依頼人を探せ2
「居ない…」
溜息混じりに理熾が愚痴を吐くのも仕方ない。
流石に徒歩で一人で行くには距離と危険がありすぎる。
そう判断してネーブルがハッサクは一人、理熾側は全員で馬車を乗り継ぎアシュレイを挟み撃ちにしつつ探すことにしたのだ。
しかしながら着いた村を虱潰しに巡っても一切情報が出てこない。
つまり理熾達が各駅停車のように調べた村にはまだ到着していないことだけが分かった訳だ。
逆にハッサクの方はあっさりとアシュレイの足取りを見付け、次へ、次へと足を運んでいるらしい。
たった一人だとは言え、理熾達のように『無いことの証明』を強いられる側ではないのでかなり楽なのだろう。
当然根底にはハッサクの諜報能力の高さもあるだろうが。
そうして3日掛けて移動し、理熾達とハッサクは合流を果たした。
その結果が最初の言葉である。
「一つ前の村を出発したという話が出ているんだが…」
ハッサクの言葉に力が無い。
しかし誰一人その言葉を疑っていない。
つまりアシュレイは少なくとも、理熾達からすると一つ先の村を出発したのは間違いない。
「ということは、出戻ったか、到着してないかかな?」
「そもそも寄り道と言うのも考えられるな」
理熾とネーブルは可能性を挙げる。
少なくとも前の村では一切情報が出ないのだから、すれ違いは無い。
「一度それぞれ一つ前に戻るか?」
「うーん…少なくともアイン村には着てないことは確かだよね。
ならハッサク側へは確認に行った方が良いかもね」
「スミレ、ハッサクをダダ村へ送ってくれ」
ハッサクの問いに理熾が判断、ネーブルがスミレに指示を出す。
距離はそれほど無いのでスミレも「少しお待ちください」と一言告げて《転移門》を開いた。
相変わらず誰も待っていない。
「ハッサク、1時間で落ち合おう。
情報が更新されて無さそうなら全員ダダ村に拠点を移そう」
ネーブルの指示にハッサクが頷きを返して《転移門》をくぐった。
たったこれだけの工程でのあっさりとした移動だが、馬車に換算すると半日以上の距離である。
スミレと理熾以外の面々はこの光景を見る度に『<空間使い>ってずるいよな』と感じる。
当然の感想だった。
「向こうを拠点にするの?」
「そりゃそうだろ。
ココには着てないならダダ村が最後の情報だ。
ココに残っても良いが、ハッサクが追い越したとも思えない。
だから恐らくはダダ村から何処かへ向かったのだろう。
それが森か山か川なのか知らんが…少なくとも街道でないことだけは確かだ」
「ということはダダ村周辺の探索に切り替え?」
「そうなる。
まぁ、周囲が森だから飯に困ることは無いだろうがそう何日も野宿は出来ない。
相手は公爵家の一人なんだからな」
「んー…でも何か一人で盗賊の拠点に突っ込んだらしいよ?」
「マジかよ…。
その後先を考えないっぷりは俺の知ってる子供と良く似てるな」
「そうなの?
ならそのお子様には『危ないよ』ってちゃんと注意しとかないとね」
「その子供はお前だよ!!」
とネーブルが理熾にでこピンを見舞うが、やはり負傷したのはネーブルだった。
そんなやり取りを経て、ダダ村捜索を行ったハッサクはあっさりと「やっぱり居ないな」と断言した。
綿密な調査の結果、最後に確認されたのは2日前。
定期便の馬車に乗れなかったらしく、「馬車以外での移動は?」と聞いていたらしい。
小さな村にそれ以上の上等な移動手段がある訳が無い。
その結果、歩いて出発したらしい。
完全に単独行動をされると捜索出来ない。
加えて危険度が段違いなのだ。
「馬鹿にも程がある」とハッサクが嘆くのも無理は無い。
「だとしても街道沿いならハッサクが気付かないはずが無い。
結論付けるとダダ村を出発後、その辺を放浪している可能性が高いな」
「森の中で2日行方不明って大丈夫なの?」
「一般人なら厳しいだろうな。
だが一応戦えるんだろう?
どの程度かは知らんが、生き残っている可能性は高い。
が、範囲が広すぎるんだよなぁ…目的地でも分かれば別だが…」
「出たのはやはりアインの方角だ。
だがそこからは分からんな…2日前の昼らしい。
その後通った馬車が見付けていないということは、道中の何処かで森へと入ったんだろう」
「そうなると問題はどっちへ向かったかかな?」
「普通に考えれば南は無い。
過去に遠征が失敗していることを思えば、立ち入る方がおかしい。
逆か…『おかしいから立ち入る』という可能性があるのか」
「………『おかしい』って、アシュレイさんのための言葉?」
「カルロが語る思い出話を含めると否定出来る要素が無い」
「確かにね…」
結局ダダ村を基点として、アルス方面へと向かいつつ街道を外れて探索する他無いらしい。
あてが無い以上、捜索範囲を広げるしかなく、大変面倒な作業になりそうである。
「探すとして、編成は前と同じで良い?」
「ダメだ」
「何でさ」
「今回はハッサクが居るのと、ライムに主人は可哀想だ」
「ひっど!」
淡々と語るネーブルの言葉に理熾は反論する。
が、一切頓着せずにネーブルは続ける。
「と言うわけで、主人、俺、ライム。
ハッサク、レモン、スミレの2パーティで捜索する。
捜索先は基本的に街道を挟んで可能性が高い北側をハッサク、南が俺達だ」
「無視!?」
「主人煩いぞ。
俺達が南を担当するのは主人に不得意分野が無いのが一つ。
可能性が低いというのが一つ。
それとスミレは護衛を必要とするが、こっち側は要らんから戦力的にも南を受け持つ。
以上の想定で反論、代案何かある者は居るか?」
理熾を適当にあしらいつつネーブルは話を進める。
ネーブルにしてみればアシュレイが死体になっていようがどうでも良いが、理熾は気にする。
それに『手を打った』という建前が無くては失敗した時に言い訳も立たない。
そもそも護衛対象にすら出会えていないのだから、言い訳すら必要ない状況ではあるが。
「よし、反論は無い様だな。
ハッサクを中心に北は任せた」
「了解。
スミレ、全員に血魔石を」
「は、はい!」
ネーブルが一任するハッサクがすぐにスミレに指示を出す。
血魔石を暴走させるだけで<空間使い>の感知に引っ掛かり、即座に急行出来るという利点を活用しない馬鹿はいない。
戸惑いながらもそそくさと全員に配るスミレを見ながらネーブルが
「主人、いつまで呆けてるんだよ?
スミレと同じようにさっさと血魔石を配れ」
「うぅ…最近ネーブルが厳しい…」
こうして班分けが終了し、その日の内に出発した。
お読み下さりありがとうございます。
あぁぁぁ…ストックがぁぁぁ…無くなったら…。
うん、諦めよう(‘‘




