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第三章 :癒し特級? 知らないの〜! 転生したわたし、後衛じゃなくて前衛回復役として世界を殴り倒したいの〜!  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第十九話:新人組の噂、ギルドを越えて〜

 迷宮から帰るころには夕陽が傾きはじめ、二人はそのまま街の冒険者ギルドへ向かった。


重厚な扉を押し開けた瞬間——

内部の空気が、やけに熱かった。


「わ、わあ……サウナなの〜?」

ステファニーがきょとんと首をかしげる。


もちろんサウナではない。

ギルドにいた冒険者全員が、二人を凝視していたのだ。


「「「来たぞ……!!!」」」

どよめきが空気を震わせる。


「……何だこの空気は。私、何かしたか?」

シエラが眉を寄せた。


「お姉さん、人気者なの〜。やっぱり美人は得なの〜」

ステファニーが関係のない結論を述べる。


「いや違う。絶対違う」

シエラは小さくため息をつく。


そんなやり取りの最中、若い冒険者たちが勢いよく駆け寄ってきた。

護衛依頼で同行したアレンとリズの姿もある。


「シエラさん!! ステファニー様!! ご帰還おめでとうございます!!」

アレンが声を裏返しながら叫んだ。

「それでっ……あの魔法、あれは何だったんですか!?」


「あれなの〜? みんなの怪我を治しただけなの〜」

ステファニーは無邪気に答える。


「“だけ”……!? あれは特級全体回復スキル《廻生アポカリプス・リバース》ですよね!?」

アレンが震える声で叫んだ。


「アポカリプス・リバースって言った!?」

ギルド中がざわめき立つ。


リズが涙目でステファニーに駆け寄った。

「ほんとうに……本当にありがとうございました……! 私、腕折れてたのに、一瞬でくっついて……!」


「よかったの〜。折れてたら大変なの〜。骨は大事なの〜」

ステファニーが優しく頷く。


「はいぃ……!!」

リズは尊敬の眼差しでステファニーを見上げる。


「……リズ、目が危ないぞ。落ち着け」

シエラが冷静に諭したが、火に油だった。


興奮に包まれたギルドを抜け、二人は受付カウンターへ向かった。

職員Aは蒼白な顔で震えている。


「お、お二人……新人二人の証言により、報告内容は詳細まで確認済みで……!」


「そうか。なら処理を——」

シエラが言いかける。


「ステファニー様が、特級全体大回復を、危機的状況で、詠唱なしで、瞬時に……」

職員Aは口をぱくぱくさせた。


「がんばったの〜!」

ステファニーが胸を張る。


「そのうえ魔力がもう回復しつつある……神話か何かでしょうか……!」

職員Aが震える。


「だから言っただろ。この子は私の自慢の回復士だ」

シエラが淡々と告げる。


「お姉さん、ほめてくれたの〜!」

ステファニーが嬉しそうに跳ねた。


「事実を述べただけだ」

シエラはそっぽを向くが、耳が赤い。


そんなやり取りの途中、ギルド奥の扉が静かに開いた。


「シエラ、ステファニー。よく戻ったな」

落ち着いた声とともに、ギルドマスターが姿を現した。


「報告は読んだ。シエラ、お前が考案した“被弾前提の密着回復戦術”……あれは異端ではない。特級回復士の力を最大限に引き出す、新時代の戦術だ」


「……あれは私が勝手にやっているだけだ」

シエラは淡々と言う。


「だからこそ価値がある」

ギルドマスターは即答した。

「職員A。——本日付で、シエラのランクをSに引き上げろ」


「「「Sランク!? 今日!? 今!?」」」

ギルド内が爆発したように騒ぎ出す。


「……は?」

シエラの目が見開かれる。


「Sランクでもお前の代わりは務まらん」

ギルドマスターが断言する。


「お姉さんすごいの〜! 世界に認められたの〜!」

ステファニーがきらきらした瞳で近寄る。


「やめろ……照れるだろうが……」

シエラは耳まで赤い。


次にギルドマスターはステファニーを見る。


「ステファニーの能力は最高峰だが、攻撃スキルがゼロだ。ゆえにランクはFのままだ」


「ゼロなの〜!」

ステファニーが元気よく挙手した。


「SとF!?」「逆に最強では?」

周囲がざわつく。


「わたしずっとFなの〜! うれしいの〜!」

ステファニーが満面の笑みを浮かべる。


「なんで喜ぶんだ……」

シエラが疲れた声を漏らした。


職員Aが震えながら呟く。

「SとFのパーティ……前代未聞です……!」


「まあ……これで文句を言う者もいないだろう」

シエラはため息をつきつつも、どこか誇らしげだった。


「お姉さんはS! わたしはF! さいきょうコンビなの〜!」

ステファニーが手を広げる。


「……そうだな。最強だ」

シエラはステファニーの頭に手を置いた。


「お姉さんの背中、ずっと守るの〜!」

ステファニーが胸を張る。


その日の噂は街中に広がった。


「聖女が現れたらしい」

「終末を反転させる回復士がいる」

「大盾の悪魔が帰ってきた」

「SとFの狂気コンビ」


どれも誇張だが、二人の存在はそれだけ衝撃的だった。


帰り際、シエラは受け取った依頼書を見つめて呟く。


「噂はどうでもいい。だが……私たちの戦術が本物だと証明できた。なら次は、もっと難しい依頼だ」


「はいなの〜! どんな依頼でも治すの〜!」

ステファニーが両手を上げる。


「お前の《廻生アポカリプス・リバース》は最後の砦だ。乱発はするなよ。魔力の回復には時間がかかる」


「はーいなの〜! お姉さんの背中……ぜったい守るの〜!」

ステファニーがまっすぐな目で言った。


こうして——

Sランク前衛とFランク特級回復士という前代未聞のコンビは、次なる冒険へと踏み出すのだった。


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