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第三章 :癒し特級? 知らないの〜! 転生したわたし、後衛じゃなくて前衛回復役として世界を殴り倒したいの〜!  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第十五話:ギルドの評価が変わってるって本当〜?

 迷宮下層から地上へ戻る階段を上がった瞬間、私はくしゃみをした。


「へっくしゅんっ……お姉さん、なんか噂されてる気がするの〜」


「気のせいだ。お前はいつもそんなこと言ってるだろ」


シエラお姉さんは、血の一滴もついていないピカピカの鎧を軽く叩いた。

その音が、周りの冒険者たちの視線をさらに集めてしまう。


え……なんか、視線すごくない??


ギルドの扉を開けた瞬間、熱視線がぶわっと飛んできた。


「おい見ろ、戻ってきた……!」


「アイアン・ボア討伐したってよ。しかも無傷だってよ……」


「いやいや、あの二人だぞ? あの『盾剣士と前衛回復士(笑)』って馬鹿にされてたコンビだ」


「笑いじゃなくてガチで最強だった件……」


ひそひそ話が、ひそひそしていない。


むしろ堂々と聞こえる。


「お、お姉さん……わたし、もしかして……有名人なの〜?」


「当たり前だ。お前の回復が異常なんだよ。俺があれだけボアに思いっきり殴られたのに、即座に全快だったんだ。普通なら肋骨がバラバラになる攻撃だぞ」


「えへへ〜。殴られても治せば問題ないの〜」


「いや、それを当然みたいに言うな」


シエラがこめかみを押さえるのは、たぶんいつものこと。


でも今日は違った。


だってギルド内の視線がもう、痛いくらいなのだ。


――いや、本当に痛いくらい。

じーっと見られすぎて、魔力が吸われてる気がするの〜。


そして受付に向かうと、そこにはいつもの胃痛持ちの職員Aさん。


でも今日はなぜか、胃のあたりを押さえてない。


むしろ……輝いてる?


「シエラさん! ステファニー様! ご帰還おめでとうございます! そして……今回も、無傷での討伐。確認いたしました!」


Aさんは震えながら書類を掲げた。


「報告書によりますと、シエラさんは突進を何度も受けたものの、ステファニー様の即時回復により戦闘に支障なし……と。これは……もはや異常というより、戦術と言うしか……!」


私は胸を張った。


「わたし、お姉さんの背中にぴとって張り付いて、ずっと治してたの〜」


「それを言葉にすると途端にヤバく聞こえるからやめろ」


Aさんは何度も頷きながら、机をバンッと叩いた。


「前衛回復士という概念が、シエラさんの指導によって……完全に戦術として成立しました! これほどの実例が存在したとは……!」


「指導ってほどじゃねえよ。こいつが勝手に前に出たがるから、仕方なく戦術にしただけだ」


「お姉さん……わたし、勝手に前出てないよ〜。お姉さんの背中が温かくて安心するから、離れたくないだけなの〜」


「それを戦闘中に言うな!」


そんなやり取りをしていると、背後から落ち着いた足音が近づいてきた。


振り向けば、白ローブの男性――上級回復士Eさん。


以前、私の回復魔法を見て「人類の宝だ」と最大級の称賛をくれた人だ。


しかし今の彼は、眉間に深いシワを刻んでいる。


「シエラ殿、ステファニー様。下層討伐、見事でした。しかし……」


Eさんは私とシエラを交互に見てから、深く息をついた。


「回復士が……わざとダメージを受けることを戦術に組み込むなど……信じられません」


シエラは鼻で笑った。


「本分とか綺麗事言うなよ。命を救うのが回復士なら、こいつのやってることは最高の仕事だ。俺がどんなダメージを受けても、こいつが瞬時に治せば問題ない」


「しかし……」


「お前ら上級回復士じゃ、致命傷の修復に時間がかかる。回避して距離を取る時間も必要だろ。だがこいつは違う。背中に張り付きながら治すから、俺が攻撃し続けられる」


シエラは軽く私の頭をぽんと叩いた。


「殴られて治して、また殴って治す。こいつの治癒速度なら、それができる」


「お姉さん、わたしを壊れたポーションみたいに言うのやめてほしいの〜」


「事実だろ」


Eさんは震える手で眼鏡を押し上げた。


そして……ぽつりと言った。


「……羨ましい。そんな回復速度、私も欲しかった……」


え……なんか、すごくリアルな嫉妬の目してる……。


でも、Eさんはすぐに姿勢を正し直した。


「しかし、それでも……この戦い方は、特級回復士であるステファニー様にしか許されない領域でしょう」


その言葉にAさんが乗っかる。


「ギルドとしても、二人の評価を正式に改めることとなりました! シエラさんは、この“異端の戦術”を成立させた指導者として評価が上がっています。ギルドマスターからも指示がありまして……」


シエラの眉がぴくっと動いた。


「……指導者?」


「はい! シエラさんの育成能力を正式に認め、上級指導者枠への推薦が……!」


「俺は別に指導者なんて興味ねえよ」


「お姉さん、褒められてるのになんで不機嫌なの〜?」


「俺が欲しいのは評価じゃなくて――」


シエラは私の頭に手を置いた。


その手は、なんかちょっと……照れてる。


「こいつが“前衛として”認められることだ」


胸がぽかぽかした。


「お姉さん……! わたし、お姉さんの相棒なの〜!」


「……ああ。だから、もっと強くなるぞ」


ギルド中がざわざわした。


噂話が広がっていく。


「異端の最強コンビだってよ」


「前衛盾と密着回復士……新時代の戦術じゃね?」


「ギルド公認になったらしいぞ……!」


Aさんが胸を張って宣言した。


「今日をもって、シエラ・ステファニーパーティはギルド公認の“異端の最強パーティ”として登録されます!」


えへへ……。


なんか、すごいの〜!


私とお姉さんの戦い方、ちゃんと認められたんだ。


「お姉さん、これからも一緒に冒険行くの〜!」


「当たり前だ。お前がいないと俺は戦えないしな」


「ふえぇ……! ずっと一緒なの〜!」


こうして私は正式に――

『前衛で殴られながら回復するヤバい回復士』として、ギルドに認められたのだった。

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