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神様のおねがい  作者: もやしいため
第七章:楔の解放
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才能の使い方6

ちょっと遅れました(。。;

その後人力車構想をフィリカに伝えるとノリノリで話に乗っかってきた。

しかしその辺はやはり装備作成者でしかなく、そんな箱物を作ることは出来ないとのこと。

その代わりに箱が出来たら内装は任せろと力強く頷いていた。

箱と内装の違いが理熾にはさっぱり分からなかったが、要は『身体が触れるものは装備品の応用』で何とかするらしい。

さぞや快適な物が出来上がるはずである。

それにしても『フィリカの作成速度』を要求される作成者は悲惨の一言だ。


そんな昼食を終え、先ほど人力車の話をする際に「これじゃしんどいんだよね」と出していた背負子を片付けようと見てみた。

すると背負子の腰掛、背もたれ部分に手が加えられている。

何と食後1時間ほどでそこら辺で買える背負子が魔改造(カスタマイズ)されていた。

全体的にあの硬い板が取り払われ、ザイルのような物をハンモックように編み、更に布を渡したような形状。

短時間の使用で背中や腰を痛めるだろう背負子が、今や抜群のクッション性を有しており、下手な椅子より快適である。

この背負子に最早最初の原型など無く、片手間に施すには驚くべき快適性だった。


 な…何でこんな快適仕様にッ!?

 常に背負子使うわけじゃないのに…。


と理熾は衝撃を受けざるを得なかった。

乗る人は快適だが、担ぐ人は結局重いのだ。

フィリカなら素材効果を付与して何とかしそうだが、そこまでするには結構なお金が掛かる。

既に報酬を支払うような改造を施しているのだが、今のところは趣味で済む範囲(?)らしい。

色んな意味で趣味人である。


「フィリカさんありがとう」

「気にするな。

 面白い話を聞かせてもらった礼だよ。

 にしても馬じゃなく人が牽くとはな。

 せっかく『人力から馬力へ』という転換をしているにも関わらず、退行するんだから面白い」


「細い道とかだと人の方が小回り効くんだよね」

「そういう意見もあるんだな。

 にしても、奴隷を運ぶのが主人っておかしくないか?」


にやにやしながら問うフィリカに悪意は無い。

ただそこにあるのはちぐはぐな行動を取る子供に対する好奇心だけだ。

しかも理由が「僕が走る方が早い」という、まさに『適材適所』を体現するようなものだから余計に。

例えその通りだとしても、そういう方法を取らないための『奴隷』なのだから、フィリカとしては面白くて仕方が無い。


「あぁそうだリオ君。

 君、昨日関所を通らずに街に入っただろう?」

「ぁーそういえば?」


「だから今、リオ君は『ここには居ない』んだよ」

「ぇー…そうなの?」


「あぁ、そうなる。

 今日もギルドに顔を出したんだったか?

 情報が前後するな…まぁ、ギルバート(領主)の用と言えば通るだろ。

 実際そうだったし、緊急性もあったから、ギルバートからも特に文句は出ないだろうしな」

「何かちょくちょく迷惑を掛けてるような…?」


「それ以上の成果があるから良いんだよ」

「そうかなぁ…?」


と理熾は首を傾げる。

成果があるから、お咎めなしというのも限界があるだろう。

それに『成果があるから』ということで免罪されていては収拾もつかない。

出来る限り迷惑を掛けないようにしよう、と改めて心に誓う。

しかし国家レベルでの迷惑を既に掛けているので説得力は皆無なのだが。


そんな午後イチから出発したのだが、街を出る時に関所で言い訳をした以外は予定通りだ。

言い訳した時も「あぁ、ギルバートさんなら仕方ないな」と軽かった。

「あの人領主なんだけどなー?」と理熾も思わないでもなかったが、それはそれらしい。

エリル(貴族)は様付けなのに、関所にいる一般兵士はさん付けというちぐはぐ感も変わっているといえば変わっている。


関所を越えるとすぐに背負子を取り出してスミレを乗せる。

これも立場的にどうなのだ、とスミレは感じるが理熾は気にしない。

道程が長ければ長い程実験時間は短くなる。

そして帰宅が遅ければ遅いほどごはんが食べられない確率が上がる。

理熾にはそれが一番由々しき事態なのだ。

別に食い意地が張っているという訳ではなく、あけみやの食事が美味しいというだけだ。

いや、そういう理由であれば食い意地が張っているだけなのかもしれない。


「んじゃスミレいくよー」


軽い掛け声と共に出発したのだが、その速度は昨日と同じくらいの速度が出ている。

だとすると昨日のかけっこは本気じゃなかったのかもしれない。

そんなことを背負われたスミレが問うと理熾は「そうでもないよ」と答えた。


関所からすぐに森へと分け入っていく。

南側へは行かずに、今日は何となく東側へ移動する。

その際に街道から外れて森の奥へと向かったのはこの後の内容を見られたくないことと、経験値稼ぎのためだ。

いくら強くなったといっても所詮Lv20台。

まずはネーブル達に、そして最低でも(・・・・)フィリカのランクにまで到達しなければ先は無い。

スフィア人を超えねばならないのだ。


「昨日は昨日で本気だったよ?」

「それにしては息切れとか無かったみたいですが…」


「まぁ、僕は他の四人と違って『無手でも補正が付く』からね。

 四人は気付いてなかったんだけど、『走る』には武器は邪魔でしょ?」

「確かに…」


「だから普通は持たない。

 けどさ、どう考えても『補正が付く方が速い』んだよね。

 レモンなんて特にそうなんだけど、短刀持つだけで圧倒的に速いはずだよ。

 人一倍補正が掛かるレモンが気付かないのはちょっと困るよねぇ」


結構な速度で走りながらも息も乱さず言葉を紡ぐ理熾にスミレは恐怖を抱く。

「何故こんなにも色々と考えられるのだ」という風に。

しかもそれらは全て行動に反映されている。

思い返せば理熾は『武器を持たず(・・・・・・)に背負子を背負って走り出した』のだ。

この時点で周りは装備補正のことなど頭から抜けるだろう。


そもそも装備補正なんてのは『戦闘用』でしかない。

日常的に使うようなものではないし、ましてや『かけっこ』で使うなんて聞いたことが無い。

伝令兵になると、戦場を駆ける性質上武器を手に走り回るだろうが、それも『戦場だから』である。

長距離の移動は馬などを使うのが一般的であり、本当に『走る状況』というのが限られている。

であるにも関わらず、最初から仕組んであったような物言いをするのだ。

これを恐ろしいと言わず何と表現すれば良いのだろうか。


「ハッサクは途中で投剣を投げてるから、気付いたと思うよ。

 察しが良いからね。 

 けども気付いたのは『偶然』だから、余り褒められないかな。

 諜報とかに特化してるなら、それくらいはすぐに見破って欲しかったなぁ」

「…あの四人に何を求めてるんですか?」


思わずスミレは恐る恐る聞いた。

彼らに求められているものと同等が、スミレにも降り掛かるだろうことを思って。


「いや、特に何も?

 けどせっかくだし使える力は使った方が良いよね」


理熾としても使い潰す気は無い。

出来る範囲で十分だと思っている。

けども工夫程度で変わるなら工夫した方が良いよね、とも思っている。

単なる指摘ではあるものの、物事への見方がスフィア人とは違うので一々驚く羽目になるだけだ。


「昨日のレースで言うならやっぱり花丸はライムだよね。

 僕よりも早かったとかそういうんじゃなくて魔法の使い方って意味でね。

 あ、花丸じゃ分かんないか…満点ってことね。

 【重力魔法】ってライムは向きと倍率しかいじらなくて良いから簡単とか言うけどさ。

 そもそも『水平よりも上に向かう重力』って、自然に反する(・・・・・・)から難しいんだよ。


 何て言うのかな。

 《障壁》みたいに『無いものを作る』ってのは確かに面倒だし難しい。

 けども重力みたいに、『存在するものを捻じ曲げる』のは更にめんどくさい。

 だって常に上書きされる(・・・・・・)んだからさ。

 

 例えるなら川を堰き止める感じかな?

 『水路を作る』のは大変だけど、『水を止める』方が難しそうに思わない?

 重力の方向が水平までなら、『支流を作る』って感じで何とかなる。

 けど、それよりも角度が上がると『堰き止める』、『逆流させる』ってことだからしんど過ぎるんだよね。

 考えれば分かると思うんだけど、川だからどんどん水が流れてくるでしょ?

 つまりその流れ込む水の処理を行いつつ逆流させないといけない。

 そんなの考えるだけでやってらんないよねー」


「あ、川っていうか滝かもね?」とスミレにも理解できるように説明してくれているのかは分からない。

しかし言っていることは分かるし、そういう風に『解説できる』程理解していることらしい。

そもそも【重力魔法】を使った移動は理熾が見せたのだ。

逆に言えば『ライムは出来るはずの技術を使えなかった』訳だ。

こういう風に絶賛する以上、ライムよりも理熾の方が技術は劣る(・・・・・)にも関わらず。


「逆にネーブルが一番残念だったよ?

 せっかく【指揮官】(コマンダー)あるんだから、味方からスキル借り受ければ良かったんだよ。

 【無為無能】だったかな、派生スキルは。

 借りたスキルが魔力使うとしてもネーブルなら十分ある。

 それにあの四人間ならスキルのやり取りやってるだろうから使いこなせるはずだよね。

 予想だけど使えばリコと同じように『譲渡中』になるだろうから、競争相手のスキルも封印できるんじゃないかな?

 まぁ、味方相手に使う方法じゃないとは思うけど、その辺の発想は持ってても良いよね。


 他にも【群雄割拠】は対象が『味方』なんだから、自分にも掛けられると思うけど使ってなかったしさ。

 せっかくスキル持ってるんだから色々な方向に使い倒せるように考えは色々持っていた方が便利だと思うんだよね」


理熾の言葉を聞いているスミレは信じられない思いだ。

語られる一つ一つが『技術の使い方』である。

本来であれば持ち主が一番スキルを扱えるのだが、理熾はその使い方への指摘をする。

つまり『使用者よりも使いこなす能力を持つ』ということだ。

素人だからこそ分かる『非常識』と言えば良いのだろうか。

それともビギナーズラックを狙って起こしていると解釈すれば良いのだろうか。

何にせよ理熾は『使い方』において人と違う視点を持っているということをスミレは痛感する。


「それじゃそろそろ歩こうか」


理熾がそう言ったのは昨日と同じような森の中。

関所から時間にしてみれば20分程度。

スミレはアルスからの距離を大体15km前後とあたりをつける。

しかしこんなところで何をするのかさっぱり分からない。


「あ、リコは【索敵】と【隠密】よろしく」


そう言って理熾はスミレを連れ、森の中を歩き始めた。

お読み下さりありがとうございます。

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