幕明
オルフェン・スカイバードは今現在、かつてない程の命の危機に瀕していた。
全速力で目的地へ向かって突っ走る彼の背後から、いくつもの怪しい気配を感じる。
追いつかれればどうなるか_。
その答えをよく理解しているからこそ、捕まる訳には行かないと、体力の限界が近い身体で更に走る速度を加速させる。
息が更に荒くなり、感じる喉の痛みと血のような匂い。
足の感覚は既に無い。
意識が朦朧とし始めた所でようやく彼は目的地へとたどり着いた。
「間に合え…っ!!」
そこにあった例のモノを彼はすかさず起動させる。
その瞬間_彼は眩い光に包まれ、追っ手が追いつく頃には彼の姿は何処かへと消えてしまっていた…。
「いきなり消えた!?」
「お前ら辺りをくまなく調べろ!!」
数人いた追っ手の内、その中の一人が仲間に向かって怒号を飛ばした。
「いいか?取り逃したなんてあの御方に報告することになってみろ…俺達がどんな恐ろしい目に合うか分からねぇぞ……!!」
一人が発したその言葉は、その場にいた全員を震撼させ、必死にさせるには充分であった。
つららを背中に突きつけられたかのように顔を蒼くさせ、追っ手達は死に物狂いで各々、辺りをくまなく捜索する。
__しかし、既にオルフェン・スカイバードはもうここにはいない。
彼等を待ち受ける結末は決定されていたが、そんな現実を受け入れたくない彼等は、それでもほんの僅かな希望だけを信じ、その時が訪れるまでそこにいる筈の無い存在を延々と探し続けるのであった。