表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第三章 :癒し特級? 知らないの〜! 転生したわたし、後衛じゃなくて前衛回復役として世界を殴り倒したいの〜!  作者: ぃぃぃぃぃぃ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/36

第一話:転生者ステファニー、ギルドへ行く〜

 ここは冒険者の街、オルフェア


 昼下がりの冒険者ギルドは、今日も活気に満ちていた。


 依頼を受けに来た冒険者たちが行き交い、酒場の方からは威勢のいい笑い声が響き、掲示板には新しい依頼が貼られていく。外は爽やかな風が吹いているが、ギルド内はそれを押し返すほどの熱気に包まれていた。


 そんな中――一人だけ、ゆったりとした雰囲気をまとった女性が受付へと歩いてくる。


 ピンク色の髪を高い位置で結んだポニーテール。柔らかい笑みを浮かべ、妙に楽しそうに鼻歌を歌っている。胸元には初心者用プレート、腰には……剣。


 いや、剣のようで剣ではない。柄の先端に、なぜか初心者ロッドに付いている宝玉が埋め込まれているという、妙に改造された形状の武器だ。


 その名も――本人曰く「初心者用剣ロッド」。


「えへへ〜、冒険者ってどんな感じなんだろ〜。わくわくするの〜」


 自然と周囲の視線を集めるその女性の名は、ステファニー。

 二十八歳、転生者――本人以外、誰も知らない秘密?だ。


 


「こんにちは〜。冒険者になりたいの〜。登録をお願いします〜」


 受付カウンターに到着したステファニーは、にこにこと笑顔を向けた。


「は、はい。では身分証を……初めての登録ですね? スキルボードで適性を確認します。手をこちらに置いてください」


「は〜いなの〜」


 ステファニーがカウンターの魔力測定器に手を置くと、受付職員の男性は淡々と魔力を流し込む。


 奥の壁に設置された巨大な水晶盤――スキルボードが反応し、淡い光を帯び始めた。


 そして次の瞬間、ステータスが表示される。


 職員は軽い気持ちで画面を覗いた……その直後、目を剥いた。


「……え?」


 水晶盤には、明確にこう記されていた。


──────────────────

 名前:ステファニー

 固有属性:癒し

 スキルランク:特級

 使用可能スキル:

癒し初級 小回復 《光滴リジェネレート・ドロップ


癒し中級 中回復 《活泉ライフ・ストリーム


癒し上級 大回復 《聖癒ディヴァイン・ヒーリング


癒し中級 全体小回復 《和風エリアス・ブレス


癒し上級 全体中回復 《慈光ホーリー・フィールド


癒し特級 全体大回復 《廻生アポカリプス・リバース



攻撃適性:無し

──────────────────


 


「とっ……特級……!? 特級癒し……!? し、しかも……《廻生アポカリプス・リバース》……!」


 受付職員Aの声が裏返った。


 ギルド内のざわめきが、一瞬で静まる。


 そして次の瞬間――


「おい今、特級って聞こえなかったか?」

「特級癒しなんて、王都に一人いるかどうかだぞ!」

「しかも若いぞ!? 見た目は!」


 ざわざわざわざわ……


 ギルド中の視線がステファニーに集まった。


 当の本人は、周囲が騒いでいる理由すらよく分かっていない様子で、ぽかんとしている。


「えへへ……な、なんかすごい注目されてるの〜?」


「すごいどころの話では……!」


 受付職員は一瞬で態度を正し、丁寧すぎるほど深く頭を下げた。


「ステファニー様! 大変失礼いたしました! 特級癒しの持ち主など、我がギルドでも滅多にお迎えできません! あなたは我々の至宝です!」


「ええ〜? 至宝ってそんな、大げさなの〜」


 ステファニーはくすくす笑う。


「と、とにかく! ステファニー様には最重要注意事項がございます!」


「なになに〜?」


 受付職員Aは真剣な表情で告げた。


「あなたの特性は回復です。後方支援がメインになります。

 その回復能力は何百人もの命を救える力なんです! 死なせるわけにはいきません!」


「……へ?」


 ステファニーの目が丸くなる。


「えっと……でもね……」


「でも……?」


 ステファニーは胸を張って宣言した。


「わたし、前で戦いたいの〜!」


「…………………………は?」


 ギルドの喧騒が止まった。


 受付職員Aは固まり、後ろの冒険者数名が椅子から落ちた。


 その中の一人が叫ぶ。


「前衛!? 特級回復士が!? アホなのか!?」


「いやだって、転生したんだし〜。せっかくチートスキルあるなら、魔物とガンガン殴り合いたいじゃない〜?」


「殴り合いたい……?」


「うん! だって、わたし力は結構強いの〜。剣とか振ってると落ち着くし〜」


 ステファニーは、腰の“初心者用剣ロッド”を誇らしげに掲げる。


 丸い宝玉のついた、どう見ても扱いづらそうな武器を。


「ほら〜。これでバシバシ殴りたいの〜!」


「……ステファニー様」


 受付職員Aは、震える声で言った。


「攻撃適性、無しと出ていますが……」


「え〜? そうなの〜? でも、殴るのは体力勝負なの〜」


「そういう問題ではありませんっ……!」


 職員Aが頭を抱えた瞬間、ギルド内がざわつき始めた。


「やべえぞ……特級回復士が前衛志望って前代未聞だ……」

「いや、止めろよ職員……マジで死人が出るぞ……」

「いや……まあ通常よりかは筋肉あるか? なんで?」

「転生者かな……?」


 ステファニーはきょとんとしていた。


「ねえ〜、そんなに変かな〜?」


「変です!!」


 職員Aは深くため息をついた。


「と、とにかく……! まずは初級講習を受けてください! 前衛志望? そんなもの教官が全力で止めますから!」


「え〜、教官さんが止めるの〜?」


「止めますとも!!」


「ふふっ。でも、がんばるの〜」


 にっこり笑うステファニー。


 その天然っぷりに、職員Aは半ば泣きそうな顔で天を仰いだ。


「(お、お願いだから……頼むから……普通に後衛やってください……!)」


 ギルドの空気は混乱の渦のまま。


 こうして、特級回復士にして前衛志望という異例すぎる新米冒険者・ステファニーは、ギルドへ一歩を踏み出したのだった。


 この時点では、彼女の“暴走”がどれだけギルドを振り回すか……

 誰もまだ、知る由もなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ