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Arkadia Spirit  作者: アマルガム
第四章 奥へと迷走、探索は着々と
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第十五話 スローモーションで見たかった


「それじゃあクルトの所に行ってくるわ」


「じゃあ僕は屋敷に一旦戻るよ。装備は全部そっちにあるからね。コトネさんは?」


「あ、私も戻ります。アイテムとか色々……」


「そうか、じゃあまた後でな」


 そういうわけで2人と別れ、PCAの方へ。用件は丁度良い盾があるかどうかだが、そう上手く行くかな。まあ無くても作って貰えば良いし、材料あるし何とかなるだろう。最悪鉄板でも腕にくくりつければ代わりになるし、ちゃんとした盾を求めてるわけじゃないし。

 PCAに着くと、受付はサツキさんではなく、他のプレイヤーだった。流石にそう毎日いるわけないか。受付の人に聞くとクルトの作業場は大丈夫な様で、場所はこの前と変わらないらしかった。


「おーい、クルトー?」


「コウさん。今日はどうかしましたか?」


「いや、何か適当な盾とかないか?腕に固定出来る丁度良いやつ」


「ああ、それですか。とっておいた甲斐がありましたね」


 そう言ってクルトは部屋の隅にあった箱から小さな盾を取り出した。よく見ると鉄板をちょっと加工しただけの様で、それにベルトをつけた簡単構造だった。

 まあ用途しては十分だし、すぐ手に入れられた時点でとてもありがたい。しかしあらかじめ用意していた様だったが、なぜ分かったのだろうか?


「レイヴンさんや他の人達から銃火器を使うモンスターが出ると聞きまして。コウさんのパーティは遠距離攻撃が無いのでもしかしたらと思ったので、ほら攻撃されると少し動きが止まるらしいじゃないですか」


「ああ、確かにそうだったな。いや本当に助かるわ」


「いえいえ、他のプレイヤーの人達も必要になってるみたいで、売り物はほとんど消えてますし。そもそも盾としてなら下の下ですよ、これ」


「いや重さはともかく、大きさは丁度良いしな。ああ、代金」


「いやいいですよ、それ余り物で作ったようなものですし。用意しておいてなんですがそれ売り物になりませんし」


「まあそれもそうか……」


 確かに盾としてみれば他のプレイヤーに出されたら即座に返却するレベルだが、今回の用途からして問題点が無い。補正も付いていないし使い捨てる分には丁度良い。クルトは代金はいらないというが、流石にそれは無いので相場の半分ぐらいは払うべきだろう。いやこれに相場も何も無いが、手間は一応かかかってるし。


「それじゃあ、貰っておきます」


「ああ、助かってるからな。それじゃもう戻るわ」


「頑張ってくださいね」


 盾も申し分の無い物を手に入れたので、PCAを出て迷宮の入り口付近でショウ達を待つ。こちらは案外すぐ終わったので十数分待ったが、まあしょうがないだろう。

 ショウは装備を変えてくると言っていたが……何か変わった?


「……それ、本当に変えたのか?」


「うんそうだよ。分かりづらいけど関節部分とかね。これでも軽くなってたり補正もAGIが入ってたりするんだよ、まあ気休めだけどね。VITもちょっと低くなってるけどあそこなら誤差で済むんじゃないかな?」


「それなら良いか、じゃあ行くか」


 コトネさんもアイテムは補充したそうで問題無し。迷宮へと入り、クルトから買った盾を腕に固定する。さて盾あってどうなるかな。






 盾をつけた効果は思ったよりもありました。盾で受ければ補正は無いのでダメージはまあそれなりに受けるが、そのまま受けるよりは小さく、何より銃弾を生身に受けるより遥かに障害が無いので楽に近づける。ショウの装備変更も少し動きが速くなったので迅速にモンスターの制圧に貢献してくれている。

 いやー、思っていたよりも対策に効果があって良かった。罠の事は置いておいて、これなら今までと難易度は大して変わらないように見えるのでこのまま進めば良いか。


「うん……意外と何とかなるもんだね」


「やり方としては邪道もいい所だけどな。まあ仕様の範囲内だから運営も考慮はしてるんだろうけど」


「受けるダメージも少なくなってますしね。良いんじゃないでしょうか」


 進捗も順調なのでこのまま進んでいくが、大した事は起こらなかった。しかし、今までの経験から言って7割ぐらい進んだであろう所でそれは起こった。


「じゃあボスも銃火器かな」


「そうじゃない?まあ対策は進みながらね。ごり押しすればまだ何となるはずだけど……それはね?」


「ちゃんと対策をして楽になるならその方が良いですからね」


「まあそうだよ、ねぇ!?」


「消えた……!?ショウの奴いつの間にそんなスキルを……!」


「いやコウさん下です……」


 そりゃそうだよな。いきなりショウが消えたが、それは下に空いた穴に落ちただけだった。落とし穴か……油断してたな、結構サイレント。ここに出現する敵の特徴からいってショウが先頭にいた方が良いと思ったが、まさかこうなるとは。


「おーい、ショウー……まあいるわけないか、デスペナかあ」


「本当ですね……どうしましょうか」


「幸い途中だけどマッピングの情報は残ってるから進もうか、続きは埋められねぇけど。尊い犠牲だったなあ」


 盾役がいないのは少し厳しかったが、それなりに進んでいたのもあって何とか辿り着いた。ショウは次の階層に行けないが、俺達が連れて行けば良いので問題は無い。迷宮を出るとショウが待っていた。


「いやー、恥ずかしい限りだよね……!」


「まあ運が悪かったな。落ちた瞬間を撮れなかったのが悔やまれる」


「しなくて良いから!」


「あ、えっと次に行きます……?」


「……いや今日はもうあんまり手がつかない気がするよ」


「まだまだ期間はあるし、それで良いか」


 そんな訳で解散。これでもかと綺麗に落ちたからなあ。そんなに大きな失敗というわけではないが、後からジワジワくるタイプだろう。微妙に頭をよぎって失敗されるよりはここで一旦終わらせた方がマシだろう。

 ショウはどっかへ、コトネさんはクルト達に会ってくると言っていたので、俺は特にする事もないので屋敷へと戻る。物の整理でもして今日は終わるか。


「たーだいまあ」


「おや、もう今日は終わりかい?」


「色々あって休憩だよ。まあ適度にな」


「ふーん、まあ良いんじゃ「ならば!妾に!話を聞かせるのじゃー!!」」


「うわ、出た」


 談話室の窓の鍵を開け、飛び込んできたのは毎度お馴染み第3王女様である。いやもう、どうやって外から鍵開けたんだとか、飛び込んでくるなとか色々言いたい。やけにすんなり窓が開いた気がするが、壊れてないよな?後で確認しておこう。


「出たとはなんじゃ出たとは」


「いきなり来ればそうなるだろ……メイドさんは?」


「あ、あやつなら……そう、別行動じゃ」


「護衛が別行動してどうするんだよ……今日は抜け出してきたのか」


「ギクッ」


「口で言うのかい……」


「毎日毎日紙と睨めっこはもううんざりなのじゃ。それもこれもあの出現した迷宮のせいじゃ、息抜きが欲しいのじゃー」


「……王族の義務的なアレは?」


「それはそれじゃ」


「えぇ……」


 まあどうせそのうちメイドさんが来て回収するから別に良いか。大人しく留まらせておいた方が手間が少ないだろうと、とりあえず座らせる。モモが気を利かせてお茶を出してくれたのでありがたい。聞かれたので暇潰しとして迷宮の特徴やら出来事やらを話していく。一応手元に現物があるし、それなりの話にはなるだろう。


「ほう、草原に洞窟……色々あるのじゃな。一体どうなってるのじゃろうか?」


「さあ流石にそこまでは……モモは?」


「いやそこまでは私も分からんよ。あんなとこにあんなのがあるのも初めて知ったし」


「ふむ、そうなのか……あ、そこで出る食材が美味だと聞いたのじゃが」


「ああ確かに美味かった……回ってこないのか?」


「まあ色々とあるからの王族じゃし。良いのー良いのー、食べたんじゃろー?」


 子どもか、いや子どもか。催促されても流石に王族に出すのは色々と不味いと思うのだが、まあ良いや自己責任という事で。そもそも害する理由も無いし、ちゃんと説明すれば大丈夫だろう。モモの料理を出したら大層喜んでいた。何の躊躇いもなく口にしたので少々不安になるが、ゲームのキャラだしこんなもんだろう。まあその後はキレてるのを隠せていないメイドさんに首根っこを掴まれて引きずられていった。これで懲りるんだったら脱走癖になったりはしないんだろうな。


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