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神様のおねがい  作者: もやしいため
第三章:始まりの街
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早寝早起き良い子の習慣

8/23訂正

ツヴァイ達と分かれ、討伐カウンター・ギルドを後にする。

何だか良く分からないが、『絡まれた』ことになった5人組は全くもって良い人だった。

結局5人中3人分しか名前が分からなかったのが悔やまれる。

そもそもその内1人は一言も喋れなかったわけだが。


「ぅー…早いところ宿に戻ろう。

 お昼はもう遅いし良いや…夕飯だけ食べる…」


というのも当然で、気付けばお昼は過ぎていた。

夕方までまだ少し時間はあるが…おやつ時くらいだろうか。

このくらいの時間に昨日は平原に放り出されたのだ。

それを踏まえると…元の世界とスフィアとでは時差があるんだなぁと実感する。

幸い(?)にも時差ぼけするほどの余裕が無かったし、様々なハプニングで体内時計が正しくリセットされたようだった。


「あら、お帰りなさい。

 ギルドはどうだった?」

「だだいまぁ…」


聞かれたことに答えず、挨拶だけする。

体力的に今の理熾には余裕が無い。

挨拶だけで手一杯なのだ。


「何だか凄く疲れてるみたいだけれど、何かあったの?」

「それが昨日から強行軍なので、その影響かなぁ」


「昨日…?」

「ちょっと手違いで城壁の横で野宿しちゃって…」


手違いしたのは確実に馬鹿()なのだが、それを言っても始まらない。

もしかするとただの計画的犯行なのかもしれないが理熾に知る方法など無い。

とにかく濁した感じで答える。

眠気マックスなのだから仕方ない。


「ぇ…?

 良く無事だったね…最近ホントに外危険なのに。

 なるほど、だから眠そうなんだね」

「デス。

 少し寝て…もしかしたら朝まで起きれないかも」


意識してしまった疲労を考えると仮眠で済むかどうかも分からない。

念のためその旨を伝えておく。


「うん、分かった。

 もしご飯食べたかったら10時までに注文してね。

 でないと厨房の火を落としちゃって作れないからね」

「分かりました~お休みなさい~」


ホントに分かってるのか怪しい。

全く頭に入ってない様に見えるのだが大丈夫なのだろうか。

思わず首を傾げてしまう。

まぁ、覚えて無くても出来ないものは出来ないのでいいのだが。


「気を付けて階段を上がってね」

「ふぁ~い」


と頭を揺らしながらトントンと階段を上っていく。

そんなところを見ると凄く子供らしく見える。

そう、彼は子供なのだ。

ギルバートが言うには日が昇った直後…薄明かりになった頃に発見されたらしい。

最初は死んでいるのかとも思ったらしい。

というより体が温かいのに揺すっても声を掛けても暫く反応が無いので死んだばかりなのだとすら思っていたらしい。


その癖意識を取り戻すと知らない言葉で話し、何者なのだろうと思っていると薬草を渡された。

後で聞くと焦りに焦って手持ちの物を渡して敵意が無いことを示す行動だったらしいと聞いたそうだ。

しかし逆に子供がそこまで頭が回るものなのかと疑問に思ったという。

そして気が付けば普通に話していた。


言い訳(・・・)は母国語が出たという。

そして母国語が通じず、混乱して色々やったとも言っている。

それは分かるが、【言語知識】(バイリンガル)のスキルを持っているのなら、ギルバート側からの呼びかけが通じるはずだ。

言い間違うのはまだ分かるが、『聞き分けられない』と言うのは不思議な話。

寝ぼけていたとしても、『敵意が無いこと示す』という判断が下せる(・・・・・・)くせに、混乱していたと。


理熾の言い分は筋が通っているし、理熾が本当のことを言ってるというのは感じる。

どこかちぐはぐな状況なのに、何故か『正しい』と思わせられる態度や雰囲気が出ている。

が、状況と話を繋げて行くとちょっと疑いが出てくる。

と言うのも、理熾が嘘を交えて『話の筋を通せるほど異常に優秀』なのか、単に『本当にボケていた』かのどちらかに。

確率的には後者が圧倒的に高いだろう。

けれどギルバートは本当に「そうなのだろうか?」と疑問に思ってしまったらしい。


出自不明(それもLv1)の癖に、街外で野宿とすら言えないような野ざらしで生き残れるのはどんな確率なのだろうか、と。

たまたま理熾の到着と発見が僅差だったのかもしれないが、何となく気になってしまう。

理熾が『特別な優秀さ』を見せたこともないのに、何故か感じる。

そんな話を聞かされた受付嬢のセリナは溜め息を入れる。


実際、「そんなコト言われても知らないわよ」というのがセリナの意見。

理熾は一生懸命だし、何より見た目が小さくて可愛いので思わずほっこりしてしまう。

といってもまだ初日だから何も分からない訳だが。

何より、『何か不穏なことを考えている』という想像が全く働かない。


眠い眠いと言いながらくたくたになって階段を上がっていく様など子供以外の何者にも見えない。

無駄に礼儀正しいことを除けばそれくらい子供らしい子供(・・・・・・・)なのだ。

裏など無いだろうし、あっても知りたくない。

いっそずっと騙してもらいたいくらいだ。


階段を上がっていった理熾を思いながらもう一度溜め息を吐く。

何故こうも父親(ギルバート)が気に入るのは変なのばかりなのだろうかと。

むしろだからこそ(・・・・・)気に入るのかもしれないが。


ちなみに理熾は完全に寝入ってしまったため、晩御飯に降りてはこれなかった。

そしてかなり朝早くに起き出して「すみません、ご飯まだですか?」と聞いてきたのだった。

セリナは噴出しつつもやはり「子供だなぁ」と思うのだった。

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