第29話 終わってたまるか
ゼータの装備は身体能力を底上げする。
怪我やダメージも装備が受け、
俺の生身は無傷で戦える。
「とは言えど、
この波状攻撃を全て身体に受けながら進むのは無理だ。
装備が壊れる」
壁のように放たれる無数の光線。
それは尽きることがなく、
絶え間なく俺に浴びせられる。
「さすがの物量に、
ゼータ・ディアスタシもたじたじ、だな!
この調子で行くぞ!
持久戦だ!」
ダブルのスーツを着た異世界人たちが勢いづく。
「何とか、何とか近づけさえすればっ」
俺は歯噛みしつつ回避に専念する。
●マサヤ サイド●
産まれて初めての、『本当の争い』。
命がけの殺し合い。
目の前で繰り広げられるそれは、
間違いなく『戦争』だった。
「俺の歌で戦争を終わらせられるようになってやる」
いつかの自分の声が耳の中で反響する。
争いがこんな恐ろしく、
こんな憎らしく。
こんなに腹立たしいものだとは。
思ってもみなかった。
「君は、『歌で戦争を止める』んだろ?」
ヒロセの声も耳の奥から聞こえてくる。
自分の腹の底から沸き上がる、
どす黒い感情。
それは、間違いなく自分の感情だ。
「……でも」
そうだ。
でも、俺は。
「……ラブ・アンド・ピースだけじゃダメだ」
足りない。
後一つ足りない。
目の前でヒロセが、
ゼータが苦戦している。
それを眺めていることしかできない。
「勇気だ」
俺に足りないのは、勇気だ。
歌が頭に浮かばない。
ギターはあるのに弾き方が思い出せない。
それもこれも、勇気が足りないからだ。
「ぐあぁぁ!」
ヒロセがとうとう、光線の餌食になる。
彼は悲鳴を上げて身体から火花を散らして。
だが、彼は前へ進む。
「何のこれしき!」
ヒロセたちは諦めない。
俺との約束を守るため。
『彼女』を、ジナコを助けるため。
ヒロセはゼータと前に向かう。
「あんな風に、力があれば」
自分の口から出た言葉は、
自分でも思ってなかった言葉だった。
「……違う。
力じゃねぇ」
そうだ、力は争いだ。
戦いだ。
「でも、力だ。
力がいる。
俺の歌に力がいるんだ。
勇気を裏付ける程の。
光線より威力がある。
爆弾みたいな力が歌にあれば」
矛盾しているのは自分でも理解してる。
でも、本能で分かること。
勇気は、力だ。
腕力、知力、経済力。
何でも良いから、
自分の足元を支える力がないと勇気は出ない。
学生の自分に知力と経済力は無理だ。
腕力はもちろんダメだ。
「歌に力が。
歌唱力、と言うより、
爆発力だ。
ミサイルより爆弾より光線よりも、
派手に。
派手に皆の耳に届いて、
俺に視線を釘付けにする力が欲しい」
俺はギターを見つめる。
これは、ジナコの部屋のギターだ。
一緒に歌う時に俺が借りるギターだ。
「貴方の声はとっても素敵だから、
もしかしたらできるかもね」
ジナコ声が聞こえた気がした。
「ううん。
絶対に貴方ならできるよ」
突然、力がみなぎる。
勇気を裏付ける程の力が。
彼女の声が、俺に力をくれる。
それが、過去のものだとしても。
「ああぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は腹の底のどす黒い感情を叫んで吐き出し捨てる。
そして、自分の喉に、腹にたくわえるのは。
「愛だ!」




