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第三章 :癒し特級? 知らないの〜! 転生したわたし、後衛じゃなくて前衛回復役として世界を殴り倒したいの〜!  作者: ぃぃぃぃぃぃ


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第十一話:迷宮下層へ、二人の役割分担〜、前衛回復士(?)チーム爆誕〜

 ギルドの朝は、いつもより少しざわついていた。


理由は簡単だ。

入口から、赤髪の鋭い目をした女騎士――シエラと、

白い刺メイスを抱えてトコトコ歩く特級回復少女――ステファニーが、

昨日に引き続きペアで現れたからだ。


ギルド職員Aは、二人の姿を見た瞬間、

(……あ、今日も胃が痛い……)

と、無意識に腹を押さえていた。


シエラがストンと受付カウンターに立つ。


「新しい依頼だ。昨日の失敗を踏まえて、今日は役割を完全に最適化する」


職員Aは、書類を取り落としそうになりながら尋ねた。


「え、えっと……今回もステファニー様は前衛回復士フロントライン・ヒーラーとして……?」


「そうだ」


ビシィッ、と音がしそうな勢いで頷くシエラ。

だが、その次の言葉が職員Aの心臓を貫いた。


「だが今回は違う」


「違うのに“そうだ”なんですか……?」


シエラはスッ、と後ろから紙束を取り出す。

なんと、びっしりと文字が書かれた“役割分担表”だ。


「見ろ。今回の作戦はこうだ。

 俺が『鉄壁の盾役兼ダメージソース』。

 そしてコイツが――」


シエラはステファニーの肩を軽く叩く。


「『被弾前提の即時回復役』だ」


職員A「被弾前提!?!?!?!?」


ステファニーはにこにこしている。


「やるの〜! 被弾したらすぐ治すの〜!」


職員Aは思わず叫ぶ。


「いやいやいやいや! 特級回復士にわざわざ怪我させるとか、正気ですか!?」


シエラは腕を組んで冷静に説明し始める。


「避ける能力も剣技もないのに、避けさせようとする方が危険だ。

 だが、こいつの回復力は致命傷一歩前なら数秒で全快だ。

 つまり――致命傷を避ければ負傷ゼロと同じだ」


「理論の飛躍がすごい!」


シエラは一歩近づいてきて、職員Aに小声で言う。


「昨日、刺メイスで飛び出して大惨事になっただろう? だから今日は徹底的に“貼り付き式”だ」


ステファニーは胸を張って、


「今日はお姉さんの言うこと全部聞くの〜!」


「よし。飛び出すな。絶対だぞ」


「絶対なの〜!」


職員Aは、もはやツッコむ気力すら失われていた。


そして、二人は迷宮へ向かった。


──迷宮上層。


薄暗い通路を歩きながら、シエラが指を鳴らす。


「来るぞ。上層のオークだ。力は強いが動きは単調。避けやすい」


ステファニーはピタッと背中に張り付く。


「背中から離れないの〜! 離れたらダメなの〜!」


「よし、いい心がけだ」


その時、ドスドスと足音が響いた。

オークが斧を振りかぶり、突進してくる。


「受けるぞ!」


シエラは大盾を構え、正面から衝撃を受け止めた。

ガギィンッ!! という轟音とともに、シエラは後ろに一歩、下がる。


が――その瞬間、あえて脇腹を少し晒した。


斧がシエラの脇腹に掠め、薄い傷が走る。


「ぐっ……ステファニー!」


「はいなの〜!」


ステファニーは動かない。

シエラの背中に貼り付いたまま、刺メイスの宝玉を光らせる。


「《光滴リジェネレート・ドロップ》なの〜!」


ぽとん、と小さな光の雫が落ちた。

その光がシエラの傷を包み、即座に全快させる。


シエラは回復の気配を感じ取ると、すぐに体勢を整え反撃に移る。


「完璧な速度だ!」


オークが再び斧を振り上げた。

シエラはそれを弾き、その反動で一瞬だけ、オークの足元に隙が生まれた。


「今だぞ、ステファニー!」


「ツンッ! ってするの〜!」


ぴょこんと刺メイスを突き出し、

オークの足の甲にスパイクを軽く刺す。


「グゴォッ!?」


オークが怯んだ瞬間――。


シエラの大剣が閃いた。


ザシュッ!!


オークの首筋を捉え、巨体が崩れ落ちる。


戦闘終了。


シエラは汗を拭いながら、ステファニーを褒めた。


「立ち位置完璧。回復神速。スパイクも必要な時にだけ入れた。無駄な被弾ゼロ」


「やったの〜! わたし刺すのちょっと得意なの〜!」


「殴るより百倍安全だ。これが“前衛回復士”の正しい動き方だ」


ステファニーは刺メイスを抱きしめて喜ぶ。


迷宮から戻った二人は、ギルドの受付へ。


職員Aは、二人の体を見て目を疑った。


「無傷……? 二人とも……?

 あの異端パーティで、上層オークを……無傷で……?」


シエラは依頼書をドンとカウンターに置く。


「次は迷宮下層だ。そこで本当の実力が試される」


ステファニーはキラキラした目で叫ぶ。


「迷宮下層なの〜! わたしもっと頑張るの〜!」


職員Aは震えながら次の依頼書を受け取った。


(……この組み合わせ、もしかして本当に最強なのでは……?)


期待と恐怖がないまぜとなった空気が、ギルドに漂っていた。


──二人の迷宮挑戦は、まだまだ続く。

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