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神様のおねがい  作者: もやしいため
第十二章:未開拓迷宮ラボリ
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問題児

理熾のフォロー(というか感想)が功を奏してか、それともただ勝負に負けたからか。

散々親馬鹿具合を発揮した後、最終的にガートルードはアシュレイのラボリ行きを許可した。

ただし改めて


「死ぬことは許さん。

 嫁入り前の娘が怪我することもな。

 あ、いや…たとえ嫁に行ってもダメだからな?」


と過保護振りを発揮していた。

心配してもらって嬉しいやら、難しそうな注文で困るやらでアシュレイは微妙な顔をして頷いていた。

対して理熾にはガートルードがわざわざ「娘を頼む」と言ってきた。


理熾にこれ以上負荷を掛けても良いことが無いというのはガートルードも理解している。

むしろ十分な荷を背負っている現状を思えば、依頼として『頼む』というのも憚れる。

だからこれは依頼ではなくお願いであり、『護衛しろ』という訳ではなく『気に掛けてくれ』という程度のものだ。


しかしその内容には多くの意味を含んでいた。

ガートルードの中での理熾は、メルカノ家当主をやりこめ、アルス領主に認められている逸材だった。

加えて理熾がアシュレイに対して身分の差など気にせず、余りにも平坦な対応を取っていること。

貴族的な話で言えばそこに恋愛感情が一切無いのはありがたいはずだろう。

そしてアシュレイが理熾を気に入っているという点で信用が置けると思ったのだろう。


そんな評価を貰う理熾は基本的にはちゃんと子供をやっている。

嫌なことは断るし、良いと思ったことは止められてもやる。

ただのワガママという認識をされないのは、やたらとこじつけが上手いからだ。

なのでガートルードの印象は若干どころかかなり際どい方向に間違っていた。


そんなことがあった前日を思い返しながら、理熾はギルバートと領主館の執務室のソファーで向かい合う。

理熾の隣にはスミレもちょこんと座っている。


「先日ガートルードの使いが来たぞ。

 リオ君のことを知りたい、とな。

 また何かやったのか?」

「『また』って何ですか。

 単にアシュレイさんの手伝いしただけですよ。

 ガートルードさんは何処にも出てない僕の情報が欲しかったみたいだけどね」


「それはまた難しい情報収集だな。

 出せない情報ばかりなのでガゼルも『ランクを上げられない』と悩んでいたんだから」


まさにその通りなので、理熾の情報など何処にも無いはずである。

そして理熾自身がガートルードに語った情報が一番深く、重要な情報だった。


今日はこれまでの学園での色々と、アレンの家であるガルヴァーニ公爵家相手の今後についてだ。

特にアレンを排除したからメルカノ家(ガートルード)共犯者にす(引き入れ)るなど、子供の考えることではない。

悩ましい内容ではあるものの、色々と仕方ないところがあるとギルバートは苦笑いする他無い。

何よりこれらは全て既に『終わったこと』なので、今更どうしようもないのだから。


「それで、ラボリってどんな感じですか?」

「聞いているとは思うが、第一陣が3日前。

 一部先発隊として中には入っているが、基本的に迷宮周辺を開墾中。

 更地に出来た場所から、テントから家屋へ移行…そういえば暫くはこっちに居る予定なのかね?」


「あ、はい。

 向こうで呼ばれる理由も無いだろうし…無いよね…?」


顎に手を当てて俯き考え始めるが、横のスミレは我関せず。

スミレの知る中では特に呼び出されるような話は無いからだ。

メルカノ家とは話がついているが、学園とガルヴァーニ家からの呼び出しはあるかもしれない。

そう納得して顔を上げた。


「いや、わしは分からんぞ」

「うん、大丈夫なはず。

 呼ばれてもすぐじゃないだろうし」


と返し、質問には理由があると思い直して「何かあるんですか?」とギルバートに聞いた。

表向きにはガーランドを出た理熾がアルスに到着するのは1週間後。

となれば最速でも1週間は時間が空いているはずである。

便利屋という訳でもないのだから、別にすべてに対応する必要も無い。


「ラボリ側での進捗具合によってはスミレを連日借りたいと思ってな」

「あ、そんなに順調なんですか?」


「まだ一度しか派遣してないから分からんが…。

 少なくとも今までの比じゃない速度で進むはずだ。

 伝令不要で定期的に無制限に荷物を運べるからな。

 かなり厳しい日程を組んだが、いざとなれば人員を入れ替えるのもありだ」

「そっか、毎日行き来が出来ればそんな方法あるんだね」


「『流通』は国を問わず、貴族が抱える重要課題なのでな。

 その制限が外れるのならばいくらでも方法を用意出来るものだ。

 まぁ、その制限が簡単には外せないというのが一番問題なんだがな」


と笑う。

移動する為の食料や備品、労力が無いだけでこれほど楽なのかと。

何日も持ち歩くことを前提にすればほとんど荷物など持てないのだから当然でもある。


「あ、そっか。

 最悪寝に帰って来ても良いんですね」

「朝夕の定期便さえあればな。

 だが職員でもないスミレを確保し続けるのは難しい。

 それに代わりも居ないのだから、余りにも重きを置きすぎる訳にもいかない。

 不慮の事態で急に役目を降りられた時に対応出来んからな」


「何が起きるか分かりませんしね」

「面倒だがな」


「そうだギルバートさん。

 僕、今日からラボリに行く予定だけど良いですよね?」


理熾はちょっとそこまで的な気軽さで未開拓迷宮に乗り込むことを話す。

今まで興味を感じさせなかったのに、急に言い出したことにギルバートは面食らう。


「中に入るのかね?」

「ちょっと見てみたいかなぁって」


「アシュレイ殿に伝えたように、未開拓迷宮は危険だぞ?」

「ものを知らない僕に危険は今更ですよ。

 それにネーブル達が居るから多分大丈夫」


「わしとしてはありがたいがね?

 何せ学園迷宮アレクセイの最速攻略パーティの斥候だからな」

「…なんで知ってるの?」


理熾は本当に何となく不信に思った。

【直感】(シックスセンス)が何かを訴えた訳ではない。

これは理熾本来のカンの良さから来る警戒心だった。


「やぁ、リオ君奇遇だね?」


タイミングよく部屋に入って来たのは今朝ガーランドで分かれたアシュレイだった。

馬車か何かで一週間後に到着する予定だったはずである。

少しでもラボリ行きを後回しにしたいガートルードは理熾に対してそんな説明をしていたはずだ。


「…さてはスミレに無理強いしたね」


隣に座るスミレに視線を送ると、ビクリと肩を揺らす。

罪悪感にでも苛まれているのだろうか。

別に問い詰めるつもりも無いし、『スミレのしたいこと』を止める気も無い。

アシュレイがスミレに対して行った交渉やお願いの結果であるなら、二人を非難することもしない。


「そんなことしてないよ。

 単にリオ君達を見送った時に『一時間後に迎えに来てね』ってお願いしただけだから」

「本当にそれだけ?」


たったそれだけでスミレが動くだろうか。

顔くらいは見せるかもしれないが、連れてくるほどの理由にはならない。

たとえアシュレイに捕まったとしても、スミレなら《空間転移》まで使えばいくらでの逃げる方法はあるのだから。

すると


「『何時間でも待ってるから』って」

「うっわ…性質が悪いよ!

 スミレの良心を人質に取るとか!」


「リオ先生に習ったから仕方ない」


明らかに間違った用途で恩人に胸を張って言うことではない。

だが残念ながら周囲が納得してしまうような言葉ではあった。


「しかも人のせいにしだした!

 僕はそんな子に育てた覚えはありません!」

「背中を見て育ったから仕方ないかも?」


「何か口が上手くなってる!」


ぎゃーぎゃーと二人してやりあう様を見てギルバートは『やはり子供だなぁ』とにこやかになる。

アシュレイがソファーに座る、スミレとは反対の理熾の隣に腰を下ろして話に参加する。


「はぁ…それでちゃんとガートルードさんには許可貰ったんだよね?」

「うん、実力は認められてラボリ行きの許可も貰ってるよ」


「違うよ。

 馬車に乗らないことだよ」

「『一人で一週間後に入るのと、リオ君と一緒に今すぐ入るのどっちが安全かな?』ってぼやいたら泣いてた」


「うっわ…可哀想…。

 しかも最初から僕狙いじゃんか」


どうやら理熾の『ラボリ行き』の言葉を廊下で待っていたらしい。

護衛ではなく、旅の共として『一緒に入る』のならば確かに貸し借りは増えない。

頭の良いアシュレイは、少しずつ『状況の使い方』を学んでいる証拠だったが、理熾としては笑えない。

やり込めていたのはもう遠い昔へと追いやられそうである。


「えー、リオ君一緒に行かないの?

 良いじゃん、どうせ入るんでしょ?

 探索パーティに入れてよ。

 じゃないとお父様が面倒なんだよー」

「はいはい、分かったから。

 でも言うこと聞かなかったら追い返すからね」


「やった!

 ありがとうリオ君!」

「あぁもう…どうしてこうなった…」


そんなことを嘆くも仕方が無い。

ギルバートもアシュレイが無事である方が都合が良い。

積極的に理熾に押し付けることはしなくとも、パーティ離脱の手伝いはしてくれない。

つまり周りを固められているという訳だ。


「最近の子供は頭が回って困るなぁ。

 素直に言うことを聞いているかと思えば何かしら画策しているんだからな」

「あー確かにアレンさんも大概だったしなぁ」

「いや、それリオ君に対して言っているからね?」


そんな光景を見てギルバートが思うのは子供に振り回されるのはやはり大人の方なのだろうということだ。

この二人を相手にするのだから、学園のシルヴィアも大変だったろうと気の毒になる。

今現在大変なのは自分自身だったりするが。


「では昼食後に一仕事頼もうか」

「うん、何すれば良いのかな」


「スミレに《転移門》と運搬。

 リオ君にはラボリ内の調査。

 1層目だけは探索を指示しているからそちらの情報提供をしよう」

「分かりました。

 それと何で1層だけ?」


「期間が短いのが一つ。

 小手調べというのが二つ。

 そもそも探索チームじゃないというのが三つ目だ。


 最初の組は開墾・建設チームだからな。

 今回以降の探索を楽にするための情報収集がメインという訳だ」

「あー…普通そうだよね。

 いきなり突っ込んで行ったりしないよね」

「あれ、何か言葉に棘がある気がする」


隣で微妙な顔をするアシュレイ。

理熾は笑顔で手を叩きながら


「成長したねアシュレイさん!」

「リオ君はやっぱり酷いよ!?」

「まぁまぁ、二人とも。

 せっかくだから領主館(ここ)でお昼を食べていきなさい」


ギルバートが事態を収拾させ、食堂へと移動した。

ついでとばかりに理熾の配下を呼び出して昼食会となった。

親指を立てて歓迎してくれたダグの作る料理は相変わらず美味かった。

その場ではラボリへの対策も話し合われたので、どちらかと言えば会議には近かった。

しかしそれでも理熾の配下達は、相変わらず奴隷扱いされていないと噛み締めていた。

お読みくださりありがとうございます。


リアルが忙しくなり、書く時間が取れなくなりましたので、暫く一週間に一度の更新にしたいと思います。

早い段階で二日更新に戻せるように努力します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ダンジョンの新規開拓、チートものにはお約束ながら楽しみな展開! やたらとハイスペな部下奴隷ズの活躍も期待です。 [気になる点] ヘイトキャラのアシュリーが堂々と寄生してるの、いい加減気持ち…
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