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神様のおねがい  作者: もやしいため
第十章:アルス領お家騒動
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機密事項3

長々と疑問を引き摺ってきた事件は今回で解決です。

今回は少し長いです。

伏線の回収漏れが無ければ良いのですが…(。。;

リオ君は聡明だ。

それはあの訓練場での出来事を思えば事足りる。

質問を重ねる度に、情報を引き出されていると思えてしまうあの感じ。

馬鹿馬鹿しいまでの用意周到な裏読みをする癖に、感情に対して疎かなのは年相応かもしれない。


だから私のやったことがいつかはバレるとは思っていた。

しかし、雑多な情報が入り混じる今回の件をこんなに早く真相の一端に手を掛けるなど思いもしなかった。

何せ証拠など何も無いのだから。


リオ君は一瞬で私の腕を振り払い、正面に見据えて問う。

そ知らぬ顔を貫くのも大変だ。

私の技術と力を、ただの腕力のみで外してしまったんだからな。

単純に考えても私の数倍の力を持つと思った方が良い。


まったく、とんだ子供(ばけもの)だ。

ギルバート様が『頭()切れる』と言ったのは嘘では無かったらしい。

それに竜種(リザード)の討伐もフィリカが言ったようにやはり単独で、しかも無傷で行ったのだろうな。

そんな焦りを極力外には出さないように心掛けていると


「子爵の時だけじゃない。

 今、問題にしている件もおかしいんだよ。

 いや、どっちも最初からおかしかった!」


リオ君の叫びに私は一切答えない。

いや、答えられない。

事務的な表情でしか対応出来ない。

これ以上『何か』を読み取られる訳にはいかない。


「子爵の時に疑問に思ったのは『顔を隠す』という形で繋ぎ役に会ったと言った時。

 既に特定されている子爵側が顔を隠す理由は無い。

 だから『本当に顔を隠す必要』があったのはエリルさん(繋ぎ役)でしょ?」


何処まで気付かれているか分からない。

私が『関わっていただけ』なのか、『首謀者』なのかはまだはっきりさせていないのは何が狙いだ?

…自供か。

こうやって足りない情報を引き出すのか。


どちらにせよウードには顔を見られていないのだから、私が犯人とは言えない。

それにその件についての黒幕は『ウードが宛がわれている』のだから、どう足掻いてもこちらに累が及ぶことはやはり無い。


「いや、それこそおかしな話だ。

 その時、遠征中だったのだろう?

 だとすればその一件に関われるはずが無いじゃないか」

「そこがそもそも違う。

 僕が子爵に狙われたのは六日前、ギルドで専属契約を断ってから。

 その翌日には尾行が付いていた」


「だから時間的におかしいと…」

「違う。

 遠征は五日前の朝からだから、六日前はまだアルスに居た。

 だから六日前の夕方から夜の間に子爵と会ったんだ」


そうだな…実際にその通りだ。

顔を隠してウードと会い、手筈や報酬の件を話して実行日を決定する。

私が遠征中で、確実に帰ってこれないタイミングであればそれで良かった。

その時にウードに告げた時間稼ぎの言葉は「下調べに2日ほど掛かる」だったか。

つまり遠征3日目前後に決行。

その頃私はゴブリン達と死闘を演じているはずだ。

事実そうなっていたし、指示したタイミングも完璧だった。

私への疑いが発生する余地などあるはずが無い。

それに


「なるほど、それなら辻褄は合う。

 しかしそうなるとツテはどう説明するんだ?

 それに結局、『その時居なかった』ということになるのだが」


そう、その場に私は居なかったために実行犯ではない。

そこに『繋ぎ役』としての証拠も無い。

となればリオ君が語る内容は事実だとしても残念ながら証明出来ず、罪にも問えない。


「その場に居なくても誘拐(事件)くらい起こせる。

 誰かリーダー役を立てれば良いだけだから。

 そうじゃなくてもある程度場を整えて報酬を支払えば良い」


あぁ、そうか。

この子は奴隷を持つので『下を使う』ことを知っているのか。

管理者の視点とも言うべきものを、たかがEランクで手に入れているという訳か。


なるほど…これは手強い。

驚かされることは色々とあったが、それらは全てフィリカかネーブルの差配だと考えていた。

しかし実情は違うようだな。

リオ君を『ただの討伐者』として考える訳にはいかないようだ。

やはりフィリカに認められたのは伊達ではないらしい。

私は警戒度を一気に引き上げて、改めてリオ君を見やる。

黙り込む私にリオ君の言葉は続いた。


「色々考えたんだよ。

 タイミングとか、やり方は完璧なのに何で逃げ方が雑なの?

 何で実行犯だけが捕まるの?

 繋ぎ役は居るはずなのに、繋ぎ役だけが見付からないのは何で?

 この二つの話は状況が違うのに何で『やり方が重なっている』の?


 僕の時(一つ目)は50人、セリナさんの時(二つ目)は20人。

 セリナさんを狙う数(二つ目)なら分からなくは無いけど、Eランクの子供(一つ目)に50人も必要?」


リオ君の疑問は私の持つ懸念を悉く突いてくる。

だが、そもそも犯罪者という者達はどれだけ統率が取れようとも基本的に学が無い。

一つのことだけに特化した者達は確かに優秀だが、大局を見れないために集まったところで烏合の衆へと成り下がる。

『それのみ』に意識を向けすぎるために、周りが見えないと言った方が良いかもしれない。

もしくは単純に『出来ないか』のどちらかだろう。


本当に知恵が回る者達はそもそも『犯罪者』になど落ちないし、わざわざ追われる立場にならない。

犯罪を回避しつつも利益になる方法を見出せるからだ。

それに能力があれば引き上げられるのが『アルス領の良さ』だからな。


その日暮し、刹那主義…色々と言い方はあるだろうが、そういったゴロツキを丸め込むのは意外と簡単だ。

金さえ握らせれば大概どうにかなる。

だから人攫い達を前にして『何故だ?』という問いにそれほど大きな意味は無い。

ルルガ(兄さん)としても疑問には思うだろうが、その辺は『ただのゴロツキだし』という認識でしかないはずだ。

だというのに、最初から『黒幕』を設定したことで私の動きを見出したという訳か…?


どちらにせよ証明する術は無い。

状況的に合致する者を選んでいけば『私も入るだけ』だ。

私の関与を証明する術がない以上、妄想で切り捨てられる。

…そうか、だからこその『内緒話』という訳か。

それだけ眉を吊り上げているくせに、なんとも冷静だなリオ君。


だがそれらの質問には答えられんよ。

首謀者なら絶対に答えないし、違うなら答えられない。

結局その質問に意味が無いことを理解しているのか?


「やり方が同じなのは『黒幕が同じ』だから。

 やり方が雑だと感じるのは、想定していた『求めるもの』が違うからだ」


論理というモノは発展すればするほど、『そもそもの話』に戻れない。

戻ってしまえば全てを考え直し、組み直しせねばならないので、出来る限り回避する。

人の意見を聞けないというのはこういう『二度手間』を惜しむからだ。

いや…自分の意見を否定すること事態が苦痛になると言う方が正しいか。

だからあっさりと意見を翻すような言葉に私は「求めるもの?」と声が出てしまった。

だが、それがいけなかったらしい。


「まだ、しらを切るのか!!」


リオ君はその言葉と共に激昂してしまった。

それと共に一気に距離を詰められてしまう。


速すぎる!


そう感じた瞬間には重心を後ろへと移動させていた。

気付けばリオ君の手に握られている物がある。

どう見ても地面を掘り返すスコップだ。

この場面で武器ではなく『工具』というのに激しく疑問を感じるが、とにかく攻撃準備は万端らしい。

『何処から出した!?』という私の疑問を口にするより早く平らな面で横薙ぎに殴りかかってくる。

だが、私の身体は混乱する思考とは別に、最適な動きを実現して一気に下がる。


「危ないぞリオ君!」


目の前をスコップが通り過ぎ、一瞬余裕が生まれる。

リオ君の動きは速すぎるが、大振りでかなり単調。

素人のそれだからまだ良かった。

次の動作への連携も考えられていないことを思えば、回避するのも制圧するのも楽だろう。

これが熟練者だったら私の頭は飛ばされていただろうなッ!?


そう思った瞬間、リオ君が軸足を踏み込みと同時に回し、更に半歩前に進んだ。

今の大振りは次の蹴り動作のための布石か!

だがそれでも姿勢を崩していることに違いは無い。

即座に私は腕を十字に組んで防御を固める。

以前のようなゴテゴテした靴ではなく、普段着で良かったなどと思いながら。


しかし、受けた衝撃は思いの外強く、下がっていることなどお構いなしにふわりと身体が浮き上がる。

子供の中でも小柄になるだろう、リオ君の体型から放たれる攻撃とは全く思えない。

受けた衝撃に息を詰まらせつつ一瞥すると攻撃のために伸びきった身体の何処にも武器(スコップ)が無い。

改めて『何処へやった!?』と内心焦っていると、「ドン!」という打撃音と共に更に前進してきた。


ありえない!!


その言葉が頭を駆け巡る。

伸びきった体勢。

しかも蹴りの反動で後ろへと重心が流れている状況から更に前進することなど出来るはずが無い。

何処かで一度姿勢制御を挟まなければそんなことなど…こちらは蹴りの衝撃で身体が浮いているというのにッ!!


だが考えている暇など無い。

浮かされた私の身体の側面にリオ君が回り込み、大上段から振り下ろしの体勢になっていた。

この体勢ではどんな攻撃を受けても大きな痛手だ。


「だったら喋れ!」


との言葉と共に振り下ろされた手にはいつの間にか凶器(スコップ)が握られ、ゾッと背筋が凍る。

先ほどのことを思えばこんなものをまともに食らえばどうなるか分かったものじゃない。

しかし体は背後へと流された上に浮かされている。

体勢的に回避は不可能な状態を作られてしまっているのだ。


そうなればやるべき事は一つしかない。

目の前で繰り広げられる詐欺まがいの非日常を棚上げし、防御に徹する。

十字に組んでいた腕を解き、無慈悲に振り下ろされるスコップの威力を逸らすように受け流す。

無茶な体勢なのと、威力がありすぎたために完全に流すことは無理だった。

一体どれだけの膂力があればこんな威力になるんだッ!


「っぐ!!」


思わず声が洩れたのは仕方ないと私自身思う。

何とか威力を逸らしたお陰で、身を固めた腹への一撃をただの大打撃程度に抑えられた。

あのまま受けていれば致命傷に匹敵したかもしれない。


しかし私が出来たのはそこまでだ。

そのまま潰されるように背中から地面へと叩き落とされ、さらに「おぐっ」と情けない声が出た。

防御したところで二度も痛みを受けるのだからたまったものではない。


仰向けになった一瞬で目に入ったのは…魔力の残滓、か?

だが今はそんなことに頓着している場合ではない。

このまま畳み掛けられれば死にかねない。

すぐに横に転がってうつ伏せになり、腕と膝を立てて即座に立ち上がろうとした瞬間に顔を殴り飛ばされた。


おいおい、今さっき全力で振り下ろしたばかりだろう…?


かろうじて見えたのはやはり工具(スコップ)の平たい部分。

痛みはそれほど無かったので、力はそれほど込められていなかったらしいが一瞬の暗転を挟んだ。

気付けば仰向けに転がされ、頭のすぐ右横の地面にスコップが突き立った。

その時私は「あぁ、死んだか」と他人事のように感じていた。


身体は動く…が、手足の先が土に埋まっているらしい。

しかも胸に足を置かれて身体を固定までされている。

瞬時に動くのは無理でも、逃げに徹せば…少しくらいは何とかなるだろう。

だが埋められていることを思えば一体どれくらい意識を飛ばしていたのか分からないな。


精神も問題ない。

意識が戦闘へと完全に移行したため、むしろすっきりしている程だ。

だから逃げることも戦うことも出来る。

しかし先ほどから一方的に攻撃されている理由が分からない。

『スコップ』というただ地面を掘り返すだけの道具で、騎士団長たる私を圧倒出来る理由が、だ。


解明出来なくては例え立ったとしても同じ結末だ。

だというのに戦闘用として稼動する頭でも答えが出ない。

完全に未知の攻撃だと判断するしかない。


「さっきの貴方が聞いたツテの答えは簡単だ。

 単に『犯罪者予備軍』を集めれば良いだけ。

 治安維持が仕事なんだから、そういう人を知らないはずが無い。

 そこに『黒幕らしき貴族』を添えれば良いだけだ!」


やはり完璧に理解しているらしい。

だがリオ君が言う『犯罪者予備軍』と言うのは恐らく『素行の悪い者』という意味だろう?

そこがまず違うんだよ。

私が選んだ者達はまず確実に犯罪者(・・・・・・・・)だ。


被害者が居て、犯罪者の特定まで済んでいる。

しかし証拠不十分で罪に問えず、野放しにされている者は少なからず居る。

全てを取り締まることなど不可能だから。


リオ君が言うように、その中から選別して集め、『実行犯として仕立て上げる』のが今回の概要だ。

だから実行犯(ゴロツキ)は簡単に捕まったし、子爵の際に50もの人数が集められた。

つまり私が行ったのは証拠の無い犯罪者を『現行犯』として捕まえる画策だという訳だ。

リオ君が言うように、そもそも『誘拐が目的ではない』という訳だ。

良くぞこの答えに辿りついたと褒め称えたい。


リオ君の存在はまさに『丁度良かった』んだ。

ウードの件で何があろうと、どう転んでもギルバート様が止める。

フィリカも後ろに居ることを思えば、子爵という位に居るだけのウード如きが何をやっても意味が無い。

逆に言えば私は誘拐に際し、完璧を期すだけの準備を施して遠征へと出発すれば良い。

結果など『リオ君の無事』と最初から分かっているし、ギルバート様の手を煩わせるウードにも釘を刺せる。

帰ってきて顔さえ見て無事を確認すれば事足りるし、最悪『身元不明の討伐者(リオ君)』を切り捨てても良い。

ギルバート様とフィリカの『お気に入り』を害するのは気が引けるが、私にはそれよりも『領内の掃除』の方が大切だった。


リオ君が言った『黒幕らしき貴族』。

『モイセス・ボイエット』、『バルブロ・ヴェリン』は共にゴロツキが爵位を持っているようなものだ。

横暴で低俗…『貴族』という位を軽くするために存在するような者達だ。

爵位持ちと言うだけで優遇され、役所に席を持つ。

単にクビを切れば良いだけなのだが…そんな屑を野に放てば何をするか分からない。

結果、飼い殺すしかなく、仕事も出来ずに役所に留まり悪態をつく。


そんな者でも役所に居るため、ある程度の口利きが出来る。

爵位持ちと言うだけで優遇され、利用されてることにすら気付く頭も無く、周囲への迷惑と犯罪を撒き散らす。

ただし犯罪でも迷惑でもその中心へと食い込むだけの能力が無い。

そのせいで傀儡とするのに都合が良く、犯罪者側も便利な駒として利用するために、爵位の恩恵で逃れられる程度にしか手を汚させない。


完全に『使われている』訳だが、そんなことにすら気付けない無能なのだ。

そんな貴族の風上にも置けない者達だが、それでも爵位の取り上げはやはり難しい。

それこそ『重犯罪への関与』でも無ければ。


ウードやカルロ様への勧誘は『乗るかどうか』の実験だ。

もし乗ってくるようであれば要注意人物、乗らなければアルス領の客人だ。

つまりこれはどの貴族にも行っている『イタズラ』でしかない。

ウードのようにあっさりと乗ってくる者も中には居るので、その者はギルバート様へ刃向かえなくなる材料を作るのにも役立つ。

今回のことで言えば『黒幕役を押し付ける』とかだな。

まぁ、そんな怪しげなものに関わろうとする者に誓約を課すのは簡単だが。

全てを理解しているであろうリオ君に


「何のことか、分からんな」


そう伝える。

絶対に認めてはいけない。

証拠も無いし、認めてしまっては『アルス領』として問題を抱えてしまう。

そうなればギルバート様に顔向けが出来ない。


セリナ様のことは前々から準備していた。

可能な限り『信用の置ける犯罪者』を選び、人数も絞った。

信用出来る犯罪者など自分で言っていても意味不明だが、犯罪者の中でも『自分のルール』を持つ者達だ。

誓約や約束事、その他『依頼に忠実』とか、『女性に手を上げない』など。

必ず犯罪者であり、素行は悪いがその一線を守る者を徹底して選別した。

万が一にもセリナ様が傷物になることなどあってはならないから。


誘拐のための手筈も整えた。

護衛の人数、特徴、時間帯…『警護する側からの情報』を揃えればこんなに簡単な事は無い。

結果的にほぼ想定通りの工程を経てセリナ様を奪取した。

護衛側に怪我らしい怪我も無く、その他の損害も無かったことを思えば仕込みは完璧だったのだろう。


そして選別や指示などを含めた全ての準備が完了し、後はタイミングを見計らうだけだった。

ギルバート様とセリナ様へ話を通すのと、マルタ・レスター子爵の失脚の準備だ。

結論から言えば今回マルタは何もしていない。

だが、それでも過去が悪すぎ、今後どのような悪影響が出てくるかも分からない。

潰せる内に潰すべきだろう。


マルタが普段行わないような『現場介入』を認めさせるだけの証拠を提示し、爵位の剥奪か降格を行えれば良い。

後はギルバート様の許可とセリナ様への協力要請を依頼すれば良いだけという段階まで詰めて遠征に出発したのだが…。

帰ってきてみれば知らぬ内にセリナ様が攫われ、しかも事件が解決している(・・・・・・)という。

余りの予想外な事態に状況を忘れて声を上げて驚いてしまったのが大失態だったと悔やまれる。


本来であれば攫われた事実と、誘拐先、その他諸々の証拠を誘拐後数時間以内に揃えてマルタを捕縛するはずだった。

その為にもセリナ様の協力と共に、私の持つ諜報員による常時監視。

危険があれば作戦の即時中止と危険の排除まで筋道を立てて準備したものだった。

それが私の指示も無く始まり、終わっていた。

恐らく馬鹿な人攫い(ゴロツキ)の一人の勇み足なのだろうが、解決したのはリオ君と言うことで感謝してもし足りない。


しかしそれとこれは話は別だ。

私が死のうが生きようが、認められるものではないのだ。


「『騎士団長』が求めるモノは『アルス領の平和』。

 だから貴方がやったのは領内の掃除(・・・・・)だ!

 そんな些細なことにセリナさん(僕の大切な人)を巻き込むな!」


リオ君はそう叫びながら私の顔目掛けて拳を落とす。

やはり全て知っていて話しを省いているのか。

周りで誰が聞いているか分からないからな。


あぁ、これは死ぬ。


改めて感じ取る威力。

あの膂力で《剛拳》など打ち込まれては例え防御が適ったとしてもその上から貫通する。

何より胸に足を置かれ、四肢を埋められ、顔の側面をスコップで塞がれた身動きの取れない私では回避する方法も無い。



ドゴン!!



という轟音と共に拳がめり込んだ先は地面。

スコップとは反対側に落とされた拳の周辺が弾けて抉れている。

私が回避した、ということではない。

単にリオ君がわざと外したのだ。


「エリルさん。

 そんなことしなくても何とか出来るでしょ?

 周りを危険に晒すような『簡単な方法』を取って僕をがっかりさせないで」


リオ君は私の目を至近距離で見つめながらそう言い、地面にめり込んだ拳を引き抜いた。

この子は私よりも遥かに理想が高い。

常に正攻法で解決出来る事柄ばかりではない。

それでも解決しようと思えば様々に策を巡らさなければならない。

そしてウードの誘拐を無事に生還したのだから、そのことすらも知っている(・・・・・)だろう。


だが、それでも。

私が用意したような方法を否定した。

子供に説教され、天を仰ぎながらぼんやりと考える。


私は間違っていただろうか。


成否だけを言うならば、私が仕組んだ計画が手を離れて勝手に動いたことに落ち度があるだろう。

結果だけを見ればマルタを追い詰められなかったことに悔いは残るが70名にもなる捕縛者を考えれば上々。

『ただしリオ君にバレる』という一言が付くのだが。


あぁ、そうか。

この方法を取ったことに後悔は無い。

だが『犯罪者(やつら)』と…私が憎むべき、忌むべき方法と同じことをした。

だから断罪されたかったのか…。


私は目を瞑り、大きく息を吸い込み呼吸を整える。

緩かった意識は知らぬ間に闇へと落ちていた。

お読み下さりありがとうございます。


犯人は犯罪者達を取り纏めたエリルの単独犯。

動機はアルス領内の一斉検挙のためでした。

正解された方はいらっしゃったでしょうか?

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