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隊長、お願いする



 壊滅。

 そう表現するのが一番だろう。

 二人がじゃれ合った結果、いつもの公園は壊滅した。

 地面は陥没していない場所がなく、遊具は軒並み消滅していた。

 公園跡地と言われるより爆撃跡地と言われたほうが納得できるほどに、これ以上なくボロボロだった。

 そして何故か、累子の指定席になっているベンチだけは無事だった。

 二人はそこに座り込み、


「いやー、はっはっはっは。久しぶりに動いたわねー」


「ぅぅ、衝動に任せて剣を振るうなんて」


 陽気に笑い、落ち込んでいた。

 ちなみに、公園以外に被害はない。怪我人もいない。

 従者と警護員達が必死……まさしく死に臨ぞむ気持ちで守ったからだ。

 そんな彼女彼らは、地面に突っ伏してうめき声を上げている。座り込む元気もないようだ。

 そんな彼らに、近所の奥様方が麦茶を配っていた。飲めるようになるには、もう少しかかりそうだが。


「よっし、休憩終わり」


 そう言うと累子はベンチから立ち上がり、膝を着く。

 右手を地面に着き、呪文を唱える。

 その声は小さく維委にははっきりと聞こえなかったが、とても真剣なものだった。本能的に、邪魔してはいけないと感じる声。

 唱え終わったところで、ようやく声をかける。


「……何をするのですか?」


「うん? このままだとさ、色々と問題じゃない?」


「そうですね。さっきの子達も、遊び場がなくなると困るでしょうし」


「なので、元に戻そうかなーっと、ほい」


 軽い掛け声と共に、右手を持ち上げる。

 二人のじゃれあいの結果、公園は壊滅した。

 そして、累子の魔術により公園は、再生した。

 そう、再生。

 何一つ変わらない、壊滅する前と変わらない公園がそこにあった。

 維委が落ちた落とし穴までが再生されていた。


「具現化? いえ、空間じゃない……時間の逆行?! ありえないっ!」


 従者の悲鳴と、地域住民の歓声が上がる。

 累子は手を振って応える。


「今日の対決は凄かったぞー!」


「でも次からは控えめにしてねー!」


 イベント扱いされていることにちょっと落ち込んだ維委であるが、非難されることをしながら、そうはならなかったのは累子と従者たちのおかげだと考え直す。


「累子さん、ごめんなさい。そして、ありがとうございます」


「なんのなんの。……私こそごめんねー、さすがにちょっとやりすぎちゃった」


「ちょっと、ですか」


「うん、ちょっと」


 累子さんらしいと苦笑する維委。


「私ちょっと、皆の様子みてきますね」


「りょうかーい」




「皆さん、ご苦労様です。そして、ありがとう」


「いえ、責務を果たしただけでございますゆえ」


 警護員達の中で唯一元気な隊長が、左手を頭部に当てる形の敬礼をする。

 彼は警護員のなかで、唯一魔術が使えないことで有名な男でもあった。

 他の隊員は木陰から出て敬礼しようとするが、立つことすら出来ない。

 それほどまでに魔力を絞りきった隊員達に維委は、そのままで良いと声をかける。


「皆さんが元気になるまで、累子さんといます。ゆっくりと回復なさってください」


 ちなみに従者はというと「…は不可逆だし…でもでも時間塑性分を…いやいやどこに記録があるのよ」と、ぶつぶつ言い続けていたそうな。

 彼女は一族の例に漏れず、立派な魔術オタクとなっているようだ。


「申し訳ございません殿下。ご好意にすがらせていただきます」


 敬礼したままの隊長が応える。維委が知らないから仕方がないが、敬礼は返礼を貰うまで解くわけにいかない。

 機転をきかして腕を降ろしても、維委は怒らないどころか、問題とも思わないだろう。

 しかし骨の髄まで階級というものを仕込まれた、軍属上がりの隊長は敬礼したまま維委に耳打ちする。


「僭越ながら、意見具申よろしいでありましょうか」


「はい。お聞きしますよ?」


 隊長の奇妙な言葉使いに、くすくすと笑う維委。

 一平卒からのたたき上げな隊長は、上手く回らない舌にイラつきながら言葉を選ぶ。


「我が隊に上級限定、もしくは非限定の魔術師を増員したくあります。御一考をお願いいたします」


 王族の警護員とはエリート中のエリートであり、ほぼ全ての隊員が魔術師免許をもっており、最低でも二ヶ国語は話せる。

 これは外遊する王族に付き添い、勝手の違う国外での突発事項に対応するための最低限のスキルである。

 維委の警護員達の魔術師免許はほとんどが初級非限定で、中級限定者が数名という構成になっている。

 こう聞くと低いように聞こえるが、元々上級というのは、修練と勉学に何十年も励んだ成果である。肉体的な若さが必要な実務者に、そうそういるものでない。

 ちなみに、従者は上級限定魔術師免許を持っている。さすがはダークエルフである。

 警護員の中に、同様のものがあと二人いれば、ここまで死屍累々にはならなかった筈だと言葉を続ける。


「わかりました。お父様と姉さまが外遊から帰りましたら、お願いしてみます」


「感謝いたします、です」


「ところで、隊長さん」


「なんでありましょうか?」


「いつまで敬礼されているので?」


「…………返礼があるまでであります」


 三点リーダー四つ分使った時間で出した隊長の答えは、そのままなものだった。





短いのを二つ足してアップ

所謂、説明回ということで

というか、冗長にすぎるのか

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