一撃の重さ
ついに初の戦闘シーンを挿入です。
ここに来てようやく戦う理熾が書けてうれしい限りです。
スキル説明も終え、次は実践になる。
全く使ったことの無いクラスとスキルなのだから、物凄く楽しみな理熾。
いや、そもそも一度の戦闘も経験していないのだから、第三者視点なら不安しか残らない。
「さて、リオさん。
ようやく皆さんに追いつきました。
おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」
何だか良く分からないやり取りである。
この段階でやることと言えば、スキル特性を使用して戦うこと。
実践というより、まさに実戦らしい。
「それでは始めていきましょう」
「えぇ…超いきなりだ!」
「実力が分からなければどうにもなりませんので。
リオさんの得意武器ってありますか?」
「ぁー…いえ、無いですね」
「流石です。
では始めはゆっくり行きますので頑張ってください」
格闘術や武神の特性である、無手だと勘違いされてしまう。
得意武器が無いというより、扱える武器が無いだけなのだが。
戦えるはず無いじゃん!?
等と思っているとすでにセンガが体勢を整えている。
センガの武器は…特に見当たらない。
武器が無いって事は魔法使いってことか…なッ!?
そう判断した瞬間にセンガが突っ込んでくる。
しかもかなりの速度で。
気が付いた時にはもう目の前に居て、右手を振りかぶっている。
これは…格闘術!?
何も装備をしていない状態から突っ込んできたのだから、無手。
そうなれば格闘術系だと当然そう思う。
が、現実は違った。
振り下ろされた右手にはいつの間にか短剣が握られている。
武器を誤解し、初手で遅れ、防御のタイミングを失し、状況を把握できた現段階では手遅れ。
全てを把握した時には回避不能のタイミング。
どうする事もできずに振り下ろされる短剣を眺める。
当ると痛そうだ…いやだなぁ。
そう思った瞬間、「カァン!」という高い音を立てて空間が弾けた。
「なっ!?」
確実に入ると思い、体重を乗せた一撃を弾かれ、体勢が崩れながらセンガが驚く。
何が起こったのか分からないのは理熾も同じだが、行動を止めない。
自分が動ける最速を目指して身体を動かす。
弾かれたセンガの右腕に狙いを定めて攻撃を入れる。
崩れた体勢を整える前に、理熾も同じく右手で、手首に一撃。
理熾が予想していた速度より遥かに速く、鋭い速度で放たれた。
「ガッ!」という音と共に拳がセンガの右手首に直撃する。
なかなかの威力だったのか、センガの顔が歪み、右手から短剣が滑り落ちる。
即座に目標を短剣に切り替え、右腕を引き戻す形で左腕を振り、空中でキャッチした。
そのままセンガの首筋を刈るように叩きつける。
見事に首に吸い込まれた短剣を理熾は眺める。
攻撃を受けたセンガの頭はゴトリと床に崩れ落ちる。
この間の理熾は無意識だった。
闘争本能…いや、むしろ生存本能による迎撃である。
やらなければやられると思ったし、何より刃物での攻撃だ。
当ればただではすまない。
そう、ただではすまないのだ。
「だ、大丈夫ですか!?」
短剣で首を切りつけておいて大丈夫なはずが無い。
少なくとも正当防衛と言える状況ではあったが、そういうことではない。
先ほどまで相手をしてくれていた講師の首を斬ったのだ。
理熾の精神状態はまさに混乱の境地だった。
そんな中。
「げほ、ごほっ!
いやぁ…まさか瞬殺されるとは思いませんでした。
やはりリオさんの実力はかなりのものなんですね」
と、そんな事を言ってセンガが上向きに転がった。
頭が落ちたように見えたが単に崩れ落ちただけらしい。
首はきちんと繋がっている。
え?
何で生きてんの?
生きていて良いはずなのに、そんな事を思ってしまう理熾。
とりあえず混乱する頭で状況を整理していく。
僕が攻撃されて、何故か短剣が弾かれる。
その瞬間危ない右手を攻撃して、反対の左手で短剣取得。
すぐさま危険人物の鎮圧…した後が、今。
うん、なんという流れ作業。
意味が違うけど。
そんな事を思い、少し落ち着いた。
やはり人間余裕というものは大事だと心に刻む理熾。
「無我夢中でして」
「そうなんですか?
軽くあしらわれた感しかありませんでしたが」
センガが飄々と言い放つ。
とりあえず生きていて良かったと思い、ついでに何故かという疑問が生まれる。
原因である握った短剣を見てみると、竹光だった。
要は木剣というやつだ。
通りで軽いはずだよ…苦も無く振れたもん。
そんな事を思っているとセンガが続けた。
「それにしても流石に武神と言うべきでしょうか。
その短剣、重さは『金属製と同じ』なんですよね。
不慣れな得物で即座に切り返せるなんて凄いですよね」
「え?」
「武器を手足のように扱う…。
これはどの武器を持っても最終目標でしょう。
当然、武神スキルはそれを出来るからこそ何でも扱えるんですよ」
武神はやはり体術の発展系なのだろう。
身体を自由に扱う体術。
そして武器を持ってすら発動する体術が武神。
あぁ…そりゃ強いはずだよ。
だって武器まで含めて自分の身体なんだから。
それを体感で教わったのがこの瞬間である。
センガに裏切られた(ギルド内でありえないが)と思っていたが、講習の一貫だったのだろう。
「本来は初心者の力を試すためだったんですけどね。
講師役が負けちゃいけませんよね…。
ちなみに、初撃を弾いたのは何だったんですか?」
体を起こしながら何だか清々しいとも言える雰囲気で問いかけてくる。
センガにとっても防いだ手段が分からないらしい。
「え、僕も分からないんですが…なんだろ?」
「ふむ…固いものに当った感触と音がしましたね。
固い、か…空間魔法でしょうか?
無詠唱というのは確かに珍しいですが、無いこともありませんし」
防いだ手段について予想を立てる。
「MPが減ってれば確実ですね」との言葉があったので、ステータスを確認する。
確かに50ほど減っている。
え、ていうかたったMP50で講師ランクの攻撃防げるの?
咄嗟なんだから、もっと使ってそうだけど…?
あぁ、逆か…もっと消費を調節できるのか。
結論付けてセンガに向き直る。
MPが減ってることを告げると予想が当ったことにセンガはホッとする。
「たまたま防げただけだと思います」
「うーん…だとしても、いきなりの実戦での防御に使えるほど簡単ではないはずなんだけれど…」
「僕は『痛いのは嫌だな』って思っただけですしね…。
特に何もしてませんからね…使い方学ばないとなぁ…色々と」
「なるほど。
戦闘スタイルというモノがまだ無いんですね」
戦闘スタイルも何も、そもそも戦闘すらまともにしていない。
体術や武神は『体を扱えるだけ』なので、戦い方を知らないと役に立たない。
そして戦い方が全く分からないのが理熾である。
うっわぁ…。
最上位スキル持ちで型から覚えるとか言ったら怒られそぉ…。
理熾にとっては生命線なのに、どう考えても誰も教えてくれなさそうである。
とはいえ、一番難しいのは思ったように身体を動かすことだ。
だからこその、型だったり、戦い方なのだ。
咄嗟の際に困らないように、身体に覚えさせるという意味で。
だが理熾は既に咄嗟の瞬間でも、的確に動かせる身体と能力を持っているので、実は人に教わる必要は無い。
ただただ効率的な攻防方法を知ればいいだけだ。
それを今はまだ分かっていない理熾は冷や汗を流しながら答えるしかない。
「アハハ…まぁ、頑張ります」
こうして初めての実戦はあっさりと終了してしまった。
その後も時間が許す限り、研修生・講師含めての実戦を行ったのだった。
お読み下さりありがとうございます。
近況でも上げたのですが、データ吹っ飛んだのでこれから不定期になる可能性があります。
書き溜め出来るといいのですが…。




