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神様のおねがい  作者: もやしいため
第三章:始まりの街
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オークの解体1

解体するくせに別に残酷シーンはありません。

肉が食べられなくなることは多分無いと思います。

危うく赤字になるところだったのだが、何とかなった。

応募者が思ったよりも殺到したのでその中から選ぶことになったのだ。

「だったら何故450カラドの請求が?」とも思うが、前払い制を行っているためらしい。

ちなみに人数によって改めて返金の形を取るらしい。

前払い制ならそもそも金額が足りない時点で確認しろとも思うが、その辺がお役所仕事なんだろう。

全くやってられない話である。


応募者の中から、二人選んで連絡をしてもらう。

ちなみに理熾も解体を見物するつもりだった。

やり方を覚えておけば、今後役に立つはず。

それに流石にはじめての依頼で、見知らぬ他人に丸投げというのもまずいという判断だ。

そもそもオークの廃棄率なども知らないのだから、無いとは思うがちょろまかされても分からない。


というわけで、今目の前の二人がオークの解体を始めるために集まった。

この二人はペアのパーティで、まだ理熾と同じく新人だ。

研修の際には居なかったことから、今後あの肉体言語を理解するようになるかと思うと目頭が熱くなる。


大体17~20歳くらいだろうか。

見た感じ大した武装をしていない。

しかも討伐者としてはとても若い(理熾は例外)ので、恐らく討伐の採取と、他のカウンターを並列で利用しているのだろう。

そんなことを思っていると二人から質問が飛ぶ。


「ねぇねぇ、今回の依頼ってあたし達だけって聞いたんだけど?」

「うん、リオさんのお使いか何かかな?」


完全に子供扱いの理熾。

確かに13歳(もっとも見た目はさらに幼い)でオークの解体を頼むというのはおかしな話だろう。

依頼主が来れないから代役という可能性を考えているようだ。

というより軽く見下されてる感がある。


今までも十分に子ども扱いを受けては来たが、依頼主になっても同じ扱いなのはカチンと来る。

けれどここでキレても何の特にもならない。

色々思うところはあるが「落ち着け」と思って飲み込む。

時間は有限なのだから。


「初めまして。

 僕が依頼主の理熾です。

 本日はよろしくお願いします」


と丁寧に依頼主として挨拶する。

いちいち目くじら立てても仕方が無い。

もっと打算的に、向こうの失礼を利用することにする。


「え…マジ?」

「おぉぅ…いきなりまずっちゃった…?」


とか言い合っている。

対する理熾はにこやかな笑顔で対応する。

内心は「僕って超大人!」とか思ってるが顔には出さない。


「えっと、あたしはライ、こっちがノルン。

 それではリオさん。

 さっそく始めたいんだけど、オークはどこかな?」


ペアパーティの二人は軽く頭を下げて仕事に取り掛かろうとする。

どうやらさらっと流すことにしたらしい。

余りよろしくない…いや、全くいいはずが無いのだが、相手が子供ということで舐めているらしい。

そんな行動に理熾は気にする素振りをせず話を始める。

ちなみにこの二人に対する評価はどんどん下がっている。


「平原に出て、そこで解体作業をしたいと思います」

「え、街中じゃダメなの?」


とライが質問する。

平原は平和とはいえ、獣の世界である。

危険が少ないというだけで、無いわけでは無い。

街中で行えるならそれに越したことは無いのだが…。


「いや、解体ですよ?

 血臭とか、内臓どうするんですか?

 臭いを消せて、なおかつ不要な部位を消滅させられるなら場所探しますけど」


理熾の言葉を聞いて慌てる二人。

本当に街中で解体をするつもりだったらしい。

希望としては分かるが、少し考えれば『街中で不可能な理由』はいくらでもあるだろうに。

このペアはやっぱり余りよろしくないらしい。

さらに理熾からの評価が下がる。


「あ、えぇ…そうですねぇ…。

 外へ出るんですか…うーん…装備取ってきて良いですか?」


見た目通り、単に『大した武装をしていない』だけだった。

「装備なんて要らないぜ!」とか思ってた理熾はさらに評価が下げた。

慌てるライ達を見ながら理熾は冷静に返答する。


「んー…まぁ、良いですよ?

 とりあえず何か出たら僕が対処するつもりだったんですけども」


依頼主が子供で、血臭を振り撒き魔物を呼ぶ作業中に無防備な背中を預けるのも子供。

普通の考え方でいけば狂気の沙汰である。

何より『依頼主に守られる討伐者』とはどんな冗談か。


とにかく丸腰では逃げることもままならない。

ライ達は謝罪してすぐさま装備を取りに戻る。

理熾は理熾で、「門で待ち合わせしましょう」と言って歩き出す。

既に受けてしまった依頼に、ライとノルンは『はずれ』を感じて走だす。

依頼主(理熾)の心象はすこぶる悪いだろうから。

対する依頼主の理熾も同じくはずれの印象しかなかった。


20分後、門で合流して出発。

今回もギルバートは居なかった。


 全く、ギルバートさんは何を遊んでいるんだか。


と恩人に心で文句を言う。

何とも罰当たりな子供である。

そのまま見晴らしのいい平原をしばらく進んで良く。


「んじゃ、この辺で始めましょうか」

「え? オーク無いけど」


周りを見渡してライが返答した言葉には棘が混じる。

オークの死体を『運んでいく』か、『置いてあるか』のどちらかだと思っていた二人。

門を出るときに無いのだから、見張りか何かを立てて平原に置いてあると予想していたのだ。

それが門から暫く離れた場所に連れてこられ、目の前には何も無い。

というより見渡す限りの平原だ。

これをいたずらと思わず何というのだろう。

その辺を知ってか知らずか、理熾はあっさりと行動する。


「ん?

 あぁ…そうか、今から出します」

「「え?」」


ライもノルンもあっけに取られてしまう。

そんな表情を横目に見ながら質問する。


「1体ずつが良いですか?

 それとも二人それぞれで解体しますか?」

「え、あぁ…二人で1体ずつやるつもりだったけど…?」


「分かりました」と告げて理熾が亜空間からオークを取り出す。

ライもノルンも顎が落ちるように口が開く。

何も無いところからいきなりずるりとオークの巨体が現れれば誰でもこうなるだろう。

理熾は「さ、お願いします」と涼しい顔で告げている。

今のこの現状を当たり前として受け入れている様子に改めて驚愕する。


「え、えぇ?! 何これ!」

「どこから…?

 ボックス系の装備…?」


などと呟いている。

ちなみに前者の慌てているのがライ、後者の驚きの中で一応予想を立ててるのがノルンだ。

その状態を見て理熾は「してやったり」という感じで今までの溜飲を少し下げる。

とはいえ、今更こんなことで評価は上がったりはしないのだが。

お読み下さりありがとうございます。

解体の話なのに始まる前に終わってしまいました。

理熾の見くびられっぷりを堪能できたでしょうか。

まぁ、本人(理熾)はご立腹なのですが。

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