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神様のおねがい  作者: もやしいため
第十一章:人生の迷子
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貴族の謝罪

新章突入です。

十章長かったですね…(。。;

理熾が考えもしないようなことをフィリカが説明する。

一体フィリカはどの立場で物を見ているのか気になるが、それもいつもの事。

もしかすると何かしらの身分があるかもしれないが、特に聞く気にもならない。

理熾にとってフィリカは専属鍛冶師のフィリカなのだから。


そんなことをつらつら話しつつも食は進む。

馬鹿馬鹿しいほど用意した素材は未だ健在。

たった30人程度で数mもの巨体を持つリザードを食べつくそうというのがそもそもの間違いだから仕方ない。

それが1.5体分に加え、他にも大量の食材が存在している。


ルルガとエリルが話している最中でも人の皿に盛られた肉を勝手に摘まんでいた理熾は、未だに食欲が衰えない。

かれこれ二・三人前は食べている計算になる。

それを見てフィリカは


「…リオ君良く食べるな?」


と思わず声を掛ける。

普段から良く食べるのだが、それにしたってという感じである。

外と言う環境が食欲を後押ししているのかもしれない。


「え、うん。

 お腹空いてさぁ」

「成長期か?」


「だと良いんだけどね」


神が聞けば「ふざけんなお前!」とツッコミを入れそうな緩い会話をしていると「リオ!」と呼ぶ声がした。

目を輝かせたカルロが一人でこちらに歩いてきていた。

お付の護衛はアルス領の面々と談笑中らしい。

柔軟なギルバートならともかく、客人のカルロ達が馴染み切っているのに理熾は驚く。

主に『ちゃんと護衛しろよ』と。


「素晴らしい催しだな!

 いやぁ、調理風景があれほど変化に富んだものだとは思わなかった。

 何より食事を自分で用意する…といっても焼くしか出来ないんだが、やってみると面白いものだ!」

「それは良かったです。

 僕の故郷だと夏に川原とかでやるんですよ」


「夏に?

 暑い盛りに、か?」

「はい。

 川で泳いだり、料理して食べたりして楽しむんです。

 あんなに豪華な竈と鉄板じゃなくて、もっと簡単な物ですけどね」


「それも面白そうだな!」

「いや、川があるかどうかしか違わんだろ」


思わず呆れるように突っ込むフィリカ。

明らかにカルロの思考が空転している。

そこまで馬鹿じゃなかったはずなのに。

それが酒のせいなのか、それとも上がり続けるテンションなのかは定かではない。

だがフィリカと理熾からすると「とりあえず落ち着け」の一言だ。


「む、お前は誰だ?」

「私か?

 リオ君の専属鍛冶師だよ」

「全て特注品(オーダーメイド)で作ってくれてます。

 あ、この人引き抜いたら僕、マジギレしますからね?」


と理熾は釘を刺す。

鍛冶師としてだけでなく、戦力として役立ちそうなフィリカに迷惑は掛けたくないからだ。

その辺りを理解したのか笑みを深めながらフィリカは丁度良い高さにある理熾の頭を撫でる。

啖呵を切った理熾と、その頭を撫でるフィリカというちぐはぐな状況にカルロは


「そ、そうか…それは残念だ」


とだけ告げた。

触れてはいけない何かがそこにはある。


「カルロ様、まだまだあるから一杯食べてください」

「あぁ、これほどの食事は滅多に無いからな。

 しかも目新しくて楽しい。

 何故皆この形式を採用しないのだろうか。

 参加者は面白く、給仕も楽…良いこと尽くめだというのに!」


えらく感心しているようだ。

目新しさを言うなら、『貴族に作業を強いる』という状況下がそもそもおかしい。

優遇される立場にある貴族が、下働きしたら意味が無いだろう。

周りからすれば『それよりもやることあるだろ、お前等』という訳だ。

その為の特権であり、権力を持つ理由なのだから。

だからこそ現状が新鮮だとも言えるが。

そんなテンションのカルロに対してフィリカが冷ややかに返答した。


「単に毒の対策だろう。

 食材のどれか…特に絶対に使う水か、油辺りか。

 それに仕込んでおけば全員殺せるだろう?

 逆に言えばその場に居る者が『やろうと思えば出来る容疑者であり被害者候補』という訳だ。

 だというのに対策が非常に難しい。


 そうだな…料理に必ず使う水や油は確かに可能性は高い。

 しかしこれだけの食材があるんだから、どれに仕込んでも問題ない。

 『目標が誰か』によって確実性は下がるが…それでも好みを考えれば容易い。

 逆に言えば『素材の特定が難しい』から、対策を取るなら毒見役が複数人必要だ。


 また、即効性の毒なら毒見にも意味があるが、遅効性のものを仕込んだ場合は毒の回り具合では見付けられん。

 他にも量を食べねば効果のない毒と言うのも探せばあるだろうしな。

 何より毒見後に入れられては全く意味が無いし、だからと持ち込めないように警備を増やせば同じく不安要素も増す。

 人や工程などの要素が増えれば増えるだけ違う問題が発生するんだからな。

 ここまで話せば分かると思うが、『手間が減る』どころか警備やら毒見やらのせいでむしろ危険度と労力は比較にならない程掛かる」


という風にあっさりと『やらない理由』を挙げるフィリカは容赦が無い。

横で聞いている理熾は予想していた答えよりも遥かに深く、「なるほどなー」と感心していた。

しかし説教に近い回答を受けたカルロは『いや、そこまで言わなくても…』という雰囲気を醸し出す。

さらに思わず「なら何故今回は…?」と口にしてしまった。

主催者でもないフィリカは淡々とその理由を開示し出す。


「『急だったから』というのが一つ。

 もう一つが『ありえない形式だから』だな」

「ぁー…実行するには準備が間に合わない、出来ないってこと?」


「正解、やはりリオ君は利口だな」

「言い出しっぺだからね。

 何となく考えてはいたけど、ギルバートさんがあっさり『良いよ』って言うから気にしなかったんだよね」


「そうだな。

 ただこの場に居る者はそう簡単に死なないから大丈夫だろ」


とフィリカも頷く。

その程度で死ぬようならこの場どころか日常で死んでいる。

その言葉はとても分かりやすい理由である。


本来『毒』というモノはかなり面倒な方法だ。

負傷と違い、出所が限られ、しかも身体の『反応』によって効果が変わるからだ。

つまり個人差が発生し、特にこのスフィアではこの『個人差』が激しい。


また、対策としては毒見に加えて本人が解毒系の魔道具を持つのが一般的だが、それでも全ての毒性に対して効果を持つのは不可能。

故に即効性の致死毒に対する耐性だけを極端に上げ、遅効性の毒や緩いものは『とりあえず』程度。

死んでしまえばどうしようもなく、遅効性ならば別の対策を取る時間がある、と考えられているからだ。


とはいえそういった魔道具はやはり高級品。

その結果、一般人はともかく貴族を毒殺するのは難しいのが通例だ。

いや、むしろ一般人を『毒殺する』こと自体がかなり意味の無い行為である。

殺したければ死ぬまで殴れば事足りるのだから。

つまり『毒殺』というのは非常に困難な方法であると言える。


しかしそれでも万全を期すというのが貴族というものらしい。

そこまで知っていてカルロの言葉に対して的確な回答…。

しかも質問に対する答えだけを返すフィリカに、カルロはまたも『こいつ何なの?』という表情をする。

なので理熾は改めて「専属鍛冶師のフィリカさんです」と告げて行動を思い留まらせる。

変に興味を持たれても面倒な話なのだから。


カルロもそこでとりあえず黙ることにした。

不用意な質問をするとめんどくさいことになりかねない。

いや、確実に面倒事にしかならない。


「と、ところでリオ」

「何ですか?」


急にどもったカルロに不審気な視線と返事をする。

単なる感想を述べに来ただけではなかったらしい。


「私は謝らないといけないな」

「はい、…え?」


貴族からの謝罪というのはかなり珍しいものだ。

それが例え『公爵家の子供』といえども。

だというのに急に何を言い出すのだろうと、理熾は首を傾げた。


「『竜殺し』として呼び出しておいて『期待はずれだ』と言ったことをだ。

 今回饗されたリザードは一人で倒したものなのだろう?

 それをあっさりと『振舞える』というのも、一人で討伐したがために量が多いからだ。

 勝手に呼び出し、値踏みし、見下し、見限ったその時の私を、どうか許して欲しい」

「あれ?

 それって前に執務室で謝ってませんでしたっけ?」


「見透かしていた癖になかなか意地が悪い。

 建前ではなく本音で謝罪がしたい…どうすれば許してもらえるだろうか?

 出来ることならしよう。

 私はお前とは仲違いしたくない」


カルロはきっぱりと言い切った。

お読み下さりありがとうございます。

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