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神様のおねがい  作者: もやしいため
第十四章:集う三神
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ラボリの相談役2

「ほう、私に声を掛ける、か?」


改めて手を止めたフィリカは理熾へと向き直って目を細める。

何を考えているのだ、との見極めであり、値踏みでもある。

理熾には『楽しませて貰っている』という多大な感謝はあるが、それはお互い様。

一方的な貸し借りはどちらともがあると思っていない。


「え、前に『機会があれば戦い方を見せてくれる』って言ってましたよね?」


と疑問符が見えそうな感じで首を傾げて話す理熾。

深い意図…『利用する』ような意図は無いらしい、と毒気を抜かれたフィリカは目を優しげに緩めて


「はは、これはこれは。

 まさかこんなタイミングで言われるとは思わなかったよ」

「フィリカさんは機会を作らないとそのままスルスル逃げちゃいそうですしね」


「くく…良いだろう。

 今回の魔境遠征には討伐者として私も参戦しよう。

 と言っても『リオ君の陣営』という肩書きでお願いするよ」


快く受けてくれたが条件は付いた。

しかし理熾からすると特に不具合も無い。

別に知らぬ仲でもないし、能力も折り紙つき(理熾は一度も見れていないが)。

理熾は「そんなことで良いんですか?」と気軽に受ける。


「というか何か違いがあるんですか?」

「いや、なに。

 リオ君の箔付けに役立つかもしれないのでね」


「そうなの?

 まぁ、とりあえずは僕達だけで魔境を見てくるよ。

 実感しないことには何ができるかも分かんないしね」

「気楽に言うが『全く人の手が入っていない地域』はかなり危険だ。

 とはいえ、あの投剣を飛ばせば大概の危機は何とかなるだろうがね」


フィリカはそんなことを言いながら作業に戻る。

スミレは二人の話を聞きながら密かに頭を巡らせていた。

今回の仕事は普段の運搬役に加え、戦力でも役に立たなくてはならない。

転移系の魔力を残しつつのコッペリアの運用を思うと随分と難しくなる。

戦闘時間が短く、戦うタイミングも決まっていた大会とは条件が違いすぎる。

試合が始まれば出たとこ勝負なところはあっても、戦うことだけに注視すれば良いだけだったのだから雲泥の差だろう。


「スミレ手が止まってるぞ」

「あ、すみません。

 特に異常はありません。

 右腕もぴったり連動されます」


「そうか後は胴体部だが…」

「チェック済みです。

 問題ありませんでした」


「なら今日はこの辺にしておこうか」


フィリカは全ての部位を閉めて切り上げる。

大会後、一週間も掛けて調整したコッペリアはとっくに全力稼動が可能だ。

どちらかといえばフィリカの趣味に付き合っているに近かった。


「そういえばリオ君。

 大会で随分と稼いだそうじゃないか?」


大して汚れてもいない手を拭いながらフィリカが聞くのは、お互いの用件が終わったが為のただの雑談。

正確な答えなど求めていないし、だからと虚偽を告げられても結果が変わるわけでもない。


「あはは…僕個人で賭けたのは集団と個人の最終戦だけなんだけどね。

 確か払い戻しは全部で500万カラドくらいだったかなぁ…もうセルジさんが管理してくれてるから分かんないけど」


といったようにあっさりと内情をバラす。

フィリカは余りの桁違いに「っご…」と声を詰まらせた。

商人という肩書きを得た理熾の資産は大会を出たことによって膨れ上がっていた。

相当馬鹿なことをしても餓える心配は限りなくゼロである。

国が破綻とかしなければ、だが。


「勝てる試合とはいえ、張り込んだな…」

「ま、集団戦は運試しだけど、個人戦は勝てる試合だからね。

 他の僕達に絡む負けない試合はネーブルとハッサクが馬鹿みたいに稼いでくれてたみたいだよ」


「一体リオ君達だけでどれだけ運営側から引き出したんだか」


呆れるフィリカと、冷や汗を浮かべるスミレ。

実を言うとスミレも個人・集団を含め、相当稼いでいた。

先の言葉通り、ネーブル達の払い戻し金の一部(というかほぼ全て)は、セルジ管轄の共用財布にプールされている。

共用財布の所有者は理熾で、一度そこを経由して成果に応じて奴隷用の共有財産へと振り分けられる。


また、共有財産からは月々給与の形で支払われ、それ以上の引き出しに関しても自由。

ただし『共有財産』なので、奴隷間での根回しは必須となっていた。

そもそも元本が大きいので使いきれるかも微妙な線だ。


ラボリ開拓時に稼いだ分は、支払われると同時にセルジの管轄下に置かれているため詳細は不明。

加えてあの二人の払い戻しに理熾とスミレの賞金と足し合わせると…と考えると理熾は怖くて聞けていない。

ここで気にすべきはそれら財布が空になることではなく、逆に膨れ上がる可能性の方だった。

セルジ曰く『金持ちは金を使わねば意味が無い』らしく、現在溜め込まれている現金は証文や債権などへと化ける予定らしい。


「どうだろうねぇ。

 どの試合も大体僕達の方が不人気だったからね。

 少し賭けても5倍、10倍とかってレベルで増えてたはずじゃないかな。

 あ、そういえば優勝賞金ってベース+大会に集まった総額から5%みたいだね。

 集団戦で500万、個人戦で300万カラドくらい貰ったんだけど…これって妥当なのかな?」

「…今年は多いかもしれないな。

 しかし大会の高額賞金をほぼ総取りか…今年の参加者は不遇だな。

 ついでに脇の甘い運営側に批判が集中してるだろうし、リオ君達の一人勝ちじゃないのか?」


「僕はどっちかというとフィリカさんが勝ったんじゃないかなぁと」

「くははっ、違いない。

 ノルンも随分と技術を磨けたはずだし、私が一番かもしれんな」


大会を引っ掻き回したパーティ、アリスが用意した道具・装備の全ての作成に携わったのはフィリカとノルン。

新発想の武器や道具に加えて量産型まで発注する理熾達は、ただの『お得意様』で終わらせられないほどの相手である。

普通一点物の装備を一つ用意すれば、しばらく新作の用意は必要ないものだが、理熾はあっさり次のものを要求する。

それもきちんと使いこなすのだから作成者としてこれほど楽しいことは無いだろう。


「スミレも何か欲しいものがあればいつでも言ってくれ」


にこやかに追加発注を求めるのは生産者として正しいのだが、フィリカが言うと何となく意味が違って聞こえる。

どちらかといえば『さっさと次の注文を言え』的な感じで。

スミレは頬を引き攣らせながら「考えておきます」と返答するに留まる。

しかし本音では、フィリカの作るものは一々性能が高すぎるので簡単に依頼出来ないのだ。


「そうえいばアシュレイさんがフィリカさんの荷物袋(ポケット)とか絶賛してたよ」

「ほう、あの末っ子もアレを使えるのか」


「二つ持ってたけど平気そうだったよ。

 【起爆投剣】とかも二刀短剣みたいに使ってたし、やっぱり天才は違うよね」

「そういえばそうだな。

 あのマリネ相手に抑え…いや、あれは暴発を気にしてたんだろうな。

 だとしてもその選択を相手に与える判断を即座に下せるのはやはり『本物』と言えるか」


ある意味装備の性能を引き出しているとも言える行動に、フィリカも大満足だ。

そこで理熾は「アシュレイさん用の装備も作ってみます?」と提案してみた。


「さて…どうするか…いや、一度リオ君が持つ初期装備でも使わせてみてから考えようか」

「割と普通に振り回しそうだよね」


「違いない…が、リオ君ほど刺激的にはなりそうに無いな」


とはフィリカの言。

装備作りに刺激を求めるのも大概おかしな話だが、やはり使い方を思えば理熾は特殊なのだろう。

使い捨ての武器を『作成者に要求する』などもそうだ。

『粗悪品でも構わない』と言われてるような内容で作る生産者など普通は居ないのだから。

しかし理熾は


「アシュレイさんのメイン武器って細剣(レイピア)だけど片刃の直剣とか大丈夫なのかな?」


とまったく見当違いの心配をしていた。

お読みくださりありがとうございます。

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