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神様のおねがい  作者: もやしいため
第三章:始まりの街
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着替えとお風呂と

3日目も終了し、理熾の日常生活を少し出してみました。

やっぱりお風呂はいいものですが、贅沢品なんですよねぇ…。


9/15訂正

やはり夕飯は美味しかった。

詳細は省くが、アルスでは魚料理が高級品らしい。

近くに海が無いのが大きな理由。

一応河川はあるのだが、流通するほど魚を獲ることが禁止されているらしい。

生態系の概念がある訳ではないが、魚を獲りすぎると魔物が増えるという経験則によるものだった。

要は魔物達の餌がなくなって人里に下りてくるのだろう。

熊と同じようなものなのか、と理熾はこっそり面白く感じた。


そんな高級品とされる魚が出された訳なのだが、これが美味すぎた。

ほっぺどころかあごが落ちそうだったのは大げさではない。

きっと料理スキルを持ち、なおかつ追随を許さない程の技量なんだろう。

食事が美味しいとされる日本から来てこの衝撃なのだが、他の人は…それこそ言うまでも無いだろう。

そんな絶品料理を食べていると、宿屋の受付嬢のセリナがふと質問した。


「ねぇ、リオ君。

 君は身体を何処かで洗っているのかな?」

「えっと…ちょーっとバタバタしてたので、ちゃんとは洗えてないです。

 一応ぬれた布とかで拭っていますが、水って貴重みたいなので…臭いですか?」


臭うと言われると傷つくが、仕方ない。

実際汚いことには違いないのだから。

といっても、現代日本からすれば、程度の汚れではあるのだが。


「まだ大丈夫…かな?」


理熾の近くに来てすんすんとニオイを嗅いでくる。

多少汗の臭いがするが、この世界では気になるほどではないと思っている。

そもそもスフィアでは毎日のように風呂に入るような習慣すらない。


何故セリナが聞いたかといえば、この宿には風呂があることを説明し忘れていたのだ。

入浴に関しては宿代に含まれているので、いつでも入って良かったのだが…当然理熾はそのことを知らない。

何せ今のところ本当に食事と睡眠のためだけにあけみやに帰ってきているのだ。

あけみやの中の探索などするわけも無く、当然風呂と言う施設があることなど知らない。

と、そんな言い忘れを思い出して今更ながら理熾に聞いてみたのだ。

ことさら不潔というほどでは無いが、少なくとも『綺麗にしている』というようには見えないからの言葉だ。


「お風呂とかって入りたい?」

「え、お風呂あるんですか?」


理熾にしてみれば驚愕の事実である。

スフィアでの風呂というのは、それほど一般的ではない。

日本のように一家に一台といった感じで浴槽があるわけではないのだ。

そもそも日本のように栓を開ければ手軽に水が出るような蛇口は無いのだから、水汲みからするなら大変すぎる。


それにガーランド国では大衆浴場も結構大きな町に行かないと存在しない。

アルスにはギルドが風呂を所有している以外はそういった大衆浴場は無い。

ちなみに理熾自身は「お風呂は無いものだ」と思っていたので、宿でもギルドでも質問していない。

水道が無いのだから当たり前だが。


「うん、この宿にはね。

 最初に宿代がいらないって話しちゃってたから忘れてたわ」


とさらりと失態(ミス)を伝える。

そんなにあっさりと流していいことなのかとも思ったが理熾は口には出さなかった。

ともあれ、とてもありがたい話である。

日本から既に3日。

流石に汗でべたつくので一刻も早く流したい。

すぐさまお風呂の場所を聞く。

パジャマなどの楽な格好が無いのは残念だが仕方ない。


何というか、アルスに来てからは不運がかなり改善されている。

恐らくこれからが不運の本番なのだろうと、違う意味で理熾は気を引き締める。


「そういえば服もずっと同じの着てるわね…?」

「えっと…一応これ、毎日着れる服なので…」


と言葉を濁す。

実際は着替える服が無い上に買えないだけなのだ。

肌着のようなものはさらっと夜に洗って乾かしてローテしている。

日本が真夏でなく、初春辺りで少し多めに服を着ていたことが幸いした。


「でも不便でしょ。

 目立つし、洗えないと臭いが付いちゃうし。

 お父さんの服でよければ…って、体格が全然違うか」

「いや、そこまでしてもらうのはッ!」


流石に気まずい。

既にやってもらいすぎなのだ。

見ず知らずを宿屋なのに無料で泊めているだけで十二分なのに。


「んーじゃぁ、私のお古をあげよう。

 スカートじゃなければ良いわよね?」

「え…?」


どういう訳かそういう結論に至ったらしい。

セリナから手渡された古着は確かに『女の子』というタイプのものではなかった。

服を渡された時は凍りついたが、理熾には何もかもが足りないのだから断るのは色々勿体無い。

何より新品ではなく、古着ということなのでありがたく貰っておくことにしたのだ。

ちなみに理熾には『古着だから良い』という斜めの発想は無い。

単に流石に新品を貰うわけにもいかないという、遠慮からである。

まぁ、あえて言う必要は無いはずだが。


この世界の服は全て人の手によるものなので、種類や枚数が作れずユニセックスタイプも多いらしい。

今回渡されたものは女物ではあるものの、動きやすい服を選んでくれた。

とはいえ、本来であれば身体のラインが違う性別なのに着れてしまう(・・・・・・)という事実が恥ずかしい。

男として。

セリナは「思いの他似合う!」と大絶賛だったが、「それはそれでどうなのだ」と思って残念に思う理熾だった。

男として。



といったように昨日そんなことがあり、今日は学生服ではなくなっている。

近い内にまともな装備を買う必要が改めて出てきたことになる。

元々必須だったのだが、衣食住で優先すべきは食事である。

泣く泣く後回しにしていた次第である。


そういえば、と理熾は気付く。

昨日図書館からあけみやへ帰る時、そして今日ギルドへ向かう際に感じたことがある。

違和感、といえば正しいのか。


 何だか凄く身体が軽いんだよねぇ。

 何だろ…って、もしかして【体術】の効果?

 嘘でしょ?

 たった一つのスキルでここまで効果が違うの…?


【体術】は効率良く身体を動かすスキルだから当然といえば当然。

普段通りに動かしているつもりでも、全能力を駆使しているのだからその差は歴然だ。


 うわぁ…なんでこれ誰も気付かないんだろう?

 やっぱりスフィア人って馬鹿ばっかなのかな?


大変失礼である。

少なくとも英雄達は総じて取得しているのだからばっかり(・・・・)ではない。

とはいえ、効能を知っているかどうかはまた別の話なのだが。


討伐カウンターに着くと、まずは討伐依頼の出ているものを見て回る。

理熾が受けられる依頼はFとGと誰でも受け付けるという『フリー』のみ。

ざっと討伐対象を見て名前を覚えてから、弱そうな相手を見繕う。

さらに昨日図書館で調べられなかった魔物の分布図を眺める。


目的は移動が片道2時間以下の距離で、なおかつ初心者でもせめて拮抗出来る程度の相手。

石橋を叩くというのは余りしなかった理熾なのだが、スフィアへ飛ばされる際の(ある意味)神の手腕を思い出して気をつける。

出来る限りの穴を塞いでおかないと後々ホントに泣くに泣けない事態に陥るからだ。

後悔先に立たずという言葉を3日程前に嫌というほど身に刻んだばかりなのだから仕方ない。


 そもそもの話なんだけれど…僕ってどれくらい戦えるんだろう?

 誰かと戦った訳でもないし、練習したわけでもない。

 ここへ来てやったことは走ったくらいだし…。

 とりあえず、依頼を受けずに完了できる依頼をこなそっか。

 依頼失敗なんてこのタイミングでは違約金すら払えないし。


そう、依頼で失敗すると違約金が請求されるのだ。

ほとんどの依頼は失敗すると依頼主にはギルドから『謝罪』と共に『依頼料返金+違約金支払い』を行う。

これは依頼を受けたギルドから、依頼主に対する『保障』として契約内容に含まれている。

当然違約金は失敗したギルド員が支払うのだが、ギルドに支払う違約金は依頼主への違約金より高いのだ。

理由は簡単。

ギルドからギルド員への『制裁』と『代理解決料』になる。

ギルド員は依頼主と『揉めない為』にも違約金を支払う義務を背負う。

といった感じで、自由気ままにやってるように見えてギルド員もそれなりに縛られる立場にある。


 まぁ、違約金なんて普通に考えれば当たり前だよねぇ。

 お店で買った食べ物が腐ってたら日本なら最悪そのまま裁判沙汰だしね。

 なのに問題が発生したらその間に入ってくれるんだから、ある意味『保険屋さん』もしてるみたいなもんだよね。


組織として大きいからこそできる対処である。

関心はするが、今の段階では必要ない。

というより、違約金が発生する可能性がある中で、自分の実力が分からないというのはありえない。

せめて練習相手でも居てくれれば…と思うのだが、この世界には知り合いが居ない。


 うーん…ギルバートさんって守衛さんだし、聞いてみようかな?

 というか、ギルドで訓練とかやってないのかな…?


疑問に思ったことはすぐに聞く。

理熾がスフィアに来てから必ず行うようにした癖だ。

流石に時と場合にはよるが、余り後回しにしても良いことが無い。

これも3日前に嫌というほど学んだ教訓だ。

とにかくまずはカウンターで聞いてみる。

やっぱり受付の人は不機嫌そうだった。


「すみません、ここで訓練とか出来ますか?」

「はい、出来ます。

 ギルドカードを提示していただいて、施設利用を伝えてください。

 施設によっては利用料が発生しますので、その都度ご確認ください。

 今回の場合は訓練場ですね…利用料は不要ですが、備品を壊された際は請求が発生します」


そういえば図書館に入る際も渡してたなぁと思い出した。

スフィアでのギルドカードはとても万能なシロモノだった。

言われた通りにギルドカードを渡す。


「…もしかしてリオ様は登録して間もないのでしょうか?」

「え、はい。

 昨日登録したばかりです」


ギルド内での連絡はどうなっているのか。

新規加入者の扱いが凄く軽い。

そもそもギルド員に対する興味がとても薄い感じがする。


「でしたら初心者講習というものが存在します。

 参加は無料で、討伐者としての心得等を確認する場となっております」


少し考える。

自分がどれくらい『戦えるのか』を見るのにはいいかもしれない。

それと同じく、自分と同じレベルの人達がどの程度かも見ておく必要がある。


 だって最低でも初心者くらいのレベルがないと戦えないってことだしね。

 この講習の平均値があれば、とりあえずは最低ランクの討伐は出来ると思おう。

 じゃなかったらそもそも講習を卒業させちゃダメだし。


と参加を決意する。

後は確認のみだ。


「それって半日とかで終わるんですか?」

「いえ、3日間の合宿形式になります」


「合宿…食事等はどうすれば?」

「それも全てこちらで負担させていただきます。

 ギルド員には一定以上の実力をつけていただく必要がありますので、必要経費というものです」


なるほど、確かに名簿としての情報しか役に立たないギルド員はいらないだろう。

そもそもギルドは派遣業であって、名簿屋ではないのだから。

であれば育てることも経費に含まれることになるはずだ。


「開始日っていつからですか?」

「直近は2日後になります。

 参加登録を進めておいて構いませんか?」


「うん、お願いしm…?

 ぁー…いや、ちょっと待って下さい。

 …ちなみにこの登録って、すぐに返事必要ですか?」


と何故だか尻込みしてしまう。

何故か理熾は間を置いて改めて参加した方が良い気がした。

カンが良い訳では無いはずだが、違和感を覚える。

それに即断すべき内容でもない。


「前日までに参加登録してくだされば構いません。

 その際は改めてギルドカードを提出してください」


そう言われて返される。

まさかと思い聞いてみる。


「登録時にギルドカードが必要?」

「はい、本人確認と共に必要になります」


「その場での返却は?」

「出来ません。

 ギルドカードが参加証明書となりますので、ギルドで保管します」


「じゃ、また後日改めますね!」


なるほどこれが原因か、と理熾は納得した。

つまり予約を入れた時点で『身分証』であるギルドカードが取り上げられる。

講習開催中は合宿らしいので、身分証は不要だが、それまで(・・・・)は街の出入りに必要だ。

むしろ身分証明としてどの段階で必要になるかが分からない。


 あぶなー…なるほど、ギルドってこういう『不親切さ』があるんだね。

 まぁ、それで昨日は稼いだんだから、余り強くはいえないけれど…。

 とりあえず今日は魔物と分布図見たしギルバートさんのとこに寄って帰ろう。

 時間があれば少し街の外を探索してみるかなー。


と本日のお仕事終了を決めてギルドを後にするのだった。

お読み下さりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 面白い作品を読ませて頂き有難うございます。 疑問なんですが、現地人の方々は、スキルをどうやって得ているのでしょうか、主人公さんの様にスキルポイントで得ているのか、それとも前の説明の様…
[一言] 「でしたら初心者講習というものが存在します。参加は無料で、討伐者としての心得等を確認する場となっております」 登録時の受付さん、肝心なこと伝え忘れているね。他にも伝え忘れていることあるので…
[良い点] 異世界最初のお風呂と女物への着替えをほぼ描写なく飛ばせるのに、なぜ読者としては興味と必要の無い理屈は飛ばせないのだろうか、と、逆に面白い小説です笑
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