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昭和のヒーローは、誰にも知られず引退する  作者: 桃野産毛
本編一部 「終わり」

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第28話 必ず終わらせる

 異形は苦しみ悶える。

それを無理矢理引きずる円盤。

あまりにも酷い。


「……マズい!」


 ゼータがそう叫んで振り返る。

俺もゼータの見ている方へ振り向いた。


「……っ!」


 そこだけ周囲の景色が歪んで黒く見える。

その中心にはマサヤがいた。

円盤と異世界人をにらみ殺せそうなほど、

睨み付けている。


「マサヤ君は感情の増幅器でもある!

今の彼が声を出したら、

周囲にあの怒りや憎しみが周囲にぶちまけられるぞ!

 相棒、先にこっちをなんとかしなきゃ!

熱海市が大混乱になる!」


 俺は警官たちへ向かって叫ぶ。


「全員退避!

退避して、

周辺住民を避難させてください!

早く!」


 警官たちは正気に戻り、

パトカーをおいて一目散に駆け出した。


「マサヤ君!

大丈夫!

俺が助ける!」


 俺はマサヤの黒い空間に腕を突っ込んで、

彼の両肩に手を置いた。

肩に触れただけだが、

マサヤのおぞましいほどの怒りと憎しみが俺に流れ込んでくる。


「マサヤ君!

聞いてほしい。

実は、俺も異世界人の友達がいてね」


 マサヤが目を見開いて、俺の顔を見た。

俺は満面の笑みを浮かべる。


「その友達、というか、

相棒と『彼女』を助ける。

絶対に助ける。

だから、少し見てて」


 俺は何かを言いかけたマサヤから少し離れて、

構えをとる。


「周りにはもう警官はいない。

異世界人たちは何かやってて、

しかもここはパトカーの影だ。

やるんだね、相棒」

「やるぞ、相棒」


 俺はマサヤと見つめあった。

そして。


「剛力招来、超力招来!

変っ身っ!


 俺は両手を腰にあて、

身体を捻って両手を大きく円に振る。

そして、腕を胸の前でクロスした。


「ゼぇット!」


 俺がそう叫ぶと、

ゼータが笑って応える。


「承認完了!

チェンジ、ゼータフォーム!」


 ゼータがそう言うのに合わせ、

俺は胸の前の両腕を平行に揃えてアルファベットの『Z』を形作る。

そして、俺の身体が輝いて作り替えられていく。


「……マジかよ」


 さっきまでのどす黒いオーラが消え、

驚きの顔でマサヤが呟いた。


「次元の守護者、ゼータ・ディアスタシ。

それが、俺の相棒の名前だ」


 マサヤにも見えるように、

ゼータは巾着袋の姿を露にして俺のそばに浮かぶ。


「初めまして、マサヤ君。

私はゼータ。

ヒロセ君の相棒で、次元の守護者だ。

 訳あって、こんな姿だけど。

私たちは協力して戦ってきた。

だから、安心して。

あの『彼女』は私たちが助けるよ」


 ゼータを見て開いた口が塞がらない様子のマサヤ。


「ヒロセ、が、ゼータ?」

「代行だけどね。

偽装展開」


 俺のとなりに俺そっくりの人間が現れた。

マサヤはさらに驚く。


「これは俺の偽物だ。

適当にその辺に転がしておくから、

異世界人と戦って気を失ったとか適当に口裏を合わせてほしい」


 俺の偽物は少し離れたところで横になって目をつむり、

動かなくなる。

マサヤはそれを見て完全に放心している。


「マサヤ君。

君の怒りは、憎しみは正当なものだ。

でも、ダメだよ。

君は、『歌で戦争を止める』んだろ?」


 マサヤは俺の一言にハッとした顔をする。


「平和と愛を歌って、

争いを止めるんだろ?

 俺は戦うことしかできない。

でも、君なら歌で争いを止められるよ。

 だから、君はそんな顔をしちゃダメだ。

いつもの、やってよ。

ロックンロール!」


 マサヤは俺の顔を見て、

複雑な顔をした。

怒りも憎しみもまだあるが、

俺の言葉はちゃんと届いていて。

それでいて、葛藤している。

そんな顔だ。

 俺はパトカーの影から飛び出して、

異世界人たちの前に出た。


「なっ!?

ゼータ・ディアスタシだと!?

何故ここに……っ!」

「お前ら、何をたくらんでいるか知らないが。

平穏に暮らしていた人を拐って良い道理はない。

今すぐあの人を解放しろ!」


 異世界人たちは皆同じ顔で俺をにらむ。


「うるさい!

無限のエネルギーを手に入れた我らに、敵はいないのだ!

お前なんて怖くもなんともないわ!」


 ダブルのスーツの集団が、

一斉に懐から銃のようなものを取り出して俺に向けた。

俺は近くにいるマサヤに当たらない位置に移動して、

異世界人たちへ向かって駆け出す。

 スーツの集団が一斉に光線をゼータに向かって放つ。

ゼータはそれを華麗に回避した。

 だが、異形がさらに悶え苦しみ出す。

円盤に繋がったケーブルやパイプが、

異形から何かを吸い上げるように脈打つ。


「もしかして、

エネルギーをあそこから奪ってるのか?」

「このまま八万年撃ち続けても、

弾切れにはならんぞ!

どんどん撃て!」


 俺は舌打ちをして攻撃を回避し、

距離をとる。

 何とか近づいて、

あの円盤を止める方法を見つけなければ。

いつもならもっと情報があって、

それをもとに戦えていたが。

今はもうできない。


「だからと言って、

約束を違える訳には行かない!」


 俺は気合いを入れ直した。

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