【幕間:神域】神様の再認識2
「主様!
理熾様がオルトロスの討伐にッ!!!」
ラボリ開拓という名の長い休養。
そんな私の考えが儚くも消え失せたのは、スフィア時間で3週間も経たない頃だった。
そうだな…日本語では『人の夢』と書いて儚いと読むのだったな…などとしょうもないことを考える。
今までの労働時間を思えば半年くらい寝て過ごしてもおつりが来るというのに、未だに労働依存症を患っているらしい。
いや、開拓をこなしているので一般的には働き通しなんだろうが。
「まぁ、後で行くみたいなことを言っていたからな」
「単独ですよ?!」
「はぁ!?
Bランクを一人でか!」
急いで意識を向けると門を抜けた後だった。
それもラボリ側へ。
思わずクーリアへと視線を向けるが、首を振るだけ。
どうやらクーリアが私に報告を持ってきている間に終わったらしい。
たった十数秒でBランク討伐とは…育ったな理熾…。
そんなことを考え、ラボリでの激戦や、知らぬ間に終わっていたクラス選択で強化された理熾のステータスを開く。
「な…なんだこれは…?」
膝から崩れ落ちかねない事実が目の前に広がった。
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名前:ミカナギ リオ
年齢:13
職業:武神・重時空間士 New
称号:両立者/開拓者/使役者/殲滅者
Lv :43 (+6)
HP :4184 (+480)
MP :4477 (+583)
SP :165 (-205)
筋力:2052 (+302)
敏捷:2038 (+303)
体力:2377 (+324)
知力:3674 (+606)
魔力:3263 (+602)
幸運:1442 (+266)
所持金:32014カラド
武器
神威の護手(自動修復)
黒鎖鋼の剣(腐食耐性/切断)
黒鎖鋼の槍(腐食耐性/切断)
紅蓮鉄鋼の斧(衝撃拡散/壊滅)
士魂の強弓(属性付与/剛力/過速)
魔女の一撃(全属性/凶刃/増幅/収斂/契約)
手ごろなナイフ
防具
常盤の外套(流体/最適/適温/対刃/吸魔)
常盤の戦着(流体/最適/適温/対刃/吸魔)
戦場の健脚(流体/最適/軽量/超重/硬化/適温/吸魔)
装飾
繋ぎの指輪(空間魔法MP削減)
幻影の首札(性反転/偽装) New
深化の竜牙(瞬発/部位強化/竜鱗/結界/契約)
吸命機構[血魔石](吸命/保存/返還/契約)
吸魔機構[血魔石](吸魔/保存/返還/契約)
その他
静穏の鞍(重量軽減/衝撃緩和/姿勢補助)
紅蓮鉄鋼の投剣(小)(超重量/加速)
紅蓮鉄鋼の投剣[血魔石](超重量/加速/結界/契約)
起爆投剣[血魔石屑/炎陣](結界/契約) New
起爆投剣[血魔石屑/破撃](結界/契約) New
愚者の塊体(超重量/形態変化/契約)
スキル
パッシブ
身躯活性Lv4 New
消費削減Lv5 New
自然調整Lv5 New
金剛Lv2 New
武術指南Lv6
魔術指南Lv6
魔力感知Lv6
魔力操作Lv8
体術Lv12
剛力Lv5
成長力強化Lv8
魔力増幅Lv6
直感Lv4
従属Lv3
消化Lv2
調理Lv3
アクティブ
精神力吸収Lv4
魔戦氣Lv4 New
索敵Lv6 譲渡中
隠密Lv5 譲渡中
威圧Lv4 (+2)
隠蔽Lv7 (+1)
限界突破Lv6 (+1)
連携Lv4
解体Lv3 (+1)
ユニーク
武神Lv4
・武器の心得(全武器装備開放:パッシブ)
・戦技の極意(全武技使用開放:アクティブ)
・二刀流(同系武器同時使用)
スキル取得Lv8 (+1)
・SPを消費してスキルを取得できる
-消費SP制限の撤廃
※ユニークスキルはSP50以下に限る
干渉魔法Lv4 New
・重力/時間/空間
天上の眼Lv3 New
・鑑定/診断/罠士/遠視
業
虚弱化Lv0 (解除)
備考
討伐ランクD
ステータス開示拒否権
妖精憑き
奴隷:5人所持(内3人孫奴隷)
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放置しすぎたとは思わない。
いや、確かに『理熾の速度』を思えばこのところ放置だったかもしれんが…。
ラボリの開拓をしつつ、【神託】の確認にスキル回収とクラス選択を終えただけでこれか。
まさかラザフォードの持つ【消費削減】と【自然調整】をあっさり手に入れるとは…。
転移特典とも言えるほど使い勝手の良い、生き残るためのスキルだから持っていて損は無い。
しかし手に入れるほど基礎は…あぁ、なるほど【MP消費減少】を筆頭に基礎スキルがあったのか。
足りないスキルはSPを余分に支払って習得したようだ。
ただ、【スキル取得】は統合するスキルではないからな…コストはそれなりに高い、と。
それでも全てを集めるよりは随分と安くなっているのは僥倖か。
「なんだこの【起爆投剣[血魔石屑/炎陣]】とやらは?」
「理熾様考案、神功作の《結界》を使った封滅武器だそうです。
先日の法陣機雷を取り付けた投剣で、消耗品ではあるものの威力は非常に高い…の試作型、ですかね。
《結界》は剣身に刻印するので血魔石に負けない出力が見込め、投剣以外はゴミを使っているので安上がり」
「だから《結界》は攻撃魔法ではないとあれほど…」
呆れるが、設計思想を聞いていると何とも面白いことを考え付くものだと感心する。
物理的でありながらも魔法的な攻撃力を持つ武器を作るのだから。
つまりどちらにも有効な攻撃手段という意味だ。
初見の相手がこれを突破出来るとは思えないし、見知っていても的確な行動に移れるかも疑問だ。
殲滅者あたりにぶつけてみると面白いかもしれないな。
「これだけの能力があってもLvは低い。
オルトロスを瞬殺するには程遠いぞ?」
「いえ、門をくぐって【紅蓮鉄鋼の投剣】の乱射です。
いきなり顔を合わせて驚いているところにあの速度で撃ち込まれては無抵抗にやられますよ」
何とも可哀想な魔物だな…たまたま理熾を目にしたがために命を失くすとは。
ともあれ、これでまた理熾の装備が充実することになるだろう。
Bランク程の巨体となれば装備を一新することすら出来るのだからな。
どれ、ついでに授けた妖精でも見ておくか。
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名前:リコ
種族:妖精
Lv :23 (+1)
状態:オンライン
HP :974
MP :1487
SP :---
筋力:680
敏捷:694
体力:693
知力:1905
魔力:2024
幸運:680
ユニーク
幻想術Lv3 (+2)
ストック:0
索敵Lv6
隠密Lv5
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ふむ…Lvの上がりが早いのは今更かもしれないが、やはり成長率が異常だな。
「あ、リコを見てるんですか?
もう少し育てば私が降りても壊れませんよね?」
「器はな。
理熾が詰め込むからだろうが、余剰領域が狭すぎる」
「器が無事なら問題ありません!」
「目の前で『リコの精神を食い潰すモノ』を見て敵対されなければ良いな?」
私は「守護天使なのにな」と付け加えてクーリアの頭を冷やす。
今や盟友とも言える妖精を乗っ取られそうになったら、相手の質など関係なく排除に動くだろう。
どう考えても計画倒れの内容だというのに「あぅぅ…」と凹むクーリアを眺めつつ思考する。
にしても魔法生物に近いといってもこの魔力と知力の伸びはありえない。
…が、低Lvの時から希少魔法をバカスカ使わされれば仕方ないか。
相当な負荷が掛かっただろうに…下手をするとこのまま精霊化するかもしれないな。
そうなれば確かにクーリアを降ろす素体としても使えるかもしれない。
それもこれもリコの成長次第だが。
「それで主様。
次は何を目指すのですか?」
一通り凹んだ後でクーリアが私に問うた。
そうだな…解決したい問題はいくつかあるが…。
「次の山場は辺境から近い魔境攻略になるだろう」
「魔境ってあの迷宮の群生地ですよね?」
「今すぐでなくても良いんだがな。
理熾は準備をするタイプだから、表層部の様子見くらいは済ませておきたい」
「なるほど、魔境ですか…。
何となくポルンを過剰分裂させて引き連れて『大掃除だぁ!』とかやりそうですよね」
「一人で大氾濫を起こすのか…やりかねんな。
まぁ、始めは対策のキッカケだ。
後3ヶ月…いや、1ヶ月ほどしたら発動する【神託】を用意しよう」
思い直したのは『理熾が大人しくしているか』という私の中での天秤によるものだ。
まず三ヶ月も待つはずが無い。
何も無いからと何かを始められると私としても手を出しにくくなるからな。
空気を読まずに出す【神託】ほど邪魔なものは無い。
「理熾が無茶をしないようにな」
「いっそ時間が掛かる地道な【神託】を用意してみては?」
「良い案だが不採用だ。
理熾の場合、攻略法を考えて実行に移すから結果的に時間は掛からない。
しかも無駄な【神託】を出せば神域の評価を下げかねない。
既に理熾の配下にはラザフォードのような前例があるからな…見切られる可能性もある」
「…さすが理熾様ですね!」
「お前は治ってもお前だな…」
呆れながら作業へと戻る。
しかし、理熾が対策できない内容ならばその案も悪くないのだがな、と思いを馳せる。
地道、か…『ラボリ開拓』というのも基準が難しいし、『戦力の育成』も疑問だ。
いっそのこと『爵位を手に入れろ』とか…は、辺境伯に望みさえすれば貰えそうか。
『○○のスキルorクラスを目指せ』なんてのは一番意味が無い。
そもそも修行を要するタイプではなく、使うスキルを入れ替えて戦力とする異色のタイプだしな…。
あれやこれやと考えていると
「あ、あの主様。
ルーが炎上してません?」
走る思考を止めたのはそんな声。
焦りを抑えた声色に「それ、本当に大丈夫ですか?」という副音声が聞こえる中、ギギギと多世界ルーを見下ろす。
「え、いえ…。
違うなら良いのですが、ルーの『選定を受けた者』が無差別に大陸を凍土に変えてますが…」
「はぁぁぁぁ!?
ちょっと待て、あの糞ガキ!
何で『マクロ機能を使ってみよう』の【神託】で、大陸でも稀有な肥沃な大地を殺しに掛かってる?!」
自身の技術を扱うためのチュートリアルとも言えるような内容の、誰でも出来る非常に簡単な【神託】だ。
それをうきうきとした表情で下級術式をループする形で繋いで暴走させていた。
そう、あれは正しく『暴走』だ。
当然その【神託】には『やりすぎ注意』の項目もあり、最悪術者が死亡するとも併記していたはずだ。
あの馬鹿の中ではマクロ使用者は術者ではないらしいがな!
「えっと…【神託】の準備を…?」
「違う、【神罰】だ!」
あの土地は30年もかけて落ち着かせたのだぞ!?
いや、それだけじゃない。
あの穀倉地帯が死ぬと主食が回らず暗黒時代の幕開けだ。
他の獣と違って人が飢えに直面すると周囲を狩り尽くすからな!
少し手を貸してやると調子に乗りおって…これだから変数はめんどくさいのだ!
「主様、予期せぬ暴走が発生しました」
「予期せぬ?」
「術者の能力で吐き出せない術式を、周辺の空間に満ちる魔素を食い潰しながら強制起動しています。
単体の術式自体は初期魔法の《冷却》と非常に消費の小さなもので、展開に支障が無いのが問題のようです」
「…なるほど、選定されるだけあってしぶといらしい。
強力な生存能力が代償を周囲に小分けにして肩代わりさせてる訳か…。
それをマクロを使ってループを…何故術式を止める手段が組み込まれていないのだ」
回り続ける術式と、周囲に肩代わりをさせ続ける強力な生存能力。
消費しないと勘違いして使い続けるのは仕方ないかもしれないが…何処かでおかしいと気付けよ。
選定されただけで能力が跳ね上がるわけが無いだろうが。
まさか『隠された俺の力が!!』とか思ってるんじゃないだr…思ってるのかあの馬鹿は。
ある意味才能ではあるものの、あんな馬鹿にそんな過大な能力など不要だろう。
いっそ死んでくれれば止まるというのに…そうか『強制停止』か。
「即時【神罰】の発令。
内容は『選定者の強制緊急停止』とする。
履行確認後、再度当人へ【神罰】の発令。
内容は『マクロ機能の剥奪、魔法技能の封印』だ。
また、最上級司祭に【神託】として選定者の扱いを言及する」
と、02257に指示を出して経過観察。
ちなみに司祭への【神託】は簡単に言うと『目を離すな』、『厳しくしろ』、『次は無い』だ。
これ以上事態をややこしくするならば暗殺者派遣するぞ?!
とりあえずの緊急対応を終えて思わず私は「はぁ…」と息を吐く。
驚かされはするものの、理熾の何と行儀の良いことか…。
これに比べれば以前に引き起こしかけた蠱毒くらい可愛いものだな、と思い返しながら作業へと戻った。
お読みくださりありがとうございます。
ラボリ開拓中のものなので装備や道具はまだまだ出揃っていませんが、久々に出てきた神様から見ても人の枠を越えそうな理熾のステータスでした。
多世界ルーではまさかの選定者が国土を穢す事態に発展していました…神様業務も大変ですね。
最初の出会いで理熾に対して『動物園の園長』と表現したのがよく分かる光景かと思います(笑
それとお知らせです。
リアルがバタついてきたのでまたもしばらく1週間更新とさせて頂きます。
とりあえず話の流れはざっくり考えてあるので、時間が取れれば書けるかと思います。
一ヶ月ほどで3日更新に戻せれば良いのですが…。




