第十八話 ごちゃごちゃと
「やあ2人とも久しぶり」
「そっちも迷宮踏破おめでとうございます」
「あはは、ありがとう。心強い助っ人もいたからね」
学校から帰った後ログインしてイプシロンに連絡してみたわけだが、何かさっくり会えた。そもそもスピード重視で攻略してたのもあって売る情報やら何やらはそこまでの量では無かったらしい。それでも少し忙しかったそうだが、丁度暇だったとか何とか。こういう時の運は何なのだろうか、いや会えて嬉しいのは嬉しいのだが、こういう事に運を使うのならもう少し違う場面が良いと思ってしまうのはいけないか?
「その助っ人って誰なんですか?パーティにわざわざ入れるんなら相当なんでしょ?」
「あれ、ショウ君知らなかったっけ?ほらタイガさん……『銃王』の」
「タイガ……聞いたことあるような無いような……というか4次職いたんですか」
ショウが知らないプレイヤーか。まあ全員知り合いという訳でも無いだろうから、当たり前か。それにしても4次職、『銃王』か。ショウと同じくいたんだというか、パーティに入れるならそれぐらいは確かに必要だろうな。
「へえ、でも何故わざわざ?」
「それは……まあ良いかな。ボスにはね、1回着いたんだよ。でも倒せずに全滅しちゃってね」
「イプシロンさんが……?」
「いや僕だって失敗ぐらいするよ?それでメンバーで相談した結果、タイガさんが必要だって事になってね。ボスの特徴からタイガさんが最も適任で、それが大正解で良かったよ」
「そんなにか……俺達も必要になるんだろうな。銃士系統空き無いんじゃないか?」
「そうだね、どうしようか?」
「あ、ごめん。君達は大丈夫だと思うよ?」
「え?」
「その前に今回は何を聞きに来たんだい?迷宮の事も聞きに来たんだろうけど、それだけじゃないんだろう?」
他の用件といえばエクストラモンスターの事だが……まさか見抜かれてた?俺がエクストラスキル持ちなのはバレてるからその関係?それにしては察しが良すぎる気がするが、とりあえず誤魔化さない方が良いだろう。
「そのボス、エクストラモンスターだったとか?」
「……!当たりのようで良かったよ。他言無用でね」
「あっ、はい」
やっぱりそうだったか。じゃあ、イベントにつきエクストラモンスター1体は確定か。フィールドで探し回るよりは確率は大分高いので運営の善意なのかな。もしくは何かあるのかもしれないが、考察は趣味じゃ無いので隅に押し込んでおこう。
「なるほど、それなら納得で……ちなみに誰が倒したんです?後特徴とか」
「いやいやそれは流石にね。それと今は普通のボスに置き換わっているみたいだから……僕からは何とも。戦ってないし」
「そうですか」
「それにパーティはヒーラーの子が1人だっけ?大丈夫って言ったけど、後もう1人ぐらいは必要なはずだよ」
「まあ最下層のボスだしな……誰がいたかな」
流石にそう3人で上手くはいかないかな。もう1人っていっても暇な奴のアテがない。野良で組んだことあるプレイヤーは大体他で組んでいるし、フリーの奴はフリーの理由があるだろうし。
その後はこの先の階層やらモンスターやらの特徴を攻略情報を売っている所に差し障りが無い程度に教えてもらった。それでも役立つものはあったし、案外さっくり用件が済んで良かった。
「じゃあ迷宮に行こうか」
「そうだな、コトネさんも待ってるし」
そしてコトネさんと合流し、21階層へ。あと30階層分進まないとな。
「またダンジョン的なアレだな」
「この先10階層これみたいだよ」
「5階ずつの法則が崩れましたね」
「モンスターの攻撃方法はちょっと変わってるみたいだけどね」
「ネタ切れっぽく見えてくるよな……」
「それは流石に無いんじゃ……攻撃方法が変わるってどんな感じですか?」
「ああそれは、今までのごっちゃ……うわ」
話しながら角を曲がると、前にいたのは鼻息を荒くした、草原で見た牛のモンスターだった。うーわ、草原以来?久しぶり〜……やっぱり運営道半ばでもうネタ切れじゃないのか?ごっちゃにしても終盤とかじゃねぇのかな。
「ブモォォォ!!」
「ショウ!」
「はいはい!」
突進してくるが、このままだと3人ともボウリングのピンのようになってしまう。なので急いでショウの盾の後ろへと隠れる。全然気づかなかったわ、この迷宮の角には魔物でも住んでんじゃねぇのか。とにかく丈夫なショウに任せよう。下手にカウンター狙うと面倒だ。衝突と同時に鈍い音が盛大に響いた。
「うわ、おっも。流石にレベルは上がってるか……!」
「んじゃ気合い入れ直さなくちゃな」
少し斬ってみたが、確かに刃の通りが悪い。だが突進直後、しかもショウに受け止められた後は隙が出来るのでそこは致命的だった。ドロップしたのは同じ肉……いやちょっと大きいな。
「大きいですね?」
「まあレベルが上がって同じなら割りに合わないからね。そんなもんでしょ」
「なんかちょっとずれてる気がすれけど……そもそも違和感凄いな」
「初対面が草原だからね、いや草原でも中々なのかな……」
その後はがっつり正面から飛んできたコウモリなど、運営は作るのが面倒になったのかと思う感じの出来事が色々あった。いや、別にまとめて出すのは良いんだよ。でも洞窟の階層にいたモンスターが悉く悲惨な事になっていた。あ、でもカメレオンは難易度据え置きだった。透明ってか迷彩だから明るくても問題無いから質が悪い。レベルが上がっているのを考慮しても効率は結構良いな。
「入れ食いだな」
「何、自虐?落とし穴から這い出てきて言ってもギャグになってるだけだよ」
「うるせえ、落とし穴でデスペナになった奴が。本当に撮っておけば良かったな」
「もう1回叩き落としてあげようか……?」
「ふ、2人とも……」
進んでいる途中、罠にかかり落とし穴に落ちかけたのだが、運が良かったのかすんでのところで手を端に引っ掛け落ちずに済んだ。いやはや運が良かった。ショウのように可笑しなことにならずに済んだ。
「こ、この後はこんな感じのままなんでしょうか?」
「あ、いや26階層からは同じだけど機械系だけになって、31階層からは環境も違うみたいだよ」
「まあずっとこれだったら手抜きに感じるからなあ」
「31階層からは砂漠、36階層からは森だってさ」
「草原の時と同じタイプっぽいよなあ。暑さ対策とかしないとな」
「細かいのは聞けてないけどまた色々あるんだろうね。スピード重視で進むだ攻略組には頭が下がるよ」
「恩恵に預かるかあ」
ちなみに25階層のボスは今までのボスの劣化版大集合だった。劣化版なので厄介なギミックは無く、コウモリも明るい中だと素早いだけになり微妙な感じになったボス計4体だった。狼はただの狼だったし、銃弾から逃れるために盾にしたらすぐ死んだ。いやまあ、残った機械系は少し攻撃力は落ちてるとはいえ2体いると結構厄介だった。そもそもパーティの上限は5人、俺達は3人なので当然手が足りなく、結局エクストラスキルやらポーションやらを大量に使うことになった。まあ1人も欠けずに倒せたから良しとしよう。
26階層からはまた環境はダンジョン風、モンスターは機械系メインに戻り、武装やら形態やらが色々と増えていた。これまでは四足歩行兼二足歩行みたいな曖昧な感じだったが、動物型や無限軌道が追加されていた。
「41階層からもまたこんな感じか、手に入るものからして銃士系統に手厚いよな」
「それだけ改善の余地があったってことでしょ?まあ多いとは思うけど」
「そのパーツを使った武器も流行り始めているんでしたっけ?」
「そうだね、大分ややこしい仕組みみたいだけど。コウも使ってみたら?」
「あー……まあクルトに聞いてみるだけ聞いてみるか」
何にせよ収入は多くなるから良いか。浅い層のドロップ品はもう値段は落ち着いたから深い所に潜らなければ。あ、30階層のボスは恐竜みたいな感じだった。恐竜プラス機械武器なんて結構ロマン溢れる感じだったなあ。何か色々種類があるらしいので暇があればちょくちょく見に行ってみたい。




