森の歩き方2
初めての敵、オークとの戦闘シーンです。
残酷シーンありなのでご注意下さい。
オークにはまだ気付かれていない。
やはり隠密の恩恵は計り知れない。
ぁー…こんなことなら、ゴブリンの武器投げて保管しておけば良かった!
これじゃ単純に殴り合いするしかないッ!
などと今更思っても仕方の無いことである。
亜空間から石を取り出し、オークの右膝を狙って思い切り投げつける。
避けられたらそれまでだが、膝を壊せれば動きが鈍る。
奇襲という優位性を手にするには一撃必殺か、弱化させるかに限る。
殺し切れるだけの情報が無いので、弱らせることにしたのだ。
「ガッ!」という命中音と共にオークが右膝から崩れる。
瞬間に理熾が走り出す。
未だオークは『何故右足が痛いのか』が理解できず混乱中である。
武器である両刃の剣を地面に突き立ててバランスを取っている。
2撃目は当てやすく、武器を落とさせる狙いで右肩に狙いを定めて殴る。
当った瞬間に「ゴキィ!」と肩の骨が砕ける嫌な感触がする。
オークは反応すら出来ずに右肩を始点にひっくり返る。
当然武器などとっくに手放している。
オークが持つ剣はただの鉄の剣だが、ゴブリンの武器を思えば十分なシロモノだ。
初めて握った両刃の剣だが、違和感無く扱える。
理熾はその突き立った剣を引き抜き、即座にオークの首を刎ねる。
右の膝と肩が砕かれているため抵抗すらなかった。
まさに奇襲のお手本のように、ずっと理熾のターンで戦闘は終わった。
っはー…緊張したぁ…にしても、意外と石って強いなぁ。
あ、討伐部位って牙だっけ?耳だっけ?
………うん、まるっと保管しよう。
答えの出ない疑問は棚上げする。
亜空間にオークを放り込む。
ちなみにこのオークは、地球の豚と同じで食べると美味しい。
むしろランクの高い魔物の肉ほど味が良い。
魔物のランクは強さで決まり、強さの目安は魔力量による。
このため、魔力量が高いほど討伐の難易度も上がり、同時に食材としての価値が高い。
肉の解体とかしたことないしなぁ…習うべきかな?
……解体スキルとか無いのかな?
最初に比べてSPが余り気味なので気楽にスキルを取れる。
とはいえ、軽い感じで思ってても実際は使わないのだが。
うーん…隠密のお陰で奇襲掛けられるんだけど、その分戦闘らしい戦闘にならないんだよねぇ。
これじゃ単なる経験値稼ぎにしかならないや。
必要なもんだし良いんだけどさ。
そんな事を思いながらオークの死体と鉄剣を亜空間に仕舞う。
強い装備ではないものの、これで殴るだけじゃなくなると喜ぶ。
って、そうだ。
とりあえず粗悪品を投げとかないと。
先のオーク戦での遠距離攻撃手段が無いことを悔やんだばかりだ。
すぐに実行する。
錆びた剣2本と短剣1本を投げて保管しておく。
残りは棍棒と先ほど手に入れた鉄剣だ。
よし、後は戦闘中にタイミング良く撃てれば完璧かな。
んー…これ使うなら投擲スキル持ってた方が良いかも?
と思いつつも準備を進めていく。
投擲関連のスキルに関しては知識がゼロなため、今は手に入らない。
そもそも空間魔法を物理的に使うなんて発想が無かったので仕方が無い。
スフィアでも珍しい空間魔法ではあるが、その中でも明らかに特異な使い方を考案している。
森を進む間もスキル案を出して諦めるを繰り返していると斧を持った新たなオークを見つけた。
今回も理熾の方が早く見つけたのだが…。
うん、今回はガチで行こう。
ちゃんと運動性能を見ないとね。
立ち回りも練習しないと…まぁ、死闘だけど。
と思い、奇襲を見送る。
やることは簡単だ。
音を出して自分を見つけさせるだけ。
ガサガサ
すぐさまオークに見付かり、戦闘開始。
石と先ほどの鉄剣を取り出し、まず石を投げつける。
今度の狙いは一番避けにくい胴体の真ん中。
皮の防具をつけているが、当れば少しくらい動きを止められる算段だ。
ヒュッ!
という音とともに投げられた石はちょうど胸…心臓辺りに「ガッ!」と音を立てて当る。
しかしオークは全く意に介さず突進して斧を振りかぶる。
たかが石つぶてじゃ突破できないかぁ。
っと、危ないっ!
恐らく同じ鉄で作られた斧だと理熾は推測するが、重量も使い手も違う。
まともに受ければ剣が欠けるし、むしろへし折れる。
振りかぶられた斧をしっかり見て、剣で斬撃の軌道を逸らして受け流す。
ドンッ!
と斧とは思えない音をさせて地面に突き刺さる。
力はやはりかなり強いようだ。
下手な受け流しだったせいか腕に痺れが来ている。
幸い身体も剣も痛めていない。
もっと相手の力をキレイに流さないとどんな装備を持っていても無駄かな。
それより威力が凄い…速度は無いけど、その分受け間違うと死ねる。
判断は一瞬。
地面に食い込んだ斧の柄を持ち上がらないように踏み、そのまま足場にして切り込む。
当然一撃必殺で首を刈るッ!
が、『斧の重さ+理熾の体重+踏み込み』程度ではオークにとって苦にならないらしい。
足場にしていた斧をあっさりと持ち上げられる。
たまたま踏み込みに合う形で斧を持ち上げたために、凄い勢いでオークの真上へ跳んでしまう。
飛び越えざまに剣を、とも思ったがタイミングが外れて間に合わない。
仕方が無いので木の側面を壁に見立てた三角跳びでオークの背後から剣を振る。
首を狙うも、体勢とタイミングが悪く背中を浅く切るに留まり、オークの左足近くに着地する。
「グギャァ!」と怒声を上げながら理熾を捕捉して左腕を振り、肘で顔を狙うオーク。
理熾は理熾で着地後すぐに前へと踏み込み肘を回避する。
そうして理熾は向き直り、改めてオークと対峙する。
むぅ…速度は無い。
怖いのは遅い振りに騙されて受けたときの衝撃かな。
そんで斧自体は避けられるからそれほど怖くないな。
それより首の位置が高すぎる…やっぱり足から狙うべきかなぁ?
理熾に嗜虐趣味は無い。
オークにしても刻む気も無く、首を一撃で落とせればそれが最善だった。
そのためにはオークの頭の位置が高すぎる…。
頭を下げさせないことには倒せない。
思考をフル回転させて作戦を練り、決める。
後は行動だ。
「ああぁぁぁぁァァァァァァァ!」
理熾は思い切り剣を振りかぶり、今から行くぜという風に声を上げる。
声の乗った攻撃をオークは斧で受け止めようと防御に回すが、その瞬間理熾は亜空間に剣を格納する。
剣と斧の打ち合う衝撃に備えていたオークはたたらを踏んでバランスを崩して顎を下げてしまう。
計画通りに進んだことを確認し、オークの正面に一気に踏み込み、思い切りアッパーを顎に入れて顔をカチ上げる。
手甲の拳を顎にクリティカルヒットしたオークは歯を砕かれ、意識までも飛ばして身体はゆっくりと背後に倒れていく。
今の内にと改めて理熾は亜空間から振った勢いそのままの剣を取り出してオークの首を落とした。
「ふぅぅぅぅ……。
思ったより危なかったなぁ」
とは理熾の言だが、オーク1体を無傷で討伐した者の言葉ではない。
そこで重要なことを思い出した。
「って、あぁあ!
せっかく準備したのにナイフとか発射してないっ!」
やはり戦闘経験はまだ足りない。
戦闘に関しての思考速度が足りなさ過ぎるのだ。
それは余裕の無さに繋がり、余裕が無いから行動が限定され、危ない橋を渡らざるを得ない。
はぁ…全然だめだなぁ。
一応危なげなく倒せはするんだけど、余裕が足りない。
オークの動きのパターンを覚えてからの方が良いかもなぁ…?
人型だから、対人にも応用利きそうだし。
そう反省して亜空間にオークと装備を仕舞う。
今回手に入れた斧も同じ鉄製らしい。
これで鉄の武器が2本手に入った。
うーん…やっぱりある程度のメイン武器は用意した方がいいんだろうなぁ。
近接戦闘が必要になるように短剣系で物凄い良いのでも探すかなぁ?
そんなことを思いながらそろそろ帰ろうかなと時間を気にする理熾。
森で一泊するほど、まだ戦闘も野営も慣れていない。
次はもっと『奥まで行く』というのを目標にして、今日はアルスへ帰るのだった。
お読み下さりありがとうございます。
割と無双しちゃう理熾ですが、クラスが強すぎるだけです。
理熾のスキルの使い方もかなりアレですが。




