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神様のおねがい  作者: もやしいため
第十四章:集う三神
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迷宮の真実

【神託】の内容もさることながら、スキルと明示していないので報酬は恐らく装備だろうと予想はつくものの、どういうものかさっぱりである。

【幻影の首札】(ファントムタグ)のような前例があるため、遊び心満載な気がする名前に警戒心は高まる。

嫌なら使わなければ良いだけなのでそこまでの心配もないが。


しかしここに来てようやく『スフィアの問題解決をしている気分』になれる大規模な内容だ。

戦力はいくらあっても良いが、よくぞ半年でここまで蓄えたものだと理熾自身考える。

それでもまだ足りないと思うのは、所詮ただの討伐者で商人。

国ですら対処出来ない問題をどうにかしなくてはならないのだから当然かもしれない。


「うーん…その辺の事情に首突っ込んで良いのかなぁ?」

「規制が掛かっているのは中層部以降で、魔境表層部への探索自体は問題無いな。

 この辺は調子に乗ってるヤツを放り込んで『反省』を促すか、生き残りから情報を回収してるんだろう…ってのは俺とハッサクの考えだ」


指揮官と諜報員の二人は何ともシビアな現実の見方をするものである。

少なくともギルドから依頼を出さなくてもただで精度の高い情報が手に入る可能性が高いのだから。


「んじゃ少し行ってみる?」

「おいおい、気楽に言うなよ。

 国や都市の遠征でどれだけ失敗してると思ってる」


「え、でも聞いてる限りは『拠点の維持』が難しいんでしょ?

 切り開くこと自体は出来てるんだし。

 それに僕達の場合、とりあえずラザフォードさんを迷宮核のところへ連れて行けば終わりでしょ?」

「確かに<迷宮創造者(ダンジョンマスター)>はそういうクラスだから問題は無い。

 けれど迷宮に辿り着くのも随分と大変だと思うよ?

 これでも過去に挑戦したことがあるからね。

 その時は森をほんの200mほど進むのに3時間くらい迂回して、諦めて帰るのに8時間くらい掛かったよ」


と言いながら「はっはっは!」と笑うラザフォード。

過去には魔境へと踏み込んだらしいが、余りにも魔物との遭遇率が高くて断念したらしい。

どう足掻いても、戦力という意味では彼に秀でたものは無い。

しかし特段隠密能力に長けているわけではないのに、むしろ半日もの長時間に渡って魔境の森に入り、生きて帰って来てる方が凄いだろう。

周囲に呆れの空気が流れるのも無理はない。


「ま、その辺はこの面子だし大丈夫でしょ。

 ダメなら僕かスミレが門を開けて逃げ帰れば良いよ」

「あぁ…なんだろうな。

 主人(マスター)と話すと途端にスケールが小さくなるよな…。

 適当な僻地にさくっと簡単な小屋建てに行くような話しに思えてくるぞ」


と呆れるネーブルだが、理熾はお構いなし。

実際本人はそう思っているのだから。


「ふふ、そうか…別荘だ!

 色々難しく考える必要なんか無いんだよ。

 ラザフォードさんさえそこに据え置ければ後は入れ食い。

 僕たちの都合で魔物を部屋に呼べて安全に狩り放題。

 単純な戦力アップ、良質素材の安定供給に加えて確実に魔境の切り崩しが出来る最高の案じゃない?!」


鼻息荒くずいっと前のめりに演説する。

狩れる者が常駐する必要があるが、それが出来れば金になる…どころか莫大な資金源とすら言える。

その驚くほど効果的なラザフォードの使い方(本人は『やる』すら言っていない)に周囲は呆れる他ない。

相変わらずとも言えるが、問題は魔物の遭遇頻度や強靭さだけではない。


「…一応、そのな?

 念のために言っておくからな?」

「うん、何かおかしいことでもあった?」


「いや、むしろ良案だと思うが、これは『災害』なんだよ。

 莫大な金と人と時間を使って必死に食い止めてる訳だ。

 それを簡単に攻略しちゃ周りの立つ瀬が無いし…何より周りに何て説明するんだ?」


と現在進行形で命を賭して頑張る国境警備隊的な大人達が膝から崩れ落ちそうな結論に、ネーブルは思わず同情しながら尋ねる。

そもそも魔境の迷宮を全て掌握してしまえば余りにも強靭な勢力が出来上がってしまう。

そこに<迷宮創造者>まで加われば魔物によって守られ、魔物によって侵攻する(とは限らないが)、非常に強力な勢力が、だ。


魔境攻略は周辺諸国の悲願だろうが、だからといって近隣に新たな脅威が発生するのを指をくわえてみているはずが無い。

結果、どう転んでもラザフォードの存在は戦争を引き起こす。

思考する者が暴力の権化である魔物を操作する勢力…。

暴力の管理がされた魔境だと考えれば、目の前の魔境どころの騒ぎではなくなるのだ。


「黙ってやるから大丈夫だよ。

 僕は別に領土が欲しくて魔境の切り崩しするわけじゃないしね」

「だったら何のために行くんだ?」


「え、ラボリ(ここ)に連れ帰るためだけど」


余りにもあっさりと言い放つが、周りの思考が追いつくかはまた別だ。


「は?」

「ほら、まだラボリの魔力量足りないでしょ?」

「それは法陣機雷を作りすぎt「足りないよね?」…うん、まぁ…」


ラザフォードの補足を笑顔のまま潰す理熾。

そう、このラボリは理熾達にとって高価な消耗品である、法陣機雷が無料で手に入るルートだった。

しかし全てを迷宮で賄うのは不信感が募る。

そこで1割の完成品を外から買い集め、2割程を素材を買い込んでフィリカが生産。

残りの7割をラザフォードがラボリ迷宮を使って生産した。

たったこれだけの工作でも、少数とゼロとでは雲泥の差が生まれる。


あれだけの法陣機雷を用意するのにどれだけの魔物の生ゴミが消化されたことか。

手持ちのほぼ全てを注ぎ込んでも足りず、遠征してまでかき集め、足りない分は迷宮内の魔物から多めに魔力を吸い上げた。

何せ生ゴミから生産する法陣機雷だ。

何処から買い集めるよりもラボリで生産するのが一番効率が良いから仕方ない。


だから飢餓状態とまでではないものの、今のラボリ迷宮はかなり疲労気味。

一刻も早く大量の食事を用意して休養させてやらねばならない。


「今のままじゃ迷宮が使える魔力も少ないしね。

 どうせだからアレクセイ程度の階層は欲しいかなって」


蓄えというわけではないが、魔物の総量が増えればかき集められる魔力量も上がる。

様々な魔力出費を差し引いても、余剰魔力の量は増えるはずだ。

たとえ余剰魔力の割合は変わらなくとも、少なくとも絶対値は明らかに増えていく。

階層を増すごとに強大になるということは、こうした余剰魔力を自由に使えるからに他ならない。


やはり大したことじゃないという風に理熾は語るが聞いている方は…


「リオ君、それだとこの周りが被害に…」

「住民もできた今だとその案は…」


特にセリナとセルジは気が気ではない。

貴族の矜持である『領民を守る』という制約がある以上、周辺への被害は認められるものではない。

ただ、一応領主は理熾なのだ。

無茶はしないと信じているが、役職を返上する覚悟をしての力ずくの進言や、ギルバートへの密告などが脳裏を過ぎる。


「あ、その辺も大丈夫。

 増改築用の階層を作るからね。

 ラザフォードさん、確か『空っぽの階層の複製』なら出来るよね?」

「あ、あぁ…確かに可能だよ」


この切り替えの早い状況にラザフォードはたどたどしく答える。


「大氾濫の主な原因は『階層の複製』に魔物が邪魔なだけのようだからね。

 現に大規模な内部の改修は大氾濫と同じ現象を引き起こすが、対象の階層を空っぽにしておけば魔物の移動は無いからね」

「という訳で。

 まだやったこと無いから実験にはなるんだけどさ。

 一旦4層を空っぽにして、そこを複製する予定。

 確か4と5の間に新しい階層が出来るんだったよね?」


「そのはずだ。

 つまり今居るこの5層が6層になるわけだな」


エクセルの行や列の追加のような感覚だろうか。

ラザフォード曰く、本来は複数階層を同時に複製するため『大氾濫』という現象になる。

本来魔物である迷宮は、その自前の能力をフルに使って周辺に被害を撒き散らすだけ。

能力を細かく使うことが出来ないわけではない。

そもそも周囲に気兼ねするような魔物は居ないのだから当然だろう。


その習性をラザフォードが操作して小規模に抑えれば、大氾濫を起こさずに改装や複製を行えて被害は無くなる。

相変わらず馬鹿げた能力だが、ラザフォード本人は何が凄いのか分かっていない。

これが出来る者と出来ない者との差なのだろう。


「つまり最下層が領主館、その上が複製用の階層になります。

 複製後、そのもう一つ上の階層はラザフォードさん監修の下、再加工して魔物に公開予定。

 今は魔力が足りないのでお休みさせて、その間に僕達は新しい魔物(じゅうにん)を確保しに行こう」


という理熾の提案にセリナとセルジは安堵の息を吐く。

元々周辺をぶっ壊すような無茶をする子供ではないものの、目的のためには手段を選ばないようなタイプ。

いや、手段を選んだ結果で、物は物、人は人という認識を持つため、仄かに行動に不安が滲む。

少なくとも『理解してくれる』と思っている現状では説明を省くので周りは気が気ではない。


「…魔境である必要は?」


しかし一人納得がいかないネーブルが問う。

その発想ならば別にスミレに頼んで魔物の群へ案内してもらえば良いだけだ。

わざわざそんな政治的にもややこしい危険地帯に行く必要など無い。


「え、好奇心?」

「…おい」


睨むネーブルに理熾は「冗談だよ」と笑って返す。

しかし色々と前科があるので誰も信用しない。


「本音は足掛かりかな。

 実は迷宮って【空間魔法】の使い手なんだよね」


またも飛ぶ話に誰もが「は?」と口を開けて付いていけない。

そこには迷宮のプロとも言えるラザフォードも含まれているのだから笑えてくる。

いつも通りだが、毎度毎度『この子供は一体何を言い出すんだ』と全員の頭を過ぎる。

しかしその都度、次に発する言葉にかき消される。

納得という体感と共に。


「よく考えてみて。

 何で『最下層と地上を繋ぐ扉』があるの?」


理熾はにこやかに問い掛けた。

まず周囲に浮かんだのは『お前が作れって言ったからだろ』という言葉で染まっていたが。

お読みくださりありがとうございます。


考え自体は子供でも思い付く内容ですが、普通は疑問に思ってそのまま放置する内容を繋ぎ合わせていきます。

神様が既にネタばらししてしまっていますが、理熾は理熾なりに迷宮を解き明かしていきます。

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