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神様のおねがい  作者: もやしいため
第三章:始まりの街
20/537

ギルドの弱点

ギルドはとても不親切です。

ご利用は計画的に。


8/30訂正

結論から言おう。

つい先程受けた薬草納品の依頼は本当にあっさりと終了した。

しかもあの時理熾がカウンターで聞いたのは極々簡単なことでしかなかった。


「素材の買取ってやってますよね?」

「はい、行っています」


当然の事なのであっさり答えられる。

では、逆に。


「素材を買いたいんですが、売ってますか?」

「えぇ、問題ありません。

 販売のカウンターがありますので、そちらでご購入下さい。

 魔法薬の材料や鉱物の原石など、素材と呼ばれるものが陳列しているかと思います」


予想通りの答えを貰う。

ギルド員から素材を買い取るだけ、なんてのはどう考えてもおかしいのだ。

買い取るだけで終わってしまえば単なる出費にしかならない。

素材を買い取り、加工・販売をしてこそ利益があるのだから。

ということは、


「もしかして薬草とか置いていますか?」

「えぇ、もちろん。

 魔法薬の素材として在庫はかなりあるはずです。

 詳細は販売カウンターでご確認ください。

 ちなみについ先日、大口の販売があったと聞いてますので、今なら普段より安価で手に入れられると思います」


確信はあった。

けれど、もしかすると一般人(ギルド員含む)には売ってないのかと思ってはいた。

例えば会社や企業といった、商会を通してしか買い取れない仕組みなのかもしれないという風に。

だから理熾は思った。

「マジかよ」と。

むしろ「ありえない」という驚きもある。

そして最後に聞いてみた。


「ちなみに値段って、ここで分かりますか?」

「素材の金額は市場価格を勘案して決定しております。

 正確な値段に関しては販売のカウンターでしかお答えできません」


残念ながら値段は分からないらしい。

だが、それにしても朗報過ぎた。

余りの朗報に泣ける思いである。


 聞いてみるもんだね!

 これでも多分神様に嫌われてるんだぜ、俺。


とか普段使わない一人称まで心の中で出てしまう。

ついでに背中が煤けてみせる。

ニヤニヤが止まらない。

なのにさらに朗報を追加で教えてくれる。


「また、ギルド員であれば割引対象になるはずです。

 その辺もご利用際に改めて販売カウンターにて確認をお願いします」


すぐに販売カウンターの場所を聞いて瞬時に動き出す。

100束という量を買えるかは分からないが聞いてみるしかない。

最悪半分でも手に入れば、市場を回るリスクも減る…そう思って。


しかし結果を言うとはじめに戻る。

あっさりと依頼は完了した。

薬草の入荷は本当に大漁だったらしく、むしろ値崩れ気味だったらしい。

いち早く買占め…というわけではないが、タイミング良く買えたのはまさに幸運と言うしかない。


 多分こんなに美味しい依頼は今後二度と無いだろうけどね!

 あぁ、でももしかするとコザックって人がまた面白い依頼をするかもしれないなぁ。


とも思う。

ちなみに理熾が買った薬草100束は79カラド。

つまり儲けは421カラドだった。

運ぶのは確かに大変だったが、ギルド内でちょこっと移動(運搬のお手伝い)するだけでなんと利益率500%以上である。

しかも思い立ってからたった1時間で(しかも運ぶ時間だけ)これだけ稼げたので大満足だ。

暴利もいいところだが、これで少しだけ、ほんの少しではあるものの首が繋がった。

鼻歌が出そうなレベルでご機嫌だ。


このことで理熾は4つの問題を見付けた。


1:依頼者の知識が乏しい

 (薬草を5倍の値段で買うのはおかしいし、販売カウンターで買える)

2:受付のサービスが悪い

 (依頼内容についてのアドバイスが無いので1が起きる)

3:買取・販売カウンターの場所が違う

 (同じ場所なら素材の移動無し、在庫数の把握、その場での受渡し可能)

4:ギルド内での解決手順が無い

 (依頼を受け、それを『ギルド員に回すことなく解決することが出来る案件』に対処出来ない)


いくら巨大組織だからといっても、方法や手順の見直しは必須である。

一度上手く行ったからと前回を踏襲する必要は無いのだから。

改善する気がなければこのように悪化しかしない。

悪化が極まるとそれこそ身動きが取れなくなる…。

とはいえ、理熾からすると「お役所仕事ありがとう!!」の一言しかない。


だが、こんな無駄なことをしているのが支部のみ、ということは無いだろう。

つまり『ギルド』という組織は、こうやって運営されているのだ。


 って、まさかギルドの構造が問題の根源だったりしないよね…?

 第三者視点だとこれだけ悪いところが目立つけれど、内部の人は気にしていないし。

 うーん…でもこれってまだ(・・)利用者が気付いていないだけだよなぁ…?

 民間組織ではあるけれど、ギルドって日本的に言えば公務員って感じなのかも?

 うん、世界規模の人材派遣会社で独占企業だから倒れるはず無いし危機感も無いんだろうなぁ。


確定ではないが、世界規模で影響を及ぼすであろうギルドの問題点を見てしまうと、スフィアの問題の一つなのかと思ってしまう。

が、これだけの大企業の事業に口出しできるほどの身分も能力も無い。

結局、世界の問題だとしても先送りにするしかない。

等と考えながら、ギルド内を探索する。

昨日は討伐カウンターのみしか行っていないから、今日は作成カウンターを見学に行く。


 まぁ、考えても仕方ないし、僕は僕の強化をするべきだよね。

 それでなくてもこのままじゃ明日には獣の餌になりかねないし。

 にしても装備かぁ…安いの無いかなぁ。


理熾はメイン武器を何にするかでかなり悩んでいた。

基本的に理熾は『見知らぬ誰か』と戦う可能性もあるはずだ。

それが知恵なのか、戦力なのかは別として。

なのでここで出来る限りどの分野にも有利な装備を選ぶ必要がある。

熟練度の関係で、ひとつかふたつくらいしかまともに上げられないからだ。

余りあちこちに手を出すと何でも使えても、何にも対応できなくなる。

それでは本末転倒過ぎる。


 むぅ…全部で使う要素があればいいのになぁ。

 だったら基礎として考えられるのに。

 基礎って大事だからね!

 筋トレでもやろうかなぁ…身体作りしておかないと、装備しても振り回されr…!?


そこでハッと気付く。

思い出す。

昨日教えてもらったことを。

そして何かに引っ掛かっていたことを。

多分、間違いないはずだけど、確信が無い。

分かるかどうかは脇においてとにかく調べようと理熾は決意する。


即断・即行動をするべきだ。

理熾にどれだけ『準備期間』が残っているか分からない。

すぐさま踵を返して作成カウンターを出て、中央受付で聞く。


「すみません、伝説とか、伝記とか、英雄とかの本ってどこかありますか?」


交番的なものがあればそこで聞けばいいのだが、スフィアにあるかどうかも分からない。

きっとギルバートなら教えてくれると思うが、中心地にあるギルドから詰所は案外と遠い。

そもそもまだ居るかも分からない。


「それでしたらギルドの別館に図書館がありますのでそちらをご利用下さい」


受付の女性は綺麗な笑顔で答えてくれた。

理熾は何というか、「『嫌な顔をしない』って凄いなぁ」と思ってしまっていた。

受付からすると単に子供の理熾が微笑ましいだけだったりするが当人は気付かないから仕方ない。


とにかくギルドの別館となる、図書館に向かう。

頭の中で整理していくが、理熾の中では今考えていることはまず正しい。

けれど推論なので確証が欲しい。


図書館に着くと司書が居た。

司書は男性で、初めての理熾に図書館のルールを教えてくれる。


「ご利用の際はまずカウンターで司書(私共)に声を掛けて下さい。

 私共からは、ギルド員であればカードと5カラド。

 一般の方なら10カラドをお支払いの後、ご利用いただけます」


こんなところでもギルド員は優遇されるらしい。

むしろギルドの施設内では何処でも優遇されるのだろう。


 ギルド員には嬉しい…特典。

 というか、お金の無い僕にとってもありがたい。

 でも、何故だか『ギルド員にさせること』を目的に一般の値段を引き上げている(・・・・・・・)気がするなぁ。

 まぁ、どの世界でも情報は力だし、名簿は売れるから分からなくはないけれどあくどい気がするよ。


卒業アルバムを販売したりする人を思い浮かべながら、ぼんやり考える。

名簿の情報力というのはなかなか侮れない。

ゼロよりも遥かに色々と捗るのだから。


「また、お帰りの際にも改めて声を掛けて下さい。

 その際にお預かりしたギルドカードと、3カラドを返却致します。

 一般の方は5カラドの返却を行います。

 その差額がそれぞれ図書館の利用料と言うことでご理解下さい」

「何でお金のやり取りがあるんですか?」


「差額に関しては、もし図書館で問題行動を起こした際の最低金額の『罰金』とお考え下さい。

 当然、被害によっては追加での請求もありますが、広く使っていただく為に入館料を抑えています」


いや、だったらそもそも入館料だけ取れば良いんじゃないだろうか?

とも思ったがそれも難しいのだろう。

どうやらクレーマーは何処にでも居るらしいと悟る。


例えば利用料だけを徴収した場合、図書館側が何らかの被害を受けても支払わない者が出てくるだろう。

だからと言って被害を見越して利用料を上げると使いにくくなる。

その対策のための返金システムだとも言える。

しかしそうなると初期の入館料が高く、やはり入りにくくなる。

かといって返金額を多くし、結果的な利用料を下げると利用者のモラルと格が下がってしまう。

『広く知識を』という理念は大事だが、その為の場が荒らされては話にならない。

だからこういう結果に落ち着いているのだろう。


残りの説明は暴れないとか、私語は控えろとか、静かにしろとか、飲食禁止などの普通の事だった。

それらの注意事項を聞いて理熾は確信を得るべく颯爽と部屋に入っていく。


が、格好をつけて入ってみたがそこは理熾。

部屋に入ってすぐさま折り返し、司書に質問する。


「すみません、勇者とか、英雄とかの強い人が載ってる本ってありますか?」


説明時に一緒に聞かない辺り、詰所で宿屋とギルドの場所を聞いた時からそれほど成長していなかった。

気が付けば2000アクセスを超えました。

いつもお読み下さりありがとうございます。

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