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神様のおねがい  作者: もやしいため
第十二章:未開拓迷宮ラボリ
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もう一つの戦場2

亜竜のベノムを軽く解体し、目ぼしい素材は服の《拡張空間》に仕舞い込んだ。

余り時間が取れなかったからかなり雑になったが無いよりは良いだろう。

それよりも周囲に魔物の気配が満ちてきたな…少し遊んでやるか?


周囲に目配せして確認した数は12。

前方にはゴブリンが2、人の頭くらいの種子の魔物のシードクラウンが3。

右回りにオーク1にハイオークが2、猫科では珍しい群れる魔物のアッシュキャット5。


何とも熱烈な歓迎だな。

…狙いはベノムの肉か?

格上の魔物の肉は成長を促す良質な餌だからな。


「アシュレイ、じっとしてろよ?」

「手伝わなくて良いの?」


「はっ!

 お前は自分の身だけ心配してろ」


俺はそう鼻で笑って踏み出す。

まずは数を減らすか…そんなことを考えている内にもシードクラウンを2体それぞれ二つに斬り分ける。

二つに割った片割れを、最後の1体に向けて蹴り飛ばすと同時に反動で一歩引き下がる。

一歩引いた空間を《炎弾(フレアバレット)》が通り過ぎた。

それと同時に前に踏み込み、身内をぶつけられたシードクラウンまで到達した。

怯んでいたシードクラウンの上段から刀を落とし、他のやつ等と同じように斬り分け次へと向かう。


その間に少し先のゴブリン2体が断末魔と共に燃え上がった。

アレはもう助からんだろうな。

背後から《炎弾》の援護射撃はありがたいが…その軌道はさっきまで俺が居た場所だからな?

完全に俺を射線に捉えてやがる…蹴り下がって避けなきゃゴブリンじゃなく俺が燃えてるところだ!


「あぶねぇな!

 大人しくしてろって言ってるだろ!」

「大丈夫、レモンなら避けるから!」


「ふざけんな!

 何で味方の攻撃(フレンドリーファイア)気にして戦わないといけないんだよ!?」


抗議するが聞きゃしねぇ。

バカスカ撃ち込む魔法は、俺の存在を隠すための牽制であり、敵を殲滅する一つの火力だ。

にしても森の中だというのに火を平気で使うのはアリなのか?


アシュレイは俺の癖や殲滅の優先順位をまるで知らない。

それに連携するほどの技量も無いから、その辺全部を無視し、固定弩(バリスタ)のように魔法を放っているらしい。

まったくもって迷惑な話だが、あいつくらい分かり易い動きなら避けるのはそう難しい話じゃない。

それに近接主体の俺では近付く手間が必要な距離のある敵を撃ち落としてくれるのはありがたい。

行くのは良いが、引き返すまで護衛対象(アシュレイ)が無防備なのは心臓に悪い。

何より近付く俺と、俺ごと狙うアシュレイを相手に、敵は右往左往するしかないしな。


「殲滅完了。

 思ってたより何とかなるな」

「ボクのお陰だね!」


「まぁ、否定はしないさ」

「えっ!」


そう、たとえ「えへへ…ま、ボクも少しは出来るってことだよ!」と照れたように笑うアシュレイを俺は否定はしない。

俺を省みず、敵だけ見て攻撃したくせにと少しイラっとはしたが、実際助かった面も大きかった。

『狙える』と判断した相手も的確で、実際に12体の内5体を火達磨にして沈めたのはアシュレイだしな。


だが魔力量は大丈夫なのか?

使い切って疲労困憊の子供を背負って走るのは嫌なんだが。

…いや、流石にその辺は理解してるだろうな。

足手纏いが増えるだけでどれだけ危険かくらいは。


「アシュレイ、どっちが良い?」

「え、道知らないの?」


「馬鹿だなお前。

 知ってたら聞く訳無いだろ」


溜息を一つ入れてやれやれと首を振る。

「馬鹿とは何さ!」と詰め寄って、握り拳で抗議してくるアシュレイを適度にいなしながら考える。

にしてもどうするかな…適当に歩けば良いのか?

いや、俺よりはやっぱりハピリアとアシュレイに任せる方が確率は高いか。

少なくとも面倒な敵だけは回避出来そうだしな。


「まぁ、とりあえずお前と幸運の獣(ハピリア)が行きたい方向へ行こうぜ。

 俺が闇雲に引っ張っていくより何とかなるだろ」

「え…そんな投げやりな…」


「ははっ、心配すんなって。

 敵は全部斬ってやるからよ」

「うーん…何となくあっち?」


「おう、行くか」


そう言って進む。

子守って大変なんだな、と思いながら。



ハッサクの回収はえらく簡単だった。

いや、そもそもあいつは現状を正確に把握していたらしい。

気付くキッカケになったのも、木の枝に立って周囲を見渡していたからだ。

そう、地上から木々の上に居る俺達を発見するのは難しくとも、木の上に立てば遮蔽物の無い空で俺達を見付けるのは容易い。


後は合流を考えるだけだが、その足元に蠢く魔物の群れが邪魔をしていた

結局は【暗殺の極意】を駆使して木々を渡りながら近付いたハッサクを回収した訳だ。

いやはや、あんな拙い足場(木の枝)を頼りに近くまで来るとはな。

後はスミレが《障壁》の足場を用意して合流したんだが…【暗歩】を使ってもそんなこと出来ないはずなんだが。

恐らくはハッサクの技量だろうが…空を歩けなくても何とかなるんじゃないのかあいつは。

その辺にも主人(マスター)の悪知恵が潜んでいそうなのは気のせいかね?


(何にしても。

 ハッサクが合流出来たのは幸運だ。

 俺達だけじゃ道に迷っちまうからな)

(上から見てて何が『道に迷う』だ。

 高みの見物しておいて…世の斥候職が泣くぞ?)


緊張感の中、そんなことを【以心伝心】でやりあうが、俺の考えは本音だ。

ラボリという空白地帯を中心に回ること自体は難しくない。

空を歩くならば誰でも出来ることだろう。


だが判断力を問われるのは指揮官(おれ)で、そのための情報を集める斥候職(ハッサク)は必要だ。

今回なら気配察知という護衛や、戦場の機微において必要不可欠なものだからな。

攻撃手段は相変わらず近接一辺倒だが、ハッサクが居るだけで対応策は格段に増えるからありがたい。

俺の意識も護衛作業にまわす必要が無くなるしな。


(で、ハッサク。

 到着して早々だがレモンかアシュレイの位置は分かるか?)

(俺が先行してネーブルを見付けた訳じゃない。

 迷宮(ダンジョン)内では一緒だったんだが、外に出てからははぐれてて分からんな)


あぁ、そうか。

そういえばココが迷宮外だとは説明してなかったな。

それでも俺達が居たことで迷宮外だと確信したのか。

話が早くて助かる。


そのまま作戦を伝えた上で改めて話を詰める。


(そうか、一応地図上ではこの辺りに居るはずなんだが)

(…ネーブル、レモンを殺す気か?)


(まさか。

 むしろ生かすため(・・・・・)にやってるんだがな?)

(それは…意味が違うだろう…)


まぁ、分からなくは無い。

周囲全てが木々に囲われた中に放り出されれば方向感覚を失うからな。

放り出された三人の中で、一直線にラボリに向かえる知恵や技術を持つのはハッサクだけだろう。

それを思えばレモンのラボリ復帰は絶望的だ。


(まぁいい…指揮官(おまえ)が決めたことだ。

 誰も文句は言わないだろう…それで、俺は何をすれば良い?)


切り替えは早い。

既に俺達は戦場に立っているからな。

余分な思考は邪魔だろう。


(周囲警戒と俺達の護衛。

 防ぐ分には指示出してくれればライムかスミレのどっちかがやる)

(いつも通りで助かるな)


(それとは別に『はぐれ』の魔物を見付けてくれ。

 レモン・アシュレイの痕跡も一緒にな)

(と思ったら一気に難易度が跳ね上がった…。

 この状況で個別の気配が追えると思ってるのか?)


(出来ないやつには頼まん)

(はぁ…人使いの荒いやつめ)


ハッサクは諦めたかのように溜息と共に一度俯いたが、次に顔を上げた時には意識を切り替えていた。

そこら辺の温いやつらと違ってやり易くて良い。

俺もこの状況で見付けられるとは思ってないが、ハッサクならやりかねない。

それをするだけの力を持つし、方法も同じく。

まったく、頼りになるやつばっかりだ。


そんな感想を持ちつつスミレの様子を伺うと、熱心に周囲を見渡している。

いや、『視野を広げろ』ってそういう物理的なことじゃないからな?

指揮官(おれ)の意図を読め』って意味だって分かってるよな?

分からなきゃ聞くくらいは出来るよな?


色々と思うところはあったが、一度の戦場で全をそつなくこなすことは無理だ。

一つずつ理解すれば良いし、今回は雰囲気だけでも良いだろう。

そうれば次回以降、『今回よりも温い戦場』では気を張ることも無い。

まぁ、最初にこれだけ不利ででかい戦に出れば肝も据わるだろうがな。


新たにハッサクを加えた俺達は、ラボリの周回速度を上げるために歩調を速めた。

お読みくださりありがとうございます。


お盆前なのと、昨日・今日と熱が出たことで感想の返信が出来ていません。

今日はもう更新作業だけして布団に引き篭もりますが、感想は後日必ず返信します。

やはり感想に限らず、ブクマや評価などのフィードバックは嬉しいですしね。


それではおやすみなさい…。

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