神様とぼく3
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即答した。
誰もが納得する当然の反応である。
だってさ。
誰が好き好んで『これから必ず終わる世界に行く』と思う?
そんな主人公的なこと出来る訳無いじゃないか。
僕はただの一般人だよ?
この神様は馬鹿なのだろうか?
いや、馬鹿なんだろう…様付けなんてもったいない!
と理熾の内心はこんな感じである。
どう考えても頼る相手を間違っている。
「そう言われるとは思っていた。
が、敢えて言おう、君は行くべきだと!」
「いや、意味分からんし」
重ねて言ってみた…が、効果はいまいちのようだ。
この無駄に高いタフネスを突破することが出来るのか。
理熾はそんなことを思いながら「次はどうしよう?」と考えていると、光の玉はそのまま勝手に説明を続ける。
「その世界と言うのは、剣と魔法の世界だ」
「…ファンタジーッ!!」
神様の言葉に理熾は反応してしまった。
本当に思わずというのはあるらしいことを今始めて理熾は知った。
あ、やば。
食いついちゃった。
今の今まで『非日常だ!』とか実は密かに喜んでたとこを隠してたのに…くそう。
と心の中で悔しがる。
『興味ありません』と押し切れば、最悪その世界に行くことになっても色々と優遇されただろうに。
そういうことが分かってしまうからこそ、大変惜しいことをしてしまったと凹む。
何処までも現実的に物事を見ている証拠である。
現金だ、とも言うが。
「そう、ファンタジーだ。
君が望む『非日常』に属する世界だ」
反応を好機と見たのか、畳み掛けてくる。
やはりある程度の情報は持っているようで、日常が退屈なのを見抜かれているようだ。
その情報の使い方が下手だけど。
理熾はやはり酷評を忘れない。
実際神様の手腕では理熾を説得して崩壊世界へと連れて行くことは出来ない。
それこそ『ファンタジー』ということでも無い限りは。
「だがいきなり行けと言われても戸惑うだろう。
故に、君が玄関扉を開けた瞬間で元の世界は凍結する。
そしてその世界での死亡、または救済によって元の世界に帰還というのはどうだ?
ちなみにどれだけ時間が経過していても、玄関扉を開けた瞬間の年齢にするぞ」
そして「どうだ?」と聞いてくる。
確かに良い話だ。
日常に退屈を感じる理熾にとってはとても魅力的な話だ。
それに『世界を救えなくても良い』というところも大きい。
元々手詰まりの世界なのだから、それを『救え』と言われても重過ぎる話な訳だが。
異世界で生活できる…魔法も使えるッ!!
あ、やばい。
かなり傾いてきた。
元の世界…理熾にとっての現実は、このまま止まってくれるらしい。
異世界で過ごすので、ある意味では若返りの保障をしてくれているに等しい。
まだ13歳という若さではあるものの、長寿の約束がされているのはありがたいことだ。
「ふふふ…神、いや、神様!
それはなかなか面白い提案だね!」
「気に入ってもらえて良かった。
早速準備を始めたいのだが、構わぬか?」
「え…いや、待って。
まだ聞きたいことがあるんだけど?」
一度仕切りなおす。
ハイテンションで行っても良い事がない。
自分を落ち着けるのに、質問を考える。
「ふむ、それは構わぬが壊れ行く世界がいつまで持つか分からんのでな。
いくら時差があるとはいえ、出来る限り早急な方が好ましい。
向かってすぐに問題に直面しても、右も左も分からないままでは解決出来ないだろう?」
「確かに…なら、準備始めてもらえる?」
「心得た」
先ほどまでとの警戒心がまるで嘘かのようにいきなり聞き分けの良い子供になっている。
やはりどれだけ背伸びしていても、結局のところ13歳。
目先の甘い言葉に乗せられるな、と言うのは酷というもの。
むしろここまで神をやり込めてることに賞賛するべきである。
「うわぁ、どうしよう! 魔法だよ、魔法! 超楽しみ!
ていうか剣とかも使わないといけないし…そうか、魔法剣士になれば良いんだな!」
などと夢はどこまでも広がっていく。
今まで完全に無駄技能と思っていた運動さえも意味を持つのだから、楽しみで仕方ない。
それに元の世界に無い技術と言うのはやはり目を引く。
魔法なんて存在しないモノへの憧れはかなり強い。
理熾のように魔法の存在しない世界への旅立ちが楽しみなように、逆に科学の発展した世界へ来る者もドッキドキのワックワクだろう。
未知とは、恐怖であり、興味であり、楽しみなのだから。
「さて、もうすぐ準備が出来る訳だが…少し話がある」
「んーなーに、神様?」
音符マークが付きそうなほど上機嫌だ。
理熾はそれなりに顔が整っているのでとても可愛らしく映る。
きっと可愛い子供でなければ許されないタイプの表情をしている。
男なのに。
「行ってもらう世界の名前は『スフィア』と言う」
「うん、スフィア…良い名前だね!」
「ありがとう。
そしてスフィアに付いてしまうと、基本的に私は関われない」
「ぁーそういえばOPで『直接の手出しは出来ない』とか出てたね」
サラッと理熾は答えたが、そのタイミングは連れて来られたばかりだ。
当然混乱の最中、いきなりの説明なのだから『覚えてない』と言うこともありえたはずなのだ。
だからこその確認だったのだが、神様の杞憂に終わる。
「基本的に通信不可。
指示は『【神託】による一方通行』という形になる」
「え、まだ何するか聞いてないけど?」
そう。
単に『世界を救え』とか言われてもどうしようもない。
何をどうすれば世界を救えるのかも分からない。
いや、そもそもどうして『世界が手詰まり』なのかも分かっていない。
嬉しすぎて気にしてなかったが、一応頭の隅にはあった。
そんなことは神様の承知してるだろうし、行く前に説明があるだろうとも思ってた。
むしろ無ければ向こうに行ったら分かるとか、そうじゃなければ何か手段があるはずだと思ってた。
それが転送間近になって『会話できない』ってどういうこと?
という疑いが前に出る。
やはり悪魔の類なのか、と。
「大丈夫だ。
【神託】によってある程度指示できる」
「ちなみにその【神託】ってヤツを無視した場合は?」
「罰則は無い。
ただし、【神託】のクリア時には報酬が付いている」
「ボーナスって?」
「その時々だな。
まぁ、そろそろ準備が完了するし、スフィアで確認してくれ」
「んー分かった、何とかする」
「では、転移開始だ」
光が身体の周りを淡い光で包み始める。
身体の端から暖かさを感じて見てみると光に溶けていっている。
あぁ、異世界への転移って時間掛かるし難しいんだなぁとか理熾がぼんやり考えていると神様が言った。
「あぁ、そうそう。
手詰まりの世界だから、影響を極力小さくしたい
というよりは暴発しないために影響を小さくせざるを得ない」
「うん、それで?」
このタイミングで何を言い出すのかと疑問に思う。
もう四肢は無くなっていて、身体と頭しかない状態なのに、と。
しかも残りの身体もどんどん光に変換されていくし、「もっと前もって言えよ」と失礼ながら思っていた。
「影響を小さくするため能力は絞らせてもらう。
だから、君のステータスは『君自身のまま』だ」
「は?」
理熾は神の言葉の意味を知る。
そして自分が甘かったと認識する。
だって…世界を救えとか言ってなかった?
だったらほら、ね?
世界を救えるだけの能力や技術を持ってるって普通思うよね?
無駄に強い力とか、装備とか、魔法とか!
違うの?
いや、違ったんだね!?
混乱し始める理熾の頭は「そんなもん無理だ!」という言葉で埋め尽くされる。
ダメな理由はいくらでもある。
「いやいや、待ってよ…。
こんな非力でどう世界を救えと!
むしろ生きることすら難しいんじゃないの!?」
そう、非力なのだ。
同世代と比べてみても少なくとも『頑張らなかった分』は周りより低い。
日本の平均くらいはあるだろうが、世界を救うには絶望的に足りないはずだ。
「うむ、残念ながら。
スフィアの同世代の子供としても格段に落ちる。
まぁ、スフィアは魔獣などの動物や魔法があるから仕方ないのだが」
同世代と比べても格段に低いとは、どういうことか。
それではますます目的から遠ざかる。
スフィア人よりも貧弱なのに、スフィア人が解決できない問題を解決して来いという。
「無理じゃんか!?」
「大丈夫、何とかなる!
あぁそうそう、誰でも使える魔法がある。
自分に対してだけだが…。
『ステータス』を見れるから、着いたら確認してみると良い」
(ふっざけんなぁぁぁぁぁあああ!!!)
淡い光に包まれながら、意識まで光に溶けていく。
大声で叫んだつもりが、向こうには届かなかったようだ。
うん、これからどうしよう?
と理熾は意識を染める光の中で最後に思った。




