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神様のおねがい  作者: もやしいため
第十四章:集う三神
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迷宮の真実2

扉の存在は明らかにおかしいのだ。

迷宮内部の事ならば、まだ『体内』ということで納得も出来る。

大氾濫にしても『自分から追い出す』という意味ではただの免疫だ。

魔物を『取り込む』のも食事をしているに過ぎないだろう。


しかし、これが『中と外とを繋ぐ扉の用意』となると話が変わってくる。

口から便を出さないように、肺が食物を吸収しないように、生物の臓器は基本的に一つの動作に特化している。

魔物にしても核という心臓や脳、眼球、牙、消化器官などの『機能』は存在する。


では行き来の出来る扉は何を意味しているのか?

追い出すことと、取り込むことを同時に出来るように加工する(・・・・)のなら、ラザフォードが躊躇する。

いや、出来るかどうかの判断が遅れるだろう。

しかしラザフォードは躊躇することなく理熾のその無茶を聞き入れた。


つまりそうした『出し入れする機能』を最初から持っているのだ。

であれば考えは逆転する…やっていることは<空間使い(ディメンショナー)>の《空間転移》と同じだという風に。


【空間魔法】が使えるがために、『追い出し』も『取り込み』も行える。

更には《転移門》を常設することから、スミレを含めた人の<空間使い>よりも一枚上手。

そもそもアレだけの数の魔物を魔力圏ごと強制転移させるのだから比較するのもバカらしい。

魔物のカテゴリーで強力な魔法士が魔法を行使すると、こうした規格外の結果が生まれるのかもしれない。


「要は迷宮は強力な…少なくとも門を固定・維持出来る<空間使い>なんだよ。

 もしかしたら儀式とか古代系の技術を併用してるかもしれないけど、そっちは考え難い。

 ほら、迷宮内の話でもあるから、わざわざ自分の中で『場の魔力を集める・整える必要』って無いよね?」


余りにも便利に使えすぎる迷宮の新事実に、ラザフォードを含めた全員が黙考する。

様々な知識を持つセルジは専門外であろうともどんな話も理解する。

ネーブルは現場判断を求められるために柔軟性に、セリナにしても宿泊行・代官業で鍛えられている。

裏の報告書(ラザフォードの話になるので全部は開示出来ない)でほぼ全てを網羅するこの場の面子の頭は高速で回る。


ネーブルが「そいつは…」と口にしかけたが言いよどむ。

この新事実が分かったところで対策など取れはしない。

人程度の魔力量では先ほどの《空間転移》を止めることは出来ないし、兆候を観測したところで大氾濫から逃げ切れない。

だとすると何か考えがあるのか、と全員が理熾を見る。


「予想だけどね。

 そういえば大氾濫の時に遠距離の魔法とかスキルが使えなかったよね。

 あれって多分、迷宮が大規模な《空間転移》を使ったから場が乱れてたんだよ。

 普通はそんなことならないけど、400体も魔物を外に飛ばせば妨害くらいされるよね」


というダメ押しの情報が積み上がる。

しかし検証することは今のところ不可能だ。

というより検証のしようがない。

過去には高位の<鑑定士>が、迷宮核の【診断】を試みたこともあったが、見通すことはできなかった。

それは格が違うからなのか、それとも全体像を見て使わねばならないのかさっぱり理由は分かっていない。

ただ『読めない』ということが分かるだけ…もしかすると【偽装】や【隠蔽】を持っているのかもしれない。


「ともかく。

 そう仮定するなら、実験するには魔境の迷宮はぴったりだ。

 討伐すれば近隣国のためだし、ラザフォードさんが管理出来ればプラスで僕達にも利益がある」

「何を実験するんだ?」


「え、そりゃ『扉』を置いて来るんだよ。

 それが出来ればラボリ・魔境間はスミレに頼らず行き来し放題だし」


あっさり言い放つ内容に「はぁぁ!?」と全員の驚きの声が響き渡った。

管理が必要かどうかを含めて実験は必要だが、行き来可能な扉が設置出来れば極めて画期的だ。

いくらガーランドが狭い国とはいえ、大都市間を移動するのに一週間近くも掛かる。

それが開通してしまえば『移動』と呼ぶのも馬鹿らしくなるくらいに一瞬だ。


一般解放されれば流通が大幅に改善されると同時に今までの街道沿いの集落が壊滅。

馬鹿馬鹿しいほどの手間と費用が掛かった役職者達の移動は今までの事を思えばほぼ出費がゼロ。

護衛者の財布に大打撃を与え、役職者達の仕事は一週間分余分に追加される。

さらには気軽に隠密行動が行えるがため、政争は更に過激の一途を辿ることになるだろう。

それが大きな利益と問題を抱える迷宮(ダンジョン)と考えれば、一気に利益へと天秤は傾く。

…といった貴族側の考えが分かってしまうネーブルは頭を抱える。


しかも一番の問題は流通の改善以前に他国への侵略にも使えることだ。

ほとんどの主要な都市は迷宮を抱える。

これは迷宮が魔物を取り込むことで周辺が比較的安全になることに加え、迷宮から魔物の素材が手に入るからだ。

流通に乗せれば金になるので、輸出品目の一つともいえるだろう。

ある意味鉱山や原油に近いものと言え、これらは総じて迷宮を抱える都市が金と人を惜しみなく掛けて管理している。

でなければ危なくて都市など構えられないからだ。


逆に言えば、管理迷宮に潜る体で門を設置してくれば国崩しは容易い。

足元にある迷宮から侵略者が這い出して来て誰が防げるというのだろうか。

一つの迷宮を操るだけでなく、連動する複数の迷宮を繋げばこうも非常識な事になる。

だが、そこに繋がる思考は今の理熾には無く、単に『便利でしょ』という意見しかない。


「ま、それがあれば魔物引っ張ってくるのも簡単だし、大き目の扉が作れたら大物も生きたまま持ち帰れるね」

「そういう問題じゃねぇよ…」


一瞬前まで『迷宮が<空間使い(ディメンショナー)>だからどうした』とか思っていたのを後悔したくなる内容だ。

余りの利便性の高さに頭が回るセルジとセリナは絶句しているのだから。

ネーブルは「はぁ…」と一つ溜息を入れて全員を見渡し断言する。


「この話は口外禁止だ。

 事態がでかくなりすぎる。

 ラザフォードだけの問題じゃなく『そんな発想が出る』って意味で主人(マスター)にまで手が及ぶ。

 いや、ガーランドと敵対してでもここに居る面子の誰かを引き摺って行くような危険思考だ」


今でさえ地上への転移魔法陣は使えるのだから、研究が進めば他の迷宮と繋ぐ方法も出てくるだろう。

しかしそれは『今』である必要は無い。

今後、迷宮や魔法陣の理解が進んでからで十分だ。


「う、うむ…だがギルにくらいは…」

「セルジの言い分は分かるが、知る者が増えると危険だ。

 実際に運用してみて検証してからの方が良いだろう。

 中途半端な形で世に出た方が混乱するだろうからな…」

「え、そんなオオゴトなの?」


「あのな…設置型のスミレを作るんだぞ?

 しかも24時間いつでも門を開けてるヤツがな。

 劇的に変わる移動の利便性を考えればどうなるか予想付くだろ…要は遠方のシミルがすぐ隣に居るとの同じだ」

「あー……」


何とも分かりやすい説明だった。

つまりネーブルが言いたいのはこっそり研究して技術として確立させ、対策まで含めて考えるという話。

独占する気は無いが、対抗策が無ければ大国相手に一方的に技術を奪われかねない。

そうなったら竜種ですら使おうとするシミルを止めることなど出来ないだろう。


「はぁ…毎度毎度、頭痛の種をぽろぽろ蒔きやがる」

「平和なのはネーブル達が何とかしてくれてるお陰だね」


「分かってるなら大人しくしてろよ」

「わはは」


「笑うな…頼むから『うん』と言え」

「それでラザフォードさん。

 ラボリってそろそろ自動運転しても大丈夫?」


「あからさまに話し逸らしやがったな…」


ネーブルは呆れるが、それで終わり。

理熾の後始末をする役目に既にはまり込んでしまっているのだから仕方ないと諦める。


「あ、あぁ。

 とりあえず法陣機雷の罠さえ止めれば問題ないよ」

「それじゃ準備が出来たらスミレ呼んで出発ね」

「動きが早いな…ほんとにヴァルトルに断り入れなくて良いのか?」


「心配性だなぁネーブルは。

 そこまで言うならアシュレイさん連れて行けば文句も出ないでしょ」

「余計に言われるわ!」


ネーブルの心労は募るばかりである。

お読みくださりありがとうございます。


というわけで、理熾の独自見解で魔物(生物)である迷宮の本質を引っ張り上げました。

少なくとも条件的には間違いなく一致していますし、神様も認めていますので間違いありません。

この世界では迷宮を『魔物認定』しているくせに、規模が大きすぎて『生物扱い』しないんですよね。

とはいえ、推測する材料としては随分と弱いものですが、周囲としては否定する材料がありません。


たまたま当たったと見るもよし、実体験によるカンと見るもよしって感じでしょうか(。。

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