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神様のおねがい  作者: もやしいため
第八章:使用方法
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牙の値段

食事は待ちに待っていたという感じで始まった。

ノルンが既に飲み物や取り皿を完璧に並べてあり、残るは料理のみという状態だった。

そんなにも待ちどうしいのかと理熾は思ったが、実際あけみやの食事は美味しいので異論は無い。

朝食を抜いているので理熾も空腹なのだ。


とりあえず守秘義務を叩きつけながらノルンにもコボルトキングの話をする。

顎が外れないか心配になるくらい口をあけていたのが印象的だ。

ちなみに「守秘義務破った場合はマジで反逆罪に問われるよ」と伝えてある。

実際にそのレベルの話で、本来であれば理熾のような一討伐者がどうのこうの言うような次元でもない。

まぁ、何だかんだと首を突っ込んでいるので相手してもらっているのだが。


「それでリオ君。

 これがご要望の装飾品(アクセサリー)だ」


と渡されたのは首から吊るす牙。

リザードの犬歯と竜鱗を粉にし、血魔石を中に入れて固めた牙の模造品らしい。

元が粉で出来ているので脆いのかとも思ったが、恐ろしく頑丈に作られている。

ちなみにフィリカが壊してみろと挑発したので実行した結果、理熾の腕力では壊れなかった。

(理熾は大人なので【魔闘技】・【限界突破】は流石に使わなかった)

それをチェーンで繋いでいるのだが、性能がやばかった。


「レモンの刀を削った際の残り物で作ってある。

 基本は継承特性の【瞬発】、【部位強化】。

 こっそり鱗を仕込んだから【竜鱗】も発現する。

 この辺は任意に発動できるはずだから、後で試してみてくれ。


 後、中にリオ君の血魔石(ブラッディコア)を仕込んでいて《結界》も刻んでいる。

 まだ容量は空いているから何か追加で欲しい術式あれば刻印を施すんで言ってくれ」


つまり時間的制約があるにせよ擬似的な【竜鱗】を扱えるというわけだ。

フィリカが言うには直接肌に発現するのではなく、服の上をなぞる様に現れるらしい。

竜種からすると鱗は鎧であり、皮膚ではなく爪のような扱いらしく、擬似的に扱う分には付け外しが出来るとのこと。

確かに鱗の鎧(スケイルメイル)を考えれば『鱗を着る』という発想自体は分からなくもない。

【竜鱗】の発動条件は他の装備特性と同じく魔力を込めることだけなので、かなり使い勝手が良いはずである。

が、ユニークスキルを再現できるというのは余りにも破格な気がする。

その点を聞いてみたのだが…


「いや、ユニークと言っても竜種の基本スキルだ。

 ユニークに属するのは単に『種族固有』という意味でしかない。

 であれば発動媒体さえきちんとしたものが使われていれば何とでもなる」


だそうである。

ちなみにどんな装備でもそうなのだが、装備への特性継承は『特性の強度』に影響を受ける。

どういうことかといえば材料が1gと10gの物とでは10gの物の方が遥かに大きな効果を及ぼす。

密度や部位など、他の理由もあるため一概には言えないのだが、素材として多くを使った方が強くなるのだ。


今回作ったアクセに関しては5cm程の大きさのため、本来で言えばそこまで凄い効果が見込めない。

しかしそこはフィリカ。

特性概念を抽出・圧縮したらしく(普通は出来ない)、同じ大きさの3倍程度の性能はあるらしい。

相変わらず高性能過ぎて気持ち悪いレベルである。

ちなみに銘は【深化の竜牙】と言う。


他にも今日渡されたネーブルの剣は軽さと頑丈さに特化している。

重量を軽くする跳飛石(ちょうひせき)、魔力に応じて硬度と重量が増える荷重硝(かじゅうしょう)配合である。

しかもリザードの素材が有り余っているので骨やら爪やらを配合して【頑堅】とか【硬質化】を発現させている。

剣なのに盾の役割を担えるだけの強度を実現している。

とはいえ剣である以上は切れないと話しにならない(フィリカ談)。

故に【部位強化】を施して、剣自体を強化するというネーブルが要求した以上を軽く揃えてしまっている。

ただ手入れ(メンテナンス)にまでは手が回らず、「こまめにやっとけ」と注意を受けたらしい。

装備の手入れは当たり前のことなのだが、フィリカの中では手入れ不要(メンテナンスフリー)な装備が基本スペックらしい。


スミレには先ほどの戦闘服。

フィリカが言うにはこれが一番手が込んでいるらしい。

魔力を込めれば防御力を上げられるようにしてあり、魔力の伝導率が高く、増幅・収斂なども当然完備。

基本仕様(デフォルト)のように【最適】や【適温】が付いているがこれらを上げても有能すぎる。

魔力なしの状態でも馬に蹴られてもノーダメなのに、魔力を耐久度の限界まで込めると【士魂の強弓】で放つ矢を平気で止めるらしい。

その場合の魔力消費量は尋常じゃないらしいが、それにしたって最早服の性能ではなく鎧のレベルだ。

これらを理熾、スミレ、ネーブルの装備を並列で作りこんでくるのだからやっぱりフィリカは別格なのだろう。

明日はハッサクの暗器のようで、理熾は既にワクワクしていたりする。


そんな楽しい食事(?)を終えてから、理熾は支払いの話を持ち出す。

商品が手元に届いているのに未だ一切支払っていないのだ。

驚異的な短時間で作っているので支払いが遅い訳ではないのだが、流石に悪い。

昨日頼んだアクセも受け取ったのを機に、精算しようという訳である。


「というわけで。

 まずは僕のアクセからいきましょう」

「あぁ、素材は全て持ち出しなので技術料だけ。

 昨日言ってたように3割も付けて2万でどうだろう?」


「ではそれで」


と言い値で即決。

すぐに2万カラドを支払う。

フィリカの見立てが高いということは絶対にない。

それだけ信用しているし、もし高くても別に良い。

十分なものを提供してもらっているのだから。


「他の装備分は一括にしよう。

 残りはライムのメイス、ハッサクの暗器、スミレのローブと盾だろう?

 後数日もすれば終わる。

 一度の方が私としても楽だし、リオ君もそうだろう?」

「確かに…なら全部揃ってからということで」


早めに支払ってしまいたかったが、ごねても仕方ない話だ。


「そうだリオ君。

 最初に渡した装備でまだ良いのか?

 もう初心者というレベルでもないだろう?」


と質問してくる。

そもそも理熾に初心者の頃があったのだろうか。

フィリカに会った時点でオークを倒してたし、何よりその翌日にはハイオークだ。

初心者が相手取るような魔物ではない。


「んー?

 今回のコボルトでも十分役立ったけど?

 あぁ…そういえば槍使ってないなぁ…。

 間合いの関係で槍のが強いはずなのに何でか使わないなぁ…」

「ふむ…剣と斧は使うのか?」


「ですね。

 剣は露払い、斧は一撃必殺。

 そう考えると僕とやり合う相手が居ないのかなぁ…?」


と今更ながら槍の扱いを考える。

槍自体は相当に優秀な武器である。

剣や短剣などの攻撃範囲よりも遥かに広く、先制攻撃が可能で間合いを保てば一方的に攻撃できる。

これだけでも十分に有利なのに刃物としての側面と棒としての側面を持つ。

近接されたところで持ち手の長さを変えるだけで戦え、自分の身体を支点に取り回せば剣などの比ではないくらいの攻撃速度を持つ。

弱点としてはその長さ。

広い攻撃範囲を持つ分、狭い場所では取り回しに制限が掛かり使えない。

今回のキング戦では森の中だったため、理熾は無意識に選択肢から外していたのだ。


「リオ君とやり合う相手って誰だろうな?

 というかリオ君は正面から戦わないんだからむしろ槍が要らないかもな」

「うーん…奇策の中にも正統派も必要じゃないかな?」


「そんなことしたら一体何が正しいか分からんな」


などとフィリカはご機嫌である。

実際理熾と話すのはかなり刺激になっている。

フィリカが持つ長年の経験を嘲笑うかのようなトリッキーな技術の運用を見せるのだから当然だ。

そんな理熾の言葉の一つ一つがインスピレーションに直結する。


「すみません、ご主人様」


とスミレが口を出す。

別に邪魔をしようとしたわけではない。

単に


「ゴブリンが真っ二つになった理由を教えてくれませんか?」


という疑問だ。

確かにあの時理熾はスミレに「また後で教える」と伝えてある。

実際そのつもりではあったし、【空間魔法】に嫌悪感を持っているなら『それは違う』と言いたかった。

コボルトへの投石の件を理熾は聞いていたので、かなり薄れてはいるだろうが、絶対ではないと思っていた。

人間そんな簡単に変われるものでは無いのだ。


「簡単だよ。

 まずは投剣を取り出します」


そう言いながら《亜空間》から投剣を取り出す。

当然発射準備しているモノではない。

それを「はい」とスミレに渡すとつんのめった。

相変わらず誰が持っても驚愕の重量なのだろう。

特に引きこもり(スミレ)には。


「で、この投剣を落とします」


スミレがプルプルしながら握り締めている投剣とは別のものを《転移門》に落とす。

余り速度が出すぎても危ないのですぐに《亜空間》に仕舞いこむ。


「この投剣は【加速】(アクセル)が付いてるんだよ。

 だから《転移門》に落とせば、最後に一気に速度を増す。

 そこを《亜空間》に捕まえて保管しておくんだよね」

「それがあの結果ですか?」


「いやー流石に無理だよ。

 この投剣の最大の特徴は異常な貫通力(・・・・・・)だからね。

 普通に放ったら一直線に穴が開くだけ。

 ゴブリンは一列に並んでた訳じゃないでしょ?」

「はい、疎らにご主人様を狙っていましたので…」


「だよね。

 っと、ここじゃ危ないから外へ出ようか」


そう言いながらスミレを連れ出す。

フィリカが興味津々で付いてきたのは恐らく言うまでも無いだろう。

先程スミレに渡した投剣を返してもらって説明を続ける。


「そこで僕は考えた。

 『この異常な貫通力を範囲攻撃に出来ないか』ってね」

「あぁ、それで《結界》を仕込んだんだったな。

 発想が画期的過ぎる…しかもこの投剣以外じゃ何の役にも立たんしな」

「《結界》…?」


「うん、《結界》。

 スミレも知っていると思うけど《障壁》は形の自由度が高いよね?」

「はい。

 自分もご主人様の使い方を見て知りましたが…」


「うんうん。

 でもそれをすぐに使ってる辺りスミレは凄いよ」


と理熾は感心する。

既に答えのある物事に対する、新たな意見を素直に聞くというのは難しい。

本人が考えた末で見付けたのなら納得もする。

しかし今まで使っていて、しかも現在進行形でその方法が『正しい』と思っている者にとっては果てしなく難しい。

見ては粗を探し、聞いては否定しと、『そうではない理由』を探して認めない。

昔の地動説、天動説みたいなものだ。

その点スミレは素直に吸収してしまう。

自身の価値観を持ちつつも『技術は技術』という割り切りが強い。

だから理熾も説明しやすいし、スミレも取り込んでしまうのだ。


「で、その自由度の高さは《結界》にも言える。

 ちょっと前に《障壁》を極薄で展開して岩石兵(ロックゴーレム)を割ったことがある。

 これと同じように高速で飛んでいく投剣の血魔石を経由して『《結界》を極薄の超強度』で展開した」


そう言いながら理熾の手元にある投剣が《結界》を起動する。

極薄の力場に鋭さは無いのだが、アレが当たれば恐らくただでは済まないだろうと予想させる。

理熾もそんな《結界》を見せながら「その結果はアレだよ」と締めくくる。

《結界》をギロチンの刃に見立てて、投剣で水平に放ったのだ。

ゴブリン程度の強度であれば、速度・薄さ・強度が揃えば紙のように真っ二つになる。

少なくとも岩石兵程度なら確実に割るだろうし、リザードでも至近距離で放たれれば部位欠損くらいはさせるだろう。


その威力、発想力にスミレは硬直。

フィリカは相変わらず感心しながら想像を巡らせる。

理熾が手に入れた攻撃方法は物理的でありながら、魔法的でもあるのだ。

《結界》という魔力の力場を叩きつけることで効果を及ぼすのだから当然ではある。

他の属性魔法のような派手さは無いが、余りにも汎用性が効きすぎるシロモノだ。


「よくもまぁそんな色々と考え付くもんだ。

 《結界》は元々『貫通力しか持たない投剣の攻撃を範囲に伝えるため』だったはずなのにな。

 使い方も強力なエアハンマーみたいな扱いだったのに、気が付けば巨大な刃物じゃないか」


とフィリカはにやにやが止まらない。

そしてその発想を広げると、更に面白いことが出来そうだ。


「うん、だからこういうのも出来るよ?」


そう言って投剣を握って《結界》で剣の形を構築する。

流石に鞭やフレイルなどのような曲がる部分の再現は無理だが、同じ要領でどんな形にも変更できる。

故に。

射程、形状が自在に変わる結界武器が完成する。

余りの事にスミレは勿論、フィリカまで言葉を失う。

笑みまで引っ込めて驚愕の表情しかない。


それもこれも『魔力の力場』というあやふやな状態を許すスフィアならではの使い方だ。

この多様性は今までの装備を無条件で置き去りにする。

たった一つ。

血魔石さえ…《結界》さえ使えれば武器すら必要ないのだから。

しかし理熾はあっさりと言い放つ。


「でもこんなことしちゃうと《結界》の維持に集中しないといけないから戦えないっていう問題があるんだけどね」


問題云々のレベルではなく、単なる論外だった。

お読み下さりありがとうございます。

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