目的に攻撃してくれ。
騎士団も防衛すると言っているのだから、討ち漏らしは捨て置け。
奴らが何とかするだろう。
深追いは絶対にするなよ。
そして最後方に回復職を置いて、負傷したものは速やかに下がれ。
その際に必ず周囲に声をかけてくれ。
勝手に減ったら戦線が瓦解する可能性がある。
以上が作戦の骨子だが、配置その他についてはこれから説明する。
これまでのことで質問はあるか?」
残念執事の癖に思っていた以上にまともな戦術だった。
やはりこの世界の住人は基本的に争いが上手なのだろう。
と理熾は密かに唸るのだった。
お読み下さりありがとうございます。
すみません。
煽ったくせに残念執事のジンが登場したくらいで理熾の役目どころか何も詳細が出ていません。
これから決まっていく次第ですのでどうかご容赦を。




