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第三章 :癒し特級? 知らないの〜! 転生したわたし、後衛じゃなくて前衛回復役として世界を殴り倒したいの〜!  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第二十五話:大地を割る土スキルがすごいの〜!

 森の奥は、まだ戦いの息を止めてくれなかった。

ワイルド・ベアの群れを撃退した直後、再び地響きが近づいてくる。まるで「まだまだ続くよ!」とでも言うような、嫌な自信に満ちた足音だ。


Aランク戦士長が青ざめた声で叫んだ。

「総指揮官! また来ます! 今度は……さっきより数が多いです!」

「わかっている」

シエラの声は冷静だったが、その眉はピクリと動いた。相当イラついている。


ステファニーはそんな空気を気にすることもなく、元気いっぱいに両手を広げた。

「はいなの〜! 《慈光ホーリー・フィールド》いっくよ〜!」

彼女の周囲に満ちた光が、Aランク部隊全体を包み込む。


「お、おい! また傷が塞がったぞ!」

「疲れがない!? むしろ元気……いや、元気すぎる……!」

「ステファニー殿、あなた……本当に人間ですか?」

「えへへ〜。普通の回復士なの〜」


普通とは何か。Aランク部隊は全員、心の中で突っ込みを入れた。


しかし、喜んでいる場合ではない。


ワイルド・ベア第二波が迫ってくる。

さっきより数が多い。

さっきより速い。

そして、さっきより明らかにイラついている。


Aランク戦士長が焦りを隠せずに叫ぶ。

「このままでは消耗戦になります! タイラント・アームドベアにたどり着く前に、こちらの戦力が尽きます!」

「わかっている」

シエラの声が、一段低くなる。


それを聞いたステファニーは、きょとんと目を丸くした。

「お姉さん、どうしたの〜?」

「……やるしかねえか……」


いつもの冷静な瞳が、戦闘用に切り替わった。


シエラは盾を地面に突き立て、両手を地に向けた。


Aランク部隊はその姿を見た瞬間、顔を引きつらせた。

「あ、あれは……! まさか特級土魔法を……!」

「逃げろ! 巻き込まれるぞ!!」


シエラは低く、はっきりと言い放った。

「Aランク部隊、後退!」


全員が全速力で後退する。

その一方で、ステファニーだけはぽてぽてとシエラの背中へついていく。


「ねぇねぇお姉さん、今から何するの〜?」

「大地を割る」

「わぁ……なんだかわくわくするの〜!」

「楽しいものではない」


地面が震え、空気が重くなる。

シエラの魔力が大地へと吸い込まれていく。


そして──


「土魔法・特級……《地殻断層グラウンド・カッター》」


次の瞬間。


ズバアァァァァァァンン!!!!


地面が、生き物のように裂けた。

突進してくるワイルド・ベアの進行ルートを、まるで線路のようにまっすぐに切り裂く。


深さ数メートル、幅一メートル以上の巨大な断層が、一気に森の奥まで走った。


突進してきたワイルド・ベアは、叫ぶ暇もなく落下。


「ギャアァァ!」

「ゴガァァ!」

「ムギャッ!?」


下に落ちて、互いにのしかかり、もみくちゃになって動けなくなる。


Aランク魔導士の口がぱっくり開いた。

「な……なんという……地形破壊……!」

Aランク戦士長は震えていた。

「この人……防御特化の盾戦士じゃなかったのか……!?」


ステファニーは、目を輝かせて跳ねた。

「お姉さんすごいの〜! ベアさんたちが重なって、ミルフィーユなの〜!」

「食べ物に例えるな」

「じゃあ……ラザニア?」

「もっとやめろ」


しかし、シエラは息ひとつ乱さず答えた。

「これで押し寄せる数を大幅に削った。ここから本番だ」


森の奥から、さらに重い地響きが響いた。

これは……先ほどのワイルド・ベアたちとはまるで違う。


Aランク戦士長が恐る恐る呟く。

「こ……これが……タイラント・アームドベア……?」


シエラはステファニーを振り返った。

冷静だが、真剣な眼差し。


「ステファニー、ここからが本番だ。Aランク部隊は、タイラントの装甲を破壊することに集中する。その間、全員を死なせるな。生存はお前の回復にかかっている」


ステファニーは迷わず頷いた。

「うん! みんな死なないでほしいの〜! わたし、全力で回復するの〜!」

「死ぬ前に回復しろ。復活魔法ではないからな」

「わかってるの〜!」


シエラは断層をひょいと越え、迷宮へ続く開けた空間へと歩き出した。


その背中は、まるで巨大な敵を迎え撃つ剣士のように堂々としていた。


ステファニーは、その後を小走りで追いかける。


「お姉さんと一緒なら、怖くないの〜!」


その無邪気な声が、重苦しい戦場にほんの少し明るさを灯した。


こうして──

大規模討伐作戦の第二段階が幕を開ける。


土を裂き、森を断ち、タイラントへ挑む道が、今開かれたのだった。

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