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第三章 :癒し特級? 知らないの〜! 転生したわたし、後衛じゃなくて前衛回復役として世界を殴り倒したいの〜!  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第八話:シエラ、訓練を開始するよ〜

 ギルドが震撼した“聖癒事件”から数日。

その後、ステファニーはと言えば……


「前衛になりたいの〜! 前に立ちたいの〜!! 殴りたいの〜!!!」


ギルド中に響き渡る声は、まるで呪いのように職員の心を削り、上級回復士たちの精神力を毎日一割ずつ奪い続けていた。


そして今夜。

ギルドの喧騒が落ち着いた頃。

誰もいない夜の訓練場に、二つの影が向かい合っていた。


シエラとステファニーである。


月明かりに照らされたシエラの顔は、普段よりも鋭さを増していた。

まるで“決断の時”の剣士の表情だ。


「ステファニー」


呼ばれた本人は、なぜかニコニコしている。


「お姉さん、今日は何するの〜? 殴る練習〜? 転がる練習〜? それとも筋肉の育て方なの〜?」


「お前の脳内どうなってんだよ……」


シエラは頭を抱えたが、やがて真剣な視線を向けた。


「いいかステファニー。お前の前衛志望……本当に変わらねぇんだな?」


ステファニーはきゅっとロッドを握りしめた。

それはシエラが渡した安物のロッド。

そして、今日が“最期の日”だと彼女は知らない。


「変わらないの〜! わたしね、お姉さんと一緒に並んで戦いたいの〜!」


「……チッ、分かったよ」


シエラは深く、深く溜息をついた。

だがその目はすでに“師匠”のものになっている。


「これ以上、お前を“前に行きたい〜”って喚き散らす問題児としてギルドに迷惑かけるのは嫌なんだよ。それに……」


シエラは視線をそらし、ほんの少しだけ照れくさそうだった。


「もし本当に俺の隣に立ちたいって言うなら……

最低限の防御と立ち回りくらいは仕込んでやる。死なれちゃ困るしな」


「わぁ〜〜!! お姉さんが教えてくれるの〜!? めちゃくちゃ嬉しいの〜!」


ステファニーは飛び跳ねながら喜びを表現する。

一方でシエラは、これから始める地獄の訓練を想像して暗くなる。


「じゃあ始めるぞ」


シエラが訓練用の木剣を数本取り出し、ステファニーの前に立つ。


「前衛の基本は“避けること”。

お前、殴りたい殴りたい言うくせに、敵の攻撃を全部受ける気か?」


「違うの〜! 避けるの〜! わたし、ぴょんぴょん避けるの〜!」


「その口だけは一丁前だな。いいから行くぞ!」


木剣が放たれた。


――ヒュッ!


「ひゃっ!? 避け――」


ゴスッ。


「ぐえっ!? 当たったの〜!!」


シエラの目が細くなる。


「遅い。遅すぎる」


新しい木剣が飛ぶ。


――ヒュッ!


「ひゃあ!? い、今度こそ――」


パコン。


「おでこ痛いの〜!!」


「動き出しが遅いんだよ。お前、性格がまったりしすぎてんだ。回避は向いてねぇ」


「え〜〜!? そんなぁ〜!」


さらにシエラは何本か木剣を投げ続ける。


「ひぃっ!?」「きゃっ!?」「いてっ!?」「鼻はダメなの〜!!」


……結果。


シエラ「回避訓練は無理だ。向いてない」


ステファニー「そんな〜〜〜!?!?」


が、ステファニーのショックはここからが本番だった。


「おい、ステファニー。そのロッドを貸せ」


「え? このロッド〜? お姉さんが持てってくれたロッドなの〜」


シエラは無言でそれを受け取ると――


 バキィィィィン!!!

 (※地面に叩きつけた)


「は゛ーーーーっ!?!?!?!?!?!?」


ステファニーは悲鳴を上げて飛び跳ねた。


「あああああああっ!? わ、わたしのロッドがぁぁぁ〜〜!?!?」


シエラは冷静だ。


「こんな安物が前衛のお前を守れるわけねぇだろ。

戦場で武器が砕けたら、その瞬間に死ぬんだよ」


「でもでもでも〜〜!! わたしのロッドがぁぁぁ〜!!」


シエラはガン無視して続ける。


「いいか。お前は特級回復という最強の武器を持ってる。

それを殺さずに前に立ちたいなら、“専用の得物”が必要だ」


ステファニーは涙目でロッドの破片を拾いながら聞く。


「専用の……得物なの〜?」


「ああ。

避けられないなら守れ。

守れないなら、道具でのし上がれ。

そのための武器や防具を手に入れるまで、俺が徹底的に仕込んでやる」


シエラの言葉は厳しいが、なぜか温かさがあった。


ステファニーは拳をぎゅっと握る。


「……ありがとうなの〜!

わたし、絶対お姉さんの隣に立つの〜!!」


「言ったな? 泣き言は絶対に許さねぇぞ?」


「は〜いなの〜!!」


こうしてステファニーは、

“自分のロッドを粉砕されて本気になった前衛志望の特級回復士”へと進化した。


そして二人は――


「鍛冶屋に行くぞ。夜明けを待たずに行くからな」


「わぁ〜〜!! 得物! 得物なの〜〜!!」


夜の訓練場を後にし、鍛冶屋へ向かって走り出すのだった。

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