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神様のおねがい  作者: もやしいため
第九章:口煩い貴族様
178/537

【幕間:神域】守護者の憂鬱2

今日少し早めに更新です。


それにしても少し間が開きました…。

もう少し頻度を上げていきたいと思います(。。

今後の展開はまだ模索中なのですが…。

平和だなんて誰が言ったのでしょうか。

戦闘訓練の打診の翌日にはいきなり参加してるじゃないですか!

いくら【状態異常耐性】や【HP回復力上昇】があると言っても無茶はいけません!


…まぁ、結果から見れば予想通りとは言え、余りにも一方的な勝利でした。

あの金槌を寄せ付けずに弓のみでの封殺。

二番手に出てきた正統派(オーソドックス)な騎士は理熾様の本気殴り(拳打)で撃沈。

弓はともかく、身体に反動が発生する《拳打》を全力で打ち抜くなんて何を考えているんですか。

まぁ…特に何の影響も無いようですが…。


それから暫くは完全に訓練兵と一緒に訓練してました。

相変わらずの武技の収集と行動の最適化を念頭に置いているようです。

主様曰く、理熾様は前の世界では劣等生…とまでは行かなくとも、特に突出した方では無かったそうです。

平均程度…あわよくば少し上くらいという立ち位置だったと聞きます。

そして何より『無気力である』ということを貫いていたそうです。

だというのにスフィアでの行動は全く正反対の印象を受けます。

確か候補の設定に『現世界に飽きている』というものがあったはずです。

主様が設定したのですが、『嫌っている』や『死にたがっている』ではなく『飽きている』ということに意味があるそうです。


『嫌っている』というのは周囲の環境、そして現状を認めないこと。

その中には自身も含まれ、環境や自身を開拓するという発想すらも無く、ただただ『嫌だ』と考えているのでは役に立たない。

自殺志願者(死にたがり)』なんてのはもっての他で、勝手に死ねと主様はご立腹でした。

強い方ばかりではないでしょうが、『死ぬこと』へと焦点を合わせてしまえば後は腐るだけです。

生物にとって『死亡』とは終着点であり、結果です。

故に生物は『生存時にどれだけ高められるか』というのが全てであるとさえ言えます。

その鍛えるべき瞬間を放棄し、結果を蔑ろにするような行為を主様は認めません。


しかし『飽き』というのは少し方向が違います。

周囲の環境を認め、理解して自身の適合を考えます。

環境に合わせるのか、環境を合わせるのか。

新たな環境を探すのか、自身で作るのか。

様々な試みの先に落ち着いてしまって『飽きて』しまうというわけです。

『一時的な停滞状況』というだけで、当人が持つ能力などは高いとさえ言えます。

何せ『飽きるほどに周囲を理解した』ということですから。


根本的な能力の高い理熾様にとって、『下辺に合わせる教育を施す学校』という環境がやる気を奪ったと言えるでしょう。

恐らく理由は学校という環境は簡単すぎた(・・・・・)のではないかと考えます。

個性を引き換えにある程度の汎用性と、最低限の知識、画一的な同系思考を製造する『学校』という施設。

あの場は考えるところではなく、出てくるものを処理する場なのです。

方法さえ知っていれば良いのですから、それこそパソコンで十分なのです。

その証拠にその枷が外れてからというものノンストップです。


他の人ならこうはならないでしょう。

余りの自由度の高さに足が竦み、行動一つ一つにビクビクすることでしょう。

行動に対する反応が余りにもダイレクトに伝わってくるからです。

責任の全ては当人が取らねばならないのですから当然かもしれません。

そう考えると理熾様は最初からご自分の判断のみで生きられているように思います。

…いえ、そうするしか無かったとも言えますね。

主様の設定が余りにも雑でしたし。


っと…思考に没頭してしまいました。

流石に何日も同じような光景を見ていればこういうこともあります。

それにしても訓練兵は役に立ちませんね。

理熾様が手札を使わぬままあっさりと追いつくのですから。

まぁ、理熾様は大満足のようなのでいいのですが。


とりあえず一週間分のダイジェストを主様に提出します。

流石に心臓に悪い(主様に心臓とか無いですが)のか、緊急依頼後は音沙汰無しです。

変に「あいつは大丈夫だ」とか思っているかもしれません。

まだ子供だというのに…。


「主様、理熾様の一週間をダイジェスト版にしてお持ちしました」

「ご苦労。

 ふむ…気付けばそんなに経っていたか。

 確か領主と報償の件を終えてから一週間だな?」


「はい、その前の数日間も作成しますか?」

「特段変わったことも無かったのだろう?

 寝て過ごした日もあるだろうし、特に見る必要は無かろう」


確かにあの時は【神託】の相談で報告しています。

その前後ですので特に変わったこともありませんでしたし妥当かもしれません。


「で、理熾はいきなり訓練場か?

 あいつはじっとしてられんのか」

「…寝てたのも翌日だけですからね」


「まったく…」


と呟き私が編集したダイジェスト版の見聞をはじめます。

心なしか微笑んでいるように見えるのは気のせいでしょうか。

孫の活躍が嬉しいおじいちゃん…?


「何か変なことを考えていないか?」

「何のことでしょうか。

 それより主様、ここから理熾様が活躍しますよ!」


「ほう…どれどれ。

 …いや、逃げ道塞ぎすぎだろう。

 完全に封殺してるから、アレはもう逆ギレしか方法が無いじゃないか」

「それは方法というのですか…?」


「暴発、という方が正しいかもしれんな。

 人はそう簡単に感情を飲み込めん。

 あれだけ煽られ、追い詰めて感情値を上げているのだ。

 ガス抜きできる場所が無ければ器諸共ドカン、だ。

 それにあのハンマーは逃げ道だけでなく『これから』にも傷を付けられている。

 恐らく団長(エリル)が緩衝させるための言葉を掛け無かったら闇討ちされる。

 それこそなりふり構っていられないだろうな…『自分の形』を取り戻すための行動なのだから」

「人とは深いモノですね」


と私は相槌を打った。

しかし私の理解は全く違ったようで、すぐに訂正が入りました。


「それは違う。

 面倒なモノなのだ」

「面倒、ですか?」


多くの世界を管理する立場にありながら、『面倒だ』という主様の言葉は私にとって意外なものでした。

少なくとも好意を持っているはずなのに、どうしてそんな物言いになるのかと。


「そうだ。

 彼らは感情の起伏があって情緒不安定だ。

 その為に精神状態や体調によって発揮できる性能にバラつきがある。

 理熾のように自身を使いこなす者も居れば、逆に使い潰す者も居る。

 『性能』という点に置いてこれほどまでに使いにくいパラメーターは存在しないだろうな」

「性能ですか…。

 感情を抜くというのは難しいのですか?」


「難しいというよりは不可能だな。

 感情とは最早機能の一つとして確立してしまっている。

 言うなれば感情は人の性能を引き出すための増幅器(アンプ)の様なものなのだ。

 生物が持つ本能…『能動的な環境適応の原動力』として不可欠なのだ。

 簡単に言えば生き残るための手段だな。


 もし感情が無いのならば単なる自然現象と変わらない。

 自然現象は『摂理』と呼ばれるルールによって確立していて、そこに一切の感情は無い。

 だからこそ自然は感情に左右されること無く、平等に恩恵と被害を与えられるのだ。

 例えば感情を抜けば誰かのために殉死する、自分のために誰かを貶めるなんてことは発生しなくなる。

 単なる行動の結果だけが存在し、そこには予定調和が存在するだけだ。


 そうだな…。

 例えば戦闘などは戦力差で決定するだろう?

 生物が争う場合の戦力差は単なる『有利・不利』という物差しでしかなく、劣る者でも勝てる可能性がある。

 しかし自然現象の場合はその戦力差が絶対となり、何度やっても必ず同じ結果にしかならない。


 クーリア、お前もそうだが本来は摂理(機能)しか持たない側だ。

 それは『私の指示に従う』というのが存在の規則(ルール)だからだ。

 しかし今は違うだろう。

 守護対象(理熾)を守るということは、周囲の環境や人を理解せねばならない。

 摂理は既に持っているが、本能は無い…その感情は理熾に引きずられて手に入れたものになる」


なるほど、と私は納得しました。

全ての問題を数字で理解するのが摂理。

変数で解決するのが本能、という訳ですか。

本来私達天使には変数(本能)は必要ありませんが、守護対象が現れた場合はこの限りではないのですね。

変数を交えた式を解決するには、変数(本能)を理解する必要がありますからね。

逆に生物は数字(摂理)を理解する必要がある…と。


あ、そういうことですか!

世界が嫌いな者や自殺志願者はこの『本能と摂理の学習を放棄した』ということなんですね。

そして飽きた者というのは、『本能と摂理をある程度理解した』ということでもあるんですね。

なるほど…そう考えれば確かに…。

前者は今更新しい摂理(環境)を必要としませんが、飽きている場合は『一から頑張る楽しさ』がある訳ですね。

深い意味があったんですね…。

いえ、別に主様をけなしているわけではありませんよ?


「生物はそうやって生態系のピラミッドを形成し、常に上位を目指す(・・・・・・)

 その為に下位や、同位グループを移動したり上位に挑戦したり…要はどこかへ向かおうとするのが生存本能だ。

 一番上に立てば脅かされる可能性は相当に減るからな。

 そして理熾がやったのは『全ての逃げ道を塞いだ』のだ。

 志向性を持つ感情という機能は確実に暴発するような環境を整えてしまったのだよ」


と溜息混じりに主様は伝える。

確かにあの金槌は私の理熾様にありえない無礼をしました。

それに対する返礼は『本能を否定する』という仕打ちだったというわけです。

こうして主様に説明して頂くとやりすぎた感が凄くします。

自業自得という言葉がありますが、それで納得できるなら感情に振り回されたりはしないですよね。

停止していたダイジェストを進めながら


「あぁ、この二人目も災難だな。

 団長がフォロー入れたからこそ奮い立ったのに一撃なのだからな。

 理熾はもう少し人の感情や環境を踏まえて行動する癖を付けねば危険だな」

「確かに…この後続く者が居ませんでしたしね」


「それでも翌日には相対者が出てるのは団長の手腕だろうな。

 ほう…訓練兵とは言え、理熾を押す者が居るのか」

「主様、違いますよ。

 理熾様は格闘と弓しか使ってません」


「……何故そんな…?」

「『弓兵としてありえる手札(・・・・・・)で戦う』ことにしたようです」


「なるほど…対策への対策か。

 団長に指摘されてた部分は問題なく対策済みなのだな。

 そう思って見ると確かに(つたな)いな。

 ウッドウルフやアーチャーを全滅させた精彩さは無い」

「全くです。

 それでも打ち負けないのですから」


と私は胸を張ります。

とはいえ、この時はまだヒビが入った状態。

回避ではなく受けるタイプの防御をすれば身体に負担も掛かります。

それでも『手札を隠す』のですから、理熾様は徹底しています。


「動きが良くなっていないか?」

「えぇ、相手の動きを見て、確認して、吸収・昇華しているようです」


「…目敏いやつめ」


主様はそんな風に呟きますがやはり嬉しそうです。

見定めて送った使者が優秀なら嬉しいに決まっていますよね。

そうして最終日まで負けることなく訓練を終えます。

逆に今では訓練兵から『挑まれる対象』として立場を確立してしまっているんですよね。

それにこれだけ動いている間にも身体は完治してしまうという理熾様の身体の中は一体どうなっているんでしょうか。

主様とダイジェスト版を通して理熾様の勇姿を堪能しました。

まぁ、私は二度目なんですが…何度見ても良いものですね!

お読み下さりありがとうございます。


『8話:対第一街人』までの修正を行いました。

ちょこちょこ変わってたりするので気が向けば見てみてください。


やっぱり更新しないとアクセス数落ちますねぇ(。。;

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