第十六話 銃火器
銃火器相手の対策も何とかなり、ひとまずは順調に進みボスがいる20階層へと着いた。毎度の事だが間の3層は省いているが、本当に大した事は起こってないんだよなあ。そうそう代わり映えがする事なんて起きないよな。強いて言えば、2、3回他のパーティと遭遇したぐらいだが、タルさんやコーゾーの時のように誰かの知り合いというわけでもなかった。 あ、どうも、こっちはこっちに進むんで……みたいなやり取りしかなかったし、このゲーム割と民度高いんだよな。ガラの悪いのが全くいないというわけではないが、質の悪いのはあまり……そうそう見かけても困るが。あれかな、前に聞いたPCAの発足の時の騒動でそういうのは駆逐されたのかな。まあゲームに関係無い、くだらない揉め事が起こらない事は良いことだ。話を戻すと、この前のショウが落とし穴に落ちてデスペナなんて面白……不幸な事件も無いので特に語ることも無い。
「そういやドロップ品ってまだ売れるのか?」
「浅い層のは落ち着いたみたいだけどね。まあ深い所はしばらく大丈夫でしょ」
本格的に集めるとしたら、最下層とかそこら辺か。今は手に入れたけどいらない物を売るぐらいで良いだろう。財布は元から割と潤っているが更に潤う事にデメリットは無い。リアルと違って経済が滞るなんて世知辛いことなんで無い……よな?まあ流石にそれは無いか。
罠には相変わらず引っかかるが、即死系の数はそれほどでもなく、状態異常系もコトネさんのお陰で対策も何とかなっている。もう罠の発生にも慣れてきてしまっているし。この20階層は特徴は5階層と同じで、石碑があるべき場所にボス部屋があるらしい。
「それでボスの情報は?これ言うの4回目だな……」
「僕が担当だからね、しょうがないでしょ。ボスは5階層のと傾向は同じみたいだよ」
「色々な武器の詰め合わせだな」
「今回は銃火器とかの飛び道具なので大変そうですね」
「それはまあ各自動き回って、何かあれば素早いコウがなんとかしてくれれば」
「そうだな、ショウはVIT高いし、無視してコトネさんを助ければ良いか」
「いやちょ……まあそれで良いか。お姫様抱っこでもしてあげれば?」
「おっ……!?」
「いやそんな状況にならない方が良いだろ。そもそも俺が攻撃出来ないじゃん。コトネさん補助系だし」
「うわあ、そう来るかあ……まあしょうがないか」
歩いていると何か踏んだ床に違和感を感じたが、罠と考える前に矢が飛んで来た。だが、もう慣れてきたので刀で叩き落とす。
発射される方向は様々だったりするが今ぐらいの距離なら十分叩き落とせる速度なので今は対処が楽な物に分類されている。2人も俺が叩き落とす事にはもう慣れたようで特になんの反応も無い。嫌な慣れだなあ。
「それにしてもボスの攻撃方法なあ。銃はまず良いとして他にも色々とあったよな」
「バリスタ、矢、爆弾、ビーム的なの。結構色々あるよね」
「複数となると選択肢が多くなりますし、ボスですから強化もされるでしょうし」
「まあランダムならなるようにしかならないからなあ。まあ銃火器なら射線はまだ分かりやすいはずだし、まさか全方向乱射とかはしてこないだろ」
「流石にそんなクソみたいな攻撃は……意外とするかもね」
「え、縁起でもない……とにかく頑張りましょう」
「そうだな」
「そうだね」
そんなことを話しながらボス部屋へと向かう。ボス部屋に着くと前と同じくでかい扉がありそれを開け中へと入る。中は5階層と大体同じだが、ボスの武器は予想通りというか、銃火器系だった。というか何だ、ボスの背中部分辺りにあるあのバリスタみたいなのデカすぎないか?こんな閉所であんな武器使うなよ、えげつねぇな。レベル差はまだ多少あってもまともに受けたら洒落にならなそうだ。
「ヘイトがどうなるか分からないけど、2人とも気をつけてね。分かってると思うけど特に上のアレね」
「はい……!」
「ああ」
多種の武器を扱う敵がどう出るか分からないので、とりあえず俺とショウは分かれコトネさんはショウの後ろにつく。コトネさんの速度で避けられるようならまあ3人で撹乱みたいな事も出来るだろう。
ボスの起動シーンは終わったようで、メインアーム的な部分が動きそこに付いているガトリングが俺達に狙いを定めた。
「初っ端からガトリングかよ……うわっとっとぉ!?そんじゃヘイトとか頑張れよ!?」
「え、分かってるけど期待しないでねー」
まあ機械系のモンスターはヘイト操作が効きづらいと浅い層で分かっているのでショウの言う事に文句は言えまい。
幸い照準速度は今まで出てきたモンスターと同じくそこまで速くないので、頑張って走ればギリギリ避けられる。俺でそれなのでショウはいつ向けられても良いように盾を構えていた。数秒後、ガトリングの斉射は止んだが何やらボスの体の内部でギチギチと音が鳴っている。相手の攻撃を見ているばかりでは倒せないので攻撃したいが、こうもあからさまな音を鳴らされると動きづらい事この上ない。
そう考えていると、ボスの胴の横辺りの装甲が展開し、発射管の様な物が出てきた。そして次の瞬間そこから放たれたのはピカピカと光球体だった。
「うわー……」
爆発だ、絶対爆発するわ。ピッカピッカ光ってるし、その速度上がってるし……ほーら、爆発したー!距離とっといてよかったー!
球体が地面に落ちてから数秒後、案の定爆発しボスの周りはもうえらい事になった。ショウ達も離れていた様で大した被害は無いようで良かった。球体は未だに出続けているので、更に着地点もランダムに変わっているみたいで迂闊に近づけない。
爆弾の放出が終わった後はガトリングや他の攻撃に変わったので隙を見て攻撃していくが装甲が若干厚くなっているのか大したダメージにならない。時間がかかりそうだなあ。もういっその事上のいかついアレを何とかするかな?
「【空走場】」
【空走場】で上方へと向かう。運が良いのか、ボスの上面はバリスタの機構で占められており、5階層の時のようにサブアームが展開して迎撃してくる事はなかった。しめたとばかりに攻撃していくが、専用の迎撃システムが無いだけでそれを許してくれるほど甘い思考回路はしてないようでメインアームの方がこちらを向いて撃ってくる。
「うお、やっべ」
これはサブアームがいらないというより、メインアームで十分射程が通るからか。そのままこちらを追いかけると思ったが、急に方向を変えコトネさんの方へと向いた。
「え、そっち!?」
「コトネさん……!」
ボスの照準速度だとコトネさんのステータスでは避けられないので全速力でコトネさんの方へと向かう。ショウとは分かれていたようでショウは間に合わないので俺が向かわないと。
こういう時さっきショウが言った通りお姫様抱っこでもすれば格好がつくのだろうがそんな暇は無く、コトネさんを肩に担ぎ全速力で走る。それなりにダメージを受けたがコトネさんが死ぬよりマシだし、コトネさんの魔法でまあまあ回復したし結果オーライだ。
「いやあ危なかった」
「あ、ありがとうございます……」
このままはアレなのでショウの盾の後ろへと隠れる。
「ナイス、コウ。まあ肩に担ぐのはどうかと思うけど、女性を」
「うっせえ、そんな余裕があるわけ無いだろ。それよりヘイトどうなってるんだよ」
「いやー、モンスターでも機械相手は面倒だね。やってみた感じ少し気配が濃くなるぐらいの効果しかないよ」
時間はかかるが、このままなら……いや相手もバリスタがあるだろうし、気は抜けないか。




