表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第三章 :癒し特級? 知らないの〜! 転生したわたし、後衛じゃなくて前衛回復役として世界を殴り倒したいの〜!  作者: ぃぃぃぃぃぃ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/36

第十七話:新人たちとの同行依頼なの〜

 ギルドの昼下がりは賑やかだ。受付前には冒険者たちが行き交い、依頼書が貼られた掲示板には常に人だかりができている。そんな中、妙に静かな一角だけがある。理由は単純。シエラとステファニーが並んで立っているからだ。二人がいるだけで、わいわいしていた冒険者たちが道を開けてしまう。その光景は、もう見慣れたものになりつつあった。


「本日の同行依頼はこちらになります!」

ギルド職員Aが、緊張した様子でシエラたちの前に書類を差し出す。


シエラは軽く眉を上げた。「新人の護衛か。迷宮上層とはいえ、私たちでいいのか?」


「むしろ、あなたたちが適任なのです!」

職員Aは力強くうなずく。

「シエラさんたちの“異端の最強戦術”は、新人冒険者にとって最高の教材です! 特にステファニー様は、回復士志望の子たちにとって身近な存在になりますし!」


ステファニーは嬉しそうに胸を張る。

「わたし、みんなを元気にするのが得意なの〜! シエラお姉さんの後ろから“ちょんっ”ってしたり、“ぴかーっ”って治すの〜!」


「その説明だと何が起きているのか分からなくなる……」

シエラが頭を押さえた。


紹介された新人は二人。剣士志望のアレンと、回復士志望の少女リズ。二人ともシエラとステファニーを前に、緊張で固まっている。


アレンが勇気を振りしぼって声を上げた。

「し、シエラさん! その盾さばき……近くで見られるなんて、本当に光栄です!」


「うむ、よろしく頼む」

シエラが軽く頷くと、アレンの顔が真っ赤になった。


リズは恐る恐るステファニーへ視線を向ける。

「あ、あの……ステファニー様って……本当に前衛なんですか?」


「そうなの〜!」

ステファニーは得意げだ。

「わたし、前衛で“ツンッ”てして、後ろでも“ぴかぴか〜”って治すの〜! いっぱい動くの〜!」


「可愛い……けど……あれ……? 回復士って、そんな働き方するんだっけ……?」

リズの思考が揺らいでいく。


シエラは肩をすくめた。

「まあ、見ればわかる。うちの戦い方は……確かに異端だ」


迷宮上層に到着すると、空気はひんやりと湿っている。新人たちは緊張で背筋を伸ばし、シエラの後ろを歩く。ステファニーは最後尾から「るんるん〜」と鼻歌混じりに続いていた。


「アレン、落ち着け。敵が出ても初撃を無理に取りに行くな」

「は、はい!」


その瞬間、背後の暗がりからゴブリンが躍り出た。


「ギギッ!」


「来たか……! アレン、下がれ!」

シエラが前に躍り出て盾を構える。


だが、なぜかシエラはゴブリンの攻撃をわざと軽く受けた。


「えっ!? シエラさん! い、今の……被弾……?」


「問題ない。ステファニー!」


「は〜い! 光が見えるの〜!」


ステファニーがひょこっとシエラの背後から顔を出すと、刺メイスで“ツンッ”とゴブリンの腹をつつく。その直後、シエラの体が淡い光に包まれ、傷が瞬時に消えた。


リズは衝撃で声を失う。

「あ、あんな……攻撃と回復を同時に……?」


アレンも唖然とする。

(シエラさん、全然ためらわない……! 回復される前提だから、あんなに強気に立ち回れるのか……!)


ステファニーは岩陰に半身を隠しながら、また“ツンッ”。ゴブリンは完全に怯えて後退している。


「ほらほら〜! 逃げちゃダメなの〜!」


「ギギィッ!?」


ゴブリンの悲鳴が迷宮にこだまする。

新人たちが混乱している間に、シエラが大盾で強烈に弾き飛ばし、ゴブリンは地面につっぷした。


「終わったか」

シエラが息を整える。


リズが震えながら呟く。

「きょ、教科書と違いすぎます……!」


ステファニーがニコッと笑った。

「教科書に載せる〜? わたしたちの戦い方、載せちゃう〜?」


「い、いや……載せたら混乱する気がします……!」


戦闘が終わったあと、緊張が一気に押し寄せたのか、新人の二人は擦り傷をつけていた。アレンの腕に赤い線が走っている。


「待っててアレン君! すぐ治すから……!」

リズは震える手で回復魔法を試みるが、魔力が安定しない。


「ご、ごめん……私、焦って……!」

リズが目を伏せた瞬間、ステファニーがそっと手を重ねた。


「焦らなくていいの〜。回復はね、心がぽかぽかだと上手くいくの〜」


「ぽかぽか……?」


「そうなの〜! “痛いの痛いの、飛んでいくの〜!”って気持ちを込めるの〜!」


ステファニーの魔力が優しく流れ込み、リズの魔力の形が整っていく。

リズは驚きながらも、再びアレンに手をかざした。


光が溢れ、傷がゆっくりと消えていく。


「あ……治った……!」

アレンが嬉しそうに腕を動かす。


リズは感動のあまり涙目になった。

「ステファニー様……ありがとうございます……!」


「えへへ〜! みんな治って嬉しいの〜!」


帰り道、新人二人の表情は明るい。


アレンが拳を握りしめる。

「シエラさん! 俺……必ず強くなります! いつか、あんな風に仲間を守れる前衛に!」


「うむ。その意気だ」


リズもまた、胸に手を当てながら言った。

「ステファニー様……魔法だけじゃなくて……心まで治せるんですね。私、ステファニー様みたいな回復士になりたいです!」


ステファニーは嬉しそうにくるりと回った。

「みんなで一緒に強くなるの〜! 迷宮でも街でも、元気いっぱいなの〜!」


こうして、新人たちはシエラの鉄壁とステファニーの規格外の優しさに魅了され、二人の背中を目指すようになったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ