第十九話 炎天下
「おーい、クルトいるかー?まあいるよな」
「はい、大丈夫ですよ」
いる事を確認した上で作業場に来ているのでいるかと確認する必要は無いのだが、一応ね。
「今日はどうかしましたか?」
「とりあえず差し入れ第2弾。あと聞きたいことあって」
「ありがとうございます。またアゲハも呼んで良いですか?」
「そりゃもちろん」
この前と同じ感じで話になった。迷宮で出た食材系のドロップ品はモモの調理により一通り楽しんだので満足だった。リアルでこのぐらいのものが食えれば良いのだが、そもそも金がな……ゲームの中は金持ちなんだがな。食事中にくっちゃべるのはマナー的にアレだが、口に物入れたまま話していないし別に良いだろう。そもそもシステム上こぼれる事は無いみたいだし。
「それで聞きたい事って何ですか?」
「ああ、ほら迷宮のドロップ品で出来た機械武器が流行り始めたみたいな話を聞いてな」
「機甲武装の事ですか?もしかして興味ありますか!」
多少詳しくは聞きたかったがそこまで求めていないというか、その機甲武装とやらについて楽しそうに話し始めた。機甲武装というのはそういう仕組みを備えた分類名の様で色々と種類があるらしい。変形とか。剣に分類される銃剣とか銃に分類される銃剣とかややこしいことになってたりするが、変形すれば2種類の武器を使えるらしい、基本的に。まあ武器によって向き不向きがあって刀はその不向きの方なので俺にはさっぱり縁が無い様だ。防具にも何かあるみたいだが、俺には関係無いな。ショウは……まあ良いか。ゲームなのでビーム武器とかありそうという話もあるそうだが、ビーム出す敵が今の所いないそうで望み薄だそうだ。
結局聞いた感じ俺には特に旨味は無さそうだなあ。
「という事でして!これを組み込むには……」
「おーい、クルトステイステイ。もう良いから」
「え……あ、すみません」
「喋りすぎでしょ……いくらロマンだとしても」
「そこまで長くなかったけどな……説明は分かりやすかったし。流石に生産過程にまで話そうとしたのは困ったけど」
「ちょっと熱中しました……それでどうでした?」
「うーん、ご縁がなかったという事で。ほら、若干耐久落ちるみたいだし」
「構造上それはしょうがないですね。刀が、というよりは新要素を入れる以上向かない物の1つや2つは必ず出てきますし」
「そうだよな……アゲハは最近どうなんだ、洞窟のとこの素材とか」
「下地というか組み合わせが難しくてまだ扱えないの。レベルというよりはスキルとか手持ちの機械の……いややっぱりレベルね」
「レベルか……それは時間の問題か。こっちも頑張らないとなあ」
「あと20階層でしたっけ?もう少しですね」
差し入れ料理の残りは取っておくようでどこかへとしまっていた。今回はもう解散した後なので、後はもうログアウトかな。明日も潜るし早く寝よ。
「あっちぃー……」
「暑いですね……」
「まさかここまでとはね。ゼクシールの砂漠と大して、もしかしたらこっちの方が暑いんじゃない?」
「砂砂漠とここのこういうのはどっちが暑いんだっけ?」
「場所によるはずですよ……」
「そうなのか、そうだよなあ。流石コトネさん」
「い、いやそこまでの事では……」
「脱水症状はちゃんと状態異常扱いになってるから気をつけてね」
そうだそうだ、水を用意しないとな。リアルほどいるわけでは無かったが、荷物が少し増えるのがな。実際に喉が渇くわけではないので管理が面倒だ。耐暑装備は付けているんだが、まだ全然足りないな。追加で色々と作ってもらおう。普通のフィールドにも砂漠はあるから損は無いし。状態異常の種類は結構多いからリアルと同じ感じで管理しないとな。
「まあ水分と装備ぐらいか……ショウの鎧大丈夫なのか?」
「ん?うん、そこまで面倒な事にはなってないよ」
「そうか。ここ草原と同じタイプなのが厄介だよなあ」
「そうみたいだね。ここはここでトラップがあるみたいだから気をつけないとね」
「トラップ……流砂とかですかね?」
流砂か……飲み込まれたら危険ってか?流石に1種類って事は無いだろうから下に気をつけるか。上からは……鳥系のモンスターぐらいか?
「あとモンスターは砂漠っぽいものらしいね」
「具体的なのは教えてくれなかったからなあ」
「それにここの特色はモンスターの素材じゃなくて鉱石だってさ。何かちょっと低くなった所に横穴みたいなのがあってそこで採れるとか」
そこで採れる鉱石は特別だったりするわけでは無く普通のフィールドでも採れる物らしい。だが、そこそこレアの様でそれなりに量の欲しくなる物ばかりだとか。ドロップ率も中々らしい。
「かゆい所に手が届く感じだなあ。必要だけどそこそこ集まりにくいアイテムってあるもんな。そもそもこの迷宮もかゆい所に手が届く感じだよな」
「そうですね、対象は限られていますけど」
「まあ流用出来ないわけじゃないし」
そんな話を続けていくと、向こうから砂埃を上げながら何かの群れが迫ってくるのが見える。結構遠くから来るんだな。
「何あれ?」
「うーん……サメ?」
「サメですか」
砂漠にサメ、いやまあここは砂で出来た海みたいなものだけどさあ。ゲームだとこういう類のは定番だしな。数は5体、若干多い感じがするがどうしようか。
「うおわっ」
「きゃっ、素早いですね……」
思ったより動きが素早い。というか動きがトビウオっぽい。カウンターよろしく斬ってみた。浅いかと思ったが、割と効いてるみたいだ。群れで1つみたいなカウントで、1体のHPは少ないのかな。
「ショウ、そっちは?」
「防げてるよ!そっちは速くしてね、倒せるわけじゃ無いから!」
「へーい」
あっちの対処は問題無いらしいから、こっちに向かってくる3体のサメを叩っ斬らないと。俺の周りを回りながら様子を窺ってくる。連携もしてくるようで厄介だな。
「【抜刀】、【朧流し】」
向かって来た1体を斬り飛ばし、後ろからサメの攻撃を受け流す。変な攻撃はしてこないみたいだからありがたい。そのまま2体目、3体目を斬り倒していく。さてこっちは倒したからショウの方へ行かないと。ショウの方はこの間に1体は倒したようで動いたのはあと1体か。まあその1体は俺に気づいていないのでこっそり近づき後ろから刺して終わった。
落ちた素材は……うん、普通だな。特に変わった特性があるような感じじゃないな。その後は途中で採掘場所をいくつか見つけた。ショウが丁度採掘道具を持っていて色々手に入った。どれも俺でも知っている物だったが、入手率的に良い感じじゃないだろうか?どの階層も割と利点があってプレイヤーに優しい迷宮だな。進むのは大変だが。後で1人でも来ようかな、量あって損は無いし。




