理熾の成長記2
前回に引き続き理熾のスキル考察です。
スキル取得を持っていて、気軽に手に入る癖に意外と踏ん切りがつきません。
暖かい目で見てやってください。
8/17訂正
科学世界には無い、個人としての能力として手に入れられる魔法。
構造的に人体というものは脆弱で、限界というものもすぐそこに存在する。
世界大会で計測タイムが縮まらないのは人体の性能限界の近くで鎬を削っているからだ。
だから物理的に人ののびしろはほとんど無いし、そこに至ることすら果てしなく難しい。
しかしこの世界には全く違う法則が存在する。
人の能力はステータスで管理され、更にスキルで補強した上に魔法と言う技術まで存在するのだ。
科学世界から訪れた理熾にとってそれらはどうしようもなく欲しいものだった。
この世界に来るきっかけになった『剣と魔法の世界』という単語。
この言葉に聞いて飛びついたことで分かるように、理熾は魔法が使いたい。
だが魔法といえども、この世界の法則に従えば身近な存在になってしまう。
何せ誰でも使えるのだから。
結果的にこの世界の魔法とは、早く走れる程度の価値観しかない。
だがそんな状況でも異世界人は嬉々として魔法を覚えるに違いない。
今までは歩行すら不可能な状況だったのだから。
だからこれは理熾にとって苦渋の選択だった。
魔法使いたいのはとりあえず置いといて。
うん、全然とりあえず置いときたい内容ではないんだけどッ!
まぁ良い…あのアホの設定ミスなんだから仕方ない。
今はとにかく置いておくんだ。
思ったんだよ、僕は。
一番の大発見と言っても良いかもしれない。
虎の子ってヤツだね!!
【武術指南(SP5)】/【魔術指南(SP5)】の二つ。
武器とか魔法を扱ってた人が、その経験を生かして教えて初めて手に入る。
だから普通は、元となる【剣術】とかを持った『退役者』が持つスキルになる。
そんな経緯が必要なこのスキルを持つ人は、結構と凄い人みたい。
要は教えられる程理解していて、教わる側が『お願いする』って事だからね。
だって資料にそう書いてあるし。
けれど僕は【スキル取得】があるので、逆転現象が起こせる。
練習時間・努力・技術とかの前提条件をフル無視して手に入れられる。
そう、このパッシブを使って、自分の指導が出来ると考えたんだ。
指南系統の熟練度上げつつ、自分の能力を強化するという一石二鳥!
逆転の発想って大事だよね☆
等と資料を眺めて自分のスキル構成を考える。
理熾の持つユニーク一番の利点とは、まさに『前提条件無視』というところにある。
本来であればその者しか持ち得ないようなスキルであっても、SPというコストさえ支払えば手に入る。
当然、【スキル取得】というスキル上での制限を満たした結果にはなる。
この前提条件を無視できるというのは強力な武器ではあるが、やはり使いどころが難しい。
役に立たないスキルを手に入れてもまさにSPというライフラインを削るだけなのだから。
理熾にとってはまさに死活問題。
レベルも能力も低く、ついでにユニークスキルも微妙。
スキルを取ればそれだけ強くはなるが、それだけ。
ちゃんとした天才や、イレギュラーな存在には恐らく歯が立たない。
下手をすると一般人に毛が生えた程度になるかもしれない。
それくらい理熾は自分の能力に疑問を持っている。
にしても、【剣術】とか個別の取るのも勿体無い気がするんだよなぁ…。
特化するって事は逆に『それしか出来ない』って意味だから。
総合格闘術とか、『何でも入ってそう』なの無いかなぁ?
器用貧乏になってしまう発想ではある。
だが理熾には『自分が解決する問題』が分からない。
例えば『試験があるよ』と言われているだけで、教科も範囲も難易度も、やる場所や時間ですらも分からない。
そこへ一極集中で勉強して乗り込んで教科が違った場合はどうにもならない。
だからそんな無茶振りに臨機応変に対応するためには高レベルの器用貧乏にならざるを得ない現状がある。
結果、手持ちのSPで出来る最大限の利用方法を資料片手に唸っているという訳だ。
とりあえず、恐らく鉄板の【身体能力強化(5)】と【武術指南(5)】を取っておこう。
これからどのタイミングでSP消費するかわかんないし。
そう結論付けて、取るスキルは決まった。
そしてスキルを取ったら今日のところは帰ろうとも決めた。
が、「本当にこれで良いのか?」というところで意識が止まる。
どうしても足踏みしてしまう。
この最初の段階で躓けば今後全てに悪影響が出てくる。
今思えば初めて【スキル取得】を使った今朝は勢いがあった。
いや、あれこそ死活問題だったので、選択肢が無かったのが事実だ。
だからこそ殆ど反射的にスキルを手に入れた訳なのだが…改めて思う。
この「スキルを取る瞬間って凄く緊張する」と。
本来スキルとはこんなに簡単に修得するものではない。
練習を重ねて初めてスキル欄に表示されるものだ。
だからSPというステータスは理熾独自のものだろうと推測はしている。
逆に言えば理熾はこのユニークスキルとステータス欄のSPの項目しか『スフィア人との違い』が無い。
そして今のところただの子供である。
なのでSPという自分のライフラインを消費するのはまさに身を削る思いなのだ。
何より『このようなスキルの取得方法を誰も持たない=誰もやったことが無い』ということだ。
前提条件が無いので、いくらでも欲しいスキルを集められるが、集めた結果がどうなるかは分からない。
本当に『スキル同士に影響がある』という確証も無い。
ここまでの推論はあくまでも、全て推論。
やってみないと、分からないのだ。
これほど精神を削る行為があるだろうか。
あぁ…これで無駄技能だったら目も当てられない…。
SPに余裕があれば別なんだけどなぁ…。
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ユニーク
スキル取得Lv2
・SPを消費してスキルを取得できる
消費SPが20以下のものから選択出来る
※ユニークスキルを除く
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おぉ、スキル取得のレベルが上がった。
ユニークスキルも上がるのか!
これは朗報だ!
ユニークスキルは手に入らないから全く調べていなかったのが悪かったなぁ…。
ともかく、SPを一気に使い込まなくて良かった!
少しだけでも未来のために残そうとしたのが功を奏した。
最初から一気に上げていれば追加で取ることも出来なかったに違いない。
そこで先ほどの表示されていなかった3つを改めて見直す
【成長力強化(SP20)】
【状態異常耐性(SP15)】
【必要経験値減少】
取れるのが2つ増えた!
早くレベルが上がるためにも、必要経験値減少は欲しかったけれど仕方ない。
スキル取得のレベルが上がってからチャレンジしよう。
にしても…SP20より多く消費するのか…全然足りないなぁ。
と相変わらずの不遇具合に嘆く。
とはいえ、取れないものは仕方ない。
理熾は頭を切り替えて
後はどっちを取るか…だけれど…。
正直、スフィアでの環境を考えると【状態異常耐性】は必須だと思う。
僕の身体が弱いんじゃなくて、スフィアに対して多分免疫が無いんだよね。
何かあったらそれだけで病気で死にそう…だけど、ここはあえてリスクを取ろう!
僕は【成長力強化】を手に入れる!
今は病気より圧倒的に物理面で死にそうだし!
とはいえ、本当にいつ何があるか分からないし出来る限り早めに取るべきだよなぁ。
そう結論付けて追加で【成長力強化】を取得する。
残念ながらスキル取得のLvは上がらなかった。
やっぱり世界はそんなに甘くなかった。
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名前:ミカナギ リオ
年齢:13
職業:なし
Lv :2
HP :95
MP :35
SP :5
筋力:21
敏捷:18
体力:24
知力:35
魔力:7
幸運:7
所持金:196カラド
武器
手ごろなナイフ
防具
学生服(ブレザー型)
運動靴
装飾
なし
スキル
パッシブ
言語知識
武術指南 New
成長力強化 New
身体能力強化 New
アクティブ
なし
ユニーク
スキル取得Lv2
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「よし」
と自身のステータスを見て頷く。
今度こそ本日の営業は終了…とはならず、ついでなのでやっていくことを思い付いた。
あぁ…でも一応念のために依頼内容とか見ておこうかな。
せっかく居るんだし、内容的に無理そうなら別のカウンターでレベル上げしても良いし。
何度も往復する手間を、今この瞬間に終わらせようというという結論に至る。
考え方が完全に効率主義に傾いている。
依頼書を貼り付けている掲示板へと近付いていく。
この辺は『ラノベのギルド』とかと同じだった。
大きなボードは3枚あり、それぞれ採取・護衛・討伐の依頼が貼り付けられている。
さらに上から順番にSランクから、下になるほどランクを落として仕分けられている。
内容を見るべく、ボードへ近付き片っ端から依頼を見ていく。
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【採取】大量の薬草
依頼者:コザック
依頼内容
出来る限り早く大量に薬草が必要になりました
どなたか早急に薬草50束の納品をお願いします
報酬:100カラド
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あ、薬草ってこんなもんなんだ。
1束2カラド…急ぎなのにそんなに高くないんだなぁ。
多分集めるより持ち歩く方が大変だと思うんだけど…依頼者ってその辺分かってるのかなぁ…?
と疑問に思う。
いくら草とはいえ、50束も用意したら相当重いだろう。
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【護衛】サーゼルまでの護衛
依頼者:アルタッド商会
依頼内容
グレンを経由し、サーゼルに向かいたい
その道中、盗賊・魔物の討伐をお願いしたい
報酬とは別に、戦闘1回に付き1000カラドのボーナスを追加する
また、討伐時の戦利品は参加者にて分配してもらって構わない
報酬:10000カラド
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1万って凄いなぁ…今の手持ちの50倍くらいあるや。
遠いのかな?
何にしても護衛系は最低でもE以上。
相手を倒す力は当然必要だし、商隊を守る能力もいるから仕方ないんだろうなぁ。
と何となく納得してしまう。
今のところ役立たずなので次を見る。
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【討伐】ゴブリン系種族
依頼者:ギルド
依頼内容
対象は全てのゴブリン
各ゴブリンの右耳にて討伐数のカウントを行います
また、上位種族の場合は討伐ボーナスをつけさせていただきます
常設依頼ですのでいつでもご利用下さい
報酬:1体につき10カラドから
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そういえば【神託】でもミニゴブリン討伐があったなぁ。
討伐って多分一番手っ取り早いだろうし。
一人だからダメそうなら逃げれば良いし。
これ受けられれば良いなぁ。
などと思いながらぼーっと眺めていると、背後から肩を叩かれた。
「よぉ、坊主。
まさかお前、何か狩りに行くのか?」
えぇぇぇぇぇ!
まさかのテンプレ!?
という感想が出たのはお察しの通りである。
ちなみに理熾の意識外でピコンと音が鳴っていた。
お読みいただきありがとうございます。