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神様のおねがい  作者: もやしいため
第十四章:集う三神
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魔境偵察

遠征の準備が整った。

といっても、セリナ・セルジ・リンクスの三人の貴族に、不在の了解を得たことと奴隷五人の雑務が終わっただけ。

ついでにヴァルトルで情報収集をしていたハッサクが、魔境区域の大雑把ながら地図を手に入れたくらいか。

進入禁止区域に踏み込んで罰則を受けるのは誰にとっても嫌な状況なのだから。

まぁ、バレることがあれば、だが。


「というわけで、やってまいりましたヴァルトル領の最前線」


配下五人を連れ、そんな軽口を叩くのは理熾。

魔境との境目…防衛線を敷く拠点はヴァルトルから北に約20km先のこの地点。

ファロが常駐している訳ではないが、高頻度で足を運ぶ場所でもある。


今回の主な目的は迷宮(ダンジョン)探し。

これを見付けないことには本当に延々と魔物を狩り続けるしかない。

ちなみに過去に発見された迷宮は全て掃討済み。


すぐ傍に魔境という災害が存在し、間引き出来ないがために大氾濫(スタンピード)の確率が非常に高い迷宮を放置するなどもってのほかだ。

魔境の領域を削るためにも、日夜迷宮探索がなされ、発見されれば出来る限り速やかに討伐するのが現状の流れだ。

なので理熾達が目指すのは


「中層との境だね」

「一気に切り込むわけだな」


「じゃないとせっかく迷宮を確保しても横から潰されかねないからね。

 出来れば誰にも見付からずに一つ欲しいけど…近場じゃまず無理だよね」

「そのために表層部は開放されてるわけだしな」


最前線まで来てのんきに話すような内容ではない。

しかし楽観的なのも当然だろう。

現在地は確かにヴァルトルの前線拠点だが、六人が居るのはその直上1kmの地点。

理熾とスミレが展開する《障壁》の足場に立って見下ろす様は壮観以外の言葉が無い。

そして地上から靄が掛かった《障壁》を1km離れた場所から見ることが出来る者もまた存在しないのだ。


「地形からしてこの辺狙ってるんだけど…どの辺りかな?」

「左に15度、距離12kmってところだが…一気に行くのか?」


地図を手に入れてきたハッサクが返事と共に質問をする。

この高度があれば飛行系の魔物以外に狙われる心配が無いので空中散歩でも構わない。

ただ残念なことに高すぎてこちらも地上がどうなっているかが分からない。


「とりあえず進むだけ進んで高度を下げようか。

 高さ100mくらいなら感知も届くようになるよね?」

「そのくらいの高さなら何とか…。

 だが迷宮に対する嗅覚は俺には無いから期待されても困るぞ?」


「この森一回焼き払おうかな…すぐに元に戻るよね?」

「やめろ馬鹿主人(マスター)

 わざわざ痕跡残してどうすんだよ」


「冗談だってば。

 でも二手に分かれるのは危ないし…いっそ降りる?」


この面子なら少々の質や量が来ても対処出来る。

だからといってわざわざ死地に踏み込みたい命知らずでもないからの質問だった。


「そういうことでしたら《障壁》をお願いできますか?」


そこで手を挙げたのはスミレ。

理熾はすぐに思い至る。


「あ、そうか。

 木材兵(ウッドゴーレム)使うんだね。

 でも距離とか大丈夫?」

「中継させれば距離を稼げます。

 自分の血魔石(ブラッディコア)入りの投剣を落として貰えますか?」


「うん、ならまずは移動しようか」


いったん話を区切り、《転移門》を経由して約12km先の高度100mへと移動する。

理熾は血魔石付きの投剣を取り出し、ぽいっと真下に放り投げる。

同じようにスミレも《亜空間》から木材兵を3体ほど地上に向けて落とした。


「僕達はスミレの護衛ってことで。

 【連携】と【以心伝心】で全員繋がってるから状況は分かると思う。

 変な風に混線してたりしたら微調整するから声掛けてね」


理熾の言葉に全員が頷き、スミレは目を瞑って木材兵に注力する。

下は鬱蒼とする深緑と、高い木々に阻まれて日の光が乏しい暗い魔境の森。

この環境で拠点作りと防衛は余りにも難易度が高いと全員が息を呑む。


「次を出します」


スミレはそう言って木材兵の4体目を、地上の木材兵の血魔石を経由した《亜空間》から吐き出した。

理熾が落としたスミレの血魔石入り投剣を経由して操作しているのだが、その距離がどうも50mが限度らしい。

変わりに木材兵の1体を中継役で放置し、4体目が経由してその先へと向かう。

ちなみに3体はそれぞれ別々の方向に進んでおり、探索距離と共に5、6と木材兵を追加していた。


「こりゃ楽だな。

 木材兵なら魔物だから、そうそう襲われることも無い。

 襲われたところで使い捨てても良いわけだし、いっそ探索用の開発を考えても良いかもしれないな」

「そうなると俺の仕事が無くなるわけだが…危険地帯を突っ切るより良いか」


ネーブルとハッサクは気楽な調子でやりあう。

実際スミレの運用は深追いのリスクをほぼ無視して進める。

ある意味深海探査などを含む前人未到の過酷な環境を探索するのに非常に向いている。


ご主人様(マスター)、南側の前方に敵影あり。

 このままではぶつかるので狙撃お願いできますか?」

「了解、ちょっと待ってね」


スミレの言葉に理熾は【士魂の強弓】を《亜空間》から取り出し、矢をつがえてギチリと音を立てて引き絞った。

その様子にネーブルはにやにやと、レモンは首を傾げるような微妙な顔をする。

何せ魔境の森は生い茂る木々の屋根に隠れ、目標を視認出来ないのだから当然だろう。


「繋いでくれるかな」

「すぐに」


矢の取り込み訓練をし、【連携】で繋がる二人は阿吽の呼吸。

木材兵を経由して一瞬だけスミレが開いた《転移門》は、理熾が放った矢だけを通す。

すぐに閉じ行く門は理熾達の気配を断絶させると共に、矢を吐き出し目的に突き刺さった。

たった一矢で粗悪な核を削り飛ばされる致命傷を受けたのは不死者(アンデッド)代表の一角グール。

反撃のしようもない鮮やかな手際に


「……なぁ、このペア実は最強じゃないのか?」

「レモンとハッサクくらいしか反応出来ないのに、その二人じゃ反撃すら無理とか詰んでるぞこれ」


ハッサクが声を零すとネーブルが溜め息混じりに結論付ける。

距離を無視して狙撃されるとなれば、ほとんどの者が回避不能。

たとえ回避出来ても意味が無い。

攻撃手は悠々と自分勝手に一方的な攻撃を加えられるのに、防御側はいつ来るか・終わるかも分からない攻撃に精神を削るだけ。

あんな攻撃を受けた時点で心が休まらず、いつかは疲労に敗北する。

ハッサクとネーブルも亡者の操手(マリオネット)を倒す際に使っているので人のことを言えた義理ではないが。


転がったグールは丸ごとスミレが木材兵を経由して展開した《亜空間》に安置済み。

ただ素材として使えるかは疑問が残る。

ラボリ迷宮のエサ要員の可能性は非常に高そうだ。


「はいはい、仕事しようねって…やっぱり魔物の遭遇率高いね」


スミレの《転移門》に合わせて淡々と弓を引く理熾はそう呟く。

気が付けばこの短い間に10体もの数を仕留めている。

今のところ弱い敵ばかりなので全て普通の矢の一本で終わっているが、これがCランク以上になると少し面倒なことになるだろう。

逆に言えば遠距離の強みが発揮されている間は安泰だ。


「よくこの中をラザフォードは突っ切ろうとしたな」

「まったくだよ。

 この辺りに迷宮居ないみたいだし、そろそろ戻ろうかスミレ」

「はい、すぐに片付けますね」


スミレは一つ手前の木材兵を基点に《亜空間》を使って回収していく。

20体ほども展開されていた部隊とも言える数の回収に掛かった時間はわずかに30秒ほど。

足跡などの痕跡は残るものの、これほど早く撤収までされては敵対する相手は状況すら分からず、気付いた時には負けているだろう。

恐怖すら感じられない速度なのは幸か不幸か微妙なところだが。


「非戦闘員だったはずのスミレが、気付けば俺達を置き去りにしてやがるぞ」

「老兵は朽ちるのみ、ってか。

 主人といい、スミレといい、若いってのは羨ましい限りだな」


本人達をよそにぼやくレモンと呆れるネーブル。

他の二人も似たような反応で肩を竦める。

魔境という環境下において、当の六人はえらく平和に過ごしていた。

お読みくださりありがとうございます。


気付けば3000万Pv突破していました。

今後もよろしくお願いします。

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