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神様のおねがい  作者: もやしいため
第三章:始まりの街
19/537

まさに商機

8/30訂正

詰所で衝撃の事実を告げられ、沈黙というか固まってしまう理熾。

命を削ってまで探した野うさぎは絶対に見つかる事などなかったのだ。

朝から何故こうも疲れることになったのだろうか。


 全く、野うさぎを探した所為で時間が無くなって真面目に死に掛けたのに、野うさぎの季節じゃないってどういうことだ!

 【神託】の発動タイミングに物申す!!

 とりあえず投書先はPTAでいいのかな!?

 光の玉()なんか滅ぼされろ!!


と内心プリプリ怒る理熾。

そもそも怒る程度では済まされないレベルなのだが。

その辺はきっと理熾の良さであるのだろう。

そんな野うさぎ事件を経て、詰所を出、今度こそ市場調査という名のひやかしを開始する。

詰所で話をした内容は大したことは無かったが、気が付けばかなりの時間が過ぎていた。

既に昼前に差し掛かっている。


 にしてもギルバートさん話しが上手いなぁ。

 やっぱり街に出入りする人と話をしないといけないからかなぁ?

 あの対人スキルが欲しい!

 実際にスキルを持ってるかどうか知らないけど。


そんなことを考えながら露店を回る。

始める時間が随分ずれ込んでしまったが市場調査というヤツである。

思っていたより物価が安い。

というよりは、理熾の感覚がスフィアとずれていただけである。


露店を見ていると1カラドで買えるものは随分と多い。

単にそれより下の通貨が無いので『最低が1カラドになるように販売している』のだ。

日本なら1袋いくら、という詰め放題みたいな感じだろうか。

いや、どちらかというと中身の見える福袋か。


1つの商品で足りないなら、複数を組み合わせて1カラドになるように販売する。

当然、お店によって『1カラドで買える商品(組み合わせ)』が違う。

それは多分店主によっての『手に入りやすさ』が違うからだろう。

10カラドで売るなら10カラド分の物の詰め合わせなど、バリエーションは豊かである。

まさに組み合わせは自由であり、店主と交渉さえ成立させればもっと安く手に入る可能性はある。


 にしても色々とあるなぁ。

 昨日ギルドで見掛けた依頼の『薬草』とかも普通に売ってる。

 依頼主は何で市場で買わないんだろう?

 …いや、数が数だから市場だけで買うともしかすると足りないとか合計すると高くなる(・・・・)とかかな?

 んー…考えても分かんないけども…。


 って、そうか。

 依頼主にとっては1束約1カラドの薬草を、市場で50束買うっていう『時間が勿体無い』?

 そもそもこれだけの規模で市場が開いているんだから、買うのは簡単だと思う。

 …まぁ、集めるのは大変だろうけど。

 もしたった50カラドの金額で集めてきてくれるなら、依頼主にとっては労力と金額が釣り合う…のかもしれない。

 むしろそれ以上出すなら自分で集めた方が良いって感じかな?


市場を練り歩くだけでそんな事を考える。

確かに薬草が普通に売ってる。

けれど、1店舗で売られているのは5束前後、多くても20束くらい。

値段もまちまちで、複数店舗を渡り歩いて交渉するくらいなら、一括で買取を出した方が楽である。

理熾も金があるならそうするし、だからこそ依頼として成り立つのだろう。

そう考えるとやはり労力を値段で補っているのかな、という結論に至る。

けれど別の理由も思いつく。


 もしくはこの市場に詳しくなくて、それでも必要な場合かな?

 薬草の相場は分かるけど、全部集められるかどうかは分からないって場合も依頼出す可能性ある、かな?


と『依頼者側からの理由』を推測する。

しかしこんな近場に売っている場所があるのだ。

少しくらい探索してもよさそうだが、それをしない。

何かしら理由はあるのだろうが結局は良く分からない。


とはいえ。

それほど難しく考えなくても『時間や労力を買う』というのは日常的にやっていることだ。

アルバイトはまさに時間や労力を『売る側』だし、雇用者は『買う側』だ。

知識としては持っているが、実感として感じるのはまた話が違う。

理熾はまさに今、実地研修を独学で行っている最中だった。


 …って、そうなると。

 僕でも稼げる可能性が高い…?


こういう採取系は『お使い』して納品してもいいのだろう。

当然、自分が採取して納品した方が余程稼げる。

が、そもそも普通にカウンターで売るより高く買い取る(・・・・・・)から、依頼として成り立つ。

でなければわざわざ狙って採取やら討伐をする意味が無い。


 だからこそ『間に』僕が入れば稼げる!


キュピーン!

という音が聞こえそうなくらいの閃きだった。

だがそうなると何より情報が必要だった。


 うん、そうだ。

 何が簡単に手に入り、誰が何を欲しがっているかを調べないと!

 …でもそれがものすごーく、難しいような…?

 ま、まぁ…とりあえずギルドの採取依頼見てからかな…ッ!


討伐カウンターに着いて改めて採取依頼を見てみる。

どう考えても難しい。

ヒクイドリの卵とか、ウォーターベアの毛皮とか、サイレントアイの眼球とか。

納品数は少ないが、名前からして出遭ったら瞬殺されそうなメンツである。


閃いたは良かったが、世の中そんなに甘くは無い。

むしろスフィアが理熾に対する場合に限り、激辛だ。

理熾の発想は正しいのだが、それを行っているのが『市場』である。

いきなりその中に入って何が出来るというのだろうか。


何より元手(手持ち)が無い。

買い取る以上は手堅く行くにも、金が必要である。

それが買い取る金も無いというのならば転売自体が出来ない。

そんな中、何故かまだあった『薬草依頼』が目に留まる。


 …あぁ、報酬少なすぎるからか。

 稼ぐにしては安く、受けるにしてはめんどくさいんだろうなぁ。

 こんな小金を稼ぐくらいなら弱い魔物倒せば十分お釣りが来るとかで。


と変に納得してしまった。

理熾の予想通り、誰もが興味の無い薬草採取の依頼。

『ついで』に薬草を摘んでくることはあっても、わざわざ薬草だけを取りに行くというのは無いのだろう。

だが数的には目指して取りに行くような量なのだ。

はっきり言って場違いの依頼と言えるだろう。

何せ金欠の理熾ですらそれほど乗り気になれる話しでは無いのだ。

それでも「受けようか」と思っていると依頼が張り替えられて条件が変わった。


◇◇----------------------------◇◇

【採取】大量の薬草

依頼者:コザック


依頼内容

出来る限り早く大量に薬草が必要になりました

どなたか、早急に薬草100束の納品をお願いします

今すぐに。


報酬:500カラド

◇◇----------------------------◇◇


 こ、これは!!


納品が100束に増えたが、1つ2カラドから5カラドに跳ね上がっている。

全て通常価格の1束1カラドで買い取って納品しても400カラドの儲けである。

理熾は瞬時に計算した。


 市場で薬草を売ってたお店は知ってる中では10軒。

 最低の5束が2軒に、10束3軒、12束が1軒、15束が2軒、20束が2軒だったはず。

 合計で122束売っていた計算になる。

 市場見てた時からまだ1時間も経っていない…。

 そんなに一気に売れるわけもないし、1軒で1束ずつ売れてもまだ100束以上は残ってるはず!


希望的観測かもしれない。

しかしこの好条件を逃す手は無い。

何せ市場価格で買い集めても400カラドの儲けなのだから。


 全部回って薬草かき集めれば間に合う…と、信じる!

 最悪足りなかったらギルドで立て替えてもらう!

 ダメなら泣くしかないけど!!


すぐさま依頼書を剥ぎ取り、カウンターへと突き出す。


「これやります!!」

「はい、ではギルドカードの提示をお願いします」


言われてすぐにカードを渡す。

ギルドで登録した際にも使った、台の上(多分)にカードを置いて認証する。

カードへ依頼の書き込み(受理)が終わり、行動を開始する。


 今は時間が全てだ…いそげ、いそげ、いそげ!

 これでミスれば信用ゼロの無一文だ!

 最悪ギルドに追われるッ!


理熾は思考のギアを上げる。

頭の中で先程回った市場の地図を開いて道筋を決めてしまう。


 最速で回って帰ってくる!

 荷物になるけど100束は誰がやっても邪魔になる!!


気合を入れて出発しようとした時にふと思い付いた。

そんなはずは無いと思う反面、何故だか完全に否定できないことがある。


 あれ?

 もしかしてこれは…?


疑問に思ったことを聞いてみる。


「すみません、少し教えて欲しいんですが…」


何となく、ただ単にこの世界の住人は考えが足りないのだと知った日だった。

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