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神様のおねがい  作者: もやしいため
第三章:始まりの街
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初めての冒険

スフィアに来てから理熾が自分から『冒険しよう』と思ったことはありません。

やむにやまれぬ事情があっただけです。

今回は仕方なくと思いつつも少しだけ冒険してみます。


9/17訂正

ギルドを出て、ギルバートに会いに行く。

場所はアルスの外に併設されている詰所だ。

待ち合わせはしていないので居ない可能性もある。

今回は前回みたいな早朝ではないので、誰にはばかることも無く詰所を訪れた。


詰所では守衛数人が雑談をしていた。

休憩時間なのだろうか。

平和な時間が流れている。


「すみません、ギルバートさん居ますかー?」

「いや、ギルバートさんは居ないぞ。

 何か用なのか?」


その中の1人が答えてくれたが、残念ながら居ないらしい。

約束もしていないし居ないのならそこまでこだわる必要も無い。


「いえ、挨拶したかっただけなので大丈夫です。

 ありがとうございました~」


とあっさり引き下がる。

しかしこのまま宿に戻るというのも魅力的だが、いかせんまだ日が高い。

というよりは昼になったばかりだ。

『時間を無駄にする』ということは今の理熾には出来ない。

そう思いなおし、本日の仕事再開である。


「あ、でもちょっと外へ出たいんですが良いですか?」

「ん?

 あぁ、だったら身分証明書見せてもらえるか?

 出入りの際は全ての人に見せてもらってるからな」


出入りの際に確認するのは単に『今誰が街にいるか』を確認するためのようだ。

だから最初に入った際に身分証明かステータス表示という2択だったのだろう。

把握していないと危なっかしくて仕方ないから当然の対応なのだが…。


 これ、毎日確認するの大変じゃないのかなぁ…?

 そもそも街の出入り口ってここだけじゃないのに。

 出入りの時間まで全て書かないと住人なのに『街に居ない人』が出てきちゃうけど…?


とは思うものの、その辺は理熾に全く関係が無い。

守衛を目指すわけでもなし、ギルバートの仕事を知りたいわけでもない。

けれど何故だか最近こういう問題点を粗探ししているような気がする。

問題すら出題されずに回答しろと言った馬鹿神のせいに違いないだろうが。


ちなみに今回理熾の対応をした守衛は守衛の仕事を全く果たしていない。

確かに守衛は『街を守る者』ではあるが、根本的には『街の人を守る者』でなければならない。

だから最悪『アルスを捨てる選択』をしたとしても、人命を優先する。

なのに理熾ほど無防備(村人A)の者を街の外へ出したのだ。

本来であれば実力や背景を聞き取りして、ようやく出発になるはずが、それら一切無かった。

街の外というのは、それほど危険がいっぱいなのだから。


 何だか全部を疑ってるみたいで嫌だよねぇ。

 まぁ、【神託】が出てこないってところを考えると何事も無いと思うんだけれど。


と外へと向かう理熾はのんびりしたものだった。

アルスの街を出ると、やはり草原だった。

つい数日前にこの平原を突っ切ってきたことを思うと「我ながら凄いな」と理熾は思う。

何せ向こう側が完全に霞んでいるのだから。


 凄いなぁ…空気は澄んでるはずなのに、向こう側が見えないって…。

 日本じゃまずこんな光景見れないよね。


日本どころか、地球上であれば地平線を見ることは難しい。

水平線であれば見られる場所はあるのだが、視界に人工物の無い地平線というのはほぼ無いに等しい。

まぁ、そんなこと理熾は知ってるはずも無いのだが。


 この平原で、敵…というか魔物かな?

 は、余り出ないっぽいんだよなぁ…それこそ野うさぎとかしか。

 後はモグラみたいなの(グラウンドラット)とか、たまーにでっかいミミズ(サンドワーム)とか?

 どっちも地面の中だから、出てくるまで分かんない。

 しかも両方とも地力(って何だろ?)を回復する益獣らしいから、倒すとむしろ怒られる。

 ほんと世の中ままならないよね!


平原はそもそも開拓地に選ばれるほど平和な場所である。

現在ここに手が入っていないのは単に森への対策がされていないからに他ならない。

平原でもそうなのだが、魔物・魔獣といったものはどこにでも現れる。

そして森とは、そういった人間にとって迷惑極まりないものを隠す場所なのだ。

だから対策をしなくては危なっかしくて住めないという訳だ。

最低でも柵、出来れば土壁、完璧を期すなら城壁といった具合に、森や周辺に対策をせねばならない。

だからこそアルスの城壁は森を隔てているのだから。


 って言っても、アルスってぎりぎり近くまで森なんだよねぇ。

 まぁ、平原の方は何故か開けてるんだけど、その他は城壁から20~30m程度で森だし。

 僕でも森まで走って10秒掛からないんだけど、こんな近くて大丈夫なのかな?


平原を横目に、アルスの城壁の外周を回っていく。

これだけ街と近ければ何かあっても逃げ帰れる(でも入り口は限られる)と思っているからだ。

トコトコと歩いては止まり、周りを確認して森を見る。

森はどこまでも平和そうに見える。


 だよねぇ…こんな近くに魔物とか居るはずないし。

 だからって森に分け入るくらいの能力もきっとないし…。

 うーん…とりあえず、『森の端っこ』を歩こうかな。

 後のことを考えると森の中を歩く訓練しないといけないだろうし。


と思い立ち、森に近付いていく。

人は根源に未知や暗闇を恐怖する。

知識を積み重ねて知恵を得て、思考を武器に携えた時から『知らないこと』というのが一番怖いのだ。

対策は立てられても、瞬間的な問題解決能力はどう足掻いても強靭な肉体の方が圧倒的に有利なのだから。

理熾も類に漏れずその恐怖を感じる。

たかだか街から30m程離れ、森に近付いただけなのに、とてつもなく心細い。


 うわぁ…。

 何というか、スフィアの森って雰囲気が暗い?

 木が凄く生い茂ってるし…。

 もしかして間引きとかされてないからかな?


理熾の母親が狭いながらも庭の手入れをしているからの知識である。

原っぱと森の境界。

木々の手前から森の奥を見る。

時刻はまだ昼間。

雲による陰りも無く晴天。

日差しがあるので暗くは無いのだが、木々が視界を邪魔して奥まで見通せ無い。

目視できる距離は約10m程度だろうか。


 これ、人間の能力(チカラ)じゃ奇襲掛けられ放題じゃないの…?


視界が利かず、嗅覚・聴覚は獣に及ばず、触覚・味覚はこの場合意味が無い。

そもそもそれらの能力を削り、知性を高めた結果が人なので身体能力の真っ向勝負で獣に勝てるはずが無い。

現状なら真正面から攻撃を受けても負けそうなのに、奇襲まで受けたら気付かずに三途の川を渡っていそうである。


 あぁ…ダメだ、これは危い。

 すぐに帰ろう…。

 ……でもこれで逃げてたらこれからも何も出来ないしなぁ…。

 やっぱり最初の予定通り、出てきた門以外の場所から帰ろう。

 それまでは頑張って森の表面を歩こう。

 足元も悪いし、五感もそれほど役に立たないから訓練になる…よね?

 よね?


誰に対する質問かは分からないが、とにかく方針を決める。

危険だと思う場所での行動が見返りゼロでは泣ける。

熟練度制なのだから使えば使うほどスキルは上がる。

身体を動かせば動かすほど【体術】を使うことになる。

目に見えて上がるのは無理でも、多少の経験値を稼ぐくらいは出来るはずだ。


時間は恐らくおやつの時間。

森の表面とはいえ整備されていない原生林。

『散歩』というよりは最早『踏破』というべきだろう。

ちなみにLv2でやるようなことではない。

当然理熾は知らないが。


周りを警戒しながらも、頭の隅っこでは自分のスキルを考える。

現状持っているのはパッシブの中でも選りすぐった5つ。

【言語知識】(バイリンガル)、【武術指南】、【体術】、【成長力強化】、【身体能力強化】。

【言語知識】は日常生活に必須だし、その他のスキルは理熾の強化に必要だった。

それに今、身体が軽いのは【身体能力強化】と【体術】のお陰だろう。

ついでに【武術指南】も『【体術】に対して効果中』なのかもしれない。


SPが少ないので取れるスキルは限られていた。

その中でもスキル効果を最大限発揮させるために結果を重複させるように習得している。

仮に重複(掛け算)でなくとも、単純に効果(足し算)が乗るはずなので目を瞑る。

これでまかり間違って優先型(単発効果)だったら泣けるが、それでも目的を絞っている。

効果は薄くとも、アレもこれもと平均的に手を出すよりも遥かに効率的なはずである。


 んー…にしても、スキルの詳細見れれば良いんだけどなぁ。

 ざっとした効果は調べ済みだし、理解もしているつもり。

 でも深いところで言えば何も知らないんだよね…。


それもそのはず。

スフィアにおいてスキルとは確かに技術ではあるが、『恩恵』の側面が強い。

世界に認められることによって能力以上の力を所有することが出来るというものだ。

そこに『何故なのか』という疑問は無く、ほとんどの者は『そういうものだ』と思って生きている。

よってスキルに対する研究とは、効果であったり、取得条件であったり、使い方でしかない。

だが『スキルとは何か』という考えが無いため、明確な効果・条件・使用方法も実は無い。

ただ単に経験則としての説明があるだけだ。

けれどそれには誰も気付けない。

『そういうもの』という強固な思い込み、刷り込みがあるが故に。


 んー実感としてはあるんだけどなぁ。

 身体が軽いのはきっと【体術】のお陰なんだろうけど、【身体能力強化】もあるからなぁ。

 効果が重なるとは思うけど、どっちが先かで結果が変わると思うし。

 まぁ、図書館より後に実感してるし、【身体能力強化】よりは【体術】のお陰だよね?


例えば、能力値が10の場合、【身体能力強化】で+1されるとする。

【体術】の効果が先なら、10の【体術】に後付で(・・・)能力が1足される形になる。

反対に先に【身体能力強化】が先であれば、10+1の【体術】が扱える。

例に挙げた数値は小さいから気にならないかもしれないが、後者の方が明らかに強くなる。

数学的に言えば『能力(身体能力強化)は足し算・スキル(体術)は掛け算』というわけだ。

なので技術系のスキル効果が『最後』にくれば強力になる。


 「今こんな効果中です」とか、僕みたいに重複効果考えてる場合「何にどんな効果を与えてる」かが知りたいな。

 そもそもスキル同士で効果重複するのかも特に書いてなかったしなぁ…?

 予想でしかない、ってのはかなりクるよねぇ…。


なけなしの手札で不確定すぎる先を考えてカードを切りながら生きている理熾には、この『確証』というのがとても欲しい。

「自分が間違っているかも?」と思いながらいるのはどうにもしんどい。


 うーん…そういうスキルってあるのかな?

 解説とか、解析とか、鑑定とか?

 また今度調べるかなぁ…。


そんな事を考えながら森の端っこを汗を流しながら歩くのだった。

お読み下さりありがとうございました。

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