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神様のおねがい  作者: もやしいため
第十四章:集う三神
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新たな指針

五都祭(フィックスウォー)で関わっているのはファロだけではない。

忘れがちになるが、他国の使者も居るのだ。

それらを相手にしたのは、頼れる領主のギルバート。


元々そちらに話が行っていたので当然かもしれないが、よくよく調べてみると実はアルスにしか打診していなかった。

このことから世界規模のギルドの何処かに声を掛けると本部ならびに支部に報告が回るため、それを嫌ったのだろうと予想が付く。

どうやら秘密裏に理熾と顔を合わせておきたかったらしいとも。

それも示し合わせたかのようにカセレスとヴェローナの両方が、だ。


ただ理熾が所属しているギルドにすら話をしていないというのは警戒を示す一つの要素だろう。

その反面で担当領主に声を掛けているので、脅かすつもりもないという不思議な要望だった。

この二国間で何かしらの裏工作もありそうなものだが、そんな事実はハッサクの調査を経ても一切出て来ない。


打ち合わせ通り『五都祭への招待状』をそれぞれの国に送ると、感謝の言葉と共に『是非窺います』との返答。

本当に興味本位での打診だったのか、と背景を疑ったのが馬鹿馬鹿しくなるようなあっさり感だった。

こうなると国として動いているのではなく、一部の役職者が個人的に動いているのだろうとの判断を下すしかない。

この時点でハッサクの調査も一旦打ち止め。

流石に役職者の個人的の動きを外部の者が短時間で調べるのには無理がありすぎるためだ。


そうして開催された五都祭に参加したのは予想だにしなかった重鎮。

カセレスからは魔境との防衛線を維持する兵団長補佐ウルス・シュクル。

ヴェローナからも国家の戦団を率いる副団長アスセナ・フォンス。

つまり二国ともが戦力に携わり、機動力のある重鎮として『二番目』をガーランドへと差し向けたのだ。


このことには流石のギルバートも焦った。

提案自体が一ヶ月前で、連絡の待ち時間を思えば急な呼び出し。

お互いに誰が行くかの事前通告を行えなかった弊害だ。

むしろ良くぞその二人を送り出したな、という感心と注目度の高さに若干引き気味でもあった。

結局、見合う役職者として急遽アルスの騎士団長エリル・フィードを呼び寄せることとなった。

時間も無いためスミレの力を使うこととなったが、理熾としては他国の案件をギルバートが抑えてくれていたのでむしろありがたい話だった。

改めて<空間使い(ディメンショナー)>の利便性を思い、ギルバートとエリルが溜息を吐いたのは余談だが。


そうしてエリルを呼び出したギルバートは共に緊張の中挨拶を交わす。

二番目の二人が来た理由は色々と探ってみたものの、結論からいえば何のことは無い。

建前と思われていた『見たい』という要望がまさに目的だったのだ。


それと訪問した二人に面識はあっても、この場に来ることはお互いに知らなかった様子だったのも謎。

示し合わせで無ければ何故タイミングが重なるのか、と新たな疑問が浮上する。

とはいえ特に突っ込んで聞く機会もなく、ギルバートとエリルからは「大会を楽しんでくれ」以外の言葉が無い。

その結果、過去類を見ない楽しみ方が出来たのは良かったのか悪かったのか微妙なところだろう。


「お世話になりました。

 いや、本当に良い物を見せていただきました」


理熾の無茶を非常に好意的に受け取ったカセレスのウルス。

ガーランドよりも更に小さなカセレスは『国』と言いつつ、元イースの一都市でしかなかった。

魔境を発生させたことにより、周辺国に多大な迷惑を掛けて滅亡したイースの名前を引き継ぐことは出来ず、都市の名前を国名として立国した訳である。

このため周辺国では非常に勢力としては小さく、むしろ良くぞ魔境の対策を行っていると言えるほどだった。


「闘技大会でまさか商人が優勝を掻っ攫っていくとは」


実に楽しそうに感想を述べたのはヴェローナのアスセナ。

こちらもカセレスと同じく、イースの生き残りである領主が、祖国を取り戻すことを目的に建てた国。

イースの勢力圏の端っこだということもあり、魔境の影響を余り受けなかったが、小さな国土で侵食を抑えているため、ある意味強い国でもある。


そうしてガーランドから送り出した二国の使者の背を眺め、ギルバートとエリルは密かに『結局何の用だったのだ』と疑問符を浮かべていた。

理熾という個人を見るためにしては余りにも重鎮が派遣されている。

どう考えても何かありそうなものだが、恐ろしいほど何事も無く帰路へとついた。


ちなみにこの後ファロへの融資の話が行われ、こうしてようやく五都祭の全ての工程を終えたこととなる。



カセレスとヴェローナの歴史は浅い。

故国イースが管理迷宮(ダンジョン)を暴走させたのが全ての始まりだ。

発生した大規模な大氾濫(スタンピード)は、迷宮を管理していたルルの都市をあっさりと飲み込みんだ。

程なくして都市が保有していた戦力は壊滅し、止める者が居なくなった街中を魔物達が闊歩する地獄と化した。


本来であればそこで迷宮が枯渇した魔物を取り込み一旦収拾が付くのだが、たまたま取り込み周期の長い迷宮で魔物は拡散。

さらには運悪く大量の人と魔物が死んだことで魔力溜まりを形成していた。

辛くも逃げ延びた者達からの救援要請を受け、国家として動き出した時には新たに2つの迷宮が発生。

若い迷宮は貪欲に周辺の魔物を取り込み、すぐに成長して新たな大氾濫を引き起こした。

まさしく魔境の発生期と言えるタイミングだろう。


イースは初動段階で2000体ほどの魔物であれば駆逐しきれる戦力を派遣していた。

いくら大規模な大氾濫でも、一度に対応する数はしれている。

魔物達はエサがなくなれば拡散するため、局所的にこれだけの戦力が投入されれば都市を奪還・拠点化するのは十分な戦力だと判断して、だ。

しかしその目論見は外れ、3つの迷宮はお互いに呼吸し合うように交互に魔物を取り込み、吐き出していた。

『撤退する戦力』という、あたかも他国と戦争をするかのような状況へと陥ることとなった。


しかも相手は無尽蔵な迷宮が、ランダムに魔物を配置し直す戦場だ。

これでは陣を組もうにも乱入され、倒したところで回収出来ずに迷宮に掠め取られた。

こうしてゆっくりと、そして確実にイースの内部崩壊が始まる。


ルルの状況を知り、近隣都市が手を貸そうにもまともに情報が出てこない。

当然救援要請もなく、あやふやな情報と避難民がなだれ込むだけ。

こうなるといつその脅威が自らの都市に牙を剥くかも分からない。

最低限の自衛をするにも、戦力を融通する決断をするにも、余りに情報が少なすぎた。


更に外側に位置する他国は混迷を極める。

逃げ延びた者からある程度の事情は拾い上げられても、やはり規模や強さの情報が抜け落ちている。

そして国境を越えるために何より『正当な理由』が必要になる。

イースを含め、ごたごたが終わった後に『侵略行為』と言われてはたまらないからだ。


しかし踏み出すための材料がどうしても手に入らない。

裏付けしようにも、イースに送り込んでいた間諜(スパイ)諸共災害に晒されているので仕方ないのだが。


当然イース内に存在したそれぞれのギルド支部もリスクに見合わないと早々に撤退勧告。

ギルドとして依頼を出しても良かったが、依頼主不在の『国防』にまでなるとさすがに手に負えないとの判断だ。

魔境化した今ですら、この判断を誰も責めず、いっそ『英断だった』と評価されるのは、ギルド員・職員の希望者全員を引き上げさせた手腕からだ。

いっそのこと初期段階で目に見えて国が倒れていれば止めに入れたのに、とは他国からの後日談である。


結果、溢れた魔物がイースの国土を蹂躙。

それによって密度を増す魔力によって迷宮が乱立。

何処かで大氾濫を起こしているという『魔境』が完成した。

以降、派兵して討伐を試みるも焼け石に水。

むしろ押さえきれずに近隣諸国が魔物による侵攻を受けるという状態が続いている。


また、この魔境を引き起こした故国イースが、東西に分かれて勢力を凝縮して建国されたのが先の二国。

当然周辺国からの批難は大きかったが、矛先が向くべきイース国を預かる王侯貴族はまとめて滅んでいた。

このため魔境の影響を直接受けそうに無い国々からの嫌がらせは受けても、この二国に対する報復は表向き無かった。


何せ二国が滅べば、すぐ外側に位置する小国が魔境と隣接する。

生活の掛かっている隣接する国からはむしろ手厚い援助すらあったくらいだ。

堤防役を押し付けている、とも言い換えられるが、特産物が非常に優秀な魔物の素材という他国からしても輸入品の筆頭品目もある。

ある意味で吊り合いの取れた関係だとも言えるだろう。


この双子のようなカセレスとヴェローナに対するガーランドの姿勢は静観。

魔境を押し戻すだけの力は無く、さりとて侵食を許すほど弱く無い。

ただし防ぐので手一杯で魔境攻略の戦力としては役に立たず、むしろ周辺国の援助を受けているせいでガーランドにまで支援が及ばない。

そう、魔境と接しているのは何もこの二国だけでは無いのだ。

結果、防衛線としては役立つが、支援の関係で邪魔に感じるというのがこの二国。


いっそのことガーランドに吸収されても…という話も出るには出たがすぐに頓挫することになる。

ガーランドと隣接するものの、魔境(イース)を囲む形の配置なので『U字型』の国土になってしまう。

しかも両翼のカセレスとヴェローナの国土は細長いので、受け入れ側のガーランドが一方的に損をする。

いくら周辺国の要望でも、これでは『全面的に魔境を受け入れろ』と言われているようなもので断固拒否の姿勢を貫いた。

最終的に消極的な賛成によりカセレスとヴェローナがほぼ同時期に成立することとなった。


奇しくもガーランドの成立と似たような流れを汲んでいるが、実はガーランドはイースの元領地が独立した国でもある。

ある意味兄弟とも言える、かの二国との友好は、故国イースの無能さ加減によって結ばれているとも言えるだろう。


「というのがガーランド(ここ)とカセレス、ヴェローナ、イースの関係だ。

 ちなみに魔境ってのを簡単に説明すると『迷宮(ダンジョン)の乱立による大氾濫(スタンピード)群生地』だな」


説明するのはネーブル。

セリナ、セルジ、ネーブル、ラザフォード、そして理熾とここにはラボリの主要人物が全員揃っている。

他の面々はそれぞれ用があるので出払っていた。


「んー…隣り合う迷宮同士で魔物を融通し合って成長する?」

「正解だ。

 迷宮は一個で驚異的な魔物だが、それらは群生することで真価を発揮する。

 大氾濫という形で自分達のエサを撒き、別の迷宮が取り込んで増殖させて再度撒き散らす。

 しかも大氾濫を行う度に強大化する迷宮の特性から、一定以上を超えるともう手が回らん。


 ファロが何度も大氾濫を止める機会を得たのは、魔境という災害がすぐ隣にあるからだ。

 つっても魔境産の魔物は他の迷宮産よりも、地上に出た時に蠱毒化まですることがあって随分と強いんだがな。

 ちなみに迷宮は魔力溜まりから生まれるとされているから、蠱毒化して魔力に汚染された地区に発生する可能性が非常に高い」


「うわぁ…時間が経てば経つほど最悪になるタイプだね。

 でもそれ<迷宮創造者(ラザフォードさん)>が居なかったら多分確信とか持てないよね?」

「そうだな。

 一定の予想は立てられても、魔境で調査なんかしてる暇は無い。

 それよりも切れ目無く迫る目の前の敵を潰さないと自分の身が危ないんでな。

 後で検証しようにもいろんな意味で蹂躙済みだから、復旧作業を含む事後処理に追われて大した調査も出来ない」


「思ってたより泥沼なんだねぇ」


理熾はそんな感想を述べる。

今は五都祭を終えてラボリに戻って一週間が経過している。

ラボリの開拓事業を含む五都祭の下準備に思いの外時間と労力を使ったため、久々の長期休養と装備・道具の整備。

さらにはコッペリアの微調整に費やしていた。

ついでに酒盛りも。


そして理熾が魔境に興味を示す理由は簡単。

五都祭の話が出ていた時に新たな【神託】が発生していたからだ。

タイミングが良かったのか悪かったのか…ただ言えることはばっちりだったということだ。

結果的にヴァルトルのメルカノ家の当主ガートルードと代理のユスカ、さらにはギルドマスターのファロと縁が出来たのだから。


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【神託】

魔境攻略

達成内容:表層部の一部切り崩し


スフィアにおいて日常的に対策することを求められる災害が大氾濫(スタンピード)

しかし、現実にはさらに甚大な被害をもたらす魔境というものも存在する


この魔境災害は難易度を明確に周知するために危険区域(ハザードエリア)を公表し、表層部、中層部、深層部、最深部と線引きされている

ガーランドと接する故国イースは、国土の7割にも及ぶ土地が魔境化し、今もジリジリと裾野を広げ続けている

この災害に対抗するため、遠征によって表層部の一部の切り崩しに成功するも、数年程で侵食の憂き目に遭い、魔境攻略は遅々として進んでいない


この魔境攻略に精を出し、表層部とされている区域を平定せよ


報酬

自在の竜尾

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ネーブルの話と【神託】の内容からすると、今回のものは随分と難易度が高かった。

お読みくださりありがとうございます。


今回は故国とそれに関わる二国、ガーランドのお話でした。

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