プロローグ
僕には本気になることなんてほとんどない。
だって、何もしなくてもそれなりに出来るのだから。
それに別に何かにどっぷりとはまりたいってこともない。
それなりに出来るからこそ、何事にも頑張れない。
特に今の日本なんてのはそんなコトばかりだ。
子供の頃は『自分の背景がどんなものか』が全て。
つまり親や親類等の『ステータス』が優先される。
そしてその優先されたステータスによってさらに『背景』が確定する。
まぁ、子供同士だけならそこまで大きな差はないかもしれないけれど。
でも結局状況や環境を変えるのは『強者』のする事で。
子供の頃の『強者』なんてのはやっぱり親や親類、ついでに言えば教師やその他の大人になってしまう。
そんな人達は結局のところ、そういう『背景』を背負って、子供に影響を与えてくる。
例えば「あの子の親は○○だから関わらないように」ってな具合に。
俗に言う「シッ!見ちゃいけません!」ってやつ。
要は『個人』を見ずに背景で判断されることが多い。
子供なんてのはそりゃ無知で無縁で無力だから仕方ないとは思うけれど。
『高貴な背景(医者とか政治家とか?)』を持っていれば、そんな『高貴さを求められる』だろうし。
出来る親の子に生まれたら何事も『出来て当たり前』、普通の親なら『普通の出来で十分』で、出来ない親なら『出来たら凄い』という具合。
出来る出来ない、有能・無能に至るまで『背景の影響を受ける』のが当たり前。
結局のところ、『本人の資質・能力』に関わらず評価が下される。
子供の時間というのは本当に退屈で、全て親の社会での相対値ってものを引き継いでしまう。
結果、自分に対する絶対値での判断は最悪親が死んでも行われない可能性もある。
『鳶が鷹を生む』とか、『蛙の子は蛙』みたいな親ありきのコトワザまであるんだから間違いない。
そんな意味のないことを考える僕の背景は『平凡』だ。
両親の仲が良くて、いい歳しているはずなのに未だにデートとか言って二人で出掛ける。
むしろようやく子供を放っておいても良い年齢になったからこそ楽しんでいるのかもしれないけれど。
そして高校生三年生の兄、小学生六年生の妹に中学生二年生で真ん中な僕を含めた3人兄弟。
母方、父方の祖父母はまだまだ元気で健在だけど共に一緒に住んでない。
上流階級ほどお金持ちでもないけれど、余程の贅沢さえしなければ食事に困ることも無いって程度。
やる気の無い勉強は平凡、運動も好きだけど積極的じゃない。
誰もが通った道だろうし、今まさにその街道まっしぐらなわけだけど「勉強できたところで何?」って感じなんだよね。
何より運動なんかで身体を鍛えたところで趣味以外の何でもない。
まぁ、その運動で『世界を狙える!』とか言うなら別なんだけど、僕にはそんな才能は無い。
ほら、日常的に走ったり、持ち上げたり、誰か叩きのめす必要なんて無いじゃない?
現代日本で『運動能力』が必要な職業ってどれだけあるんだろうね…?
自衛隊とか警察官なら必要なのかもしれないけども、今のところはなる予定も無いから、無駄な能力になっちゃうんだよね。
とはいえ。
授業態度とかが悪かったら無駄に『背景』たる親や先生に突っ込まれる可能性があるから、真面目に(見えるように)。
あくまで真面目に。
僕の中では上手くやってるつもりなんだけど…やっぱり親は何か感じ取っているみたい?
良く「この子にやる気があればなぁ」とぼやいてる。
温く生きているのを隠しきれていないのか、「まだまだ隠された力がある!」っていう単なる親馬鹿なのか良くわかんないけれど。
僕としてはその辺に対して思うところは何も無い。
まぁ、頑張ってやればきっともう少し上には行けるだろうけどね~って感じ。
でも『もう少し』しか変わらないならサボっても別に良いかなって思っちゃうから仕方ない。
それなら自分の好きなことして生きていた方が充実してると思うんだ。
とか考えるけれど、そんなコトを思う僕にはのめりこむだけの何かは結局無い。
やっぱり人間って欲望が無ければやる気をなくすんだと思う。
だって僕には欲しいものなんて…無いわけじゃないけど、『絶対に必要』だと思うような心の底から渇望するようなものは無い。
家に居ればご飯が出てくる。
ベットで寝れるし、服もあるし、お小遣いも貰ってるから何でも買える。
どうしても、って時は必殺の「おじいちゃん・おばあちゃん久しぶり☆」がある。
というか兄貴がいるから、僕と妹は成績も、しつけも、お小遣いも何となくだけど緩い気がする。
兄貴様々ってやつだね!
それに学校に行けばちゃんと友達もいるし、先生にも真面目だから受けが良く困ることも無い。
対応は素のはずなんだけど、何故か年上からの受けが良いみたい?
今のところ知ってる範囲ではイジメもないし、ある意味順風満帆な生活を送ってると思う。
日常に起伏が無いとも言えるけれど。
そんなわけだから現状に不満があるわけでもなし、何かを欲する訳でもない。
一番の黒歴史を築き上げるであろう中二にも関わらず、えらく老成している僕であった。
うん、だって。
良く知っている日常を普段通り過ごすだけなんだから、平凡だよね。
それこそ海外に行くとか、異世界に呼ばれるとか。
そんな『非日常』がなければ必死になるとかやる気も出ない。
現代日本は事故とか除けば『死ぬことが難しい』のだから、生存本能が働くはずも無い。
凄いよね、野生動物なら数日経たずに死んじゃうような『安心』の中で生きているんだから。
これを平和ボケって言うんだろうけれど。
そんなことを考えながら誰に対することでもなく、知らずに「ふぅ」と溜め息をついていた。
御巫 理熾は息を整え玄関から家に向って「いってきまーす」と挨拶する。
そして学生の本分である、学校へと声だけはとても元気に出発する。
また、新しい平凡な一日が始まるはずだった。




