12 魔物に好かれるような性格だからなのでは?
わたし達が家に戻ると、サウロン陛下はチーチルと一緒に応接室でくつろいでいた。
「リンファッ! 大変なのっ!」
チーチルはわたしの姿を確認するなり、甲高い声を上げて近付いてくる。
好きでもない人に触れられるのは苦手なので、後ろにさがろうとすると、ランが間に入ってくれた。
「お初にお目にかかります、聖女様。セーフス国の第二王子のランディスと申します。アウトン国の国王陛下がいらっしゃっているとお聞きし、父の代理でやって参りましたが、聖女様にもお会いできて光栄です」
「あらっ! 素敵っ! 仲良くしてあげても良いですよっ!」
「あ、ありがとうございます」
ランは少し引き気味の様子だったけれど、礼を言うと、ソファーにふんぞり返って座っているサウロン陛下に頭を下げる。
「セーフス国にようこそいらっしゃいました、サウロン陛下。歓迎いたします」
「ふん。本当は来たくなかったのだが、リンファが返事をせんのだからしょうがない」
アウトン国はセーフス国に比べて、かなり国土は大きいし、国民の人口も倍以上ある。
相手よりも大国ということで、サウロン陛下は気が大きくなっているようで、ランを見下した様子だった。
それに少しカチンときてしまい、少し強めの口調で尋ねる。
「サウロン陛下、私にどういった御用でしょうか?」
「すでに話している! なぜか、魔物は俺だけしか狙わないんだ! お前がどうにかしたんだろう!?」
「私が魔物を操作できるわけがないでしょう? 魔物は私に触れると消滅するんですよ?」
「別に触れなくても会話は出来るだろう!」
「魔物にしてみれば私は敵です。そんな人間の言うことをきくわけがないでしょう!」
「なら、どうして、俺ばかり追いかけてくるんだ!?」
「魔物に好かれるような性格だからなのでは?」
理由がわからないので、適当に答えてみると、当たり前だけれど、サウロン陛下は激怒する。
「そんなわけがないだろう! 殺されかかったんだぞ!?」
「そうよ、リンファッ! わたくしがっ、いなかったらっ、陛下はっ、殺されてたのよっ!?」
「チーチルが守ってあげればいいじゃないの。どうしてわたしに頼ろうとするの? わたしはアウトン国にとって、必要ないと判断された人間よ?」
冷たいと思われるのは覚悟で、チーチルに尋ねると、彼女は正直に言葉を発する。
「だってっ、怖いじゃないのっ!? 陛下とっ、一緒にいたらっ、魔物が来るのよっ!?」
「結界を張ってあげなさいよ」
「苦手だって言ってるじゃないっ!」
チーチルの言葉を聞いたわたしは大きくため息を吐いたあと、サウロン陛下の周りに結界を張る。
「見えないかもしれませんが、あなたの周りに結界を張りました。魔物はあなたに触れることは出来ませんから、本日はもうお帰りください」
「そ……、そうか。なら今日のところは帰ってやるが、休暇が長すぎる! 早く帰ってくるんだぞ!」
いつの間に、わたしは休暇を取ったことになってるの?
陛下は立ち上がり、チーチルの手を取って歩き出す。
「行くぞ、チーチル!」
「あぁん、陛下っ! リンファは連れて行かないんですかっ!?」
「今のところはもういい。無理やり連れて帰ると国際問題になりかねん」
そう言って、陛下は屋敷を出て行き、転移の魔導具で自分の国に帰ったようだった。
「一体、何だったの?」
「よくわからないが、サウロン陛下だけ魔物に狙われているというのはおかしいよな。もし、誰かが操っているにしても、そんなことが出来るのか……」
ランは少し考えたあと、わたしを見て続ける。
「チワーに確認してみるか」
「そうね。チワーは聖獣だし、ご両親から何か聞いたことがあるかも」
「そうだな」
意見が一致し、わたしとランはチワーがいる、わたしの部屋に向かったのだった。




