初めてのギルド
ギルドに対する説明回になります。
基本はテンプレの冒険者ギルドなのですが、組織的にはかなり大規模なので、説明
しています。
8/16訂正
アルスの街中で背の高い建物を目指せば良いという守衛の言葉通り、ギルドはすぐ見つかった。
建築技術はそれなりにあるのか、そこそこ背の高い建物もある。
しかしその中でもギルドは群を抜いていて、同じくらいに他に高い建物は領主館くらいしかない。
そしてギルドの建物はかなり新しく、簡単に区別が付くので困ることは無い。
ともかく理熾には今すぐ身分証明書が必要だ。
『自分が誰か』を登録しに行くというおかしなシステムではあるものの、これが無くては話にもならない。
仕事すら始められず、斡旋も受けられない。
ちなみにギルド員から始めて本採用になることもあるらしい。
というか…真面目に僕は何しに来たのだろう?
と理熾は頭の端で苦く考える。
ギルドへは登録のために来たのだが、そういう意味ではない。
『この世界に』という意味でだ。
神様のお願いの根本を疑うレベルになってきているからだ。
この場には問題解決のために派遣されたのに、何故か普通に職探しだ。
既に神の遣いとして仕事の先約があるにも関わらず、平行して自分のために稼がなくてはならない。
何とも理不尽な話である。
でもまぁ…生きる為には食べないといけないし。
食べるためにはお金必要だしね…。
などと考えながら、入ってすぐの中央カウンターへ向かう。
訪問者の要望に対して各カウンターへの案内や、身分証発行などの事務処理を行う場所だ。
高さも広さもある建物なのだから、それくらいは必要なのだろう。
案内図くらいは作っても良さそうなものだがそんなものは無い。
暴徒やテロ対策なのかもしれないが。
そんなことを考えながら中央カウンターの前に立つ。
一番初めにこける訳にもいかないので、理熾は出来る限り笑顔で声を掛ける。
「すみません、身分証の発行お願いします」
「はい、料金は300カラドになります」
受付の言葉に理熾は「ピシリ」と固まる。
聞き間違い出なければ受付は凄いことを言った。
そして次の瞬間思ったことは一つ。
え?
超高くね?
であった。
手持ちの金額を考えるとありえない出費に思わず笑顔が引き攣ってしまう。
とはいえ、身分証は必須。
引き攣った笑顔を貼り付けながら仕方なく支払う。
所持金が風前の灯火だ!!
と泣く泣くという風に300カラドを手渡す。
まさか命綱とも言える所持金がこの1日で3/5も吹き飛ぶとは思っていなかった。
理熾は「これからどうしようか…」と鬱々していると
「ではこちらに手を乗せてください」
と受付に促され、言われた通りに手を乗せる。
詰所の時のように、仄かに光って消える。
どうやらステータスの読み取りをしたようだ。
ただ違うのは壁にステータスが表示されないことだろう。
公衆の面前で自分のスキルを公開する、というのはありえない話だろうが。
「ありがとうございました」
「終わりですか?」
「はい、以上です。
ギルドカードが発行されますのでしばらくお待ちください。
その間にギルド利用についていくつかご説明させていただきます」
「あれ、順番逆では?」と理熾は思うが、世界規模の仲介業者なので『関わらずに生きる』ということ自体が難しい。
『ギルド』という組織が常識的過ぎるのだ。
日本で言うなら『警察って何?』って言っているようなものである。
細かいところまで説明するならともかく、概要なら『悪い人を捕まえるところだよ』で済む。
だからこそ説明されても今更な内容で、時間短縮のために順序が逆転しているようだ。
時間短縮は大いに結構なのだろうが、恩恵を受けるのは理熾以外なのがこの場合は問題だった。
「先ほど確認したステータス・その他の情報はギルドにて保管させていただきます。
またそれら情報は秘匿され、外部に出ることは基本的にありません。
しかし、いくつかの条件に該当する場合はこの限りではありません。
外部に情報提供する際は、
1:犯罪者
2:外部からの要請(正当な理由あり)
3:著しい規約違反者
の以上3点が過去にある前例となりますので、注意してください」
受付が語る内容は全て納得の出来るものだ。
犯罪者なんか当たり前、規約違反者も当然だろう。
罰する立場なのに『教えられません』では話にならず、むしろ公開しなければ共犯者として吊るし上げに遭う。
「すみません。
2の外部からの要請って、どんな時なんですか?」
「そうですね…例えば、ランクの高い魔物討伐や、希少な魔法薬の精製要請などでしょうか。
討伐や精製の可能なパーティやギルド員の現在地情報を提供することが稀にあります。
基本的には担当地域のギルドで受注者探しになりますのでそれらもまずありませんが。
また、指名依頼の場合はクライアント側に一定の情報を渡して改めてご判断いただく場合があります」
対処可能な人が少ない場合は、斡旋業として受注者の情報を渡すということらしい。
出来る理由、出来ない理由を伝えなければ依頼者も納得しない。
ギルドは依頼をギルド員に渡すことで利益を上げているのだから当然と言えば当然だ。
そりゃそうか。
指名依頼とかなら場所が分からなかったら頼めるかどうかも分からないしね。
と理熾は納得する。
わざわざ分かりにくく説明されているような気もするが仕方ない。
これがスフィア流というものなのだろう。
「なるほど、分かりました」
「では続きを。
ギルド員が引き受けられる内容は多岐に渡ります。
調合・調薬・錬金・鍛冶・道具作成など。
また、一番分かりやすいので言えば討伐・護衛・採取でしょうか」
聞けば聞くほど何でも屋である。
特定のことに特化しているわけではなく、『困ったこと全て』が依頼なのだろう。
何かホントに何でも屋してるなぁ。
ラノベとかに出てくるギルドって基本的に採取・討伐・護衛位じゃないのかな?
ギルドってこういうとこだっけ?
とスフィア初心者の理熾は素直な疑問が浮かぶ。
手広くやりすぎている感が否めない。
「ご自分の能力に合った依頼を引き受けて頂ければ幸いです。
また、それぞれカウンターが違います。
鍛冶技能が必要な作成のカウンター。
調合・調薬・錬金は錬金術、または魔法のカウンター。
対象によって内部でさらに分かれますので、ご確認下さい。
討伐・護衛・採取は討伐のカウンターとなります。
また、素材等の買取は、各カウンターで対応出来ますのでご利用ください」
ついでに『目的とは違うカウンターでも受け付けはするが時間は掛かる』とやんわり嫌がられた。
恐らく本来のカウンターとは違う場所で受注・報告をする者が居るのだろう。
要は受付嬢目当てで。
なるほど…。
魔術師・錬金術師・鍛冶・冒険者のギルドを総括しているのかな?
確かに効率的ではある。
それぞれが個別管理するより一元管理した方が簡単だからだ。
大本の情報に追記するだけで良いし、互換性を持たせられるからさらにやり取りを円滑化出来る。
「また、それぞれの依頼にはランクと呼ばれるものが存在します。
ご自分のランクの一つ上までの依頼を受けられます。
そして錬金と討伐など、カテゴリーの違う分野に関してはそれぞれランクが設定されます」
当然な話だった。
例えばドラゴンを倒せるからってエリクサーや、武器を作れるわけでもない。
ギルド員の総括管理は行うが、あくまでもその情報を各分野で流用するだけのようだ。
あっちこっち登録する必要が無くて便利だけれど…全部のランクを上げるのは面倒だし、無理。
満遍なくやろうとすると能力が丸くなるからね。
結局のところ得意分野のランクしか上がらないなら、総括する意味は余り無いような…?
まぁ、ギルドの方針なんて良くわかんないけど。
とあっさり思考を手放す。
こちらの考えがまとまったのを確認したかのようなタイミングで続きを話し出す。
この受付、やるようだ。
どう見ても眠そうなのだが。
「ランクに関しては依頼達成等を勘案して、上下します。
ランクはSという特別ランクを別枠に、A~Gの8段階存在します。
先ほど登録されたばかりなので、今のランクは最低のGランクです。
ランクによっては昇格試験が発生することもありますので、頑張ってください」
あっさりと言い放つ辺り、場慣れしているのだろう。
毎日のように多くの人が訪れ、その何人かは登録をしていく。
そんな日常を繰り返しているのだから当然かもしれない。
「頑張って」って言われてもなぁ…。
正直今は何にも出来ないんだよね。
少なくともこれからは確実にさらに怖い目に遭うはずだから、討伐系が良いのかなぁ?
作成系で生き残るってのも難しいだろうし、【神託】も索敵&殲滅の討伐系だし。
やだなぁ…こんな僕が行くとどう考えても絡まれるよなぁ。
まぁ仕方ない、のかなぁ…?
なんだかんだ言ってスフィアを救う気ではある。
せっかくこの場に立っているのだから。
しかしそれにもまずは戦うだけの力が必要になるだろうと思うと理熾は非常に気が重かった。
お読みいただきありがとうございます。




