第二十三話:ギルド大討伐作戦への参加が決定
翌朝。
シエラとステファニーがギルドに姿を見せた瞬間、受付の人がバッと立ち上がった。
「シ、シエラ様! ステファニー様! ギルドマスターから“至急”と……!」
「……至急か。面倒な予感しかしないな」
「お姉さん、昨日あんなでっかい熊さん見つけちゃったからね〜。呼ばれるよね〜」
二人が通されたのは、普段ほぼ使われない“緊急作戦会議室”。
開けた瞬間――ステファニーは目をまん丸にした。
「わわっ!? なんか強そうな人ばっかりなの〜!」
部屋には、ギルド屈指のAランク冒険者たちが勢揃いしていた。
大剣使い、重装戦士、魔導士、弓の名手……
普段なら絶対に同じ空間にいないレベルの面々だ。
(……これは確かに“緊急”だな)
シエラは静かに眉を寄せた。
ギルドマスターが席を立ち、声を張り上げる。
「全員、よく集まってくれた。今回の議題は――リンドブルグ村周辺で発生した魔獣の異常凶暴化。そして最上位種の出現だ」
ざわっ、と空気が動いた。
Aランク戦士
「最上位種だと……!? なんでそんなのが村近くに……!」
Aランク魔導士
「全域に魔力の淀み? 回復魔法も通りづらいって話じゃないか」
ステファニーはぽそっと呟く。
「お姉さん、昨日びっくりして転びそうになったの〜……あんな装甲もりもりの熊さん、もう絶対いやなの〜」
「……お前、俺の背中に乗ってただけじゃないか」
ギルドマスターが重く頷いた。
「よって、本日より――《リンドブルグ大討伐作戦》を発動する。目標は、凶暴化したワイルド・ベア群と、最上位種タイラント・アームドベアの討伐だ」
戦士長が腕を組む。
戦士長
「Aランク勢が揃って出るのは異例……だが最上位種となれば致し方あるまい。しかし――どうやってあの装甲を……?」
魔導士
「純粋な攻撃力で突破は厳しい。魔力汚染もひどい……」
シエラとステファニーは隅の席で話を聞いていたが、
ステファニーは既にビビり気味だった。
「お姉さん、Aランクさんたちがゴリゴリしてるの〜。なんかこわいの〜」
「落ち着け。普段からこのレベルの連中に囲まれてるわけじゃないだろう」
「普段のわたしはお姉さんの後ろでぬくぬくなの〜」
「……堂々と言うな」
会議室がある程度静まったところで、ギルドマスターが口を開いた。
「そして――今回の作戦全体の指揮系統についてだ」
ぞわっ……と視線が集まる。
ギルドマスターは一歩前に出て、宣告した。
「Sランク冒険者・シエラ。お前を、この《リンドブルグ大討伐作戦》の総指揮官に任命する」
沈黙。
次いで爆発するざわめき。
戦士長
「なにっ……!? いくらSランクとはいえ、作戦の総指揮は経験が必要では……!」
魔導士
「若すぎる……!」
シエラは席を立ち、キリッとした目で言い放った。
「引き受ける。……ただし、俺の戦術とステファニーの扱いに口出しはさせない」
“扱い”と言われたステファニーは、なぜか胸を張る。
「わたし、お姉さんの装備みたいな扱いなの〜?」
「……装備ではない」
「でも一緒に戦うの〜?」
「戦力として使う」
「装備なの〜?」
「……違うと言っている」
Aランク一同が“何だこの会話”みたいな顔をする中、ギルドマスターは頷いた。
「当然だ。ステファニー、お前もシエラの指揮下で参加する。特級回復士として期待しているぞ」
ステファニーはぴしっと立ち上がり、珍しく凛々しい声で答えた。
「了解なの! お姉さんと一緒なら、わたし、いくらでも回復するの〜!」
シエラが地図へ視線を移す。
「まず、ベアの数が多すぎる。目的は“殲滅”ではない。最上位種の討伐と、迷宮の封鎖だ」
戦士長
「では群れはどう対処する?」
「囮部隊を配置しつつ、ステファニーの中範囲回復で持久戦を維持する。魔力汚染は……ステファニーの純度の高い回復魔法である程度相殺できる」
魔導士
「回復士で魔力汚染を……? 本当に可能なのか?」
シエラはふっと笑う。
「こいつの回復は、普通じゃない。魔力純度は規格外だ。上級魔導士が解析しても“意味がわからない”って匙を投げるレベルだ」
ステファニーはむーっと頬を膨らませる。
「お姉さん、そんなに言うとわたしが変な生き物みたいなの〜」
「変な生き物ではないが……まぁ、特殊だ」
「やっぱり変な生き物なの〜!?」
Aランクがまた微妙な表情になる中、シエラは淡々と続けた。
「戦術の本命は俺だ。タイラント・アームドベアの装甲は極めて強力だが……弱点もある」
「弱点……?」
「視界。あいつの装甲は前面特化。側面と背後が甘い。つまり――」
シエラは静かに、だが自信満々に言い切った。
「俺が囮になる。ステファニーは中距離で援護。Aランク部隊は群れの処理と包囲を担当。それで勝てる」
ステファニーは手を挙げた。
「お姉さんが囮なの〜? 危ないの〜! わたし、いっぱい回復するけど……それでもだめなの〜?」
「大丈夫だ。お前の回復は、俺が一番よく知ってる。……絶対死なせない」
「お姉さん……!」
戦士長
「……なるほど。確かに理にかなっている」
魔導士
「Sランクの動きに合わせろと言われれば……従うしかない、か」
ギルドマスターが深く頷いた。
「以上だ。全員、シエラの指揮に従え。これはギルド史上最大規模の共同作戦となる。絶対に失敗は許されん!」
シエラ
「各自、装備を整えておけ。作戦開始は明朝だ」
ステファニー
「えへへ〜、お姉さん! 一緒にがんばるの〜!」
「……お前はその調子でいい。いつも通り、俺の隣にいればいい」
「了解なの〜!」
こうして、Sランク冒険者シエラと、規格外の回復士ステファニーは――
ギルド史上最大級の《リンドブルグ大討伐作戦》の中心となるのだった。




